ヘルメットとは、頭部を守るための防具である。"メット"と略される。
頭には脳や中枢神経などが集中しており、攻撃や負傷によって失神・脳震盪・激痛など活動・判断力を大きく損ない不利な状況に陥る、他者を巻き込む、復帰に時間がかかる、死亡や後遺症などのリスクがあるため危険場所や活動環境によって着用または着用義務とされる。
帽子と比較し一定以上の強度が求められ、容易に脱げ落ちないといった要素が多い。
概要
工事現場・登山など落下物の恐れがある場所で頭部を守るためであったり、野球をする際の自打球や死球対策、乗り物(自転車・バイク・航空機等)に乗るときに事故や戦闘時の負傷に備えて被るものである。
民放テレビ局では災害報道の演出小道具としてロゴ入りのものが常備されている。
軍用においては歩兵/兵士が着用し、閉所や乗降時、悪路走行中の車両などで頭をぶつけても大丈夫なよう、また砲弾や爆弾・手榴弾の破片を防ぐことが目的であり、意外と防弾性能はない。
- 目立つよう白や黄色、反射テープ付きのものも多い。
- 趣味でバイクに乗る方も様々な色やデザインを選べるようになっている。
- 万が一の負傷に備え、氏名・所属・連絡先・血液型などを記入する場合もある。
- ヘッドランプ・ゴーグル・ヘッドセット・ガスマスク・暗視装置などを同時着用する例も多い。
- 特に生身が露出するバイク等では着用が義務付けられている[2]。
- 耳元や後頭部まで大きく保護する形状など、用途によって形状は若干の差異がある。
英語の「hemlet」(ヘルメット)はいわゆる日本語でいう「ヘルメット」のほか、「兜」も指して使われる。つまり英語では、日本語のように「兜」と「ヘルメット」を呼び分けない。
ヘルメットの形状
- ハーフキャップ型
別名「お椀型」。頭頂部を覆うタイプ。工事・作業用のヘルメットや、ディスカウントショップ等で数千円で売られているバイク用ヘルメットは大抵この形状である。安価であり、視界が遮られにくく視野が広いのが長所だが、保護範囲が狭いのが難点。
デザイン面では文字通りお椀の様な縁型のものから、帽子のようなデザインのものまで幅広い。自転車においての競技特化のものでは流線型かつ穴あきで通気性と軽量化が図られたものが存在。変わったものでは折り畳み式というのもある。
持ち運びについては他のヘルメットと同じだが、面積を取らないので、運搬用ストラップを通して持ち運ぶ程度ならじゃまにもならない。対して、排気量の多いタイプの高速型モーターバイクでは顔面衝突も考えると、このタイプの使用はお勧めできない。例外として、悠然とした走行を楽しみたいドラッグバイク(スピードがあまり出ないハーレーみたいなやつ)だと視界、聴覚を遮られにくいので愛用している人も少なくない。
軽量でもあり、視野が広く受け身を取りやすいので自転車用のヘルメットはほぼこのハーフキャップ型である(バイクと違い自転車は下に重心を置かないと転倒リスクが高いため、重くて視界が遮られるジェット型やフルフェイス型で自転車に乗るのは却って危険)。 - ジェット型
別名「オープンフェイス型」。名前の由来は昔のジェット戦闘機のパイロットのヘルメットの形状から。アラレちゃんで登場していたようなあのデザインをイメージすると分かりやすい。
顔面と顎下は露出するが、頭頂部に加え側頭部や後頭部もカバーするタイプ。 ハーフキャップ型と比べ格段に安全性が高く、性能と価格のバランスに優れている。視野が広いのも特徴。後付けでフリップアップ型にすることもできる。野球帽においては死球防止の為の顎下の側面ガードがつくものもある。
原動機付き自転車や排気量の低いモーターバイク、中型スクーターぐらいまでならそこそこ安全で、ほぼほぼフルフェイスに近いぐらい頭部を覆っているタイプもある(着脱はフルフェイスぐらい大変だが)。
ちなみに、ジェットのうち後頭部半分だけを保護した形状をストリート型と分別していることもある。 - フルフェイス型
顔面を透明な板で覆い、頭部および顎下含む顔面全てをカバーするので安全性が最も高い。レーサーがかぶるのはまず大抵これ。雨天時では顔面に直接雨水がかからないので快適である。高速走行時は空力性能が良く、風切り音も小さいのでストレスも軽減される。価格の高さと、眼鏡ユーザーは着脱時が面倒なのが難点。また、マスク着用した場合でもマスクがずれることがある。
なお、口元まで覆う関係上左右はともかく、乗り物から降りた後で下側が見づらい欠点も持つ。
また原付や中型以下のスクーターだとメットインに入らないことがある(スクーター用を想定していないので)。
- システム型(フリップアップ型)
ジェット型とフルフェイス型の両方の利点をうまく組み合わせたタイプ。顔面部分のカバーがパカっと上下に動かせるのでヘルメットをかぶったままでも飲食が可能。システマティックな構造なので、昨今ではシステム型と呼ぶことが多い。価格はフルフェイス型以上に高く、自社製造可能なメーカーも少ない。
国内規格
内閣府令により規格が決まっている。排気量125cc以下と無制限の2種類。他にPSC(消費生活用製品安全法)、SG(民間規格)といった安全規格やJIS(日本工業規格)といった工業規格もある。
その他
- 軽量なヘルメットであっても単純に頭部への圧迫感や着け心地、通気性が悪いなどで着用を嫌がる方も珍しくない。
- バイク用ヘルメットなど、一定の規格が必要なためヘルメットなら何でもOK…ではない。
- フルフェイス型ヘルメットにおいては顔や髪型が隠せる、そのままバイクで逃走しても違和感が無いことから強盗など犯罪に用いられる場合もあり、警告や警報を鳴らされる場合もある。
- 頭部を保護する一方、頭部以外は守れないという欠点もあるためライダースーツやバイク用エアバッグ、ボディーアーマー・ゴーグル・命綱といった他の防具・安全対策も同時に必要となる。
- またそれらの費用や重量負担、着脱の手間も増える。
- また顔面や首元の隙間は無防備になりがちで、運が悪ければ負傷する。
- 頭部への直撃は防げてもその衝撃までは防げないため、結果的に失神や負傷する場合はある[3]。
- 航空用ヘルメットなど、太陽光から目を保護する遮光バイザーを容易に下ろせるものもある。
- 厳密にはヘルメットではないが、フィクションなどでは応急的に大きな鍋などをヘルメット代わりにするコミカルな姿も描かれる。
軍用
- 外側(金属製)・内側(樹脂など)の二重構造になっている場合も多く、割と重い。
- 近年の軍用ヘルメットにおいては暗視装置(ナイトビジョン)などを取り付ける基部が付いており、必要によってそれを容易に着脱また可能で、装着状態で上に跳ね上げておける。(→暗視装置)
- 機動性を重視する特殊部隊においては重量のあるヘルメットではなく、軽量なスポーツ用のヘルメットやブーニーハット等の帽子が用いられる場合もある。
- ヘルメット自体にセンサーを内蔵し、兵器と連動させるハイテクなものもある。
- 戦争映画などにおいては、ヘルメットや同じ服装のせいで個人がやや識別しづらいといった問題もある。
- 防弾性能を持つヘルメットもあるが、当然ながら重量は激増し負担も大きい。
- 棒の先にヘルメットを乗せ窓際にひょっこり出すなど、狙撃手を誘い出す囮に使う場合もある。
主なメーカー
- Arai
- SHOEI
- OGKカブト
- ワイズギア(YAMAHAの関連子会社。ZENITHブランドで知られる。HJCのOEMが中心)
- HJC
- リード工業
- TNK工業
- マルシンヘルメット
- 真田嘉商店
- KYT
- Simpson
- BELL
- icon
- scorpion
- SHARK
- Nolan(X-lite)
- SUOMY
- AGV
- MOMO
- Airoh
- PREMIERE
- NZi
- Schuberth(シューベルト)
関連動画
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関連項目
脚注
- *学生運動や過激派など。
- *最初は必要なかったが、バイク事故による死傷者が増えたため着用が義務となった。
- *直撃を防げても直撃の衝撃は防げないという意味では、ボディーアーマーと同じ欠点である。
- *敵の周辺や上空を飛行中に機銃の向きを操作したり、空中静止する手間も無いため攻撃を受けるリスクを減らすことができる。
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