ペプチドナイル(Peptide Nile)とは、2018年生まれの日本の競走馬である。鹿毛の牡馬。
主な勝ち鞍
2024年:フェブラリーステークス(GⅠ)
生産者は杵臼牧場、所有者は沼川一彦氏、管理調教師は武英智(栗東)。
砂漠の大河
父キングカメハメハ、母クイーンオリーブ、母父マンハッタンカフェという血統。父は変則二冠馬で、種牡馬入り後も非SS系のエースとして2010年、11年にリーディングサイアーとなるなど大活躍した馬。母は芝中距離戦線で準OPまで昇級した経歴を持つが、血統的には祖母*ソプラニーノの半兄に安田記念を勝った*ハートレイクがいるくらいで活躍馬は多くない。母父はSS産駒で名ステイヤーとして鳴らした馬で、キングカメハメハの先代リーディングサイアー(2009年)でもある。母父としてもテーオーケインズやタスティエーラを送り出し目下まずまず好調である。
馬名の意味は冠名+ナイル川。大きく雄大で世界的な名馬になってほしいという思いで付けられた。
3歳
デビューは遅れ3歳1月。富田暁を背に芝2000mの新馬戦に出走したが後方から流れ込むだけの8着。続く未勝利戦も早めに中団へ押し上げたが伸びずバテずの9着に敗れる。
ここで陣営はダートへ舵を切るとこれが大正解。中京1900mの未勝利戦で2番手から直線ただ1頭ぶっちぎり8馬身差の完勝で勝ち上がる。
その後しばらく休養し、11月に戦列へ復帰。相手に前走大差勝ちのスレイマンがおり2番人気となった。馬体重+20kgだったが成長分だったようで、逃げたスレイマンに4角手前で並びかけると叩き合う間もなくねじ伏せ4馬身差の楽勝。完璧な競馬で2連勝を決めると、返す刀で出走した2勝クラス戦鳥取特別は先行策から4角で押し込まれ進路を失う苦しい競馬ながら、直線半ばで外に空いたスペースに馬体をねじ込んで叩き合いに持ち込みハナ差勝利。新味を見せて3連勝で3歳を終える。
4歳
3勝クラスに昇格しての4歳初戦は3月の鈴鹿ステークスから始動。初めて逃げる競馬を敢行し直線半ばまでは先頭をキープしたが後方待機していた馬の切れ味に屈し3着。
続く横浜ステークスは1番人気になり、インの5番手から直線で抜け出す理想的な競馬をしたのだが、ダート初出走の黄色いメンコが外からえげつない末脚ですっ飛んでいき4馬身ちぎられての2着。その馬こそ、後に「逆追い切り詐欺師」「やる気のないチョコボ」としてダート界を席巻するウシュバテソーロだった。…相手が悪い。
その後半年休養して出走した白川郷Sは10着と大敗してしまったが、中2週で出走した赤富士Sは2番手から抜け出す自分の競馬を取り戻し快勝。ようやくOPに昇格する。
OP初戦のカノープスSはまたしてもウシュバテソーロに直撃してしまい、全く歯が立たず6着の完敗。これで4歳シーズンを終える。
5歳
5歳初戦のアルデバランSは6番手から外目を回って上がろうとしたが内で巧く立ち回った2頭に追いつけず、連れて上がった馬との叩き合いにも敗れ4着。続くブリリアントSは押し出されるように逃げたら外差しレースになってしまい潰れて6着と噛み合わないレースが続いた。
一呼吸おいて北海道へ遠征し大沼Sへ出走。ここで番手から抜け出してちぎる強い時のペプチドナイルが戻り、直線突き放して3馬身差の快勝。OP初勝利を挙げると、同条件のマリーンSも悠々と逃げ切り連勝。これで初重賞出走のエルムS(GⅢ)は1番人気になったのだが、不良馬場の影響か家賃が高かっただけか、先行策から早々と潰れブービー13着の大惨敗を喫してしまった。
3ヶ月ほど休養し京都に戻ってのみやこS(GⅢ)では再び逃げを打ち、直線半ばまで粘ったのだが最後に力尽きて4着。2年連続出走のカノープスSはその粘りもなく7着と苦しい競馬が続いた。
阪神に回り年内最終戦のベテルギウスSでは藤岡佑介と初コンビ。ここでは控える競馬に戻し、道中外から被せられながらも直線で馬の間を力強く抜け出し素質馬ハピをきっちりかわして勝利を収める。
6歳
勢いに乗った6歳初戦は東海ステークス(GⅡ)。3番人気に支持されたが、スローの番手でインにも入れられない位置取りになってしまい、最後に甘くなって6着と厳しい結果に終わる。
次走は初GⅠ出走となるフェブラリーステークス(GⅠ)。前年ダート王者レモンポップとドバイWC馬ウシュバテソーロはサウジ遠征で不在であり、当初除外対象だった東海S2着のオメガギネスが他馬の回避で滑り込んで1番人気、GⅠ連続2着のウィルソンテソーロが2番人気、流浪の果てにダートで結果を残しはじめたドゥラエレーデが3番人気という混沌とした情勢。ペプチドナイルは11番人気の低評価だったが、それでも単勝38.0倍という割れまくりのオッズとなっていた。
5枠9番からゲートをポンと出たペプチドナイル。3戦連続のコンビとなる藤岡佑介は出たなりの4番手に位置取り、人気のウィルソンテソーロを見るように進める。直後にドゥラエレーデとオメガギネスも控え人気馬はやや前掛かり。前は巨漢ドンフランキーと兵庫の雄イグナイターの短距離勢2頭が強気に飛ばし、最初の3ハロンが33秒9というハイペースになっていた。
そのまま馬なりに外を回って4番手で直線を向いたペプチドナイル。鞍上の藤岡佑介は少しずつ追い出して前に並びかけ、残り300mを切ってウィルソンテソーロをかわしたあたりからゴーサインを出す。
これに応えて一気に逃げたドンフランキーをとらえ先頭に躍り出たペプチドナイル。
ほぼ短距離のペースで進行していたせいか、中距離路線の経験によるスタミナを活かしたペプチドナイルを除き先行した馬たちは完全に失速してしまい、入れ替わるように差し馬が内外から殺到してきたが早めにセーフティーリードを確保していたペプチドナイルはこれを難なく振り切り、1馬身1/4差をつける低人気とは思えぬ王道の競馬を見せてゴールに飛び込んだ。
初GⅠどころか初重賞勝利、単勝11番人気の大金星。2着に5番人気のガイアフォース、そして接戦の3着には13番人気のセキフウが滑り込んだことで、3連単153万500円という大荒れの決着となった。
フェブラリーSの3連単高額配当としては、あのコパノリッキーがシンガリ人気で制した2014年の配当94万9120円を大きく上回り歴代最高額である。なお3連複も19万7060円と、2020年のモズアスコットが制した同レースを上回っている。
調教師の武英智、馬主の沼川一彦氏は嬉しいGⅠ初勝利。鞍上藤岡佑介は2018年のNHKマイルカップをケイアイノーテックで勝利して以来6年ぶりのJRA・GⅠ2勝目。生産者である杵臼牧場は2001年天皇賞(春)をテイエムオペラオーが勝利して以来実に23年ぶりのGⅠ8勝目となった(もちろん前7勝はオペラオー)。
横浜ステークスでのウシュバテソーロとの遭遇から2年、OP番長を卒業し一気にGⅠ馬まで上り詰めたペプチドナイル。次走は引き続きマイル路線を進み、船橋のかしわ記念(JpnⅠ)へと向かった。鞍上はこちらも引き続いて藤岡佑介。
ただ、この年のかしわ記念は2日ほど前からやって来た大型低気圧の影響で前日から大雨が降りしきり、船橋の砂は水を吸ってもはや泥としか表現できないほどの状態であった。勿論、馬場状態は不良。
ペプチドナイルは前走GⅠを勝利していたものの、過去に同じく不良馬場で行われたエルムSの13着惨敗を気にする声や「そもそもフェブラリーSは展開が向いただけのフロック」と言う声もあり、1番人気にはフェブラリーSでは負かしたものの岩田望来から「マジックマン」モレイラとのJBCクラシックを制して以来のコンビとなったキングズソードが単勝3.3倍の支持を集め、続く2番人気に東海Sで自身を負かしたウィリアムバローズが差のない3.6倍の支持を受ける中、ペプチドナイルはそれらと少し離れた単勝5.4倍の3番人気であった。
依然大雨が降る中でレースはスタート。
シャマルがハナを主張する展開の中でペプチドナイルは2番手につける。最終コーナーで外に馬体を併せてきたキングズソードを直線半ばで振り払うも、逃げたシャマルは捕らえきれず、最後追い込んできたタガノビューティーには差し切られたものの3着を確保した。
負けはしたが、惨敗経験のある不良馬場で好走した事に関して評価する声があった一方、1コーナーでのポジション争いに関して鞍上の藤岡が戒告を受ける一幕もあった。
かしわ記念後は休養し、次走に選択したのは盛岡のマイルチャンピオンシップ南部杯(JpnⅠ)。
ここで遂に、当時GⅠ級レース4勝の現役最強ダートマイラー レモンポップと初めて激突することになる。
昨年このレースを大差で勝利したこともあり1.1倍の圧倒的支持を受けるレモンポップの傍ら、なんだかんだペプチドナイルは4.8倍の2番人気に支持される。
レースは1枠1番を活かして抜群のスタートを決めたレモンポップがハナを主張し、それをペプチドナイルがピッタリ横に併せてマークする展開となった。楽逃げは許さないとばかりに必死に馬体を併せるペプチドナイルを横目に、レモンポップの脚色も緩むことなく進行する。
最終コーナーに入ってもペプチドナイルの果敢なマークは続き、付いていこうとする三番手以下を完全に置き去りにして新旧フェブラリーS馬の勝負は最終直線に持ち越された。
両者が直線を向いた瞬間、先に仕掛けたのはレモンポップだった。外側に居たペプチドナイルがコーナーで膨らんだ一瞬のロスの隙を突き、徹底的なマークから逃れてそのまま先頭に立つ。
しかしペプチドナイルも負けてはいない。抜け出そうとするレモンポップに対し、鞍上の藤岡佑介が渾身の右鞭をペプチドナイルに振う。ペプチドナイルもそれに応えて末脚を発揮し、もう一度レモンポップに馬体を併せるように追いすがる。
レモンポップ鞍上の坂井瑠星も、追い上げてくるペプチドナイルに対し手綱で促すだけでは厳しいと判断したか鞭を使って応戦する。
全く同じ36.6の上がりで盛岡の最終直線をファンの大声援を受けながら駆け抜ける二頭。
最後はレモンポップが3/4馬身差でペプチドナイルの猛追を凌ぎ切り、南部杯連覇でゴールイン。
ペプチドナイルは惜しくも2着に敗れたが、あのレモンポップにマイル戦であと一歩のところまで迫ったこと、3着とは5馬身差離れての入線だったことで改めてGⅠ馬としての意地と格を見せつけた。
鞍上の藤岡佑介は悔しさを見せながらも勝利したレモンポップを称え「どこかで逆転したい。」と、レモンポップとの再戦に意欲的な姿勢を見せた。
レモンポップに騎乗していた坂井瑠星はレースを振り返り「4コーナーで引き離しにかかったが、離せなくて苦しいレースになった。何とかしのいでくれと。危なかった。ひやひやしました。無事に勝って良かった。」と語った。
次走は自身の中央ダートGⅠ完全制覇を目指して中京のチャンピオンズカップ(GⅠ)に狙いを定めた。
ただ、中央ダートGⅠ完全制覇以外にも陣営は気にかけていることがあった。それはこのレースがレモンポップにリベンジするラストチャンスだったからである。
南部杯勝利後、このチャンピオンズカップを最後に現役引退を表明したレモンポップ。それを降す正真正銘最後の機会であり、鞍上の藤岡佑介も共同会見の場で「何とかもう一度戦いたいという気持ちでしたので、楽しみにしています。」と、強力なライバルのラストランに対する意気込みを語った。
1番人気は2.2倍と若干不安視されながらも変わらぬ支持を受けて有終の美と連覇達成に臨む王者レモンポップ。2番人気には前走でJBCクラシックを勝利し、GⅠ馬としてレモンポップに再戦を挑む去年の2着馬ウィルソンテソーロ。そしてペプチドナイルは中距離路線時代のスタミナを買われ、二頭に次ぐ6.8倍の3番人気に支持された。
レースでは相変わらず先頭で逃げるレモンポップを三番手で見るような格好となった。
向こう正面からじりじりと先頭に迫り、最終直線を向いた時には南部杯と同じように外からレモンポップに馬体を併せようと強襲する。集団の中でレモンポップに最初に食らいついてきたのはペプチドナイルだった。
しかしレモンポップの末脚は衰えるどころか、そこから更に加速。ペプチドナイルはあっという間に置き去りにされてしまう。
最速の上がりで外から襲い掛かったウィルソンテソーロからもレモンポップはハナ差で逃げ粘り、有終の美を飾った。ペプチドナイルは直線で脚が鈍るも5着だったが、リベンジ達成とはならなかった。
7歳
年が明けて2025年。ペプチドナイルは7歳でも現役続行を宣言し、7歳初戦を連覇がかかるフェブラリーステークス(GⅠ)に定めた。
4歳や5歳といった新興勢力が人気を集める中、前年覇者ペプチドナイルは割れた6.2倍の4番人気となった。
レースでは近走と異なり中団の位置取りになり、若干囲まれるような形になる苦しい展開となった。
最終直線では運よく外が空いた隙を突いて末脚を発揮。その外からやって来たミッキーファイトと追い比べるような形になり、抜け出したコスタノヴァらに追いすがるも最後の最後にミッキーファイトにかわされ惜しくも4着となった。
その後はドバイのゴドルフィンマイル(GⅡ)に挑戦。初の海外挑戦で期待されていたが精彩を欠き、カズペトシーンが追い込んで3着に善戦する中で11着と久々の大敗。
無事に帰国したが、現在次走は未定となっている。
現状フェブラリーS以降の勝ちは無いものの、挑戦したGⅠでは必ず掲示板に入る安定した成績を収めているペプチドナイル。
人気薄での激走ではなく、王者としての走りで二冠目を掴むところを期待したい。
血統表
| キングカメハメハ 2001 鹿毛 |
Kingmambo 1990 鹿毛 |
Mr. Prospector | Raise a Native |
| Gold Digger | |||
| Miesque | Nureyev | ||
| Pasadoble | |||
| *マンファス 1991 黒鹿毛 |
*ラストタイクーン | *トライマイベスト | |
| Mill Princess | |||
| Pilot Bird | Blakeney | ||
| The Dancer | |||
| クイーンオリーブ 2008 青鹿毛 FNo.16 |
マンハッタンカフェ 1998 青鹿毛 |
*サンデーサイレンス | Halo |
| Wishing Well | |||
| *サトルチェンジ | Law Society | ||
| Santa Luciana | |||
| オリーブブランチ 2002 鹿毛 |
Machiavellian | Mr. Prospector | |
| Coup de Folie | |||
| *ソプラニーノ | Theatrical | ||
| My Darling One | |||
| 競走馬の4代血統表 | |||
クロス:Mr. Prospector 3×4(18.75%)、Halo 4×5(9.38%)、Nureyev 4×5(9.38%)、Northern Dancer 5×5(6.25%)
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