ホワイトベースとは、アニメ「機動戦士ガンダム」に登場する架空の艦艇。ペガサス級強襲揚陸艦の2番艦とされ、艦籍番号はSCV-70またはLMSD-71。
概要
地球連邦軍所属艦。主人公であるアムロ・レイらの乗艦であり、ガンダムの母艦である。また、彼らモビルスーツ(MS)隊または乗組員を指してホワイトベース隊と呼ぶ(正規軍に組み込まれた後の正式な部隊名は第13独立部隊)。
敵であったジオン軍からはその外観から「木馬」のコードネームで呼ばれていた。連邦にとってはガンダムと共に勝利の象徴であり、逆にジオンからは畏怖すべき連邦の兵器の一つであったと言える。
艦種について
近年のムックなどでは「強襲揚陸艦」とされることが多いが、初期の資料集や作中人物の発言では「宇宙空母」であったり「宇宙戦艦」であったりとマチマチである。
ただ、一年戦争において「宇宙空母」と言うとジオンのドロス級を指し、こちらはMSを182機も搭載できるため、ホワイトベースをそのカウンターパートと呼ぶには無理がある。
「宇宙戦艦」もカイの「ホワイトベースは船っつっても、宇宙戦艦てほうだからな」という劇中での台詞が論拠であり、正式な分類と言う訳ではない。
現実の「強襲揚陸艦」とは揚陸作戦に必要な装備(輸送ヘリやエア・クッション揚陸艇)を搭載し、全通飛行甲板を装備した艦艇を指すが、ホワイトベースがこれに当てはまるかは難しい。
また、作中ではほぼ常時単艦で行動し、陸上兵員を載せることもなくMS戦を展開しているため「強襲揚陸艦」としての運用はなされなかった。
ただし、艦種と実際の運用が一致しない例は現実でも多数あり(日本海軍の「日進」「瑞穂」「津軽」など)一概に誤りとは言い切れない。
総監督の富野由悠季氏は、連邦は初期の敗勢からとにかく単艦での運用を重視した艦艇を作った、と解説している。このことからも、既存の艦種に当てはめること自体に無理があり、似た艦種を充てたとも推測できる。
性能について
全長・全幅・重量・全高などのサイズは諸説あるため一概には言えない。その内の一説である全長262メートル、重量68000トンは戦艦大和とほぼ同一であり、イメージとしてこちらで説明するムックやサイトも多い。また、全長については概ね250メートル説が有力であるが、重量は32000トン説もあり相当な幅がある。
もっとも、実際の艦艇も装備・燃料・人員で排水量が変化するため複数の基準があり、即矛盾とは言い切れない。
推力は熱核エンジンであり、左右両舷(いわゆる後脚)に各1基ずつを備える。これは大気圏内では熱核ジェット、大気圏外では熱核ロケットとして機能するハイブリッドエンジン。
ミノフスキー・クラフト(ミノフスキー粒子の斥力を応用した推進装置)を初めて装備した艦艇でもあり、およそ空力的に飛びそうには見えない形状をしているが、大気圏内での浮上・航行、ひいては単独での大気圏離脱が可能である。一説には大気圏内での超音速航行も可能とされるが、エンジンの不調からかソニックブームによる地上への悪影響を懸念してか、その様な描写は存在しない。
主砲は火薬式の52センチ砲であり、これは歴史上で見られた艦載砲と比較しても最大級の口径である(戦艦大和が46センチ)。ただし、反動がすさまじく搭載は連装一基のみであり、他の火砲の使用も制限されてしまうため使い勝手が悪かったらしい。
また、連装メガ粒子砲も両舷に二基装備されている。基本的に宇宙世紀の艦艇では実体弾による主砲は少数派であるため、解説によってはむしろこちらが主砲とされることもある。
近接防御としてはミサイルランチャー32基、連装機関砲18基(36門)を装備している。これは少数であるとする説があるが、既存の連邦・ジオンの艦艇の中では多い方である。ただ、いずれにせよ単艦で有力な弾幕を張ることは難しく、防御は搭載のMSに頼らざるを得ないのが実情であったらしい。
電子装備については『ミノフスキー粒子により簡略化が進み有視界戦闘を重視している』と解説する向きもあるが、後述するように設計と起工は一年戦争前であるとする説もあり、必ずしも意識されていた訳ではない。そもそもミノフスキー粒子の設定そのものが後付けであるため、それ相応のレーダーや通信機器を有していることが確認できる(もっとも、設定が本格化したあとの作品でも電子装備を軽視した艦艇は少数だが)。
また、ホワイトベースがミノフスキー粒子を散布する描写は存在しないが、ゲームなどでは両舷から散布する設定が存在する。
搭載MSについては6機から15機までと諸説ある。いずれにせよ、連邦にとってはMS搭載能力を付与された初の艦艇であり、設計から運用までのひな形になった模様である。
カタパルトは左右両舷に各1基。これは格納庫と合わせて“木馬の前脚”を思わせるもので、外観の特徴ともなっている。
また、前部のカタパルトと比べると印象が薄いが、後部にもハッチが存在するほか、左右の格納庫に挟まれた部分、船体中央部にも第三格納庫が存在する。
開発経緯
V作戦によるものとする説と、以前から開発が進められてきたセイバーフィッシュ(連邦軍の宇宙戦闘艇)を搭載する宇宙空母をMS用に転用したものとする説(MSV)がある。考証的にはこのような大型艦が数か月で完成するとは考えにくいため後者が妥当とも思える。
ちなみに、MSVの設定では起工は0078年2月。完成は0079年9月である。また、この説を取ると最初からMS搭載を前提として設計された艦艇は連邦ではZガンダム時代(アレキサンドリア)にまで繰り上がることとなる。
ホワイトベースはペガサス級と呼ばれるように、ネームシップではない。これは一番艦であったペガサスがエンジンの設計不良で大幅な設計変更を余儀なくされ、逆にまだ起工間もないホワイトベースは一連の諸問題をフィードバックでき先に完成したためである。
戦歴
9月1日ジャブローにおいて竣工。艦長はパオロ・カシアス。15日に試験航行とMS受領のために宇宙に向け出港。しかし、宇宙ではジオンが優勢であり追尾を振り切ることができず、18日にそのまま新型MSのテストが行われていた目的地であるサイド7へ入港。偵察任務に当たっていたジオンのパイロット、ジーンの暴走により攻撃を受け大半のMSは破壊され乗組員も戦死する。
しかし、偶然に現場に居合わせていたアムロ・レイ(テム・レイの息子)がRX-78ガンダムに乗り込み応戦。圧倒的な性能差もあり、この戦いに勝利する(宇宙世紀初のMS戦)。
避難民とMSを収容したのち、直ちに連邦軍の基地があったルナツーへ出港。この間にも数機のザクとパプア級補給艦一艘を撃沈する戦果を挙げている。度重なるジオン軍少佐、シャア・アズナブルの攻撃を受け艦長のパオロは戦死。
艦長代理を務めていたブライト・ノアが指揮を引き継ぎ、現地司令官であったワッケインの指示により地球・ジャブローへと進路を取る(随伴艦はサラミス級巡洋艦「マダガスカル」)。
23日大気圏突入作戦を行うが、シャア・アズナブルの策略によりジオン勢力圏下の北米に降下。エンジンの不調と戦力不足から南下を諦め西進する。
10月4日、功を焦っていたジオン軍の現地司令官ガルマ・ザビの攻撃を受けるもこれを跳ね返し逆に殲滅。ガルマ・ザビは戦死する。
10日には連邦軍の一大反攻作戦であるオデッサ作戦への参加が下令され中央アジアを横断。
11月5日にはガルマ・ザビの後を継いで(と言うより敵討ちのため)派遣されていたランバ・ラルが戦死。残党も壊滅させる。
9日の黒い三連星の攻撃も撃退。作品によってはそのままオデッサ作戦に参加し、マ・クベが放った水爆ミサイルを撃墜する戦果も挙げている。
18日、連邦軍の基地があったベルファストに入港。ジオン軍の潜水部隊、フラナガン隊の水陸両用MSによる攻撃を受けるもこれを撃退。21日に出港し、27日大西洋を渡ってジャブローへ入港する。
30日シャア・アズナブルらマッドアングラー隊によるジャブロー攻略作戦が開始される。これも撃退に成功し、乗組員らは工作員が仕掛けた爆弾の撤去に成功している。
その後、補給と改修を受け人員も正規軍人に採用。スレッガー・ロウを補充人員として搭乗させたのち、12月2日にジャブローを出港。宇宙でのジオン軍の戦力分散を誘う囮となるために再び宇宙へと向かう。
4日、ジオン軍のパトロール隊であったキャンメル隊を撃滅。サイド6に入港。
5日、出港しドズル・ザビ中将旗下のコンスコン隊を壊滅させる。
サイド5近辺でワッケインらの第三艦隊と合流。24日のソロモン攻略作戦に参加し、ドズル・ザビ中将のビグ・ザムを撃破。要塞は陥落し、中将も戦死する。
30日、ア・バオア・クーを迂回していたレビル艦隊がジオン軍のコロニーレーザーにより壊滅。連邦軍は迂回を断念し、ア・バオア・クー攻略を決定。ホワイトベースもこれに参加する。
31日、左舷エンジンに直撃を受けア・バオア・クーに着底。右舷エンジンもリック・ドムに破壊されてしまい孤立無援となったホワイト・ベース周辺で乗組員による激しい白兵戦が展開される。
しかし、ニュータイプ能力に目覚めたアムロ・レイの誘導によりほぼ全員がランチにより脱出。全員が見守る中でついに大爆発を起こして喪失。戦後直ちに除籍された。艦歴はわずか四か月だった。
ジャブローでのすり替え説
ジャブロー入港以前と以後で主砲の形状などの艤装がやや異なっていると言う指摘があり、一時期ジャブロー入港後にホワイトベース隊は別のペガサス級強襲揚陸艦に乗り換えたのではないかとする説があった。
ただし、現在ではSCVA-74またはLMSD-77(スタリオンとも)と呼ばれた建艦途中の姉妹艦から部品取りして修繕したためとする説が有力。なお、このスタリオンはホワイトベースがジャブローのドックに入渠した際、隣に存在した艦艇とする説もある。
搭載機
搭乗員
歴代艦長
パイロット
ブリッジ
姉妹艦
- ペガサス (SCV-69またはLMSD-70)
- 上記のようにネームシップであるが、竣工はホワイトベースの方が早かったためV作戦には投入されなかった。
- ちなみに小説版ではアムロ達が最初に乗る艦はペガサス級2番艦ホワイトベースではなく、ホワイトベース級1番艦ペガサス。
- ペガサスジュニア (ペガサスJと表記されることも)
- 小説版「機動戦士ガンダム」に登場。作中での扱いはホワイトベース級2番艦であり、TV版とは異なる。
- ホワイトベースⅡ (SCV-71またはLMSD-72)
- 「MSV」と漫画「機動戦士ガンダム C.D.A. 若き彗星の肖像」に登場。
- トロイホース (SCV-72またはLSMD-73)
- グレイファントムと混同されることもあるが別である。戦没?
- ブランリヴァル (SCV-73またはLSMD-74)
- 劇場アトラクション「GUNDAM THE RIDE」とゲーム「ジオニックフロント 機動戦士ガンダム0079」に登場。ジャブロー戦、ア・バオア・クー戦に参戦。
- サラブレッド (SCVA-72またはLSMD-75)
- ゲーム「機動戦士ガンダム外伝 宇宙、閃光の果てに…」「機動戦士ガンダム戦記」に登場。宇宙での隠密行動を前提としたグレーの塗装が特徴。
- グラナダへの和平交渉に向かうジオン首相ダルシア・バハロの護衛など、特殊作戦に従事した。
- グレイファントム (SCVA-73またはLSMD-76)
- OVA「機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争」「機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY」に登場。戦時中はスカーレット隊をサイド6に侵入させた。0083年のデラーズ紛争においてアナベル・ガトーによるGP02Aによる核攻撃に巻き込まれ戦没。
- 「機動戦士ガンダムUC」ではグレイファントムと見られるシルエットの残骸がジオン残党の根城として利用されていたが、ソロモンで戦没したグレイファントムが地球に(根城に使える様な状態で)そのまま落着したとは考えにくいため、サラブレッドかスタリオンもしくはまだ設定されていない同型艦(の残骸)という可能性も考えられる。
- スタリオン (SCVA-74またはLSMD-77)
- 上記のホワイトベースによるジャブロー入渠時に部品取りが行われ、竣工することなく放棄されたと言う説がある。
- アルビオン (SCVA-75またはLSMD-78)
- OVA「機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY」に登場。作中では7番艦とされるが、9番艦説がある。戦没したホワイトベースとトロイホースを除いて7番艦とも。
- 主砲、機銃など実体弾であったそれまでの搭載砲が全てレーザーになっていることが特徴。また、全長も305メートルでありホワイトベースより一回りほど大きい。
竣工順はアニメやゲームまたはプラモデル企画により諸説あり、もはや矛盾なく解説することは不可能である。wikipediaなどでも矛盾した解説が散見される。また、サラブレッドを四番艦とし、これ以降をサラブレッド級または改ペガサス級とする説もある。
後継艦
0083年のデラーズ紛争までは第一線で活躍していたペガサス級だが、連邦上層部は兵器としてはあまり評価はせず主力とはなりえなかった。一説にはバーミンガムに見られるように大艦巨砲主義に回帰したとも、MS搭載艦はサラミス級巡洋艦の改装で事足りたためとも言われるが定かではない。
エリート部隊であったティターンズの主力艦もアレキサンドリア(サラミスとムサイの後継)とドゴス・ギア(バーミンガムにMS運用能力を付与した艦)であり、ペガサス級の影響は見られない。これは宇宙移民の弾圧を標ぼうし、その戦勝にあやかるべくガンダムの名を冠した機体(ガンダムMK-Ⅱ)を開発した経緯から考えると不思議な点ではある。
……が、当時の連邦政府がニュータイプという存在そのものを警戒していたことを踏まえ、そのことからペガサス級は主流たりえなかったとする向きもある。これは『ニュータイプ部隊とも呼ばれ、神懸かり的な活躍を見せたホワイトベースは、ジオンに対する脅威である以上にニュータイプ(つまりは宇宙に適合した人類=スペースノイド)という存在の象徴とも言うことができる。
そしてそれ故に、ティターンズの台頭に見られるように地球至上主義の機運が強まる連邦連邦軍において、ペガサス級は次第に鬼子のように扱われるようになった』とする説。
現実的な理由として、空母的運用のMS搭載能力と戦艦としての艦単体の攻撃力を両立するにはホワイトベース(を含めたペガサス級)では中途半端に小さすぎ、かつ建造コストがサラミスやマゼラン級の比較的シンプルなブロック構造の船体と比較して極端に高く予算が取れなかったというのもある。
事実ホワイトベース→アーガマ→ネェル・アーガマ→ラー・カイラムで船体が実に約500mと倍近くになるが、これはMSの大型化を抜きにしても面制圧するには戦力ローテーションを含めて最低9~10機のMSが必要でこれを運用できる母艦の大きさとして算出されるのが最低アーガマ・アレキサンドリア級でないと難しいとの判断によるとされる(ホワイトベースの艦載機数の一説の16機はおそらくセイバーフィッシュ等の宇宙戦闘機によるものであり、上下に高くかつ幅広のMSでは艦載するための容積で全く足りない計算になる)
再評価はエゥーゴの登場からであり、アーガマはペガサス(もちろんホワイトベース)の直系とされる。その系譜はネェル・アーガマを経てラー・カイラムに受け継がれ、こちらは0153年のザンスカール紛争まで現役であったことが確認できる。
その他よもやま
- 性能の項でも述べたように、戦艦大和ひいては宇宙戦艦ヤマトを意識している節がある。原作者である富野監督はヤマト制作現場においてプロデューサーである西崎義展氏と対立し干された経緯があるため、インタビューでもホワイトベースが性能的に上であることを(ネタもあるが)強調している。
- 一方、トリコロールの塗装や形状などでリアリティが出せなかったことを悔やむ発言もしている。
- ただ、富野監督も必ずしも運用についてはリアリティを重視していた訳ではなく、第五話でSF考証の松崎健一氏に無断で大気圏航行を実行した。皮肉なことにこの無茶がミノフスキー粒子設定の端緒となる(詳しくはミノフスキー粒子を参照)。
- ジオン軍の兵士はホワイトベースを「木馬」のコードネームで呼んでいた。これはそれまでのロボットモノのお約束である「情報が与えられた形跡もないのに敵がこちらの新兵器の名前を知っている」を打ち破るものであり、非常に画期的であった。ガンダムも同様に「連邦の新型」「白いヤツ」である。
- 本来は「ガンダム」の前に放映されていた「無敵鋼人ダイターン3」に登場する予定で、変形機能を備えていた。
その名残か、当時発売されたホワイトベースの玩具には変形するものがある。
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関連項目
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