マスケット銃とは銃の一種[1]であり、正式名称はマスケット(英語:Musket フランス語:Mousquet スペイン語:Mosquete)。先込め式[2]の単発銃である。炸薬の点火方式はマッチロック式(火縄式)、ホイールロック式、フリントロック式(火打石式)等、複数ある。
概要
- 原義は14-15世紀のスペイン軍の銃士(スペイン語:Mosquetero フランス語:Mousquetaire 英語:Musketeers)が用いる銃の名称である。この時代のマスケットは巨大で、2m近いサイズがあった。これは、アルケブス銃[3]の対義語として使われた。そのため、それらを扱えるマスケット銃兵はエリート兵として活躍した。[4]
- 一般的には17世紀以降西洋諸国にて主流となった1.5m程度の先込め式滑腔銃を示す。多くの場合それはフリントロック式の構造を持っており、着剣することができる。著名なブラウンベスはこのタイプのマスケットである。
- 狭義では竜騎兵(英語:Dragoon)[5]などにより使われたカービン銃やピストルを除く長銃身(ロングバレル)の歩兵銃を示す。
- 広義では先込め式銃一般総称。[6]
日本ではライフリングのない先込め式銃は、火縄銃の区分に入る。
利点
マスケット銃は弓よりも遥かに扱いが簡単で、素人でも一ヶ月の訓練で戦える程度に使いこなせ、しかもクロスボウと違って装填に力は不要だった。銃剣が発明されてからは白兵戦や対騎兵戦闘も可能となった。また、槍やSA80と違い、引き金を引けば銃弾が出るというメリットもあった(前装式ゆえに、後世の後装式銃と違い決して『ジャム』という現象が起こりえない)。
しかも不発にて銃弾が銃口からでなくても、すぐさま再コックして引き金を引けばやり直せるという安全性の高さも人気の理由であった。
欠点
マスケットの欠点としてまずあげられるのは、その命中率である。
実際の命中率に関しては学者でも諸説あるが、とある学者などは1000‰表示なのにコンマ以下になる数値を命中率として提示している。わからない人のために説明すると、千発に一発の命中率すら期待できないという事である。
この悲惨な命中率は、兵士たちの訓練不足以上にマスケット銃の構造的欠陥に起因する。
その構造的欠陥を論理的に説明するためには、弾薬の燃焼で発生したエネルギーから弾丸の回転に使用可能な余剰エネルギーを算出し、そこからその余剰エネルギーにより発生可能な弾丸の回転とその最高速度がもたらすことができるマグナス効果に関する計算式を使用しないといけないのだが、それはめんどくさいのでここには書かない。が、結局どういうことかというと、マスケット銃から発射された弾丸は野球の変化球以上に回転しており、そのため野球の変化球以上に曲がることが可能なのである。
どのくらい曲がるのかは未知数だが、一説をあげるとオーストリアの学者は100mの距離にて最大70cm曲がることが可能だとしている。もし狙いから70cmも銃弾がそれた場合、人体のどの部分を狙ったとしてもほぼ確実に外れることが明白である。
では、どうすればマスケットで戦果を出せるのか。この命題にはいくつかの解決法が示唆されている。主なものとして
- どこぞの魔法少女の如く、最大限まで火器を密集させ、戦線あたりの射撃密度を徹底的に上げ、「戦列歩兵」と呼ばれる様式を構成し、一斉射撃をおこなう数撃ちゃ当たる式解決法
- どこぞの殺戮メイドのように敵に見つからならないよう移動しつつ敵に向かって撃ちまくるゲリラ的解決法[7]
- そもそも銃撃なんて行わないロシア的解決法。
- 銃剣でぶっ刺して、零距離射撃。
- 馬に乗りながら銃撃したら最強じゃね?というカラコール(笑)的解決法。
- 夢がらいふりんぐ的解決法。
どこぞの吸血鬼を真似しホーミング弾的解決…すいません、やっぱ無理
などがある。ただし、根本的な解決はミニエー弾[8]の発明によるライフリングの普及を待たねばならない。
他の欠点としては、先込め式(マズルローダー)であることから、棒立ちの状態でなければ装填が著しく難しくなること[9]、素早く銃弾を装填しての連発が不可能、雨に弱いという点がある。連発の問題については、クロスボウと同じく部隊を数列に分けて順番に撃たせるor弾薬装填、雷管装着、発射を3人に役割分担させる、または機構的に連発が可能なマスケット銃を開発するなどの対策がとられたが、最終的には雷管や薬莢の発明によって元込め式(ブリーチローダー)が現実の話となるまで解決しなかった。
現代のマスケット銃
現代携行小火器としての銃の主流は連発が可能な連発銃であり、単発銃であるマスケット銃は歴史上の資料、美術工芸品としての鑑賞用、競技用、儀礼・祭典用として存在する。
日本の各地には「火縄銃~会」等の火縄銃演武団体存在する為、大きな祭典・イベントでは火縄銃の射撃実演が鑑賞可能である。蝉丸pも所有者
ただし、マスケット銃が歴史から姿を消したわけではなく、最近では反アメリカ抵抗勢力がアフガニスタンにて使用しており、アメリカ軍が彼らより没収した武器の中にマスケットをいくつか見つけることができる。また、中東某所にて老年の特殊工作員が使用したとの情報もある。
火縄銃を所有したい場合
言わずもかなだが、火縄銃は鉄砲刀剣類所持取締法(銃刀法)に抵触する。具体的には第二条の
および
の両者を満たすのが理由とされる。
ただし、十四条が
都道府県の教育委員会は、美術品若しくは骨とう品として価値のある火縄式銃砲等の古式銃砲又は美術品として価値のある刀剣類の登録をするものとする。
としているため、「古式鉄砲」は美術品として所持することは認められている。
とある。マスケットは構造上、発射機構が管打式以降になりえないため、全てのマスケットは古式鉄砲に含まれる。
よって、マスケットの所有自体は都道府県の教育委員会の許可さえでれば所持はできるといえる。これは犯罪歴や危険思想などが見られない場合、比較的簡単に通ることができる。ただ譲渡が基本的に禁止されているため、やはり所持は簡単ではない。
日本前装式銃射撃連盟のサイトの条件を見ると、マスケットの発砲には猟銃用火薬類許可書、猟銃用火薬類消費許可書、および公安委員会講習修了証明書もしくは銃砲所持許可証の保持が必要である。
鉄砲所持許可証は筆記試験および教習射撃にて順当な結果を収めなければならなく、それ以上に銃の取り扱いに関する安全性が重要視される。また、所持許可と同じように犯罪歴や危険思想などのチェックも入る。他にも全講習課程は数万円の講習料を必要とする事実がある。それと同時に所持志願者は黒色火薬の使用許可を取るため、猟銃用火薬類許可書、猟銃用火薬類消費許可書も必要とする。
関連動画
関連外部リンク
日本前装銃射撃連盟 公式ホームページ
https://zensoujyu.sakura.ne.jp/
関連項目
脚注
- *日本式の区分では火縄銃の一種
- *炸薬と銃弾を銃口から詰め込む方式のこと。マズルローダーとも言う
- *1.5m程度の先込めマッチロック式滑腔銃の事
- *アレクサンドル・デュマ・ペールの小説『三銃士』(フランス語:Les Trois Mousquetaires 英語:The Three Musketeers)に登場する「銃士」はこの意味である。だが、「銃士」であるにも関わらず、劇中三銃士達は銃を殆ど使わず剣戟ばかり披露する。
- *戦闘時には騎乗をしない、移動時のみ乗馬をする乗馬歩兵の時代と戦闘も移動も騎乗が主である騎兵(騎乗兵)の時代がある
- *海外ではヤーゲル銃やエンフィールド銃もライフル・マスケットとしてマスケットの区分にすることがあるが、日本ではそれらの銃はミニエー銃に分類されることが多い。
- *ただしこれはどちらかというとマスケット以上に装填時間に問題のあった、初期の前装式ライフル銃に対する解決法である。
- *銃弾の底に凹部を設けてコルクを詰めた銃弾。装填時には弾の直径がライフリングの径より小さいためスムーズに装填でき、発射時に火薬ガスがコルクを押すことで銃弾の直径を大きくし、銃弾と銃身のライフリングが噛みあうようになるという画期的な銃弾。
- *重力を利用して火薬を薬室まで流すので、装填の際は銃を立たせる必要があり、装填は膝をついた状態でも難しく、伏せるとほぼ不可能であった
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