ミオスタチン遺伝子とは、動物の筋肉量を調整する遺伝子である。
概要
ゲノム解析によって発見された遺伝子。この遺伝子の機能が欠損すると筋肉肥大を起こすと言われている。
サラブレッドの研究において
ウマにおけるミオスタチン遺伝子は全32対の染色体のうち18番染色体に存在する。近年のサラブレッド研究では「C型」と「T型」というミオスタチン遺伝子の型[1]の組み合わせによっておおよその距離適性が推測できることが判ってきており、父型と母型の遺伝子の組み合わせからC/C型では短距離(スプリンター)、T/T型では長距離(ステイヤー)、C/T型ではその中間の傾向があるとされている。ただし、これは絶対という訳ではなく、体格や気性の面で適正距離は変化するという事も留意しなければならない。
近代競馬初期は2マイル以上の長距離競走が主流だったためT型が多数を占めていたものの、近年になって短距離~マイルの競走が盛んになった影響でC型が広まったと推測されている。このC型はサラブレッドが生み出されていく過程でイギリス在来馬から流入したもので、競走馬には1954年生まれのニアークティック、そしてその産駒であるノーザンダンサーを祖として広まっていったことが分かっている。
C型は筋力が増大しやすくスピードに優れるとされる。しかしC型が一律に優れているかと問われればそういうわけでもなく、T型のほうはC型より有酸素運動に向いた筋肉になることから優れた持久力を発現するという別の長所を持つ。
ディープインパクトのミオスタチン遺伝子はT/T型と公表されており、ここから彼の産駒にスプリンターが少ないことの説明がつく。数少ない短距離の一線級で活躍したグランアレグリアはおそらく母方からC型を引き継ぎ、加えて地力の高さによって短距離適性を持ったものと推測される。
オルフェーヴルはC/T型と公表されている。彼の産駒に短距離で活躍するものも少なくないのは、おそらくこのC型の遺伝子を引き継いだ影響によるものだろう。
ロードカナロアはC/C型と公表されており、彼が生粋のスプリンターであったことがわかる。ほかにもミオスタチン遺伝子の型が公表されている種牡馬は多いので、調べてみると血統表・成績などを見る際にまた違った面白さが感じられるようになるはずだ。
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関連項目
脚注
- *Cはシトシン、Tはチミンの略。わずか1塩基の差によって二つの型が生み出されており、このような型のバリエーションを「一塩基多型 (Single Nucleotide Polymorphism, SNP[スニップ])」と呼ぶ。
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