ポール・ラビノー(1944~)とは、アメリカの人類学者である。
概要
シカゴ大学で人類学を学び、そのまま同大学院で博士号を取得した。1968年にクリフォード・ギアツの指導の下モロッコの調査をはじめ、『異文化の理解』でフィールドワークが科学的手法ではなく、独特な文化的、経験的活動であると指摘したのだ。さらに彼の主張は師であるクリフォード・ギアツの『文化を書く』に寄稿した「社会的事実との表現」で先鋭化している。民族誌における「対話」の重要性を提起しながら、クリフォード・ギアツ自身のテクストは対話的になっていないというのである。また、ラビノーはフーコーのようなポストモダンの試み自体を批判的にとらえ、乗り越えようとしたのだ。
そんなラビノーの主著が『PCRの誕生』である。ラビノーの論旨はいったい誰がPCRを発明したのかというものである。ラビノーはブルーノ・ラトゥールに欠けていた、PCRの発明にかかわった人々へのインタビューを行い、当事者自身の手によって科学的営みを叙述するという試みを行ったのである。
ラビノーは21世紀の人類学の探求として、生命科学が作り出す未来とそこでの倫理性について考察し、人類学の知が同時代性の中で意味を担うのかについて今もなお探求し続けているのである。
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