- 児童文学『オズの魔法使い』に現れる小人族の名前。
- 1. から転じて、行儀のなっていないお子様への蔑称
- 2. から転じて、俺のキャラがかっこ良く最強じゃないと我慢出来ない困ったTRPGプレイヤーの事。
- 3. をモチーフにした卓上ゲーム。
- TRPGのルールを十全に駆使し、ルールで認められた範囲内で強力なキャラクターを作るTRPGプレイヤーの事。=和マンチ。海外では power player の範疇 (※日本の「パワープレイヤー」は、主に火力・数頼みの戦術をする人)
- 「Man+Chicken」の誤用。しかしアメリカでは字面通りの意味として「Manchicken」も使われているようだ。
- マンチカン種の猫の別称。極めて垂直方向にチャレンジされている四肢を特徴とする。
のいずれかである。本稿においては主に1-5の説明を行う。
オズの魔法使い
Munchkin は元々は児童文学作品『オズの魔法使い』中に登場する小人の種族名であり、同作での造語である。
その語源について作者のL・フランク・バウム(ドイツ系)は何も語っておらず、昔からさまざまな解釈がなされている。
- いわゆるかばん語であり、「むさぼり食う(munch)小人・(精神的)小者(-kin)」であるとする説
- ミュンヘン(München)の紋章の、黒いフードを被った子供(元々は修道士だった)の図案からとする説
- ドイツ語の Mannikin (小さな姿)あるいは Manschgerl (Männchen 「小さな人」の一南部方言型)からとする説
マンチキン族は「東の悪い魔女」に支配されている民族で、少女であるドロシーと同程度しか背丈がないことが特徴。
その精神構造は非常に自己中心的で、非常に意地汚く、非常に横柄な、いわゆるわがままな種族とされている。
また、同作で登場する「脳みそが欲しい」かかしはマンチキンの農民の手によって命を吹き込まれた。
オズの魔法使いを政治的寓話とみなす考察では、このマンチキン族を1880-86年にかけてのデフレーションによりアメリカ西部開拓民を奴隷同然に扱っていたアメリカ東部民として、東の悪い魔女は時のアメリカ"東部"大統領グロバー・クリーブランドを、また脳みそ=教養を欲しがっていたかかしは西部開拓民を暗喩しているといわれている。
TRPG用語としてのマンチキン
アメリカでは古くからD&D(R)などのテーブルトーク・ロールプレイング・ゲーム(TRPG)がプレイされていたが、とあるTRPGコンベンションにてルーンクエストやクトゥルフの呼び声(CoC)に関わったことで知られるサンディ・ピーターセンとそのコンベンションの同席者らによって「TRPGプレイヤーのロールプレイ傾向は類型化できる」という説を提唱した。
それによれば、プレイヤーの傾向は次の4つに分けられるという。
- リアル・マン:コナン・ザ・グレート(英雄コナン)のような、神経の太いタフガイ。
- リアル・ロールプレイヤー:殴り倒すよりも頭と口先を使って難事を切りぬける、狡猾なネゴシエイター。
- ルーニー:場の笑いを取るためならば目的も手段も方法も結果も行く末も選ばないようなコメディアン。
- マンチキン:いわゆる厨房、わがままな"困ったちゃん"。より言えば、自分のPCだけを目立たそうとするプレイヤー。
このうちマンチキンとは、上述マンチキン族の特徴を持つプレイヤーとされている。
すなわち、「GMは俺様のキャラクターだけをかっこよくするシナリオを作ってくれた」だとか、
「俺様の最高のロールプレイを行うには最強の武器や防具を装備せざるを得ない」と考えるプレイヤーのことである。
または、ルールブック上はGMもプレイヤーも対等であるTRPGにおいて、ルールを超えた行為をするプレイヤーのことともいえる。
ごく分かりやすい例を言えば、キャラクターを作成する段階で「俺のキャラは世界を救った英雄の一家という設定にするので魔法の武具をいっぱい持たせますね」というようなものである(ただし原典ではより"幼稚"な存在としている。上述で「の一家」がない、とか)。
日本のTRPGファンの中には、こうしたプレイヤーは後述の和マンチと区別する為"洋マンチ""困ったちゃん"等と呼称する人がいる。
日本におけるマンチキン:和マンチ
日本にこの言葉が輸入された際、ルール上"GMの裁量に任せる"ようなシステムの穴をつき、ルールブックを読み込んだことによる理論武装と世間一般の「常識」を利用して、無理やり有利な方向に持っていくようなプレイヤーを指す言葉としても使われるようになった。
(例えば、両腕を切断する大怪我を負った者を変身魔法でヒトデやプラナリアに変え、それの触手が元通りになった頃に魔法を解くことで遥かにローコストで両腕を取り戻させることができるだろう、など。)
こうしたプレイヤーを、原義のマンチキンと区別して「和マンチ」という。
日本で意味が変質した理由は、この語が輸入された当時TRPG界ではドラマ性と実利性が乖離したシステムしかなく、ロールプレイ派のプレイヤーとシステマティック派のプレイヤーが激しく対立していたことに起因する。
往々にして、思いもよらない方法を取るためにセッションをぶち壊しにしてしまうことがあり、ある意味では原義の「洋マンチ」以上に厄介な存在であると言える。和マンチは"公式ルール"という後ろ盾を持っている為、そのプレイを否定することは容易ではないからだ。
また、上述の思考形態でロールプレイすることは「マンチキンプレイ」「マンチプレイ」と呼ばれ、ソードワールドにおいては公式リプレイでこれが行われ、ルール改訂のきっかけとなった。
しかし、和マンチは原義のマンチキン=厨房といわれる程嫌われた存在というわけでもない一面ももつ。上述したソード・ワールドRPGリプレイの和マンチ筆頭であるスイフリーは現在でも非常に人気のあるキャラクターであるし、公式出版されるリプレイ作品でも、こうした和マンチ的な発想が出来るプレイヤーが一人くらい"戦略・戦術面で頼れるプレイヤー"として配置されている事が少なくない。ゲームデザイナー本人がその役割であることも多々ある。
和マンチは見方を変えれば「ルールに囚われない発想をするプレイヤー」「ルールに精通したベテランプレイヤー」という側面もあり、マンチという語も肯定的なニュアンスを含んだ言葉として使用される場合もある。
いわゆる上級者のひとつの形であるため、和マンチに憧れ和マンチを目指すようなプレイヤーや、自分を和マンチであると自称するプレイヤーも少なからずいる。その場の空気さえ読めれば、GMから見てもPLから見ても頼れる存在でもあり、空気の読めない和マンチが困ったちゃん扱いされる事が多い。
和マンチ達は今日も目を皿のようにしてルールブックや全プレイヤーとGMの表情とセッションの空気を読み込み、果てなき和マンチ坂を登り続けている。
卓上ゲーム
こうした背景を受けて、GURPSのデザイナーであるスティーブ・ジャクソンによって、マンチキンの日常的なTRPG風景をユーモラスに描いたカードゲーム「マンチキン」が製作された。
最初のセットはダンジョンズ&ドラゴンズをモデルとしていたが、高い人気から拡張セットや他のシステムを舞台とした姉妹品、ボードゲームやTRPGなども発売されている。
日本においては基本セットと、クトゥルフ神話TRPGを舞台とした「クトゥルフ・マンチキン」のみ和訳されている。
関連動画
関連項目
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