ポルカドット・スティングレイ→もしかして
本稿では1について詳述する。
概要
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和名 | ポルカドット・スティングレイ |
学名 | Potamotrygon leopoldi (Castex & Castello, 1970) |
英名 | polka-dot stingray |
界 | 動物界 Animalia |
門 | 脊索動物門 Chordate |
目 | トビエイ目 Myliobatiformes |
科 | ポタモトリゴン科 Potamotrygonidae |
属 | ポタモトリゴン属 Potamotrygon |
種 | P. leopoldi |
原産地 | ブラジル |
体長 | 75㎝ |
ポルカドット・スティングレイはブラジルのシング―川固有の淡水エイである。ポルカの愛称でも親しまれている。
体盤長(直径)は最大40㎝、全長75㎝にまで成長する。夜空のような漆黒の円盤に雪を思わせる白いスポットが散らばるという美麗さから、観賞用として非常に人気が高い。
この特徴的なスポットは、色味(完全な白~クリーム色)や数、散らばり方など個体差があるので、好みの1頭を探す楽しみも味わえる。
輸入量はそこそこ多く、通販でも入手可能。古代魚に強いショップならほぼ通年置いてあるだろう。
縄張り意識もほとんどなく、エサになりうるほど小さな魚でなければ混泳も楽しめる。
体の縁を波打たせながら優雅に泳いだり、一生懸命エサをほお張ったり、馴れると飼い主にエサをねだるような仕草を見せたり、ペットとしてのポテンシャルは計り知れない。
また雌雄の判別が比較的容易なので、人工繁殖のチャンスもある。
ブリード可能な熱帯魚の例に漏れず、さまざまな品種やハイブリッドが市場をにぎわせている。
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スポットが通常の個体よりも明らかに多く、また縁では小さいスポットの密度が高い。ゴージャス。
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突然変異。エイは発生の段階で体の後ろから左右に回り込むようにぐるーっと円盤が形成されていき、最終的に前方部分がつながってあの円い形ができあがるのだが、なんらかの理由で最後の「前方部分でつながる」のが上手くいかず、切れ込みが入ったような状態になることがある。
ようは奇形なのだが、上から見るとさながらバットマンマークに見えてかっこいい&かわいいということで大変人気が高い。自然界ではエサが上手くとれず生き残れないようだが、飼育下ではなんら問題ない。
飼い方
この数万年間ほとんど環境の変化がなかったアマゾンという楽園で生きてきたポルカを飼育するには、自宅に楽園を再現するためのお金、テクニック、そして愛が求められる。
水質
簡単にいうと、弱酸性の軟水で、かつ「アンモニア、亜硝酸の値がともに0」であることは大前提。生物ろ過が完璧に働いている、こなれた水であることが必須となる。
この「こなれた水」がなんなのか、感覚的にでも理解できていなければポルカの飼育はおぼつかない。こなれた水とは、各種ろ過バクテリアが理想的なバランスで豊富に生息し、病原菌や原生動物がほとんどおらず、魚にエサを与えようが魚が糞をしようが水質がほとんど変化しない、したとしてもすぐに元に戻してしまう、極めて安定した水槽環境をいう。
単なるきれいな水なのかというと、そうとも言えない。カルキを抜いた新しい水道水は確かにきれいだが、その水で満たした水槽で魚を飼うと、魚が新水から体を守るために粘液を過剰に分泌して体力を消耗し、水も汚すし、エサを入れれば水が濁り、いつまでも透明にならない。魚が必要以上に粘膜を分泌せず、エサで濁った水をたちまち透明にしてしまうのが「こなれた水」である。
アクアリストにとってこなれた水をつくることは、禅僧が悟りを開くのと同じで、何年も無我夢中で数限りないトライ&エラーを重ねてようやくたどり着ける境地であり、一朝一夕にはいかない。よって初心者がポルカなどの淡水エイを飼育するのはあまりおすすめしない。
水槽
淡水エイは非常にデリケートで、水質の悪化はもちろん、変化も禁物。ポルカ自体がよく泳ぐうえに大型でもあるし、水質の悪化・変化を吸収させるためにも、水槽は大きいに越したことはない。
90㎝レギュラーでも手狭なので、できれば幅120㎝×奥行60㎝以上の水槽を用意したい(90㎝レギュラーでポルカを繁殖させた猛者もいるが、淡水エイを知り尽くした超ベテランだからできる芸当なので安易な真似はおすすめしない)。
低層で生活するため高さは45㎝でもかまわないが、水量確保のために高さ60㎝をチョイスするのも手。
淡水エイに限らないが、水槽が大きければ大きいほど飼育の難度は下がる。単純に水量が多いとそれだけ水質の悪化も緩やかになるからだ。初めてのポルカを死なせたくないなら最初から大きな水槽を設置したほうが賢明である。
120×60×60水槽ともなると水を入れるとゆうに500㎏に達するので、床の強度も確認しておこう。このデカブツを2階以上に搬入するのも現実的ではないので、設置場所は1階や地下が望ましい。注排水の便も考えておくこと。
フィルター
ポルカは大食漢であるため、給餌直後や排泄後にアンモニアや亜硝酸が上昇しやすい。すみやかに硝酸塩まで分解できるよう、フィルターは上部式とワンランク上の外部式を組み合わせる、あるいはオーバーフロー式が無難。オーバーフロー式はろ過槽が大きい分、水量もさらに稼げて水質の安定につながるので、エイ飼育では心強い味方となる。
いずれにせよ、フィルターとポンプは「回転数が水槽容量に対して毎時10回転以上」を目安に選ぶ。ポンプの毎時吐出量÷水槽容量=回転数である。毎時10回転とは、1時間に水槽の水が10回転することを示す。たとえば120×60×60水槽の容量は432ℓなので、毎時吐出量4320ℓ以上のポンプが推奨される。これほどの流量となると激流のような騒音をまき散らすことになるが、そこはご愛嬌。
ろ材はいわゆる「表面積が大きくてろ過バクテリアが繁殖しやすいもの」であれば、使い慣れたものでかまわない。サンゴ砂をひとつまみネットに入れて混ぜておくと、pHの急速な低下を防ぐ効果がある。
水温
25℃~27℃だと調子がよいようだ。
淡水エイは物陰に寄りそう習性をもつ。ヒーターはカバーを装着していても火傷のおそれがあるので、オーバーフロー式ならろ過槽にヒーターを収納できるメリットがある。
レイアウト
レイアウトはベアタンク(流木のようなアクセサリーや砂もいっさいなし)がベター。底面積を要求するエイにとって流木や土管や水草は邪魔にしかならないし、なめらかな体表にけがをするおそれもある。シンプルイズベストである。
酸欠には非常に弱いので、大げさなくらいエアレーションしたほうがよい。馴れたポルカは泡で遊んだりする。
エサ
エビの剥き身、小赤、ドジョウ、冷凍ワカサギなど。生きた金魚は低層生活者のエイが捕食できない可能性があるので、殺してから与えたほうがいいかも。馴らせば肉食魚用の沈下性フード(ひかりクレストキャットやおとひめなど)もガツガツ食べるようになる。いずれも食べ残しはすみやかに回収すること。
水換え
水換えは「○日に○分の1交換」と一概に言いにくいが、できるだけ水質を変化させないよう、いちどに交換する水の量は少なめにしておく。つまり頻度の多さでカバーすることになる。「少量の水を、頻繁に交換する」、これがポルカの水換えの基本となる。
つねに新しい水を水槽内に注ぎ、溢れたぶんを排水する「新水垂れ流し方式」がエイにとっても労力的にもベストではあるが、飼い主の経済的事情と相談して決めていただきたい。
混泳
ポルカは温和なので混泳も楽しめる。アロワナ、ダトニオ、アイスポットシクリッドなど、上層~中層を泳ぐ大型魚だとポルカと生活圏が重ならずトラブルになりにくい(昔はここにガーも含まれたが、ガーは残念ながら全種が飼育禁止になってしまった)。
逆に、生活圏が重なっていて気も荒い大型ナマズや、エイの体表を舐めることがあるプレコ、抵抗しない相手をいじめるのが好きなファイヤーパロットあたりはちょっと不向き。
混泳させる場合は、ポルカにもちゃんとエサが行き渡っているか、ちょっかいを出されていないか、けがをしていないか、日ごろから注意深く観察すること。また、単純に魚の数が多いと水質も悪化しやすいので、単独飼育よりもさらにデリケートな管理が必要になる。
きれいな花には……
エイの御多分に漏れず、ポルカの尾にも毒針がある。この尾棘(びきょく)には極めて細かいノコギリの歯のような返しがついているため、刺されると傷が深くなりやすく、しかも毒のせいで+αの痛みに苛まれることとなる。どれくらい痛いかというと……
とにかく痛い。人間をただちに殺すほどの猛毒ではないが、体質によっては呼吸困難やけいれんを誘発され、命にかかわる事態になるかもしれない。
もし刺されたら、応急処置として45℃程度のお湯に患部を浸ける。エイの毒はタンパク質なので熱で変質するのだ。このとき、あまりの痛みのせいで患部周辺は感覚が鈍っており、60℃や70℃の熱湯でも熱く感じない場合がある。だからといってそんな熱湯に漬けていると今度は火傷を負ってしまうので、ちゃんと温度は確かめよう。
この応急処置で「気を失いそうになる痛み」が「叫んでないとやってられない痛み」程度にマシになるはずなので、早急に救急車を呼ぶ。「飼ってるエイに刺されました!」と伝えるのはなんか恥ずかしいと思うかもしれないが、向こうはありとあらゆる救急要請を受けてきたプロである。エイに刺されたと言われたくらいでは動じない。とくに笑いものにするでもなく迅速に救急車を手配してくれるだろう。
さて、病院に到着したとしても、実はエイ毒の解毒剤はこの星には存在しない。とはいえ、飼育水は多種多様なバクテリアのミックスジュースである。尾棘に刺された際にその飼育水のバクテリアが傷口から入っているかもしれない。場合によっては痛み止めのほかに抗生物質も処方してもらえるだろう。そのためやはり医師に診察してもらったほうがよい。素人の「大丈夫だろ」と、医師の「大丈夫だろ」では、意味も安心感もまったく違うのである。
エイ毒の影響はわりと長期に及ぶ。1週間経っても傷が治らず出血するなどザラである。とにかく患部を清潔に保つこと。
さらに日が経って痛みが落ち着いてくると、人によっては腫れや痒みなどアレルギー反応が出始める。改めて医師の診察を受けよう。アレルギーならステロイド剤を処方してもらえるはずである。
ちなみに、エイ毒はハチ毒と同様、1度刺されると抗体ができ、再度刺されるとアナフィラキシーショックを発症する可能性がある。エイに刺された場合、また刺されると今度は死の危険があるので、応急処置のためにエピペンを常備するなど医師に相談されたい。
掃除のさいには、アクリル板を使ってエイが手に近づかないようにする、コケ掃除には柄の長いブラシを使うなど、エイに刺されないようふだんから留意すること。
尾棘にカバーを被せたり、ニッパーで切除したりする方法もあるが、エイの尾棘はサメの牙と同じで次々生え変わるので、抜け落ちるたびにまたリスクを犯してやり直さねばならない。特別な理由がないかぎりはおすすめしない。
現地ではポルカはじめ淡水エイはこの毒針のために蛇蝎のごとく嫌われており、釣りでは外道とされ、釣れしだい棍棒でボコボコに撲殺するのだという。
繁殖
淡水エイは産卵するのではなく、胎内で孵化してある程度育った仔エイを出産する。生まれたばかりの仔エイはすでに親と同じ姿をしており、親子のエイが泳ぐさまは見ていてほほえましい。
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エイは雌雄が判別しやすい。クラスパーと呼ばれる交接器があるほうがオスである。販売段階で雌雄をわけているショップも多い。
ペア売りされていることも多々あるので、繁殖を視野に入れているなら雌雄を同時に購入するのも手。ポルカはあまり相性を気にしないので雌雄さえ揃っていれば成功することが多い。
卵胎生であることから、飼育者側が卵の管理をしなくてよいので、究極のところ、「オスとメスを健康に飼育していたらそのうち繁殖する」。繁殖とは健康の延長線上にあるからだ。
妊娠中のメスや生まれたての仔エイはひときわデリケートなので、繁殖をねらう水槽にはペア以外の魚は入れないほうが安心である。
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