マシンXとは、日本の刑事ドラマ「西部警察」に登場する架空のパトカーである。西部警察で最初の特殊車両である。
概要
ベース車はKHGC211型スカイライン2000GTターボ(グレードは2000GT-E)である。52の特殊装備をもち、300PS/7400rpmの出力と41kgf・m/4400rpmのトルク、最高時速は240km/hを誇る。特殊装置搭載スペースの関係で定員は1名である。塗装は黒でホイールはカンパニョーロのゴールドを採用、足元のアクセントとなっている。これ以降に登場する各種マシン軍団の礎を作った車両であり、一見して市販車と変わりないスタイルは現在においても人気がある。
劇中では初期はターボ車と呼ばれ、マシンXとは呼ばれていなかった。いつからかマシンX、もしくはM-Xと呼ばれるようになった。ドライバーは大門が乗る事が多かったが、序盤ではリューが運転する事も多かった。谷と係長以外はほぼ運転経験がある。但し、ゲンだけは1回しか乗っておらず、大門に「似合わないんだよ」と言われて取られてしまった事も。また、ジョーは盗難された際に当事者となったりしているためか、マシンXに対する愛着が強いようである。後述するとおり、パート3においては彼がラストドライバーとなった。
パトランプも最初期は屋根上に乗せていたが、その後は車内に搭載するスタイルをとっている。このスタイルは非常に新鮮であり、刑事ドラマでこれを模倣するスタイルも一時期見受けられた(但し、特に夜間走行では非常に眩しくなる上、神奈川県警などパトランプ屋根上2個置きがスタンダードの所もある為、いつしか廃れていった)。
初登場~退役~”殉職”
初登場は西部警察45話「大劇走!スーパーマシン」であり、木暮課長が依頼して作らせたものであり、”新人”という事で当初は大門更迭かと係長に言われた。一番最初に運転したのはリューであり、東名高速で逃走する犯人を追跡した。なお、この時の撮影はどうやら無許可の模様で路肩走行や大胆な車線変更など後にも先にもこれほどまでのカーチェイスの撮影は存在せず、今もって語り草となっている。これについては後ほど、警察よりきついお叱りがあったが、当時の時代のおおらかさを感じさせるものである。当時としては明らかに時代の先を行く車両であったので、犯罪者に盗難にあったりと色々危険な場面はあったが、番組のトリを飾る事が多いこの車両は数多くの犯罪者を追い詰めたりと画面狭しに大活躍を見せた。
西部警察パート2の「男たちの絆」をもって退役、「ニューフェイス!西部機動軍団」からは後継のスーパーZ、マシンRSにその道を譲る。
その後は警視庁の特殊車両ガレージに警視庁との回線をカットした上で厳重に保管されていたが、パート3「戦士よ、さらば」で北条刑事に恨みをもつ元自動車メーカー技術者の手により2度目の盗難をされる。そして彼の研究していた無人運転の技術を応用した、遠隔操作で操縦出来るような改造をされ、時限爆弾を搭載される。RS軍団によって最終的には遠隔操作のコードを解除することに成功するが、残り時間がわずかになり空き地に進ませ、北条刑事は「マシンX、すまん、許してくれ!」と言いながらマシンXを止めたあと、爆破をした。
木暮課長はその最期を課長室にて悼んだ。マシンXはただの車ではなく、まぎれもなく大門軍団の一員だったであろう。
特殊装置
それまでの「大都会シリーズ」の後継の雰囲気であった西部警察の方向性を決定づけたこのマシンには、現代の警察車両や一般車にも実用化されている装備がある。現代としては当たり前であってもその当時としては夢のまた夢のような装備であった。赤字は最終話において敵に捕まった際に改造されたところ、紫字は後述のレストア時に追加されたところ。
- サーチライト
これによって、暗がりにあっても犯罪者を発見しやすくなる。稼働は劇中では左右に動いていたが、上下にも動く - スチールカメラ
逃走車のナンバーや犯罪現場の撮影などに使われた。後期においては撤去されている - 車載コンピューター
警視庁のデータベースとリンクしている。また各種計算も行える。イッケンラクチャク - 着色塗料発射装置
現代でいう所のカラーボールみたいなものだが、それだけではなく電波を発信しており、マシンX内のモニターにどこにいるかがわかるようになっている。これが殉職回でのヒントとなる - 特殊無線機
警察無線はもちろん、船舶無線やアマチュア無線などの各種無線を受信できる。 - 自動車電話
そのものずばりである。 - 増設メーター
タコメーターや240km/hまで書かれたスピードメーター、電圧計などが増設されている。
但しこれは演出用で、20km/hで走行中に50km/hを示すなど、歯車比を変えてある。 - 車載モニター
コンピューターと連動して、現代でいう所のカーナビ機能や前科者のリストの閲覧等が可能 - 増設燃料タンク
高性能化により、燃費が悪くなっているためであろう - 自爆装置
木暮課長の部屋にあるスイッチで発動可能。悪人の手に渡った際の情報漏えい対策 - ビデオカメラ
スチールカメラのあった部分に設置されたもの。無線操縦者に映像を送る - 無線操縦装置
アクセル・ハンドル・ブレーキを制御できるが、このコントロールは1キロ以内でしか有効でない - ETC車載器
レストア時に高速道路での自走に備えて追加された。カードリーダーは車載モニターの左横に装着
実用化例
- ビデオカメラ
採証用として、主にトヨタ・クラウンやスバル・レガシィなどのダッシュボードに取り付け - 車載モニター
カーナビやカーロケーターシステムに使われている - 着色塗料発射装置
2002年に和歌山県警察で暴走族取り締まりの為に設立された「黒豹隊」の特殊バイク「銀虎」(ホンダ・ホーネット)に、カラーボール発射銃として採用された(電波は発しない代わりに、後日摘発する為の証拠となる)
発進シーケンス
エンジン音と共に「M-X」と書かれたシャッターが上に開いて発進する。なお初期においては西部署の下の部分から、左後方からの斜めカットで発進するシーケンスであった。シャッターの開閉音はヘリコプター等のジェットエンジンの始動音のような感じである。
マシンXの始動方法
マシンXの始動方法はレースカーのそれと非常に似通ったものとなっている。
影武者マシンX
実際の撮影に登場したマシンXは本物以外にもアクション用に使われる影武者が数台ほど存在する。パート2以降のEDではマシンXが2台映っている事が確認できる。また激しいカーアクションや車内からの撮影の場合、影武者のマシンXが使用される。本物との違いは車内の助手席部分にシートが見える事や、パトランプの位置が前寄りになっている事(※)、車内のロールバーの有無である。ちなみに実車には金のストライプが入ってるが本物のマシンXは助手席側に撮影用のビデオカメラを止めていた為、その部分が一部はがれている。
(※本物のマシンXはメーターケースの上に置かれる事が多いので位置的に車内寄りになっている)
「戦士よ、さらば」のマシンX
殉職の回で爆破されたマシンXは内外装こそマシンXと同等に仕立ててあるが、実はある意味影武者である可能性が高い。最後には爆破されたのは本物で現存しないと言う説が流れた程である。実際は放送終了後に一度展示されており、また後述するように本物は発見されたのだが、本物のマシンXと殉職回のマシンXとではいくつかの点で異なる点がある。
- ドアのストライプに欠けが見られない。
本物は走行中の撮影においてはドア部分にカメラ固定用のステーを幾度となく貼り付けていた為、シールの一部に剥がれが出ていた。それは映像からも確認でき、また本物発見時もその剥がれはそのままであった(後述のレストアでも欠損部分はそのまま残され、谷口信輝のYouTube動画でも紹介されている)。対して、 殉職回でのストライプはまるで綺麗なものになっている。 - インパネの形状
本物はマイナーチェンジ後の車両をベースとしている為、燃料計などの計器類が扇の形になっているのに対して、殉職回では丸型になっている。丸型はマイナーチェンジ前のスカGジャパンの特徴である。 - バンパー部の違い。
本物にはヘッドライトウォッシャーがあり、最終的には脱落してしまい(レストア時に復旧)、その跡はくっきり残っているが、殉職回のものは最初から装備されていないようなものになっている。また、鏡面になっている「TURBO」が白文字になっている。 - パワーウィンドウの有無
本物にはパワーウィンドウは装備されておらず、ウィンドレギュレーターである。
一説には状態の悪い前期のスカイラインの内外装をマシンXに仕立てたものと言う説が流れている。爆破の瞬間、いくつかの部品が取り外されている。
因みにこの話では無人の自動運転が話の大きなミソとなっている。今でもそうだが、その当時の技術では無人で運転させることは不可能なので、ドライバーは実際はトランクにいてそこから操縦していたと言う説が流れている。
小ネタなど
- マシンXのナンバーは「品川58 い 97-35」となっているが、「い」の所は営業用に使われるものであるので、本来はあり得ないナンバーとなっている。無論、これは撮影用のナンバーである。
- アップの画面においては「多摩58~」となっている画面もあるが、これは実車の本拠地が石原プロのある調布で登録をした関係である。これは黒パトにも当てはまり、同じくたまに本物のナンバーが出ているが、この場合も多摩ナンバーである。
- マシンXは改造をされている設定であるが、実際はほとんどノーマルでありエンジン音はアテレコである。このエンジン音の音源についてはハコスカGT-Rの音から撮っているというのがもっぱらの噂ではあるが、車内や一部の音源は音質的には4気筒に近いのでおそらくシルエットフォーミュラでS110シルビアやガゼール、R30スカイラインRSのエンジンでおなじみだったLZ20B型のものかと思われる。
- マシンXの製作費は3500万円である。これはベースの車が10台分以上である。現在の価値に換算すると1億円と言われる。
- 番組のスポンサーに自動車用ホイールを製造するエンケイが加わり、番組に出てくる車のホイールはエンケイ製に統一された際、マシンXにもワタナベ風の8スポークのシルバーが採用(PART-1第59話~)されたが、数話使用されたのちに再びカンパニョーロのホイールに戻っている(第63話~)。なお、”殉職”回の「戦士よ、さらば」では別のエンケイ製のホイールとなっている。
- 西部警察本編には、マシンXの他にボディカラーがシルバーのC210スカイラインジャパン前期型4ドア車が犯人車役・一般車役として多数出演していた(実は大都会PARTIIIの頃から出演していたりする)。この車はPART3で白く塗られて再度出演。この時はヘッドランプ・フロントグリルやテールランプ・リアガーニッシュが後期型ルックになっていた他、マシンXの特徴的なパーツがいくつか装着されていた。おそらく、上記のような影武者マシンXのパーツが流用されたのではないかと思われる。
発見
前述した通り、他のマシンと比べて媒体に登場する事がほとんどなく、「戦士よ、さらば」のラストなどから現存するかどうかがマニアの間で長年の話題となっていた。
そんな中で2014年に本物が保管、レストア中であることが明らかになった。30年近く稼働せずに保管されていたので、エンジン内のバルブが固着していたり、燃料タンクも腐食していたりとお世辞にも良い状態ではなかった。また激しい撮影を物語るかのようにいくつかの部品が欠品となったり、中の部品も流用されたりされていたためか、無線などの機器類は存在していなかった。
エンジンのレストアは完成しており、公道走行こそかなわないものの私有地での走行する姿は西部警察ファンを感動させた。
2019年に機器類を含めた全体のレストアも完了し、ナンバー(劇中に合わせた希望ナンバー)を取得して公道走行可能になり、高速道路での自走に備えてETC車載器が「53個目の特殊装備」として追加された。
外部リンク
- 劇中で使われた本物のマシンX で、西部警察ごっこしてきましたw
※レーシングドライバー谷口信輝の公式YouTubeチャンネルの企画で、本物のマシンXをお台場で試乗。
エンジンのコンディションが良くない為、3000rpmまでしか回せないが、シフトの入りなどは比較的良好な状態を保っており、40年以上前の走りは健在である。
関連コミュニティ
関連項目
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