ベンゼン(Benzene)とは、最も単純な芳香族炭化水素(炭素原子と水素原子のみからなり、芳香族性を有する化合物)である。[6]アヌレン([6]annulene)、ベンゾール(Benzol)とも。
概要
ベンゼンは、常温では無色透明の液体で、独特の臭いがある有機化合物の一種。
官能基としてはフェニル基と称される。
化学工業における基礎的な物質である。他に性質・構造が類似している化合物にトルエン、キシレンがあり、これらの頭文字を取ってBTXと総称されることもある。
熱力学では、ベンゼンとトルエンの溶液は共に、任意のモル分率でラウールの法則によく従う理想溶液として知られている。
ベンゼン環の構造式を表現する方法は数種類あり、その中でも六角形の中に二重結合と単結合を交互に書く「ケクレ構造式」と、六角形の中に正円を書く省略式のいずれかで描かれることが多い。
なお、ベンゼンには発がん性があり、造血機能障害による白血病を引き起こすなど、人体に有害な物質である。そのため、環境基準が設定されている。身近なところでは煙草の煙に含まれる。
かつてガソリンにもアンチノック剤として使われていたが、現在は有害性から低ベンゼンの製品が推進されている。日本で初めて低ベンゼン製品「出光スーパーゼアス」「出光ゼアス」を発売した出光興産と円谷プロのタイアップ作品「ウルトラマンゼアス」には、悪役として「ベンゼン星人」が登場している。
構造
ベンゼン環の平面六角形構造は特殊な化学結合で構成されている。右図は共鳴混成体を表現している。
電子(π電子)が非局在化していることや、各炭素間の結合距離が全て同一であること、結合長が単結合と二重結合のそれのおよそ中間にあること、各炭素間の結合エネルギーが単結合より強く二重結合より弱いことなどから、1.5重結合とも呼ばれている。炭素は平面上の正六角形の頂点に配置されており、各炭素はsp2混成軌道をとる。
また、単結合や二重結合が連続したものより安定性が高い。この安定性は芳香族性(Hückel則、分子が平面、環状のπ電子雲をもつ)に由来する。
反応性
ベンゼンはあらゆるベンゼン誘導体の原料になる。最も利用頻度の高い反応として芳香族求電子置換反応がある。なお、ベンゼンは安定なので、多くの場合触媒が必要となる。
また、芳香族求核置換反応や光付加反応も、ベンゼンの変換反応としては重要である。
誘導体
ベンゼンから誘導される化合物や、分子内にベンゼン環を含む化合物をいくつか例示する。
- トルエン - ベンゼンの水素原子1つを、メチル基(-CH3)に置き換えた構造。
- アニソール - ベンゼンの水素原子1つを、メトキシ基(-OCH3)に置き換えた構造。
- 安息香酸 - ベンゼンの水素原子1つを、カルボキシ基(-COOH)に置き換えた構造。
- スチレン - ベンゼンの水素原子1つを、ビニル基(-CH=CH2)に置き換えた構造。
- トルイジン - ベンゼンの水素原子2つを、それぞれメチル基(-CH3)、アミノ基(-NH2)に置き換えた構造。3種類の構造異性体がある。
- フェニルアラニン - アミノ酸。芳香族アミノ酸にはほかにチロシン、トリプトファンがある。
- アセチルサリチル酸(アスピリン) - 非ステロイド性抗炎症薬。バファリンの主成分。
- 2,4,6-トリニトロトルエン(TNT) - 爆薬。
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関連項目
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