マイネルグロン(Meiner Grand)とは、2018年生まれの日本の現役競走馬。青鹿毛の牡馬。
2021年のオークス馬ユーバーレーベンの叔父に当たる、ビッグレッドファームの活躍牝系の一員。
主な勝ち鞍
2023年:中山大障害(J・GI)、東京ハイジャンプ(J・GII)
2024年:阪神スプリングジャンプ(J・GII)
概要
父ゴールドシップ、母マイネヌーヴェル、母父*ブライアンズタイム。
まず父ゴールドシップの戦歴はここでの詳しい説明は不要だろう。引退後は新冠町・ビッグレッドファームの父ステイゴールドが使っていた馬房に入り、文字通り日高方面での父の後継を務めることになった。本馬は2世代目産駒で、姪に相当するゴールドシップ産駒初のGI馬・ユーバーレーベンと同世代である。
いっぽう母系はビッグレッドファームではトップ格の競走実績を出している。本馬の祖母*マイネプリテンダーは、マイネル軍団の岡田繁幸総帥がニュージーランドから導入した同牧場の基幹繁殖牝馬で、ステイゴールドとの間にマイネルネオス(中山グランドジャンプ)、*ブライアンズタイムとの間に本馬の母マイネヌーヴェル(フラワーC)・マイネルアワグラス(シリウスS)・マイネルチャールズ(弥生賞、京成杯)と、10歳で亡くなるまでに産んだ5頭中4頭が重賞馬という優秀な成績を残した。
母マイネヌーヴェルは末脚を武器に2003年のフラワーカップを制覇。牝馬クラシック戦線ではスティルインラブに敗れ、その後は屈腱炎に泣き重賞2勝目は挙げられなかったものの、引退後はマイネプリテンダーただ一頭の娘として牝系を繋いだ。本馬は母の10番仔だが、マイネヌーヴェルは2年後の2020年に本馬の全妹ヴァイルマティを出産した直後、息子の大成を知ることなく亡くなっている。
また本馬の半姉マイネテレジアの産駒にユーバーレーベン(オークス)・マイネルファンロン(新潟記念)がいる。
以上、障害絶対王者・オジュウチョウサンを生んだ父系に、J・GI勝ち馬を産んだ実績のある母系を合わせた、障害競走そりゃ走るわという血統の持ち主である。ステイゴールド産駒のゴールドシップと、マイネプリテンダー産駒のマイネヌーヴェルとの間に生まれた馬なので、血統的には「半分マイネルネオス」と表現することもできるだろう。ユーバーレーベン目線だと「私のパパとお婆ちゃんが子どもを!?」ということになるが、競走馬の世界ではよくあることなので…。
美浦・高橋祥泰厩舎→青木孝文厩舎(2022年3月~)所属。馬名は冠名+フランス語で「雄大な・気高い」。
マイネルグロン とぶ
平地時代
さて、「父ゴールドシップ・母父ブライアンズタイム」。これを聞いただけでも多くの人が「重いな…」「凄くズブそう」といった印象を抱くことだろう。丹内祐次を鞍上に迎えた2020年9月12日の新馬戦(中山芝2000m)では早速出遅れをかまして12着。2戦目は3着と盛り返したものの、3戦目から柴田大知に乗り代わった後も出遅れ癖が出てなかなか勝ち上がれない。同じファミリー・同世代のユーバーレーベンがこの春に亡くなったラフィアンの岡田繁幸総帥に捧げるオークス勝利を挙げる中でも未勝利戦で苦闘しており、そうこうしている間に夏競馬。9月5日、新潟競馬場芝2200mの未勝利戦。事実上のラストチャンスでも出遅れかまして2着止まり。
ここまで新馬・未勝利戦10戦して2着4回・3着1回。まったく誰に似たんだという感じだが、お爺ちゃんはGIの舞台でそれだったから、「主要勝鞍:阿寒湖特別」でも並のGI馬より稼いでいたし、収得賞金だってどんなレースにも大手を振って出走できた。未勝利戦で2着だらけでは大問題なのである。……これはゴールドシップ産駒には割とありがちなパターンで、賢いので自己条件なりに頑張って走りはするのである。しかし決め手不足だったり、得意な長距離の番組が少なかったりで、善戦止まりで勝ち上がりに苦労する。そしてダートは苦手な種牡馬なので、地方競馬に移籍すればそっちでは無双、ともなかなかいかない。マイネルグロンもそういうパターンかと思われた。
10月3日、ラフィアンの奥の手ミルコ・デムーロをつぎ込み、1勝クラス戦(中山芝2200m)にて「泣きの1回」に挑んだが7着に終わった(このレースの勝ち馬ブレークアップは後にアルゼンチン共和国杯を制している)。
障害転向で才能開花
ここで、グロンは障害競走へ転向してJRAでの現役続行のチャンスをもらった。12月19日の転向初戦は4着、4歳となった2022年1月の2戦目は2着。高橋師の定年に伴う厩舎解散による青木厩舎への転厩を挟み、3月5日の障害転向3戦目の未勝利戦(中山2880m)で、五十嵐雄祐を背に待望の初勝利。しかし、その直後に美浦トレセンでのプール調教で転倒、眼を打ち付けて右眼窩骨折を負ってしまった。幸い視力に影響はなかったものの、骨が癒着するまで放牧・休養に出されることになった。
4ヶ月の休みを経て、初の重賞挑戦となった2022年7月の新潟ジャンプステークス(J・GIII)で復帰。ここは9着と跳ね返されたが、秋戦線も清秋ジャンプステークス2着など好調を維持して4歳を終えた。
5歳(2023年)
5歳となった2023年は年始から障害オープンを2連勝。その後夏場を全休したが、放牧先でもうっかりさん振りを発揮し、隣の放牧地に牝馬がいると思いこんで馬っ気を出しブヒブヒ鳴いていたが相手が牡馬だと気づいて鳴くのをやめただの、牧柵に突っ込んで破片が首に刺さっただの(後者はシャレになってないが)話題を提供。勘違いして牡馬にブヒブヒ言っていた話はスポーツ紙等ではなくラフィアン公式からの発信である。やめて差し上げろ。
初重賞:東京ハイジャンプ
半年の休みの後、10月15日の東京ハイジャンプ(J・GII、3110m)にて復帰。この年の中山GJ勝ち馬イロゴトシ、前年の中山大障害勝ち馬ニシノデイジー、障害重賞2連勝中のジューンベロシティらの有力馬が集う中、石神深一騎乗のマイネルグロンは序盤中位からスムーズな飛越を続け徐々に順位を挙げる。2番手で最終直線に入ると逃げるホッコーメヴィウスを捉えて最後は2馬身半差をつけ重賞初制覇。
ビッグレッドファームの名物一家にまた新たな重賞馬が加わった。青木孝文調教師にとっても初の重賞勝利であり、ビッグレッドファームに就職して馬の世界に飛び込んだ青木師にとって縁を感じさせる勝利となった。ゴールドシップ産駒では初の障害重賞勝鞍かつ、2019年の札幌2歳Sを制したブラックホール以来の牡馬の重賞ウィナーとなる。
障害界のニューヒーローへ:中山大障害
続いて年末の大一番、中山大障害(J・GI、4100m)へ。青木師も「東京HJは仕上げ途上だったが勝ってしまうとは。まだまだ良くなる」、引き続き騎乗の石神も「これで負けたら乗り役が悪い」と自信を見せる順調な調整ぶりで、当日は単勝2.0倍の1番人気に推された。
2枠3番からスタートしたグロンはまず中団に控える。最初のメインスタンド前では首を上げてしきりに行きたがる素振りを見せたが、向正面にかけ折り合いをつけた。その後はスムーズな飛越で徐々に順位を上げ、前年覇者ニシノデイジー、6番人気ビレッジイーグル、そしてマイネルグロンの3頭が後続に大差をつける展開となる。最終周回、向正面の竹柵を越えたところでニシノデイジーを捉えて先頭へ。その後も脚色は衰えず、2着ニシノデイジーに10馬身差をつけてゴール。
石神騎手は中山大障害5勝目、前年に絶対王者オジュウチョウサンが引退した戦国障害界の中で新たな若きパートナーを初GIへと導いた。青木孝文調教師にとってはうれしい初GI勝利。ゴールドシップ産駒としては初の障害GI産駒・初の牡馬GI産駒となった。
そしてマイネル冠名のラフィアン所有牡馬のGI制覇は2013年のNHKマイルカップ、マイネルホウオウ以来。この日は阪神カップをウインマーベルが制しており、天国の岡田総帥も笑顔が絶えなかったことだろう。
2023年JRA賞では、295票中279票を獲得して最優秀障害馬に選出。マイネル軍団のJRA賞受賞は1996年マイネルマックス・2004年マイネルレコルト(どちらも最優秀2歳〔旧3歳〕牡馬部門)以来3頭目で、古馬部門での受賞は初となる。
6歳(2024年)
王者完勝:阪神スプリングジャンプ
2024年は名実ともに新王者として挑戦者を迎え撃つ立場となったが、まず年明け初戦は阪神スプリングジャンプ(J・GII、3900m)。やはりスタート直後は行きたがる面も見せたが石神は折り合いに徹し1周目は5番手で進行。2周目向正面から前を捉えにかかると3・4角中間の生垣飛越でもう先頭へ。最後は後続の争いを後目に鞭も必要なく、2着エコロデュエルに7馬身差で余裕の勝利。斤量差2kgでも他馬を圧倒する内容であった。
まさかの敗北と故障:中山グランドジャンプ
そして春の本番、4月13日の中山グランドジャンプ(J・GI、4250m)。昨2023年、前の中山大障害覇者ニシノデイジーはこの中山GJを落として以降苦戦しており、冬の大一番とはまた違う上がりの速さを試される一戦であった。
とは言え、昨年からの破竹の連勝で早くもオジュウチョウサンを継ぐ障害の大王者誕生を多くのファンが予想しており、単勝1.1倍(2番人気の前年覇者イロゴトシでも12.2倍)の圧倒的支持にそれは表れていた。マイネルグロンは前走比-2kgの514kgに仕上げ、充実の状態と見えたのだが…。
ところが。マイネルグロンは出足がつかず後方からのスタート。あらら、6歳だしそろそろあのシロイオヤジのズブさが出てきたか?まあグロンの飛越の上手さなら障害ごとに自然と順位は上がっていくだろう、何も焦ることはない……皆そう思っていた。ところが、この日のグロンは連勝中の掛かるほどの前進気勢も見られず、飛越のキレもいま一つでなかなか順位を押し上げられない。最終周回でも伸びはなく、イロゴトシが2連覇を達成する中、6着敗退に終わった。
しかし、まさかの敗北…だけでは済まなかった。入線後、右前肢跛行により石神騎手が下馬したのである。一応自力で馬運車に乗れる程度の状況ではあり、大したことはないことをファンは祈っていたのだが……
翌週金曜の19日、「右前深屈腱炎により、9ヶ月以上の休養を要する見込み」との診断結果が発表された。
この一族は母系祖マイネプリテンダー以来脚部不安がつきまとっており、母マイネヌーヴェルや叔父マイネルネオス、半姉マイネテレジアやその子ユーバーレーベンも故障に泣かされた。血統の不安要素がよりによって調子絶頂の時に故障として現実になってしまった形だが、まだ6歳、障害競走馬としてはこれからの年齢であり、復帰に向け療養を図っていくこととなる。
だがステイゴールドの血は伊達ではなかった。当初見込みよりも早く、11月3日の福島競馬場の3歳以上1勝クラス(芝2600m)での復帰となった。先述した通り、彼は3歳の時に勝ち上がりがかなわなかった馬なので、1勝クラスへの格上挑戦となるが果たして。
血統表
ゴールドシップ 2009 芦毛 |
ステイゴールド 1994 黒鹿毛 |
*サンデーサイレンス | Halo |
Wishing Well | |||
ゴールデンサッシュ | *ディクタス | ||
ダイナサッシュ | |||
ポイントフラッグ 1998 芦毛 |
メジロマックイーン | メジロティターン | |
メジロオーロラ | |||
パストラリズム | *プルラリズム | ||
トクノエイティー | |||
マイネヌーヴェル 2000 黒鹿毛 FNo.6-b |
*ブライアンズタイム 1985 黒鹿毛 |
Roberto | Hail to Reason |
Bramalea | |||
Kelley's Day | Graustark | ||
Golden Trail | |||
*マイネプリテンダー 1995 黒鹿毛 |
Zabeel | Sir Tristram | |
Lady Giselle | |||
Giladah | Mill Reef | ||
Nouvelle Star |
クロス:Hail to Reason 5×4(9.38%)
父ゴールドシップはGI6勝。父父ステイゴールドからは障害王オジュウチョウサンや中山グランドジャンプ勝ち馬マイネルネオスが出ている。
母マイネヌーヴェルはフラワーカップ勝ち馬。祖母マイネプリテンダーはニュージーランド産でビッグレッドファームに導入され、マイネヌーヴェルの他にもマイネルネオス(中山GJ)・マイネルアワグラス(シリウスS)・マイネルチャールズ(弥生賞、京成杯)と、わずか10歳で亡くなる前の産駒5頭から4頭が重賞馬という優秀な成績を残した。唯一の牝馬産駒であるマイネヌーヴェルが牝系を繋いでいる。
半姉マイネテレジアの産駒にユーバーレーベン(優駿牝馬)とマイネルファンロン(新潟記念)。
関連動画
関連リンク
関連項目
- 競馬
- 競走馬の一覧
- 2021年クラシック世代
- ゴールドシップ(父)
- ステイゴールド(父父)
- ブライアンズタイム(母父)
- マイネルネオス(母の半弟)
- ユーバーレーベン(半姉の子)
- マイネルファンロン(半姉の子)
親記事
子記事
- なし
兄弟記事
- ソダシ
- リフレイム
- ダノンザキッド
- メイケイエール
- エフフォーリア
- ユーバーレーベン
- シャフリヤール
- ピクシーナイト
- バスラットレオン
- タイトルホルダー(競走馬)
- ファインルージュ
- ステラヴェローチェ
- ソングライン
- ジャックドール
- フライトライン
- バーイード
- アリーヴォ
- シャマル(競走馬)
- EST(競馬)
- テーオーロイヤル
- ロマンチックウォリアー
- カリフォルニアスパングル
- レモンポップ
- レベルスロマンス
- ドバイオナー
- イグナイター(競走馬)
- プログノーシス
- スルーセブンシーズ
- ディヴィーナ
- アイコンテーラー
- ペプチドナイル
- ローレルリバー
- インペラトリス
- テンハッピーローズ
- ヴォイッジバブル
- ノースブリッジ(競走馬)
- ブレークアップ
- ディクテオン
- ソウルラッシュ
- ポエティックフレア
▶もっと見る
- 16
- 0pt