マツダ株式会社(MAZDA, Mazda Mortor Corporation)とは、広島県に本社を置く自動車製造会社である。
設立:1920年1月30日
本社:広島県安芸郡府中町
世界販売台数:133万台(2013年度)
代表取締役社長兼CEO:小飼雅道
概要
社名は創業者松田重次郎の姓と英知・理性・調和を司るゾロアスター教の主神、アフラ・マズダー(Ahura Mazda)に由来する。[1]
ロータリーエンジン量販四輪車を唯一生産・販売していた世界的にも希有な自動車メーカーである。車造りの味付けは素直なハンドリング(操舵性)に定評がある。オープンカー不人気の時代に、あえて小型ツーシーターFR[2]オープンカーのロードスターを1989年9月1日にリリースし、オープンカーでは生産累計世界一を記録した。[3]1991年、ル・マン24時間耐久レースでロータリーエンジン搭載のマツダ・787Bが日本唯一のワークスチーム[4]として、総合優勝を果たした。[5]
IHI(旧・石川島播磨重工)とリショルム・コンプレッサー型スーパーチャージャー[6]を共同開発して省燃費エンジンであるミラーサイクルエンジンと組み合わせ、ユーノス800に搭載したり、何気に革新的な技術開発をさらりとやってのける恐ろしい子である。CVTとの組み合わせで復活したミラーサイクルエンジンMZR 1.3L(ZJ-VEM)は現行デミオに搭載されている。[7]設計・開発にCAD/CAMをいち早く取り入れ、SDRC社の"I-DEAS"を使って新車開発期間を28ヶ月から14ヶ月に短縮し、生産ラインをC-BAL(Circulated Body Assembly Line)に改良する事で、少量多種生産にも対応し[8]市場のニーズに応えた。水素とガソリンの使える水素ロータリーエンジンを開発、RX-8に搭載した、RX-8ハイドロジェンREをリリースし、更にモーターと組み合わせて、ハイブリッドロータリーエンジン搭載したプレマシー、プレマシー・ハイドロジェンREをリリースした。
又、余りにも厨二病の前衛的なデザインと過剰に雅な和名のコンセプトモデルカーを披露する事でも有名である。[9]
ロータリーエンジン搭載量販車第一号、初代・コスモスポーツ後期型は特撮テレビ番組『帰ってきたウルトラマン』のMATの特殊車両"マットビハイクル(MAT ビーグル)"、アニメ映画『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』にて壊れたアルピーヌ・ルノーA310から乗り換えた葛城ミサトの愛車[10]として登場している。
歴史
1920年(大正9年)に前身の『東洋コルク工業』が設立。すぐに『東洋工業』に名称を変更した。これはコルク以外にも、自動車や削岩機(2002年に撤退)や工作機械(1989年に子会社へ移管)等の事業を広げたためである。
戦前はオート三輪/三輪自動車[11]のダイハツ、くろがねと共に三大オート三輪メーカーであった。戦後もマツダはオート三輪の製造販売を続け、エンジン排気量が2000ccクラスのT2000三輪トラックをリリースし、[12]三大オート三輪メーカーでは一番最後の1974年(昭和49年)にオート三輪/三輪自動車の製造販売を中止した。
太平洋戦争末期1945年(昭和20年)8月6日の広島の原爆投下の時には、本社は運良く山の陰にあったために奇跡的に建物が残った。一時は焼け出された県庁、市役所、裁判所、病院等の公共機関が同居してたこともある。
1960年(昭和35年)に当時の社長・松田恒次が当時運輸省が進めていた自動車業界合併に関して危機感を感じ、西ドイツの自動車メーカーNSU社(現・アウディ)からロータリーエンジンの不利な条件でパテントを買う。当時エース級の技術者・山本健一をリーダーに据え、若手中心で開発を開始し、1967年(昭和42年)に世界初の実用的なロータリーエンジン搭載量販車"コスモスポーツ"発売に漕ぎ着ける。1973年(昭和48年)の第一次、1979年(昭和54年)第二次オイルショックによるガソリン価格の高騰[13]で、燃費の悪いロータリーエンジン車を抱えるマツダは経営が一時傾くが、1980年の"4代目ファミリア"が爆発的ヒットをして経営が安定するようになる。1984年に社名をブランド名の『マツダ』に統一される。この時山本健一が社長に就任をしていた。
販売5チャンネル化など、バブル期の無茶な路線拡大の失敗によって、1995年に以前から提携関係があった、アメリカの自動車メーカーフォードの傘下になるが、コンパクトカー"デミオ"の成功や『ZOOM-ZOOM』のキャッチフレーズでまた盛り返すようになる。世界一の生産量を誇るオープンカー"ロードスター"やロータリーエンジン4ドアスポーツ車の"RX-8"はマツダらしさを感じさせる車でもある。また、日本初のキャブオーバー型1BOXカー『ボンゴ』は、ある年齢の人にとっては「1BOXカー=ボンゴ」と認識されている。
フォードはマツダの株式を14.9%を所有する筆頭大株主であったが、役員を派遣したり経営権を掌握した親会社とは言えず、プラットフォームやエンジン等を共用する戦略提携パートナーに留まった。ただしマツダがフォードとの提携で得たものは多大であったと小飼社長は語っている。フォードはリーマン・ショック後徐々に株を手放し始め、2008年度は13.8%、2010年度には3.5%、2011年度には2.1%、2015年度に完全に売却。マツダはフォードから独立した。
SKYACTIVのプラットフォームや魂動デザイン、ディーゼルエンジンが高い評価を受けて注目を集める一方で、モーターを用いた自動車技術は切り捨てていたこともあり、アメリカの将来厳しくなるの排ガス基準に対応できない可能性が出てきている。そのためトヨタと提携して、ハイブリッド技術の提供を受けている。
国内評価
海外での高い評価に対し、国内評価は圧倒的に低い傾向がある。ブランド力が無いと言い換えても良い。
昔は品質が良くなかったこと、一部ディーラーの対応が悪いと言う風評(関○マツダとか)などが原因。更に本来プライスパフォーマンスの高い人気車だったロータリーエンジン搭載車が、オイルショック以降のガソリン価格高騰を受けて「ガスガズラー(燃料の大食い)」という不評を受けたのも祟った。
この結果として「マツダ地獄」という現象も発生した。これはどういうものかと言うと、市場でのマツダ車全般の人気が落ちたことで、他社での下取り査定価格が極端に下がる。自社製品のブランド維持の為にマツダ販売店が自社下取り価格を高く付け、マツダ車オーナーはマツダに乗り換える以外の術を失う。さらにその買い替えた車でも同様のことが起きる、というもの。アリ地獄に嵌るが如く深みに嵌っていくからマツダ地獄なのである。特に中高年はこの嫌な思い出が染み付いている。
これらの要素が相互に干渉しあった事で、マツダの低評価が根付いてしまった。昨今は品質が向上し、操縦性と乗り心地のバランスも良く、車自体は良いものに仕上がっている。しかし営業力や宣伝の弱さもあってか、未だに偏見が付きまとう。
自動車評論家の徳大寺有恒は「日本車は欧州車の足回りを参考にするべきだ。メルッツェデスやジャグワーは素晴らしい」といった趣旨の意見を繰り返し述べていたにも関わらず、2004年に発売された「間違いだらけの車選び<04年夏版>」におけるマツダ・アクセラの評論では「この足回りは欧州車のようだが、果たしてこのようなものが日本に必要だろうか?」などといった趣旨の、持論をひっくり返すが如き評価を下した。
これに対し「テメーが間違いだらけだ!長めのムァットィでスゥィグゥアァーに火をつけるぞこの野郎!」と読者に突っ込まれたからかは定かではないが、2009年刊『 間違いだらけのエコカー選び』では、一転してマツダ・アクセラを基本に忠実な車として高く評価している。
元レーサーで自動車ジャーナリストの太田哲也は、「ニューモデルマガジンX」2009年12月号に掲載された二代目アクセラの試乗記事で、マツダの国内評価が低いのはマツダの消費者への説明不足や、商品と日本市場とのズレがあるのではないかと分析しつつ、アクセラを高く評価した。アクセラの車台(シャーシ)/プラットフォームはCセグメントの世界戦略車として、欧州市場を念頭に置いた開発戦略を採るフォード・ヨーロッパやボルボと共に開発した贅沢な物である。アクセラが欧州車の特性を持つのは必然であった。
どの車種にしても車自体が良いのは間違いないので、有体な表現ではあるが「もっと評価されるべき」であろう。
モータースポーツ
1991年にル・マン24時間レースにおいて、ロータリーエンジン車の787Bで総合優勝を遂げたのが最大の功績である。またWRCにも参戦、グループA規定で2勝を挙げている。
現在は目立ったワークス活動はアメリカで行っており、デイトナ24時間を中心としたIMSAに参戦している。デイトナ24時間ではRX-7、RX-8、アテンザなどで20回以上のクラス優勝を飾っており、アメリカでマツダは非常に成功したメーカーとして知られている。2017年現在はIMSAではライリー・マルティマティック製のLMP2をベースにし、市販のマツダエンジンを搭載したDPi車両で総合優勝を争っている。
またインディカーの下位シリーズであるロード・トゥ・インディを支援したり、日本ではスーパー耐久やインタープロトのようなプロアマ戦にのみセミワークスで参戦するなど、今のマツダは市販車と関わりのあるレースやアマチュアの育成を主眼に置いたレース活動が多い。
関連動画
関連車種
- マツダの車種一覧を参照のこと
関連項目
- 自動車製造会社一覧
- 自動車
- 広島県
- 広島東洋カープ
- サンフレッチェ広島
- MAZDAZoom-Zoomスタジアム広島
- zoom-zoom
- 帰ってきたウルトラマン
- ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破
- アンフィニ
- オートザム
- ユーノス
- オートラマ
- 風は西から
関連リンク
- マツダ公式サイト
- 有限会社 ドゥー・エンジニアリング
-
[DO.ENGINEERING]RX-7・ロードスターなどMAZDA車チューニング
https://do-eng.com/元マツダスピード田知本 守、山梨 信輔、小池 光一が中心に成って設立した会社
本社 東京都中央区新川
工場 静岡県駿東郡小山町一色
脚注
- *【MAZDA】マツダのビジョン|マツダについて
http://www.mazda.co.jp/corporate/profile/vision/index.html - *フロントエンジン・リアドライブ方式。エンジンを前に縦置きして、ドライブシャフトを通じて、後輪を駆動する駆動形式。前輪は操舵を担当し、後輪は駆動を担当する。
- *【MAZDA】『マツダロードスター』が生産累計80万台を達成|ニュースリリース
http://www.mazda.co.jp/corporate/publicity/release/2007/200702/070207a.html - *Works team。自動車メーカーが自社のレースカーと自社が管理するスタッフで参戦する自社資本レースチームのこと。それ以外はプライベーターチームである。
- *ロータリーエンジン搭載車はレギュレーションの変更で、1991年以後はル・マンには参加不可能と成った。
- *エンジンの駆動力で作動する過給器の一種。排気ガスで動作する過給器、ターボではない。
- *【MAZDA】 ミラーサイクルエンジン|低燃費・低排出ガス
http://www.mazda.co.jp/philosophy/tech/env/engine/mirror.html - *Mazda Annual Report 1999
http://www.rx-7.mazda.co.jp/corporate/investors/library/annual/1998/cascade/03.html - *マツダのコンセプトカー「元就」のデザインがすごいことに - GIGAZINE
http://gigazine.net/index.php?/news/comments/20071015_motonari/
マツダの「Nagare」デザインコンセプトシリーズ第5弾「風籟(ふうらい)」の写真とムービー - GIGAZINE
http://gigazine.net/index.php?/news/comments/20070118_mazda_furai/
東京モーターショー2007:マツダの「Nagare」デザインとロータリーエンジン - GIGAZINE
http://gigazine.net/index.php?/news/comments/20071026_tms_mazda/
リッター32kmの燃費性能とマツダらしい走りの楽しさを両立させたコンセプトカー「清(きよら)」 - GIGAZINE
http://gigazine.net/index.php?/news/comments/20091021_mazda_kiyora_tms2009/ - *劇中の走行中のエンジン音はロータリーエンジン音である。EVやHV化されていないオリジナルのロータリーエンジン搭載車で有ると思われる。
- *「三丁目の夕日」に登場するあの三輪のトラック。サイドカー付きのバイクが三輪自動車に進化したもの。戦前の三輪自動車免許は試験制ではなく許可制だったので、需要が大きかった。
- *図体が大きいトラックにも関わらず、前輪が一つしかない三輪車とは今から見るとシュールな存在ではある。
- *オイルショックの影響で、オイルショック以前1972年(昭和47年)に58円だったガソリン平均価格が、1982年(昭和57年)には172円に迄高騰した。
子記事
兄弟記事
- なし
- 5
- 0pt