ヘルメスとは、以下の事を表す(他の読みについては「HERMES」「エルメス」を参照)。
- パトリック・ヘルメス - ドイツのサッカー選手
- ヘルメス(神) - ギリシャ神話に登場する神。ヘルメース。 本項にて解説。
- ヘルメス・トリスメギストス - 伝説上の錬金術師
- ヘルメス文書 - 錬金術師ヘルメスが書き記したといわれる文献
- ヘルメス思想 - ヘルメス文書より発生した神秘主義思想
- ヘルメス(サントリー) - 1950年代に発売された洋酒のブランド名
- ヘルメス - 第二次世界大戦中にドイツ海軍が鹵獲した元ギリシャ海軍駆逐艦ヴァシレフス・ゲオルギオス → ZG3の項を参照
- Helmes(生放送主) - 生放送主の一人
ヘルメス(神)
ゼウスとプレイアデス七姉妹の一人マイアとの間に生まれた子。オリュンポス十二神。神々の伝令であり、旅人・商人の守護神でもある。
その他にも狡知に長けた側面を持ち、策略と発明を司り、泥棒や賭博師・詐欺師の守護神ともされている。多くの属性を司ることもあり、ギリシャ神話におけるトリックスターで、ローマ神話ではマーキュリー(メルクリウス)と同一視される。
聖鳥は朱鷺または雄鶏。象徴は杖(ケリュケイオン)で、つば広の帽子(ペタソス)をかぶり、空を飛べる有翼のサンダル(タラリア)を履いた姿で現される。
その生い立ちからして、ずる賢くしたたかな逸話を持つ。
生まれたその日の昼にゆりかごを抜け出し、道中で遭遇した亀を捕らえて昼食にすると、甲羅で見事な竪琴をこしらえた。更に夜になると異母兄にあたるアポロンが飼育する雄牛50頭を盗んで隠し、素知らぬ顔でゆりかごに戻って眠った。この時ヘルメスは大きなサンダルを履いて足跡をごまかし、牛を後ろ向きに歩かせて追跡できなくしている。
翌日になって牛がいない事に気づいたアポロンは混乱するが、占いによって速攻で犯人を特定、ゼウスの前に連行した。
ところがヘルメスは「生まれて間もない私がそんな事できる訳がないでしょう」と嘘をつき、問い詰められても「そう言われても嘘のつき方など知りません」とすっとぼける。ゼウスは大笑いしながらも、ヘルメスに泥棒と嘘の才覚がある事を理解した。
結局ゼウスから牛を返すように命じられ、しぶしぶヘルメスは牛の隠し場所へと案内する。しかしそこで例の竪琴を取り出して奏でてみせると、音楽の神でもあるアポロンはそれが欲しくなり、残りの牛と竪琴を交換する事となった。
またこの時ヘルメスは小さな葦笛をこしらえて聞かせ、それも欲しくなったアポロンは自身の持つケリュケイオンの杖を譲り、以後ヘルメスのトレードマークとなった。この時のアポロンとの交渉から商売の神、各地を飛び回った事から旅の神としての属性を持つ事となった。
また「この子は才能がある」と考えたゼウスの企てもあり、ヘルメスは当時生まれたばかりのアレースと密かに入れ替わり、ヘラの乳を飲んで育った。後にそれが判明した後、本来であれば自分以外の愛人やその子に容赦しないヘラもヘルメスに対しては情がうつり、実子同然に可愛がったという。
ゼウスが愛人のイーオーと密通していた現場をヘラに抑えられた時、咄嗟にイーオーは美しい雌牛に変えてごまかそうとした。ヘーラーはゼウスの工作を見抜いており、「それほど見事な雌牛なら是非お譲りください」と迫り、百の目を持つ巨人アルゴスを見張りに立てて逃げ出せないようにしてしまった。
愛人の窮地に困り果てたゼウスはヘルメスに彼女を救うよう命じるが、アルゴスは50個の目を閉じて眠っている間にも残る50個の目を開いており、いつ何時も死角が存在しない。そこでヘルメスは笛を吹きならし、アルゴスが全ての目を閉じずにはいられないほど深い眠りへ誘うと、その首をはねて殺してしまった。この出来事によりヘルメスの別名、「アルゴス殺し」を意味する「アルゲイポンテース」が生まれる事となる。
その後ヘラは逃げたイーオーに虻を送って責め苛み、雌牛のままのイーオーは各地を転々とする羽目になる。その一方でアルゴスの百眼を取り、自らの聖鳥である孔雀の羽につけてその献身をたたえた。
死者の魂を導いて冥府へと送る役割を担っているとされ、とりわけ英雄や賢者の死に際しては彼が自ら迎えにくると信じられていた。学術を司ることから北欧神話のオーディンと比較される事もある。
大地母神ガイアが増長するオリュンポスを罰する為に生み出した最強の怪物・テューポーンとの戦いにおいて、ヘルメスは大きな役割を果たしている。
あまりの恐ろしさに神々が逃げ出し、ゼウスは単身テューポーンに立ち向かうが激闘の末に敗北し、両手足の腱を奪われて幽閉された。テューポーンが自分の傷を治す為にガイアの許に向かった後、こっそり戻ってきたヘルメスは見張りに立つ半竜の女怪デルピュネーを殺害して腱を取り戻し、ゼウスを治療して復活させている。
人間の英雄の物語にも、神々の意向を伝える為の伝令として登場する。
メドゥーサ退治へと向かうペルセウスに対し、ハデスの持つ「隠し兜」を始めとした魔法の道具のほか、自らが履く翼のサンダルも貸与している。
『オデュッセイア』においては、アイアイエー島で魔女キルケーの館に向かおうとするオデュッセウスの前に現れ、彼女が魔法によって客人を動物に変えている事を教える。更に魔法を無効化する薬草を与え、オデュッセウスがキルケーを捕らえる手助けをした。
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関連項目
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