ヘヴィータンクとは、2018年の弥生賞にて注目を集めた2015年生まれの日本の元競走馬である。
概要
ヘヴィータンクは父・クロフネ、母・アイアムジェル(母の父アグネスタキオン)という血統。すんごい遡ると皐月賞馬ジェニュインと同じ牝系ではあるのだが、ぶっちゃけそれくらいしか書くことがない血統である。
栗東の森秀行厩舎に入厩。未出走ながら2018年の皐月賞トライアル、弥生賞(GⅡ)に出走し、競馬ファンからの注目を集めた。
遅れてきた大物
競馬の世界では早ければ2歳の夏にデビューを果たし、クラシックのレースを目標とする。しかしながら、故障を抱え満足に調教や出走ができなかったり、体質の関係で仕上がりが遅くデビューが3歳の春頃になったりして、皐月賞やダービーには間に合わないする馬も多くいる。また、早くにデビューはしたものの成長が遅く、3歳夏を過ぎてから急成長する馬も時折見られる。
このような馬を競馬ファンは「遅れてきた大物」と呼ぶことがあり、菊花賞では穴馬として支持されることがある。特に良血だったり、デビュー戦の勝ちっぷりが派手であるほどその傾向は強い。
例)マーベラスサンデー(故障でクラシック戦線には間に合わず、復帰後6連勝で一気に注目馬に)
マヤノトップガン (3歳デビューで夏まで無名、秋以降一気に競馬界の主役になり年度代表馬に)
ヒシミラクル (菊花賞を抽選出走のうえ勝利。その後もGⅠを2勝しているので結果として遅れてきた大物と言えるだろう。当時は誰もそんなこと言ってないけど。)
その他多数。
その点ヘヴィータンクは一応皐月賞トライアルに間に合っているので別に遅れてはなさそう…と思われた諸兄、この馬の遅れ方は上記のような大物たちとは一線を画していたのである。
遅れてきた大物・・・なのか?!
2018年皐月賞トライアル・弥生賞。戦前からこのレースは競馬ファンの注目を集めた。というのも、
- 朝日杯FSを無敗で、しかも強い勝ち方で制した3戦全勝の2歳王者ダノンプレミアム
- こちらも3戦全勝、レース内容もよく福永祐一に悲願のダービー制覇をもたらすのでは、とささやかれるワグネリアン
- 2戦2勝ながら前走シクラメン賞を圧勝し、名門藤沢厩舎がダービー連覇を狙う1頭と目されるオブセッション
- 前走ホープフルSこそ2着に敗れたが名手・武豊がその素質を口にする良血ジャンダルム(母ビリーヴ)。
…といった超豪華な面々が出走。GⅠ昇格初年度のホープフルSを制したタイムフライヤーこそ若葉Sに回ったが、2018年の牡馬クラシック戦線を占ううえで非常に重要な一戦となったのである。
そんな顔ぶれの中、登録馬の中に未出走馬の名前が。それがヘヴィータンクである。
こんな記事競馬好きじゃないと読む奴いねーから説明すんのもあれだけど通常重賞競走には未勝利馬は出走することが出来ない。しかしながら、JRAの規定では2歳重賞と3歳春クラシックのトライアル競走には未勝利馬でも出走できるのである。ただ、フルゲート(弥生賞の場合16頭)になれば当然登録除外されてしまうし、3歳のトライアル競走ともなれば、普通は新馬戦、条件戦、OP戦と戦績を残して挑戦するものである。
しかし近年皐月賞トライアルはフルゲート割れする傾向にあり、2018年弥生賞もヘヴィータンクを含め10頭しか登録されていなかったため、未出走馬でも競走に参加出来てしまったのだ。
そして、皐月賞トライアルである弥生賞で3着以内に入れれば皐月賞の優先出走権が得られるが、収得賞金を持たない馬は皐月賞に出られない。しかし弥生賞は重賞であるので、2着までに入れば収得賞金が加算できる。つまり、ヘヴィータンクは2着に入れば皐月賞に出走でき、史上初の「初勝利がクラシック」という前代未聞の事件が発生偉業が達成される可能性が生じたのである。
「遅れてきた大物…なのか?!」
「ついにロイスアンドロイスの後継者が現れた!」
衝撃の2:23.9
結果から記す。ヘヴィータンクの走破時計は2:23.9であった。
このタイムが如何に凄まじいものであるかは競馬ファンならすぐに理解できる。あまり競馬に詳しくない人のために過去の名馬と比較すると
ディープインパクト 2:23.3 (無敗で三冠達成の名馬)
ドゥラメンテ 2:23.2 (ダービーレコード叩き出した名馬)
レイデオロ 2:26.9 (昨年のダービー馬)
なんと彼らに迫るタイムをデビュー戦で叩き出してしまったのだ!
彼らよりも400mも短いレースで…
ディープ達のタイムは2400mの日本ダービーでのタイムであり、弥生賞は2000mのレースである。
通常は勝ち時計は1着馬で2分前後、このレースでも1着ダノンプレミアムは2:01.0。ブービーの9着馬でも2:03.2である。そこから約124馬身離された最下位でヘヴィータンクはゆっくりとゴールした。
関連動画を見てもらえればわかるが、スタートから他馬に付いていくことができず、1コーナーで既に遥か後方へと遅れていった。テレビ中継では47秒間は彼の雄姿を確認できるが、その後はダノンプレミアムがゴールし、正面から映された場面で後ろでヨタヨタ走っている姿があった。彼がゴールした瞬間、中山競馬場からはため息と笑いと温かい拍手が沸き起こるという珍現象が見られた。
こうして競馬界に鮮烈な印象を残し華々しい(?)デビューを飾ったヘヴィータンク。その後の動向が注目されたが、2018年3月7日の報道で引退し、乗馬となることが決まった。その馬は僅か1度の戦いで伝説となった…。
あまり速く走れないヘヴィータンクなので乗馬向きかもしれない。彼の第二の馬生に幸あれ。
是非について
ただ、この出走については議論を巻き起こす事となった。重賞のレベルを落とす、森の小銭稼ぎ乙など否定的な声は出馬投票時から大きかったが。出走してもはや競走馬としての体裁すら整っていない姿を見せつけられ、更に批判は高まった。
しかし、重賞10着で獲得できる手当は未勝利戦を走ってドベ近くをさまよっていたならば獲得できる金額ではない。そう考えれば未勝利戦ですら勝利も賞金獲得も望めない馬で最大限の利益を馬主・調教師らに齎したといえる。
確かに制度を悪用した小銭稼ぎと言えるし、馬主も回収できたのは預託料分くらいと思われるのでここまでやっても購入代金を含めたらマイナスである。それでも小銭稼ぎすら出来ずに終わるよりはマシ、森調教師の決断は正しい部分もあったと言えなくもないだろうか。馬券買う方からしたら溜まったもんじゃないが。買うほうが悪いかもしれない。
ちなみに森調教師は昔からシーキングザパールでタイキシャトルを出し抜いて日本馬初欧州GⅠ勝利を収めたり、キングオブサンデーを中央未勝利のまま北海道三歳優駿(現JBC2歳優駿)に送り込み勝利していたりもする。
血統表
*クロフネ 1998 芦毛 |
*フレンチデピュティ 1992 栗毛 |
Deputy Minister | Vice Regent |
Mint Copy | |||
Mitterand | Hold Your Peace | ||
Laredo Lass | |||
*ブルーアヴェニュー 1990 芦毛 |
Classic Go Go | Pago Pago | |
Classic Perfection | |||
Eliza Blue | Icecapade | ||
*コレラ | |||
アイアムジュエル 2005 栗毛 FNo.4-g |
アグネスタキオン 1998 栗毛 |
*サンデーサイレンス | Halo |
Wishing Well | |||
アグネスフローラ | *ロイヤルスキー | ||
アグネスレディー | |||
フォルナリーナ 1996 鹿毛 |
Capote | Seattle Slew | |
Too Bald | |||
*プレイヤーホイール | Conquistador Cielo | ||
Halo Reply |
関連動画
関連コミュニティ
関連項目
- JRA
- 競馬
- 森秀行
- ジュネーブシンボリ(未出走で青葉賞に出走した先輩)
- ロイスアンドロイス(うっかり未勝利でクラシックに出そうになった先輩)
- スノーエンデバー(森厩舎の先輩、1997年のジャパンカップで同じような非難を受けた)
- 競走馬の一覧
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https://dic.nicovideo.jp/t/a/%E3%83%98%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%83%BC%E3%82%BF%E3%83%B3%E3%82%AF