マイナンバー制度(社会保障・税番号制度)とは、日本に居住する人間に一意の番号を割り当てて、行政手続きの簡素化と本人確認を簡易化する制度である。
概要
2013年に成立した「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」に基づいて、個人と設立登記を行った法人に一意の番号が割り当てられており、特に個人の番号が「マイナンバー」と呼ばれる。
2016年1月から利用が開始された。マイナンバーは国民一人ひとりが持つ12桁の番号で、社会保障や税、災害対策に利用される。住民票のある外国人(中長期在留者、特別永住者等)にもマイナンバーは通知される。[1]
法人に対しては法人番号と呼ばれる13桁の数字が割り振られる。こちらはマイナンバーとは異なり原則として公表され、誰でも自由に利用できる。
今後マイナンバーが利用される場面
マイナンバーが必要となるのは、2016年1月から。高校生、大学生もアルバイトや奨学金申請の際などに必要となる。
2018年からは銀行口座への適用を開始、2021年からは義務化する方向である。一方で国民年金への適用は、2015年に起きた日本年金機構での個人情報流出事件によって見送られた。
2021年3月からはマイナンバーカードを健康保険証として使用することができる。医療機関でマイナンバーカードの読み取りを行う必要があるのですべての医療機関ですぐに使えるわけではないが、2023年3月までに概ねすべての医療機関等への導入を目指している。[2]
通知カードと個人番号カードの違い
「通知カード」は、顔写真がない紙製のカードで、マイナンバーの確認に利用できるが、別途運転免許証など本人確認書類が必要で身分証明書としては利用できない。
「個人番号カード(マイナンバーカード)」は、顔写真、ICチップの付いたプラスチック製のカードで、身分証明書として利用できる。
表面には個人の氏名、住所、生年月日、顔写真が、裏面にマイナンバーとICチップが記載される。
レンタルショップ、スポーツクラブなどでも身分証として利用できるが、マイナンバーはあくまで社会保障・税における利用を目的としたもので、店側が会員登録などの際にマイナンバーを控えたりコピーを取ることは禁止されているので注意が必要。
マイナポータル
2017年1月より、インターネット上で自分のマイナンバーに関する情報の確認ができるシステム「マイナポータル」が開始される。マイナポータル上では、行政機関がいつ、どのようなときに自分のマイナンバーを利用したのかを確認することができる。システムへのログインは、セキュリティの観点から個人のマイナンバーの入力は行わず、マイナンバーカードのICチップをカードリーダーで読み込む形式になる予定。
成立まで
もともと日本には住民の二重管理の問題があったため、金融規制への対処が遅れていた。戸籍と住民票という二種類の住民管理形態があり、管轄も国と自治体に分かれていて一本化できていなかった。そこで国は住民基本台帳ネットワークによって一元化を試みたが、旧社会党系、共産党系の団体及び首長の反発にあい、住基ネットに接続しない自治体が出るなど、ほとんど普及しなかった。そこでマイナンバー制度を導入してすべての国民に個人番号を割り当てることにした。[3]
2009年に、当時の与党であった民主党において、社会保障と税制における共通の個人番号を導入することを、税制改革の一つとして方向づけ、2011年に大綱を決定して翌年に関連法案を提出した。しかし国会の解散によって一度は廃案となったものの、2013年に第二次安倍内閣が民主党案をベースに修正を行って法案を提出、同年5月に可決された。
2015年には、銀行口座や特定健康診断にも拡大利用できるよう改正案が提出、同年9月3日の衆議院本会議で、自民党、公明党、民主党、維新の党などの賛成多数で可決された。
マイナンバー通知カード
2015年10月より順次、国内に住民票を有するすべての個人(外国籍含む)に、個人番号が付与された緑色の細長い「マイナンバー通知カード」と「交付申請書」が配布された。2016年1月以降、通知カードは、各自治体での手続きによって、顔写真のついたICカード「個人番号カード(通称:マイナンバーカード)」に切り替えることが可能である。住民基本台帳カードを持っている場合は、切り替えの際に返納となる。
マイナンバー通知カードの新規発行・再交付や氏名・住所の記載変更は2020年5月25日をもって終了しているが、マイナンバーカードの発行はインターネット等で可能である。発行の際に必要な自分のマイナンバーがわからない場合でも、マイナンバー付き住民票の写しを役所で発行してもらうと知ることができる。
メリット
すでに行政における各制度において、個別の番号が国民に割り振られていたものの、それぞれの省庁、部署で別管理となっているため、効率の悪さや情報共有が困難だという問題が存在していた。
マイナンバー化することによって個人及び法人の情報を一元化することが可能となり、手続き時間の短縮や資産情報を広く見ることが可能となる。
また、身分証明書として運転免許証やパスポートが使われているが、どちらも費用や習得期間の長さなどで容易に手に入れることが困難である。
しかし顔写真付きの個人番号カードによって、特別な費用なしに身分証明書を手にすることが可能となり、民間のサービスの利用にもメリットが生まれる。
また、行政側が個人の所得の移動や行政サービスの受給状況を把握しやすくなるため、不当な給付を防止することができると言われている。
デメリット
古くから、国民に固有の番号を与えることが、囚人を番号で呼ぶようなもので、個人の人権や尊厳を否定するものだとする批判がある。
ただし現実には、コンピューターを利用した情報管理の仕様上、年金番号や保険証、免許証などにも番号が付けられていて、民間の銀行口座や会員証などにも番号を使って管理されているため、それらサービスの拒否による生活のリスクのほうが大きくなり、実際の批判は時代の経過によって希薄になっている。
ただ、個人情報として一元化されて容易に確認できるため、個人情報の流出のリスクが高まる懸念が生じている。
すでに個人情報保護法に基づいた管理を自治体、行政機関、民間企業などに適用しており、民間においてはプライバシーマーク制度による厳重な情報管理と運用を保証する制度が確立されている。
しかしマイナンバーという他の事業や行政にも影響がある重大な番号を管理することとなるため、関係機関にはさらなる法の遵守、情報の管理に気を付ける必要がある。もっとも、これはマイナンバーの交付を受ける本人自身にも言えることであり、本人自身がむやみに他人にマイナンバーを教えることで詐欺被害などにあうリスクも懸念されている。
マイナンバーに限らず、個人情報の流出を100%を防ぐことは不可能であるため、「いかに個人情報を漏らさないようにするか」ではなく、「自分の個人情報は既に漏れている」という認識を持ち、「自分に近づいてくる怪しい者からどうやって自分の身を守るか」といった正しい知識(護身術)を身に付けておいた方が早いかもしれない。
高額所得者への影響
一方でマイナンバー制度によって個人及び法人の財務状況が容易に確認できるため、それに懸念を示す高額所得者や大企業などが国外に住居、拠点を置くのではないかという懸念があるという。
また、国及び地方への納税の多くが高額所得者によるもので、彼らが海外に移住して外国籍を取得すれば、税収の低下が生じ、財政破綻が一気に加速する恐れがある等の指摘があるらしい(しかし個人情報の漏洩を懸念するならともかく、当局に財務状況を把握されると不都合が生じると言うのはおかしな話だ。なぜならマイナンバー制度の有無に拘わらず納税はしなければならないものであり、マイナンバー制度によって財務状況が把握されると困るから海外へ逃げ出すというなら、制度導入前は脱税できたが、導入後は脱税が難しくなるから海外へ逃げると言っているようなものであり、制度導入に反対する論拠としての正当性は皆無である)。
なお、国税当局はこれに先立って国外財産調書制度を創設したり、タックスヘイヴン税制の強化に乗り出すなど、先手を打って目を光らせていることは言うまでもない。
関連動画
関連商品
関連項目
外部リンク
-
マイナンバー社会保障・税番号制度(内閣官房)
- マイナンバー(社会保障・税番号制度)(首相官邸)
- 社会保障・税番号制度<マイナンバー>について(国税庁)
- 社会保障・税番号制度(社会保障分野)(厚生労働省)
- 社会保障・税番号制度 (内閣府)
- マイナンバー どうなる暮らし(NHK)
脚注
- *外国人のみなさまへ、マイナンバーについてお知らせです
2016.4
- *スマホで1分で終了。マイナンバーカードの保険証利用を申し込んでみた
2020.8.8
- *「決裂する世界で始まる金融制裁戦争」渡邉哲也 2017 徳間書店 p.213
- 15
- 0pt
https://dic.nicovideo.jp/t/a/%E3%83%9E%E3%82%A4%E3%83%8A%E3%83%B3%E3%83%90%E3%83%BC%E5%88%B6%E5%BA%A6