マンガ図書館Zとは、株式会社Jコミックテラスが運営する電子書籍サービスである。
概要
他の電子書籍配信サービスと異なり、マンガ図書館Zでは「絶版になったマンガ」や「単行本化されていないマンガ」を著作者の許可を得て(※)公開している。これによって得られた広告収入を著作者に還元する、というのが基本システムである。作品の配信による広告収入は100%著作権者に還元され、サービス側は手数料を取らない。
※2015年12月24日からは若干状況が変化している。後述。
マンガ図書館Zは漫画家の赤松健氏が2011年に開始した「Jコミ」が前身である。その後2014年に名称を「絶版マンガ図書館」に変更。2015年に赤松氏と株式会社GYAOが共同で株式会社Jコミックテラスを設立、名称をマンガ図書館Zに変更し、Jコミックテラスが運営する形になった。[1]
マンガ図書館Zからは成人向け作品については有料プレミアム会員のみのサービスとなっている。[2]
2018年7月に、Jコミックテラスはメディアドゥホールディングスの傘下に入り、講談社からも出資を受けている。[3]
2018年8月より実業之日本社と共同で実証実験を開始した。実業之日本社が過去に出版した作品を第三者がアップロードし、実業之日本社が作家に確認を取り、許諾を得れば広告付きで無料配信する。[4]
2023年5月にはINCLUSIVEグルーブの子会社で漫画家への確定申告代行サービスや電子書籍配信サービスを手掛けるナンバーナインが発行済株式の70.53%を取得し子会社化。
2024年11月26日正午をもってマンガ図書館Zのサイトのサービス停止が2024年11月5日に発表された。原因は、決済代行会社からアダルトコンテンツの取扱を理由とする加盟店契約の契約解除を10月末をもって通告された為であるという。
併せて売上金の振り込みも停止されプールされてしまい資金繰りが厳しくなる。またこれにより全クレジットカード払いとドコモ払いが使用不可となりBitCashのみとなった。決済手段がBitCashだけでは売上金で運転資金も賄えないとのことでサービス停止に至ったされる。決済代行会社の変更も考慮したが同程度のリスクがあるためサイト停止となった。(交渉では決済代行会社はカード会社の意向であるとして相談には乗ったそうではある。)サービス再開に関しては、非営利団体として組織変更なども考慮に入れているという。
マンガ図書館Zの事業として他社の電子書店の卸事業も行っており、こちらのサービスは継続するため他社の電子書店でマンガ図書館Zの漫画も読めるかもしれない。
前述の通り2024年11月26日正午をもってマンガ図書館Zのサイトのサービス停止となった。既存会員のPDFサービスについては2024年12月5日から26日まで一時的に再開する。また全サービス再開した際にはデータを引き継ぐ予定とのこと。
なお創業者の赤松健は参議院議員として文部科学大臣政務官に就任したため、大臣規範より営利企業の役員を務められないことからJコミックテラスの取締役を2024年11月で退任している。
サービス内容
※以下に記載されているのはJコミ時代のものであり、現在のマンガ図書館Zとは異なる部分がある。
公開方式
コミックビューワー
オンライン環境でのみ、ウェブブラウザから閲覧できる方式。
PCからの他、iPad等のタブレットPC、iPhone等のスマートフォンからも閲覧できる。
動作保証ブラウザは発表されていないが、最近のブラウザならだいたい大丈夫らしい。
AjaxによってJコミサーバー上のPDFファイルを表示している。
ページ毎にURLが振られており、twitterや掲示板等からの参照性も高い。
もちろん自由にリンクを貼れる。
原則として広告が入るが、有料会員「プレミアム300」に登録すれば、無広告でサクサク楽しむことができる。
閲覧する端末の画面解像度に合わせられるよう、表示サイズは見開き表示で【1170x827】と【842x595】、片面1ページ表示で【421x595】の3パターンが選択できる。後述の有料会員はさらに高画質な表示も選択できる。
コードネーム
コミックビューワーはバージョンによってコードネームが付けられており、バージョン数にちなんだマンガやアニメのキャラクターから命名されている。
Ver. | リリース日 | コードネーム | 元ネタキャラクター名 | 登場作品 |
3 | 2011年4月12日 | Arnoul(アルヌール) | フランソワーズ・アルヌール(003) | サイボーグ009 |
4 | 2011年8月1日 | ムラサメ | フォウ・ムラサメ | 機動戦士Ζガンダム |
5 | 2013年4月12日 | カヲル | 渚カヲル | 新世紀エヴァンゲリオン |
※バージョン1と2はβ公開期間のテスト版の為、コードネームは付いていない。
※「カヲル」はプレミアム300会員専用。
セリフテキスト入力
絶図のコミックビューワーの特徴的な機能の一つに、セリフデータ入力機能がある。
マンガ上に画像として表示されているセリフを、ユーザーが1ページずつテキスト入力できる機能である。
マンガの写植セリフや書き文字はOCRに不向きで、現在のところ自動でテキスト化する技術は目下研究中であり実用レベルに達していない。そのため、ユーザーに手作業によるセリフ入力をお願いしている。
入力されたデータはセリフ読み上げや翻訳の元データとして利用される他、公開されている全作品をまたがる全文検索も可能である。
PDFダウンロード
完全スタンドアロンの広告付きPDFファイルをダウンロードできる方式。
対応している作品数が少なく、今後も増える予定がないので、参考程度に。
ファイルにはDRM(デジタル著作権管理)が施されておらず、自由にコピーや再配布が可能になっている。
絶図からDLしたPDFファイルをzipにしてどこかのうpロダに上げたり、P2Pで流すのも完全合法である。
が、絶図以外からDLしたファイルが別な何かだったりウイルスだったりすることもあるので、公式サイトからのDLが推奨されている。
JコミFANディング
広く薄く投資を募るシステム「クラウドファンディング」を参考にし、作品のコアなファン向けにやや高額でマンガ全巻セットなどをDRMフリーのPDFファイルで販売する企画。これ自体は「クラウドファンディング」ではないので注意。
販売期間を1ヶ月程度、購入者数を数名~100名程度に制限し、数千円~数万円という価格設定で、本当にその作品が好きなファン向けに特化した販売形式を追及している。
販売されるセットや価格にもよるが、購入者全員に特典として、作家の「直筆サイン入りハガキ」や「作家本人との飲み会参加権」などが提供されており、まさにマニア垂涎の企画となっている。
例によってJコミは手数料を取らない。
Jコミで印刷できるってよHD
販売定価は「印刷費の2倍」に設定されてており、例によってJコミは手数料を取らず印刷費以外はすべて作者に渡るので、驚きの印税50%を実現している。
現在は未単行本化作品のみ対応している。
Kindle
2014年9月より絶版マンガ図書館に登録されている作品を、Kindleでも販売出来るようになっている。[5]
会員登録
作品の閲覧だけなら登録は必要ないが、コミックビューワーのセリフ入力や作品のアップロード、またR18版の閲覧を行うには、ユーザー登録が必要になる。メールアドレスによる認証を行っている。もちろん無料である。
Jコミをより楽しみ、より快適に使用するため、有料会員システムも用意されている。プレミアム100とプレミアム300の二つのコースがある。
未登録 | 一般会員 (無料) |
プレミアム100 (月額108円) |
プレミアム300 (月額324円) |
||
コミック ビューワー |
閲覧 | ○*1 | ○ | ○ | ○ |
R18版の閲覧 | × | ○ | ○ | ○ | |
高画質モードでの閲覧 | × | × | ○ | ○ | |
メールマガジン配信 | × | × | 通常版 | 豪華版 | |
広告非表示 | × | × | × |
○ |
*1 Jコミの時は最後まで見れたが絶版マンガ図書館に移行してからは途中までしか見れなくなっている
その他のサービス
メールマガジン配信
有料会員向けに月2回のペースで配信されている。
執筆者は社長の赤松氏本人であり、マンガ業界や電子書籍業界について語っている。
バックナンバーが全文サイトに掲載されており、有料会員なら創刊号から閲覧することができる。
プレミアム300ではプレミアム100の通常版の内容に加え、イラストやインタビュー記事の掲載された豪華版メルマガが発行されている。
あなたが広告主
コミックビューワー内に掲載する広告を気軽に出稿できる機能。個人ユーザーでも下限300円から広告を出すことができ、 おひねり感覚で好きな作家を応援することができる。もちろん広告掲載料は全額作者に還元され、Jコミは手数料を取らない。
作品アップロード
絶図に所蔵して欲しい絶版作品をzip形式でアップロードできる。利用にはユーザー登録が必要。「違法絶版マンガファイル浄化計画」も絶賛進行中である。
マスコット
公式トップページのタイトル画像やJコミ情報室twitterのアイコンにいる白いやつがJコミのマスコットキャラ。名前は「ハンペン君」。よく居眠りする電子精霊。[6]
「魔法先生ネギま!」の長谷川千雨が使役する電子精霊と同種のものと思われる。(ただし色が違う)
沿革
2010年 | 11月 | 10日 | サービス概要発表[7] |
26日 | βテスト「ラブひな」配信開始[8] | ||
2011年 | 1月 | 11日 | β2テスト「放課後ウェディング」配信開始 |
25日 | β2テスト「交通事故鑑定人・環倫一郎」配信開始 | ||
2月 | 1日 | β2テスト「ベルモンド」配信開始 | |
3月 | 10日 | コミックビューワー「アルヌール」実験開始[9] | |
4月 | 12日 | 正式サービス開始[10] | |
19日 | コミックビューワーに大画面版を実装 | ||
24日 | 配信タイトルが10作品に到達 | ||
26日 | コミックビューワーにセリフ全文検索機能を実装 | ||
27日 | ダ・ヴィンチ電子書籍アワード2011 特別賞 受賞[11] | ||
6月 | 7日 | 作品のタグ機能を実装 | |
11日 | 作品の解説編集機能を実装 | ||
16日~19日 | 「八神健フェア」開催[12] | ||
23日 | 配信タイトルが50作品に到達 | ||
7月 | 26日 | コミックビューワー「ムラサメ」リリース[13] | |
9月 | 10日 | 配信タイトルが100作品に到達 | |
15日 | 「Jコミ・プレミアム」概要発表[14] | ||
10月 | 1日 | 「Jコミ・プレミアム」(現・Jコミ R18)開始 | |
12月 | 10日 | iOS用「J Reader」配布開始 | |
2012年 | 4月 | 12日 | 「あなたが広告主」機能を実装 |
15日 | 定期メルマガ『はんぺん』発行開始 | ||
16日 | 配信タイトルが200作品に到達 | ||
5月 | 12日 | Android用「JComi Viewer」配布開始 | |
18日 | Android用「JComi Viewer Premium」配布開始 | ||
6月 | 29日 | 配信タイトルが300作品に到達(プレミアム合算) | |
8月 | 1日 | iOS用「JComi Viewer +」配布開始 | |
9月 | 15日 | 「JコミFANディング」βテスト開始 | |
12月 | 22日 | 第1回「JコミFANディング」開催 | |
2013年 | 4月 | 12日 | 「Jコミ・プレミアム」を「Jコミ R18」としてリニューアルし、無料サービスへ移行 有料会員コース「プレミアム300」導入 iOS/Android用「JComi Viewer +」バージョンアップ/配布開始 |
27日 | 第2回「JコミFANディング」開催 | ||
6月 | 26日 | 「海明寺裕 応援FANディング」開催 | |
11月 | 3日 | 「Jコミで印刷できるってよ」βテスト販売開始 | |
12月 | 14日 | 第3回「JコミFANディング」開催 | |
2014年 | 3月 | 29日 | 「くりた陸 応援FANディング」開催 |
5月 | 16日 | 「Jコミで印刷できるってよHD」サービス開始 | |
7月 | 11日 | サービス名を「絶版マンガ図書館」に変更しリニューアルオープン |
著作者が実際には許諾していない作品の混在
上述のように、基本的には著作者の許可を得て公開する方式であった。
しかし2015年12月24日からは、著作者本人の許可を得ずに公開された作品が混じったことが確認されている。[15]
その理由は、この日リリースされた新機能「アップロード&許諾公開システム」[16]にある。
この機能は、
- 第三者が漫画作品のZIPファイルをマンガ図書館Zにアップロードする
- 「公開待ち作品」のカテゴリに追加され、表紙一枚だけ公開される
- 権利者が「公開する」ボタンを押す
- 「投稿作品」のカテゴリに移動し、全ページが公開される
- 広告収益はプールされ、権利者が収益受け取りの手続きをすると収益が支払われる
という流れとなっている。だが、この3.の部分で、実際には権利者ではない人間が「公開する」ボタンを押してしまうケースも生じている。
「公開する」ボタンの上にリンクがある「作品公開規約」[17]には、
許諾会員は、当社に対して、当社が許諾作品を本規約に従って利用することを許諾するために必要かつ正当な権限を有していることを保証するものとします。
という一文があるため、マンガ図書館Zとしては「この規約を守った上でボタンを押した以上、押した人間は権利を有している」とみなしているようだ。
Youtubeやニコニコ動画への動画投稿時に、「権利侵害はしていない」という規約に同意させられる事と似ている。
だがこの方式開始後、Youtubeやニコニコ動画に規約に違反して権利侵害動画が投稿されることがあるのと同様に、本来の権利者以外がボタンを押して公開してしまう例が出てき始めた。
なお、自分が権利を有する漫画が、自分を騙った何者かによって無断で許諾され公開されていることに気づいた場合、要請を行えば公開を停止することができる。このシステムもYoutubeやニコニコ動画と類似している。
赤松健氏は、本来の権利者以外が公開してしまうことがある、という点についてこの新たなシステムの「要改善ポイント」と認めつつ、このシステムを導入したことに関する想いを広報ブログで語っている。[18]
なおマンガ図書館Zの「検索」機能では、この「アップロード&許諾公開システム」によりアップロードされた漫画も、それ以前のシステムに則って公開されている漫画も混在して検索結果に表示されてしまう。そのため利用者からは区別が若干わかりにくくなっている。見分け方は、各々の作品ページの右上に「Zオフィシャル作品」というロゴが表示されているか否かである。このロゴが表示されている場合は、以前からのシステムによるオフィシャル作品。逆にこのロゴがない場合、「アップロード&許諾公開システム」を利用して公開された作品である。
関連動画
ニコニコ大百科に記事があるオフィシャル作品・作家
※著作権者の許諾が確認されている「Zオフィシャル作品」「Zオフィシャル作家」に限る。
作品
- あきそら
- アンリミテッド・ウィングス
- エンゼルバンク
- きまぐれオレンジ☆ロード
- 奇面組
- キャプテン(漫画)
- 黒いラブレター
- ゲームセンターあらし
- 恋と成
- 轟世剣ダイ・ソード
- 子連れ狼
- ザ・シェフ
- 侍ジャイアンツ
- だいらんど
- 刻の大地
- ななか6/17
- ハイスピード・ジェシー(コミカライズ版)
- ファミコンロッキー
- ブラックジャックによろしく
- プレイボール
- PON!とキマイラ
- 燃える!お兄さん
- ラブひな
- レヴァリアース
- 連ちゃんパパ
小説
TRPG(ルールブックなど)
作家
関連項目
外部リンク
- マンガ図書館Z
- マンガ図書館Zの公式アプリ
- (株)Jコミックテラスの中の人 (赤松氏による広報ブログ)
- マンガ図書館Z (広報用twitter)
- マンガ図書館Z (広報用Facebook)
- 日本漫画家協会 (入会申し込みフォームの開発と広報を株式会社Jコミが行っている)
- 絶版漫画が生んだ利益が新作につながる~Jコミ代表・赤松健氏インタビュー
- 絶版漫画を広告付きで公開「マンガ図書館Z」、月10万円得る作者も 目指すは「全マンガ蒐集」 - ITmedia ニュース
脚注
- *赤松健さんとGYAOが無料マンガ配信に新たな一手 「マンガ図書館Z」始まる - ITmedia eBook USER
- *【補足1】なぜ、成人向け作品が有料プレミアム会員のみのサービスになったか - (株)Jコミックテラスの中の人
- *http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1807/10/news131.html
- *「海賊版サイト全滅させる」 出版社との実証実験、赤松健さんの狙いは 2018.8
- *★「絶版マンガ図書館」から、キンドルへの登録が可能になりました - (株)Jコミックテラスの中の人
- *Twitter / @Jコミ情報室(まだ仮): マスコットキャラクターの名前は現在募集中です。わかっ ...
- *(1) はじめに - (株)Jコミの中の人
- *(9) 『ラブひな』全巻を無料公開しました! - (株)Jコミの中の人
- *(16) 「アルヌール」実験開始 - (株)Jコミの中の人
- *【お知らせ】 リリース第1号!『プレイヤーは眠れない』(全一巻)を無料公開 - (株)Jコミの中の人
- *ダ・ヴィンチ電子書籍アワード2011
- *【サイン色紙が当たる!八神健フェア】 まずは、『きりん ~The Last Unicorn~』(全3巻)を公開! - (株)Jコミの中の人
- *(27) 新型コミックビューワーV4「ムラサメ」をリリースしました - (株)Jコミの中の人
- *(34) 有料制「Jコミ・プレミアム」のβテストを、10月1日から開始! - (株)Jコミの中の人
- *「皇国の守護者」コミック版がマンガ図書館Zで突然の無料公開の後、削除 海賊版対策の抜け穴が問題に - ねとらぼ
- *http://www.mangaz.com/information/detail/1915
- *http://www.mangaz.com/company/approval
- *赤松健、これが究極の一手。・・・なぜ我々は「電子書籍版YouTube」を目指すか - (株)Jコミックテラスの中の人
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