ボランティア(volunteer)とは、他の個人や組織に役に立つために自発的に行う、(主に)無償の奉仕活動、または活動を行う人のこと。
比喩的に、無償や労働力をやりがい搾取されているタダ働き状態を指す場合もある。
(ブラックバイト・ブラック企業におけるサービス残業など)
概要
語源と意味
現代の日本において、「ボランティア」という単語はほとんど「無償の(報酬のない)奉仕活動」の意味で使われる。
もとは、ラテン語のvoluntarius(自発的な)および中期フランス語のvoluntaireからきており、軍事的な文脈で使用されていた。
現在でも英語のvolunteerには志願兵の意味があり、志願制度のことを"Volunteer military"という。この際の兵士は無償では働いておらず、通常の給料が与えられている。
つまり、元々の単語の意味合いをたどると無償労働の意味は含まないが、自ら志願するという意味は含まれていることになる。
もちろん強制参加させられているものはボランティアではない。
報酬
時給・月収のような金額の報酬が支払われるものはボランティアと呼ばれない。
イベント行事のボランティアによっては
活動中の給水支援であったり、終了後に記念品や缶ジュース程度が貰えることも。
開催中のイベント内で使用できる無料引換券が少しだけ貰える場合もある。
終了後の記念撮影などが新聞・テレビ・公式サイトに載る場合もあったり
仲間との良い思い出になるのもひとつの報酬かもしれない。
歴史
キリスト教の教義では他人への奉仕、隣人愛が重要な理念の一つとなっている。また、欧米には「ノブレス・オブリージュ」という観念があり、社会的地位のある者、経済的に富む者は奉仕や慈善活動をする義務がある、という考え方が根強い。ただし、「右手のやることを左手に知らせてはならぬ」というマタイ福音書6章4節の教えがある。良い行いは隠れてやるものであり、他の人の益のために行っているかのように見せかけて実際は自分への評価を上げる目的で行われる偽善行為は問題かもしれない。
1844年に、イギリスのジョージ・ウイリアムズらによってYMCA(キリスト教青年会)が設立された。この組織はボランティア活動や生涯教育活動の草分けとされている。
1863年にはスイス人実業家アンリ・デュナンの提唱により赤十字社が設立された。この組織は、戦争や大規模災害が発生した際に中立的な立場で人道的支援を行う国際団体である。
20世紀に入ると、国際ロータリー、キワニス・インターナショナル、ライオンズクラブなど、多くの社会奉仕団体が設立された。
日本では、1965年にODA事業の一環として青年海外協力隊が発足した。こちらは生活費が支給される有償ボランティア事業である。
1995年に阪神淡路大震災が発生した際には100万人以上のボランティアが活動を行い、ボランティア元年と呼ばれた。1月17日は「防災とボランティアの日」となっている。その後、1998年に特定非営利活動促進法が制定され、現在では40000団体以上のNPO法人が活動を行っている。こちらも、広義のボランティア活動と捉えられる。
2011年に東日本大震災が発生し、地震、台風などの自然災害時のボランティアの重要性が見直されている。2019年時点でも被災地支援のボランティアが不足していることが度々指摘されている。
意義
日常的に自治会、町内会で地域の清掃活動を行うこともボランティアに含まれる。こちらは地域のコミュニティを活性化させる効果もある。
若者にとっては自身のスキルアップのための自己啓発の側面も持っている。また、大学入試や就職活動でのアピール材料とするために行われる、ある意味で利己的な活動としての側面も持っている。
高齢者にとっては定年後の自身の社会参加のための場所として、高齢化社会の日本でますます注目が高まっている。
あくまで自発的な意志に基づいて行うものがボランティアであるが、2020年の東京オリンピックにおいては、組織委員会がボランティア学生の確保に苦戦するなか、「中高生枠」として都内の学校に強制参加を求められることが判明し、議論となっている。
また、近代オリンピックは1984年のロサンゼルス五輪を機に商業主義が拡大する中、ボランティアの名目で人員を募集することそのものの正当性についても問われている。
ニコニコボランティア
東日本大震災の復興支援の一環として、2011年4月27日には、ボランティア募集情報を集めた「ニコニコボランティア」がニコニコ動画内に開設されていた。(現在はリンク切れ)
ボランティアとは少し異なるが…
容易に製作が不可能で、高額で販売しても申し分ないソフトウェアなどを開発し
無償で配布している方には「才能の無駄遣い」「技術の無駄遣い」など
称賛(?)が困惑交じりで送られる場合がある。
問題
災害・緊急時
災害が起きた際など
ボランティアの支援があれば、被災者等は非常に助かり、心強い。
…のだが
- 災害が起きたからと闇雲に被災地に飛び込めば、渋滞や二次災害を起こしかねない。
- 公共交通機関を使うにも、被災地への鉄道や交通網自体が停止している場合もある。
- 断水・停電・品不足といったインフラが破壊されていた場合も想定しなくてはいけない。
- 真夏や真冬など、熱中症や低体温症になる可能性も考慮する。
- 携帯・スマホがまともに使えない可能性もある。
- 車両や機材が故障しても、すぐに適切な支援が受けられるとは限らない。
…など、様々な事態も想定しなくてはいけない。
現地では大好きなスマホでSNSやネトゲができないかもしれないし、
ボランティアには水や食料、手を洗うための水といったものまで用意しなくてはならない。
事前にどこの交通経路が寸断されているのか、無事であった道路は渋滞していないか調べる必要もある。
「ここが通れるらしいですよ」と根拠ないデマ拡散が飛び交う場合もあるため要注意。
※通れたとしても、片側通行だったり最高速度が制限されているなど。
(→災害)
都合の良い労働力として
災害とは異なり、イベント行事で募集・招集されるボランティア。
もちろん、自発的にイベントの運営や作業に参加し
より一層盛り上げていくのは全く問題ない。
最も悪質な事例は「善意を悪用して、本来支払うべき報酬を支払わない」状態である。
2020年東京オリンピックなど、イベント等のボランティアに関しては
「無償の労働力」として都合よく使われていると非難される場合がある。
東京オリンピック「時給1600円アルバイト」と「無償ボランティア」の違いは? | お金にまつわる情報局 (okanenimatuwaru.com)
「重大な国家イベントに貢献できるんだから無料でも良いじゃないか」
「(運が良ければ)テレビに映れるかもよ?」と矛先を逸らすは、いわゆる「やりがい搾取」の良い例である。
→ やりがい搾取
比喩として
比喩として、給与・残業代の支払われない労働作業・時間外労働なども指す。
労働作業においては時間外だろうが残業代等の支払い義務が発生し、支払わないのは違反。
サービス残業という分かりやすい例もあるが、始業前の労働作業、休日出勤も含める。
- 労働基準法違反は犯罪であり、ちょっとした罪ではないし、難癖付けてもダメである。
- よく見たら雇用契約書/労働契約書に署名捺印してあっても、違法な契約内容は無効である。
- 正社員、派遣社員、パート、アルバイトなど、立場に関わらず支払わなくてはいけない。
- 表面上は普通だが、給与明細をよく見ると支払われていない。
- 仕事上の失敗など、罰金代わりに残業代を没収…もアウト。
残業代が支払われないのは普通ではないし、普通であってはいけない。
こっそりネコババされていないか、給与明細はちゃんとチェックしておこう。
心当たりのある方は、労力に応じた対価をちゃんと支払ってくれる職場に転職してください。
まとめ
都合よく労働力を無償で搾取されないためには
参加前にボランティア内容や、主催側をよく注目するなどの自衛策が必要である。
特に正当な対価が発生する労働作業にもかかわらず
「お金の話をするのは汚いこと」「お金より大切なものがある」(キリッ
…など、十分な対価を支払わない連中にはご用心。もちろん浮いたお金は全部そいつらの懐の中である。
労働力だけ取られて、時間の無駄遣いにならないように。
違和感や理不尽があれば、相手の言い分を鵜呑みにせず必ず検索してみよう。
関連動画
関連項目
- 災害 / 地震
- トモダチ作戦
- BOINC
- ノブレス・オブリージュ
- ボーイスカウト/ガールスカウト
- 阪神淡路大震災
- 東日本大震災
- 東京オリンピック(2020年)
- 被災地
- 救援物資
- やりがい搾取
- サービス残業
関連リンク
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