ポール・バーホーベンとは、悪趣味な変態オヤジオランダ出身の映画監督である。
概要
1938年生まれ。
母国オランダでヒット作を連発し世界的な評価を得てハリウッドに進出。『ロボコップ』『トータル・リコール』『スターシップ・トゥルーパーズ』と言った傑作、名作を次々と監督した。これらの名だたるヒット作からアクション系映画の印象が強いが、『氷の微笑』のようなサスペンス映画も撮っている。
一方で、そのあまりに露骨で悪趣味とも言えるエロ描写、バイオレンス描写、ブラックユーモア(後述)は批判の対象にされることも多く、1995年製作の『ショーガール』では全米中から凄まじいバッシングを受け、その年のラジー賞を総ナメにしてしまった(ただし、『ショーガール』そのものが例えば実写デビルマン的ないわゆる駄作かと言う見方には異論も多い。筆者は学生時代そうした経緯を知らずにテレビの深夜枠でショーガールを見たが、非常に面白いと感じたのを覚えている)。
ちなみに監督はラジー賞史上、初めて実際に会場に来て直接トロフィーを受け取り、さらにはスピーチまでしている。このときの言葉「蝶から蛹になった気分だ」は有名。その後もネタとして『ショーガール』の話題を出すあたり、非常に心臓の強い人物のようである。
そもそもオランダを離れることになったのは、あまりに過激な描写方針のためオランダでは映画を撮りにくくなっていたという事情があり、同時期にハリウッドで評価され始めていたため仕事の場を移したのだが、そこでも自重せず過激な撮影を続けたため次第にハリウッド映画業界からも持て余されるようになり、しかしその頃にはオランダで再評価されていたため凱旋を果たすという、ややこしい経歴の持ち主になっている。
またエロ&バイオレンスが売りの割に、どういう訳か地上波放送率は高かった。ニコニコユーザーの中にも『ロボコップ』の暴力描写がトラウマになった人や、『トータル・リコール』の割れたおばちゃんの頭からシュワちゃんの顔が出てくるシーンや3つのオッパイだけは覚えてる人が多いのではないだろうか。
特に 『トータル・リコール』の日本での地上波放送回数は、シュワちゃん主演映画の中でも『ターミネーター2』『コマンドー』『トゥルーライズ』などに次いで多いと思われる。
作風
前述の通り露骨な、あまりに露骨なエロ描写とバイオレンス描写が持ち味の監督である。というか多分そのことしか考えてない。
また、それらによるブラックユーモアが随所に入っているのも魅力と言える。それらを多額の予算でもって高クオリティで描き、さらにヒットさせるというからスゴイ。
特にバイオレンス描写は非常に独特で、出血の描写そのものは比較的少ないものの、代わりに身体破損シーンをやたら明瞭にクッキリ描く傾向にある。そのためグロ描写というよりは、人形の手足をもぎってるような独特の印象を与えがち。
エロ描写に関してはゲスい男が考えそうなことをストレートに描写することが多い。『インビジブル』では透明人間になった男が女性の家を覗きに行ったり、レイプしたり、嫌いな奴を殺したりと、「お前は中学生か!」とツッコミたくなるようなリビドーに素直すぎる展開を堂々と描いている(しかし、『インビジブル』という作品そのものに関しては「スタジオの奴隷になった気がした」「空っぽ(Hollow)な作品(※原題が『Hollow Man』)」と否定的な発言を残している。もっとエロくグロくしたかったのだろうか?)。男が女に酷いことをするばかりでなく、『SPETTERS/スペッターズ』では主人公の一人(男)がゲイ集団に捕まって次々とケツを掘られるシーンがある(主人公がゲイに酷いことをしていた報いなのだが、あまりにあんまりな描写のため、ゲイの方々がこの作品に対して抗議運動を起こした)。
一方で、『スターシップ・トゥルーパーズ』などがそうであるように、ハリウッド的な勧善懲悪な展開を比較的避ける傾向にある。この辺りはニュアンスが微妙なので、実際に観て確かめて欲しい。そして『ダイ・ハード』あたりと比べていただきたい。
あと、登場人物のクズ率がやたら高い。特に女キャラは大体ビッチか腹黒。
影響
こうしたエロ&バイオレンスの手法は後世のクリエイターの多くに影響を与えており、やはりバイオレンス描写が売りの三池崇史監督や、「GANTZ」の奥浩哉などがリスペクトを表明している。
トリビア
- 幼少期を第二次世界大戦下のオランダで過ごし、7歳ごろに終戦を迎えた。住んでいた街が近くにナチスの軍事基地があった関係で空爆を受けており、道端に死体が転がるような中で生活していたらしい。
しかし、彼にとって過酷な戦時体験だったかと言えばそうでもなく、むしろ死と戦闘が身近にあった戦時下をエキサイティングな体験だったとさえ語っている。そんな少年時代が後のハチャメチャな作風に影響しているのは言うまでもないだろう。 - 日本でも大ヒットした『ロボコップ』は『宇宙刑事ギャバン』とデザインがそっくりだが、これは監督が実際にギャバンをデザインした村上克司にデザイン引用の許可を得て使用している。
- 『スターシップ・トゥルーパーズ』で男女が一緒にシャワーを浴びるシーンがあるが、出演者が全裸になることをためらって撮影が進まなかったため、「裸になって何が悪い!(意訳)」と監督が自ら全裸となり模範を示したらしい。
- 『ショーガール』はアメリカの映画ファンにとっては本当に黒歴史らしく、色々なところでクソ映画の代名詞として使用されているとか。
- 繰り返しになるが、バーホーベン監督作品(主に『トータル・リコール』)は地上波放送されることが妙に多かった。監督は違うが、同じく妙に地上波放送が多かった『ザ・グリード』と共に多くのチビッコ(筆者を含む)にトラウマを与えたことだろう。最近では規制やクレームの関係か、こういった映画の地上波放送が貴重になっているのが惜しまれる。
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関連項目
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