ベッドタウンとは、東京、大阪、名古屋、福岡などの大都市圏に住む人たちに対する禁句…もとい、中心都市の近郊や鉄道沿線に位置する、主に住宅供給を担う衛星都市のこと。その規模は問わないが、当然大都市圏ほどベッドタウンとして発展した市町村も多くなる。
しかし、元々のベッドタウンは、衣食住に加え、勤務先と商業地が近接しているような、その都市一つで全てが完結するような衛星住宅都市が定義であり、イギリスのロンドン近郊が開発のモデルとなった。対して、日本の大半のベッドタウンは、ドミトリータウンという(アメリカの都市地理学ではこのドミトリータウンは良くない都市開発例として挙げているが、鉄道事情が全く違うのであまり当てにはならない)。
更に、海外ではラブホテル街のことを指すので、外人さんに対して、迂闊に使わないように。
概要
日本では戦後、東京、大阪、名古屋を中心に大企業や工場、商業地が集積し、そこで働く人の住宅供給のために、とりわけ住宅供給公社や電鉄系不動産会社などが主導となって宅地を造成していった。それに伴い、沿線の町村の人口が増えていき、都市化していった。そして、そのような都市をベッドタウンと呼ぶようになった(だいたいの説明)。
具体的な定義はないが、おしなべて昼間人口 < 夜間人口 であること、都市圏の中心地でないことの2つが挙げられる。したがってニュータウンの有無、鉄道駅の有無、工場の有無はあまり問題ではない。
ベッドタウンの例
ベッドタウンとして有名な都市としては以下のものがある。
- 北海道:江別市、石狩市、北広島市(札幌市)、北斗市(函館市)、釧路町(釧路市)、音更町(帯広市)、
- 青森県:階上町(八戸)
- 岩手県:滝沢市、雫石町
- 宮城県:名取市、多賀城市、利府町
- 秋田県
- 山形県
- 福島県:三春町、田村市(郡山)、伊達市(福島)
- 茨城県
常磐線:取手市、龍ケ崎市、土浦市、牛久市
TX:つくばみらい市、守谷市 - 栃木県:鹿沼市
- 群馬県
- 埼玉県
東武伊勢崎線:草加市、越谷市、春日部市
東北本線:川口市、戸田市、蕨市、さいたま市、上尾市
東武東上線:朝霞市、ふじみ野市、富士見市、川越市
西武池袋線:所沢市、狭山市、入間市 - 千葉県
総武本線:市川市、船橋市、習志野市、千葉市
京葉線:浦安市
京成線:八千代市、佐倉市
常磐線:松戸市、柏市
北総鉄道:我孫子市、流山市 - 東京都
中央本線:三鷹市、武蔵野市、小金井市、国立市、国分寺市、立川市、昭島市、八王子市
西武池袋線:西東京市、東久留米市
西武新宿線:小平市、東大和市
京王線:調布市、稲城市、多摩市
小田急線:狛江市、町田市 - 神奈川県
箱根方面を除く全市町村 - 新潟県(ベッドタウンらしき都市はほぼ全て新潟市に吸収合併)
- 富山県:
- 石川県:野々市市、津幡町、内灘町
- 福井県:坂井市
- 山梨県:上野原市(東京)、甲斐市、甲州市石和地区(甲府)
- 長野県:須坂市(長野)
- 岐阜県:多治見市(名古屋)
- 静岡県:(旧浜北市などが該当した)
- 愛知県(愛知県は刈谷市など本来の意味のベッドタウンも多い)
中央本線:春日井市
東海道本線:一宮市、安城市
武豊線:半田市
名鉄瀬戸線:瀬戸市
名鉄小牧線:小牧市
名鉄豊田線:日進市 - 三重県:桑名市(名古屋)、名張市(京阪神)
- 滋賀県:草津市、栗東市、大津市
- 京都府:亀岡市(京都)、宇治市、向日市、長岡京市、城陽市、八幡市
- 大阪府
阪急神戸線:豊中市
阪急京都線:吹田市、茨木市、高槻市
京阪本線:寝屋川市、枚方市、守口市
近鉄大阪線:東大阪市
近鉄大阪線:八尾市
近鉄南大阪線:松原市、羽曳野市
南海高野線:堺市、河内長野市
南海本線:岸和田市、泉佐野市 - 兵庫県
阪急神戸線:尼崎市、西宮市、芦屋市
阪急宝塚線:宝塚市、川西市
阪急伊丹線:伊丹市
福知山線:三田市
山陽本線:明石市、加古川市 - 奈良県:生駒市(大阪)、橿原市、大和郡山市
- 和歌山県:橋本市、岩出市
- 鳥取県
- 島根県
- 岡山県
- 広島県:廿日市市(広島)
- 山口県
- 徳島県
- 香川県
- 愛媛県:松前町
- 高知県
- 福岡県
鹿児島本線:宗像市、古賀市、中間市、太宰府市、筑紫野市、春日市、大野城市
筑肥線:糸島市 - 佐賀県:鳥栖市
- 長崎県:大村市、時津町、長与町
- 熊本県:益城町、大津町
- 大分県
- 宮崎県(旧清武町、旧佐土原町などが該当したが、宮崎市に吸収合併された)
- 鹿児島県:姶良市、日置市
- 沖縄県:浦添市、豊見城市
アイデンティティ
ベッドタウンという言い方はあまり好まれない。その裏側には「住宅以外何もない」という意味があり、言ってしまえば自然に恵まれた場所(何の取り柄もない田舎の市町村の常套句)と同義の煽り文句と捉えかねないからである(どっちも、それしか目立つものがないから)。政策面では、ある程度放っておいても過疎化に陥る心配はないが、結局、そこに住宅があるだけで、自治体そのものに愛着を持たれないことが多い。そのため、過疎地とは別の目的で、市民のアイデンティティを持ってもらおうと、イベントやキャラクター、ご当地グルメ、スポーツなどに力を入れていることも多くなっている。また、伝統的な地場産業や伝統工芸品、特産物などを見直すことも多くなっている。
イベント:平塚市→湘南ひらつか七夕まつり、高槻市→高槻ジャズストリート、廿日市市→けん玉世界選手権
尼崎市→落研選手権、新人お笑い尼崎大賞など(古くから尼崎は寄席が多く、落語、漫才が盛ん)
ご当地グルメ:厚木市→とん漬、加古川市→かつめし、龍ケ崎市→コロッケ、吉川市→なまず料理
地場産業:江別市→レンガ(古くはレンガ産地で遺構が残り、近年になってレンガのある町をPR)
:泉大津市→毛布は全国シェアの90%以上。毛布に因んだイベントも行われている。
:流山市→みりん。みりんを使った料理やスイーツなどを内外へPR。
特産物:船橋市、市川市、松戸市、鎌ケ谷市、白井市、蓮田市、久喜市→梨。柏原市→ぶどう。川西市→いちじく。
スポーツ:東大阪市→ラグビー。さいたま市→サッカー。川崎市→スポーツ全般
伝統的な祭り:滝沢市→チャグチャグ馬コ。
伝統的な工芸品:春日部市→羽子板。
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関連項目
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