ボロンとは、
- 日本語の擬音語/擬態語。ひらがなで「ぼろん」と表記される場合も。
- 「ホウ素」を意味する英単語「boron」のカタカナ表記。
- 仏教のうち、密教で用いられる真言の「種字」(しゅじ。種子とも書く)のうちのひとつ。「一字金輪仏頂」という仏として仏格化もされる。本来は梵字だが、デーヴァナーガリーで代替すると「भ्रूं」。
概要
「ギター・琴・太鼓などの楽器を鳴らす音」「涙など、何らかの物がこぼれ落ちるさま」など、さまざまな音/情景をあらわす擬音語/擬態語(オノマトペ)である。
だが2022年現在の日本語圏においては、なぜか「陰茎がまろび出る様子」または「乳房がまろび出る様子」を表現するために使用されてしまうことも多い。その場合、勢いを表現するためか「ボロンッ」「ぼろんっ」などと、後ろに促音を付して表記されることもある。
ここまで読んで「お前が陰茎とか乳房が露出されまくる卑猥な作品ばかり読んでるだけなんじゃないの?」と思った方は居ないだろうか。これはちゃんと、まずGoogleで「"ボロンと"」や「"ボロンッ"」という言葉を検索した上で「よく組み合わされている言葉」を確認してみた結果なんだから勘違いしないでよね。実際には「陰茎」や「乳房」よりも俗っぽい表現が使用されていたけど。
いつからこうなってしまったのか
いつ頃からこのようなことになってしまったのか? これについては、俗な用法であることもあって詳細は不明。だが、少なくとも20世紀中から存在した用法ではある。
Google booksで色々と検索キーワードを変えて調べてみたところ、俳優/コメディアン「伴淳三郎」による1967年の著作『伴淳放浪記』の1998年に出た復刻版に、以下のような一節があったらしいことが確認できる(太字強調は引用者)[1]。
女優さんという女優さんにはいろんないたずらをしたもんだ。カツラに白布をつけて天井にぶら下げておいて、通りがかりに卒倒させてみたり、ヘビを楽屋にもちこんだり……。しかし、福岡君子さんには、逆にこちらが一本とられたことがある。
麻布の末広座に出ていた時だ。福岡さんの化粧台のすぐ横に、大きなフシ穴があいていた。隣りの大部屋からは福岡さんの部屋が丸見えだ。ある日、福岡さんがモロ肌ぬいで化粧してるのを見て、よせばいいのに、わたしはいたずらっ気をおこした。あまり自慢にもならないイチモツを、そのフシ穴からボロンとさし出したのである。ところでこの女優さんは、わたしにも劣らないひどい近眼だ。
「これ、なんでしょう」
おしろいのハケでもってサッとひとなでやられてしまった。ヒヤッときたんで、びっくりしてひっこめてみると、これはいかに、みんごとまっ白く化粧されている。
「もう一度やってごらん、ちょん切っちゃうからね」
いくら眼が悪いからって、わからないはずはなかった。わたしはテイよくあしらわれてしまったのである。
また、雑誌『文學界』の1985年10月号に掲載された島田雅彦の小説『ある解剖学者の話』の「アンジェラの恋」という章に、以下のような一節があったようだ(太字強調は引用者)[2]。
先生はその後も時々、店に来てくれるようになったの。あまりお酒は好きじゃないみたい。変わった飲み方よ。自分ではあまり喋らないし、陽気にも陰気にもならない。あたしが先生を誘惑しようとすると、嬉しそうな顔はするのね。
そこがカワイイの。いきなり、あたしがボロンと乳房を出して見せると、先生は、若くて張りがあるうちにたくさんの人に見せてあげるといいねといったわ。あーあ、先生に抱いて欲しいわ。
ちなみにこの乳房を出して見せた「アンジェラ」は、手術によって女性の体になった人物であるようだ。
また、「漫画作品」での例として、『週刊少年ジャンプ』にて1990年から1993年にかけて連載された漫画作品『花の慶次 -雲のかなたに-』にて、「奥村助右衛門」という登場キャラクターが「ボロン」という描き文字とともに陰茎を露出しているらしい。ちなみに同シーンでは主人公の前田慶次も陰茎を露出しているが、こちらの描き文字は「ポロン」であるそう。
ツイートを読み込み中です
https://twitter.com/soo_mei/status/1277570777458413568
『週刊少年ジャンプ』と言えば日本人ならば大半が知っている有名漫画雑誌であり購読者も多いので、これが人生で初ボロンだった少年少女も少なくなかったかもしれない。ボロン史にある程度の影響を与えていそうである。
これらよりも以前に、陰茎や乳房を「ボロン」と露出している例をご存知の方は、この記事に追記/または書き換えられたい。
インターネット上において
もちろんインターネットが広まってからは、日本人は事あるごとにネット上でボロンさせている。
ニコニコ動画
ニコニコ動画のコメントなどにおいても、「(ボロン)」などと書き込まれていることがある。これは大抵は陰茎をまろび出すことの表現である。
そのコメントの後に、「そのポークビッツ[3]しまえよ」などと、「罵倒」というか「かけ合い」のような他ユーザーのコメントが続いていることも多い。
短文コミュニケーションサイトとして日本語圏で大きなシェアをもつ「Twitter」上でも、日本語版が利用可能となった2008年中から既に陰茎を露出する表現として「ボロン」を使用している人々が確認できる。
そして2015年から活動している「5%の確率で性器を露出するドラえもん」というアカウントに至っては、時折「チンポ(ボロン」とつぶやくというそれだけのbotであるにも関わらず、多くのユーザーにフォローされている人気アカウントとなっている。詳細は「5%の確率で性器を露出するドラえもん」の記事を参照されたい。
2ちゃんねる/5ちゃんねる
有名なインターネット掲示板群サイト「2ちゃんねる/5ちゃんねる」のスレッドタイトルで過去ログを検索できるサイト「かころぐβ」によると、明らかに陰茎を露出する意味で「ボロン」という言葉がスレッド(掲示板)のタイトルに付けられ始めたのは2006年頃であるようだ(それ以前にも「ボロン」とタイトルに付いたスレッドは存在していたようだが、釣り竿などを指していたり、「ボロンゴ」など単にボロンを含む言葉というだけだったりする)。
2006年にはわずかに数件であり、その後の数年もさほど増えはしていない。しかし、2011年頃に陰茎を露出するオノマトペとしてスレッドタイトルに「ボロン」が付いている例が増え始めたようである。この頃に何かがあったのかもしれない。
関連動画
関連項目
脚注
- *伴淳放浪記〔伴淳三郎〕 - 伴淳三郎 - Google ブックス より
- *文學界、第 39 巻、第 10~12 号 - Google ブックス より
- *ポークビッツに限らず、様々な「小さいもの、細いもの、短いもの」に擬えられるようである
- 0
- 0pt
- ページ番号: 5661209
- リビジョン番号: 3261703
- 編集内容についての説明/コメント: