マンジャロ / ゼップバウンド(Mounjaro / Zepbound)とは、アメリカの製薬大手イーライリリーが開発した、GIP/GLP-1受容体作動薬である。一般名はチルゼパチド(Tirzepatide)。
同一の成分でありながら、2型糖尿病治療薬としては「マンジャロ」の名で2022年5月に、肥満症(肥満に関連して起きた、治療が必要な症状が合併したもの)の治療薬としては「ゼップバウンド」の名で2023年11月に、別々に承認された。
糖尿病治療においては、1920年代に実用化されたインスリン以来のインパクトがあるともいわれる。さらに2020年代には、その強力な減量効果から「やせる薬」として、医療界・ダイエット業界を超えて世界的な注目を集めている。
※医療機関を通さずに個人間・SNSで売買・譲渡する行為は、薬機法(医薬品医療機器等法)違反にあたり、違法です。
概要
週に1回、お腹や太ももに自分でチクッと注射するタイプの薬。それまでにあった「オゼンピック」などのGLP-1受容体作動薬(これだけでも大発明だった)のさらに上を行く、世界初の「GIP/GLP-1受容体作動薬」というデュアル構造の治療薬である。
平たく言えば、脳に「おいお前、もう満腹だぞ」と強烈な信号を送り続け、胃の動きを強制的にスローにすることで、食欲を抑える。
肥満症を対象とした臨床試験では、72週間の使用で「体重が平均20%減った」という驚異的な数値を叩き出した。これは胃を小さくする外科手術に匹敵する効果である。
本物の医療用医薬品であり、「飲むだけで痩せる」といった怪しいサプリメントとは一線を画す。アメリカは成人の4割超が肥満という肥満大国であり、この薬の登場は熱狂的に迎え入れられた。あまりの効果に、お菓子やスナックが売れなくなるとの懸念から大手食品会社の株が売られたり、食品大手が商品戦略の見直しを迫られたりする経済現象まで起きた。一方で、開発元のイーライリリーの株価は急騰し、時価総額でテスラやウォルマートを上回るほどに成長した。
問題点
本来は「2型糖尿病」や「健康を害するレベルの肥満症」の患者のための薬である。しかし、その劇的な効果に目をつけたインフルエンサーや一般人が、自由診療(オンラインクリニック等)で「最強のダイエット薬」として買い求める事態が発生している。
こうしたダイエット目的の需要の急増に加え、本国アメリカでの爆発的な人気によってチルゼパチドが世界的に供給逼迫したこともあり、一時は本当に必要な糖尿病患者に薬が行き渡らないという供給不足が起き、社会問題化した。※供給不足自体は2024年に一旦解消されている。
一方で、SNSなどでの個人間の無許可販売・転売は、むしろ2026年に入って問題が表面化しており、厚生労働省や自治体、製薬会社が相次いで注意喚起を行っている。実際に、無許可販売・保管をしていたとして書類送検された事例も出ている。
※医薬品を許可なく販売・譲渡する行為は薬機法(医薬品医療機器等法)違反にあたり、拘禁刑や罰金などの刑事罰の対象となります。有償・無償を問わず「譲る」だけでも違法になり得ます。絶対にやめましょう。
副作用
まず副作用として、吐き気、便秘、下痢、胃もたれ……要するに、軽い胃腸風邪をずっと引いているような状態になりがちである。この薬の本体は「脳に満腹信号を送りまくって食欲そのものを消す」ことなのだが、おまけに胃腸の不快感もついてくるので、二重に食欲が削がれる。それが痩せるべくして痩せる仕組みである。
そして最大の落とし穴は「やったー!20キロ痩せたから注射やめるわ!」と薬を止めると、高確率で大きくリバウンドする。しかも厄介なのは、戻ってくるのが主に「脂肪」だという点で、急激な減量の過程では筋肉も多少は落ちるが、やめてリバウンドするときは脂肪が優先的に戻ってくる。結果として、トータルでは「筋肉が減って脂肪が増えた」状態、つまり元より太りやすい体に近づいてしまうおそれがある。
マンジャロは魔法の杖ではなく、一生打ち続ける覚悟をするか、打っている間に本気で生活習慣(特に運動と筋トレ、たんぱく質)を変えて、やめても戻らない体を作るか。どちらかの覚悟が要る薬なのである。
関連項目
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