マツタケ(松茸)とは、庶民の憧れの高級きのこである。
概要
ニコニコ大百科:菌類 マツタケ |
||
分類? | ハラタケ目キシメジ科キシメジ属 | |
学名? | Tricholoma matsutake Tricholoma→糸+房/matsutake→和名より |
|
ハラタケ目 Agaricales? | ||
このテンプレートについて |
ご存知高級きのこである。運よく手に入れたなら、焼きマツタケ・お吸い物・松茸ごはん・土瓶蒸しなどの料理でいただこう。
東アジアで食用にされるが、特に日本人に最も好まれているきのこである。「香りまつたけ味しめじ」といわれ好まれる独特の強い香りを持ち珍重される。分布域と深く関連して、マツタケは西日本で特に人気が高い(西高東低とたとえられる)。江戸時代から「まつたけ百匁は米一升」といわれるほどの、高級食材の代表的存在である。一方、欧米ではこの香りは悪臭として嫌われ、靴下の臭いや汗の臭いといわれ惨々な評価である。
生育環境
主にアカマツ林、その他コメツガ・ツガ・エゾマツ・アカエゾマツ・ハイマツ、稀にはクロマツなど、他の種類のマツ林にも生える。「シロ(白・城・代)」というコロニー(土壌中で菌糸が層をなすように広がったもの)をつくって、そこから輪を描くように生える。シロの場所は親兄弟にも教えない。まだ地面から顔を出さないうちに収穫されるので、シロの場所を知らないと見つけることは難しい。
マツタケがアカマツの下に生えることを知っていると、公園などでアカマツを見つけた時につい、根元にマツタケが生えていないかどうか探してしまうものだが、大体は残念な結果に終わる。マツタケの生える場所は主に樹齢15-30年のアカマツ林で、後述するように土壌などの条件も難しいのである。かつて日本では、江戸時代~明治時代までは西日本全域が生産地であったが、現在は丹波地方と広島県の山間部に産地がほぼ限られてしまっている。
林の中でも、特に痩せて乾燥した尾根筋に生える。「痩せて乾燥」という条件の土地はいかにも栄養が少なそうだが、マツタケはこのような場所を好むのである。むしろ、枯れ葉が積もって土の中の養分が多くなると、他の菌類との競争に負けてしまい発生しなくなってしまう。そのため、マツタケの生産地では積もった落ち葉を取り除くなどして、マツタケが生育しやすい環境を保っている。
かつて里山が今よりずっと利用されていた時代には、燃料や肥料に使うために人の営みによって落ち葉や枯れ枝が除かれており、現在とは比較にならないほど大量のマツタケがとれ、武士から庶民まで幅広く親しまれていたという。現在は里山を手入れする機会が少なくなったことや、マツノザイセンチュウという害虫の被害によってアカマツ林内の環境が大きく変化しており、国産のマツタケは絶滅の危機に瀕している。マツタケが非常に高級なきのこになっているのはその結果である。
化学と毒性
香り成分はマツタケオールとよばれる1-オクテン-3-オールや、桂皮酸メチルである。そのうち桂皮酸メチルがマツタケの特有の臭いを生み出しており、マツタケオールはいわゆる「きのこ臭」で、マツタケ以外にもほとんどのきのこに含まれている。
古くなったマツタケを食べると、激しい嘔吐やむかつきなどの中毒症状が起こるが、これはマツタケに含まれるアミノ酸が変化したヒスタミンが毒成分としてはたらくためである。激しい嘔吐を起こすが、一般的には死に至るほどではない。しかし、1915年には死亡例が報告されている。ちなみに、さらに腐敗が進むとヒスタミンは消失するといわれているが、そこまで腐ったマツタケを食べられるかどうかということとは別問題である。
史実かどうかは不明だが、大坂西町奉行と堺政所奉行を兼務していた島田直時という人物が突然亡くなった際、時のお奉行様の頓死とあって、その死因については様々な噂が飛びかったという。その中に、「焼きマツタケをたらふく食べた後にマツタケ中毒で腹痛に苦しみ、あまりの痛みに耐えかねて腹を短刀で突き刺し、出血多量で死亡した」という噂が伝わっている。お奉行様の名誉に関わる大事なことなので二回言うが、史実かどうかは不明である。
人工栽培
マツタケの人工栽培は切望され、その試みは古くからなされている。「マツタケ博士」とよばれた浜田稔博士が初めて菌糸の純粋培養に成功した。しかし、それを人為的にアカマツに感染させるのは困難で、稀に感染しても拡大しなかったり、苗木の枯死を招くなどしてシロに成長しない。現在も複数のアプローチで研究が進められているが、未だに成功に至っていない。バイオ企業によって研究開発が進められており、あと一歩というところである。
「もやしもん」におけるT・マツタケ
漫画「もやしもん」ではT・マツタケの名でキャラクターとして登場する。形は、縦長の角が丸い四角形で、色はきのこの色からの類推か薄茶色をしている。工事用のヘルメットをかぶっており、少々乱暴な言葉遣いなのが特徴。なぜマツタケにヘルメット?と思った人は原作(4巻)を読んでみよう。アニメ版は第8話に登場。
その他・豆知識
- バカマツタケ・ニセマツタケ・マツタケモドキなどはマツタケに近縁なきのこで外見がよく似ているが、否が応にもマツタケと比較されてしまうためにかわいそうな名前がついている。ちなみに「クロハツ」の名が付くきのことは違って運よくも食用である(「クロハツ」の名が付くきのこの一部はちゃんと調理すれば食べられるものもある)。バカマツタケはマツタケよりもずっと早い時期に、しかも広葉樹林に生えてくることから「バカ」だといわれこう名づけられたそうだが、香りはむしろマツタケより強い。一方、マツタケモドキやニセマツタケはマツタケにそっくりだが、マツタケの香りが無いという残念なきのこである。
- 1999年にスウェーデン産のT・ナウセオスムと日本のマツタケが遺伝子の比較により同一の種だったことが判明したが、これは日本人にとってちょっとしたピンチだった。T・ナウセオスムの方がより早く報告されていたため(学名は先に新種を発表した人がつけたものが優先される)、日本人にとって馴染み深い「マツタケ」の学名が失われてしまう可能性が高かったのだ。しかも、「ナウセオスム」は「不快臭の」を意味する。結局、日本以外でもマツタケの名がメジャーだということが考慮され、T・マツタケの学名が保存名(規約にのっとれば不適切であっても、広く普及していると認められた場合に正式に採用される名前)になったのである。
- マツタケの人工栽培に向けて研究している企業の一つ、タカラバイオは2004年に世界で初めてマツタケのゲノム解読に成功した。
関連動画
関連商品
関連項目
- 4
- 0pt
https://dic.nicovideo.jp/t/a/%E3%83%9E%E3%83%84%E3%82%BF%E3%82%B1