概要
1977年から79年まで週刊少年チャンピオンに連載された伝説のギャグ漫画。
沖田 総司(おきた そうじ)・金藤 日陽(きんどう にちよう)・膝方 歳三(ひざかた としぞう)の3人が主人公。
基本的に真面目な沖田が常識のないふたりの言動に巻き込まれる、という展開。
物語は新入生の沖田そうじが下宿先の「ほうれん荘」で、落第生のふたりと出会うところから始まる。
一見クールでハンサム、サングラスにヒゲの「トシちゃん」と、少女マンガのような眼とセクシーな唇の「きんどーさん」が登場すると、あとはもうムチャクチャなギャグの連発と荒唐無稽なストーリーで読者を「ほうれん荘」の世界へ巻き込んでいく。
新しいギャグの世界が多くの若者に支持されたが、単行本にして9巻で連載は唐突に終了して、作者の鴨川つばめ共々伝説と呼ばれるようになった。
一般的にギャグ漫画ではキャラクターはデフォルメされた記号的なものとなりがちだが、この作品では、キャラクターはリアル寄りである。しかも、コマごとに着ている服が違うと言っても過言ではないほどファッショナブル。もちろんギャグシーンでは大きく崩れるが。
そして、作者のロックとミリタリー、特撮怪獣モノへの傾倒により、それらのパロディやウンチクが随所に散りばめられている。中には一回丸々ミリタリーのシチュエーションコメディとなっている回も幾度かある。また兵器の描き込みへの情熱も尋常ではなく、トシちゃんときんどーさんのおふざけへのツッコミに1ページ丸々の戦艦陸奥の絵を描いて、40センチ主砲一斉射撃でツッコんだこともある。
扉絵も毎回ロックアーティストのアルバムジャケット等の要素を取り入れたのかアーティスティックな物が多く、中には幼女の裸など現代ではかなりヤバイ題材もあるが、あくまでアートである。
いずれにしても、編集者の拙い文章力では面白さの1%も伝わらないと思うので、実際に読んでみることをオススメする。トイレや電話(しかも黒電話)が共用のアパート描写など、さすがに時代を感じるものもあるが、古い作品だからと敬遠することなく読んでみれば引き込まれることだろう。
連載終了間際の1979年7月20日〜8月1日にかけては、初のカラー原画展が松屋デパート浅草店4階書籍売り場にて開催されていることが確認されている。会期は休業日を除いた12日間で、これがマカロニ初の原画展とされている。
連載終了から40年近くが経過した2018年5月に東京・中野ブロードウェイで39年ぶりに原画展が開催され、全国から多くのファンが詰めかけた。ここには、書き下ろしの近作カラーイラストも展示されている。
8月には巡回し、大阪・あべのandで、200枚近くの原画を展示する「マカロニほうれん荘展 in 大阪-MACARONI IS ROCK!-」が開催された。
鴨川の選曲によるロックミュージックが流れる会場では、グッズ販売も実施されたのである。なお、両会場共に入場無料かつ原画撮影自由というかなりの大盤振る舞いであった。
連載終盤期の1979年33〜35、39、40号に掲載された5話分の単行本未収録作品があり、そのうち34号の「ニコニコ大戦争!!」のみ、電子書籍版のセレクション版3巻目に当時のカラー掲載のままで収録されている。それ以外は当時の掲載誌でしか読めないが、国立国会図書館には全作品収蔵されている。但し、使用されているインクの質の関係で、39号掲載の「真夏の夜の夢!!」は裏写りが非常に激しくなってしまっている。
マカロニ2
1980年に「マカロニほうれん荘」の続編として連載。しかし、僅かな連載で打ち切りとなり、単行本1巻にとどまっている。
前作主人公のそうじは脇役に回り、きんどーさんとトシちゃん、そして新たになんだ馬之介が加わったトリオが主人公となっている。やがて真実一路(しんじつ いちろう)というクソ真面目な右翼っぽい学生がメインに加わる。
主な登場人物
主人公三人組
- 沖田そうじ(おきた-)
- 主人公。絵を描くことが好き。15歳にしてアパート「ほうれん荘」に一人で下宿し、実家から離れた高校「ピーマン学園」に通っている。しかし、入学初日からきんどーさんとトシちゃんに部屋にいつかれてしまい、二人のハチャメチャな言動に巻き込まれることになる。いわゆるツッコミ役であり、「いーかげんにしてください!」「もーいや、こんなせーかつ!」などがキメ台詞。名前のモチーフは新選組の沖田総司。
- 金藤日曜(きんどう にちよう)
- そうじの部屋にいつくことになる落第二十四回生。大学を落第して高校に戻ったという経歴の持ち主。40歳。分厚い唇につぶらな瞳がキュートな「オカマ」である。自らは「◯◯の乙女きんどーちゃん」と呼び、言動は完全に性別を超越している。「やーねぇ」が口癖。膝方と二人で周囲を巻き込んでの悪ふざけをするのが大好きで、二人が破壊的なギャグをして周囲の人物たちがズッコけ、最後にはそうじがツッコむのが黄金パターン。名前と容姿のモチーフは新選組の近藤勇とセックス・ピストルズのジョン・ライドン。しかし、連載が進むと容姿はしだいにデフォルメが強くなってモチーフの面影は殆どなくなるが。
- 膝方歳三(ひざかた としぞう)
- 同じくそうじの部屋にいつくことになる落第十回生。25歳。七三分けの髪型に常にかけているサングラス、口ひげが特徴の青年。当時の言葉で言えばハンサム、今風に言えばイケメンであり、高校の生徒達からは「先輩」と呼ばれ慕われている。「トシちゃんかんげきーっ!!」「ちょーっ!!」などの一発ギャグを繰り広げ、その時は口角がひし形になる。蟷螂拳のようなカマキリの要素をもつ不思議な拳法の使い手でもある。女性からもかなりモテるが、本人は特定の相手を決める気は無いらしい。ある理由により定期的に人格が入れ替わり(記憶は共有)、童話作家「七味とうがらし」というもう一つの顔を持つ。名前のモチーフは新選組の土方歳三。容姿のモチーフはブライアン・フェリー。
主要キャラクターたち
- 姫野かおり(ひめの-)
- 「ほうれん荘」の大家の娘。ショートカットで長身の魅力的な女性。23歳にして喫茶店「アップルハウス」を切り盛りする。そうじにとっては憧れのお姉さんである。空手を趣味とし、大の男三人をのしてしまったこともある。また、その空手技での物理的ツッコミが家賃滞納常習犯であるきんどーさんやトシちゃんに炸裂することも少なくない。だが、トシちゃんにたいしてはある種のツンデレ的感情もある模様。
- 後藤熊男(ごとう くまお)
- そうじのクラスの担任教師。実はきんどーさんと大学の同期で40歳。「ゆかり」という妻と「熊太郎」という息子がいる。年の割には寂しい髪の毛と濃い体毛のせいで老けて見える。ちょっと熊を思わせる風貌からきんどーさんたちからは「クマ」と呼ばれている。いたって真面目な教師だが、ノリが異常に良くてきんどーさんやトシちゃんの騒動にたやすく巻き込まれ、授業を妨害されてしまっている。そのたびに「ノォッ」と叫ぶのが口癖。特に二人が教室でロックライブを行うとフレディ・マーキュリーなどのコスプレでボーカリストとして活躍してしまい、生徒たちからは「戦慄のハード・ロッカー、ミスターノオ」と呼ばれているほど。
- 八千草文子(やちぐさ あやこ)
- 「ピーマン学園」の教師の一人。可憐な美人として描かれており、この作品のギャグ時空の中でも崩れることが殆どない。トシちゃんにとって女性として意識している数少ない存在であり、唯一と言っていい頭の上がらない人物。
- 益田弘美(ますだ ひろみ)
- そうじのクラスメイトで彼女。おとなしく真面目な、ある意味このギャグ作品の中では最もまともな人物。いつの間にか付き合っており、周囲にも秘密にしていたがきんどーさんたちに嗅ぎつけられてしまう。きんどーさんたちによって派手に公表され(彼らにしてみれば応援しているつもりだった)、そうじが秘密を漏らしたと彼女が思い込んだことから一旦破局。だが、なんのかんのと寄りが戻り、中嶋姉妹というライバル出現も乗り越えて、順調に交際を続けている。
- 中嶋敦子(なかじま あつこ)
- そうじのクラスメイト。そうじに一方的に懸想し、弘美との中が破局状態だった時期に接近。実は暴力団の組長のお嬢様でワガママかつ独善的な性格で喫煙もしている。そうじに対して肉体関係の既成事実を作ろうとしたがきんどーさんたちに阻止される。その後もそうじを拉致するという強硬手段に出たり、テディ・ボーイズをやとって強迫行為をさせたりしたが、いずれも失敗。やがてレズ関係にある女番長の少女A子に「カタギになる」と語ったのを最後に舞台からフェードアウトしている。
- 中嶋麻美(なかじま あさみ)
- 敦子の妹。小学生ながらマセた少女で、姉以上に女の武器の使い方を心得ている。そうじを「お兄ちゃん」と慕い、姉すらも出し抜こうとすることがある。だが最終的にそうじに諭されて涙ながらに諦めることとなった。
- 前田馬之介(まえだ うまのすけ)
- いつも垂らしている鼻水と「うーんなんだー」という口癖がトレードマークのとぼけた男。初登場時は「ラーメンの伸びて腐ったような」ときんどーさんに毛嫌いされるような鈍くてだらしのない男として描かれた。だが再登場で「なんだ馬之介」と名乗り、おとぼけは相変わらずながら中々に切れ者な面も見せるようになり、きんどーさん、トシちゃんと組んでのギャグトリオ的な存在になっていく。名前のモチーフは新選組隊士の上田馬之助。
- 女子大生トリオ
- トシちゃんのファンである女子短大生3人組。最年長のメガネっ娘白水由紀子(しらみず ゆきこ)、黒髪ロングの片メカクレの娘中野そう子(なかの-)、「キャイーン」とか語尾に「~ですわん」といった非常に特徴的な口調のブリっ子斎藤ルミ子(さいとう-)。いずれもトシちゃんを「トシさま」と呼び、積極的なアプローチを仕掛けるが、最年長の由紀子は物語の後半で別の男性と結婚している。
- テディ・ボーイ・ギャング団
- いつか大スターになる日を夢見る駆け出しのバンドマン3人組。リーダー格の伊達兄樹(だて あにき)、金髪リーゼントの森田和弘(もりた かずひろ)、ちょっと厳つい顔の沢松英二(さわまつ えいじ)。暴走しがちな伊達に引っ張られて森田と沢松がフォローに回って苦労する場面が多い。昼間は主に建設業などのアルバイトで金を稼ぎ、夜は場末の酒場でステージに立っている。中嶋敦子の実家とも繋がりがあるチンピラでもあり、敦子の依頼でそうじに因縁をつけて弘美との仲を引き裂こうとしたが、そうじの男らしい覚悟をみて途中で思いとどまったり、気のいい面を見せている。
- ススキ小次郎(-こじろう)
- トシちゃんのライバルを名乗る武道家。「ネズミ流空手」の使い手で、幼少の頃からかれこれ20年以上因縁の関係にある。主人公3人組と一緒にピクニックに来ていたかおりに出会って一目惚れ。以降は「かおり姫」と呼んで慕っている。とにかくトシちゃんとは出会ったら戦う宿命にある(と本人たちが勝手に決めている)ので、わざわざ「ほうれん荘」にもやってきたりしている。いつの間にかラッシーという犬歯の大きな人語を喋れる犬(ただし外見はどう見てもネコ科の動物。小次郎が犬と勘違いしているのだろう)を相棒にしている。
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関連項目
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