ボーリックナイトとは、2001(平成13)年7月9日に千葉ロッテマリーンズに在籍したフランク・ボーリック内野手が起こした奇跡である。
試合展開
2001年7月9日、福岡ダイエーホークス(現福岡ソフトバンクホークス)vs千葉ロッテマリーンズの第18回戦(千葉マリンスタジアム)、ダイエー先発は倉野信次、ロッテ先発はネイサン・ミンチーで始まった。
2回表、ダイエーが1点を先制。続く4回表にも5番松中信彦の24号2ランで2点を加える。一方のロッテは4回裏に1点を返すと、5回裏にはロッテ4番フランク・ボーリックが19号同点2ランを放ち試合は振り出しに。6回表、ダイエーは8番トニー・ミッチェルの9号2ランで勝ち越し。しかし、その裏、ロッテは3点を挙げ逆転に成功する。
マリーンズファンの誰もが勝ったと思った9回表、満を持してクローザー小林雅英が登板。しかし、その小林雅が同点タイムリーを打たれ試合は延長戦へ。
延長10回表、小林雅に代わって登板した藤田宗一が大道典嘉に勝ち越し3ランを打たれる。この時点で9‐6。しかも、ダイエーは、絶対的守護神ロドニー・ペドラザを登板させる。「もう無理だ・・・」マリーンズファンの誰もがそう思った。しかし、奇跡が起きた。
延長10回裏
ロッテは打順良く1番からの攻撃。ダイエーのピッチャーは守護神ペドラザ。
そのペドラザから1番小坂誠がレフト前ヒットで出塁。続く2番サブローがショート内野安打で出塁。3番福浦和也もレフト前ヒットで出塁。3者連続ヒットでノーアウト満塁。マリーンズファンは思った。「ボーリックが決めてくれる」
そして、延長10回ノーアウト満塁、カウント0ストライク1ボールから打った打球はセンターバックスクリーン左へ。奇跡の逆転サヨナラ満塁ホームランが飛び出した。
このホームランは、延長戦、3点ビハインド、お釣りなしという本当に奇跡的なホームランであった。また、これらの状況下で満塁ホームランが出るのはプロ野球史上初であった。なお、この日、ボーリックは、注文していたバットが届かず、チームメイトのデリック・メイからバットを借りていたらしい。
ファンはこの日のことを“ボーリックナイト”と呼び、今もファンの間で1998年マリーンズ18連敗、2005年日本シリーズなどと共に語り継がれている。
その後
マリーンズ所属選手による"逆転"サヨナラ本塁打は、この夜から2021年まで実に20年間記録されなかった(勝ち越しサヨナラ本塁打は何本も記録されている)。
そして、2021年4月21日の日本ハム戦で岡大海が9回裏2アウト1点ビハインドから逆転サヨナラ2ランを放ち、20年ぶりに記録した(日本人選手となると97年初芝清以来24年ぶり)。
その21年シーズンのパ・リーグのサヨナラ本塁打はすべて千葉ロッテが記録しており以下のとおりである。
このように岡大海は4月21日の本塁打を含め、2本のサヨナラ本塁打を放ち、ボーリックナイトにちなみファンの間で「ヒロミナイト」と命名された。しかもこの2本はいずれも9回2アウトの場面から放ったものであり、岡はほかにも10月10日の日本ハム戦で9回表2アウト2点ビハインドの場面で同点2ラン、4月18日のオリックス戦では9回表2アウト1点ビハインドから同点内野安打(その後チームは勝ち越し)を放ち、1シーズンで実に4度も絶体絶命の危機からチームを救った。
その他
この試合、藤田宗一の後を受けて敗戦処理で投げたのが当時まだ名前も知られていなかった小林宏之である。その小林は、1/3回を抑えると、ボーリックのホームランでサヨナラ勝ちしたため、彼にうれしいプロ初勝利が転がり込んできた。
このホームランを打ったボーリックは、同年指名打者部門でベストナインを獲得するも、翌2002(平成14)年には不振に陥った上に故障もあり、8月に退団が発表された。
また、打たれたペドラザも、翌2002年に年々の勤続疲労(前年までに3年連続45試合以上登板)、制球の乱れ、球威低下もありダイエーを退団。2003(平成15)年には読売ジャイアンツに在籍も、わずか7試合の登板、防御率12.00という散々な成績で退団。現在はアメリカで牧場を経営しているらしい。
ちなみにボーリックナイトがあった2001年のパリーグは他にも劇的なホームランが数多く生まれており、約3カ月後の9月26日の阪近鉄バファローズvsオリックスブルーウェーブ戦(大阪ドーム)では、近鉄の代打北川博敏が9回裏にセンターバックスクリーン左へプロ野球史上初の代打逆転サヨナラ満塁優勝決定ホームランを放ち、それから4日後の9月30日、オリックスブルーウェーブvs千葉ロッテマリーンズ戦(グリーンスタジアム神戸)において、オリックスの代打藤井康雄が9回裏に小林雅英から9回裏2アウト満塁・3点ビハインドという場面で代打逆転サヨナラ満塁ホームランを放っている。この満塁ホームランは、3点差・2アウト・代打という3つの項目をすべて満たした逆転サヨナラ満塁ホームランであり、これは2021年現在もプロ野球史上唯一である。
上記のボーリックナイトは代打・2アウトを、北川の例は2アウトという項目を満たしていない。
また、当時この試合をアナウンスしていた千葉マリンスタジアム(現:ZOZOマリンスタジアム)専属のベテラン名物ウグイス譲である谷保恵美は、2017年の文藝春秋のインタビューによれば自身が担当した中で一番印象に残っている試合としていつもこの試合を挙げているという。「ものすごい歓声だった。まずホークスファンが沸いて、最後にマリーンズファンが狂喜乱舞。忘れられない」としている。
敗れたダイエーは、この時点で近鉄、オリックスと熾烈な首位争いを繰り広げており、前日まで首位近鉄戦3連勝して意気揚々乗り込んできていた。ところがこの敗戦が尾を引き、翌日も敗戦。このあとももたつきが続き、最後は近鉄・西武・ダイエーの優勝争いとなったが、最終盤で一気に近鉄に引き離されてしまい優勝を逃した。この試合を逃げ切っていたら勢いづいて、シーズンの結果も変わっていたかもしれない。
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