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ミサイル
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ミサイル(missile)とは、

  1. 兵器の一種。敵を追いかけて飛ぶロケットのような兵器。 …本記事で記載する。
  2. 広義には飛翔物のことをす。RPGで言うマジックミサイルなどは、純魔力の「塊をぶっ放したもの」という意味になるように、矢だろうが石だろうが、なんか飛んでいる、のことをす。
    1. 勢いよく吹っ飛んだり、狙ったように突っ込んでいく人や物を例えられる場合もある。
    2. 厳密に区別する場合は「Guided Missile」と記述する。

概要

おおむね、爆発などで対を破壊する『弾頭』、ミサイルを標に誘導する『誘導装置』、エンジンや燃料を搭載した『推進装置』を持つ飛翔体で、任務/用途/構造により大まかに区分される。

自衛隊では「誘導弾」とも呼ばれる。

誘導で放物線を描くロケット弾とは異なり、誘導装置によって自動で軌修正を行う、すなわち「敵/標を追いかけて飛んでいく」のがミサイルである。

発射された後は推進装置により飛翔、誘導装置が定された標に対して進路を制御し対に命中(爆発ダメージを与えられる距離まで接近)する。

ミサイルは基本的に自分自身で標を補足し、そこに誘導されていくが、ミサイルに事前標に関する情報を与え、適切なタイミングで発射し、時には飛翔中のミサイルに標の動きの変化を伝えることで有効性を一層高めることができる。

そのためミサイルはレーダー射撃管制装置(FCS)と組み合わせて「システム」として運用される。
システム人間が生身で撃つ肩撃ち式の地対空ミサイルから、防監視システム標を探知識別し、戦闘システム標を割り当てて各種射程のミサイルを発射、あるいは戦闘機を飛ばして搭載されたミサイルを発射するという国家レベルの防システムまで様々である。

対空ミサイル(上)」久保 防衛技術ジャーナル 1998年8月号 より引用

名称について

弾頭』『誘導装置』『推進装置』の3つを備えたものを「ミサイル」と呼び、誘導装置を持たないものは「ロケット弾」と呼ばれる。

……が、運用組織によって呼称には大きな違いがあり、AGM-154JSOWのように航空機から投下・滑して標に向かう、推進装置を持たない誘導爆弾がミサイルに含まれたり、GMLRSのようにGPS誘導のロケット弾をロケット弾と呼んでいたりするので、余りこだわる必要はい。
ドイツ語ロシア語ではそもそもロケットとミサイルを区別しない。

用途分類

基本的には、発射元(歩兵車両航空機・艦等)と狙う標によって分類される。

初見では対艦って何?どっち?」となるかもしれないが、文字を見ると意外と難しくない。
「対」の文字の前にミサイルの発射元が、「対」の後ろにミサイルの標が記載される。

なお、「対戦車ミサイル」と表記されていても、必要に応じて戦車以外の装甲車地に使用されたり、「対空ミサイル」に対地モードが備わっていたりと、あくまでな用途による大まかな分類である。

一般的には「対○ミサイル」「対○誘導弾(自衛隊)」といった表記が多い。

また、「弾道ミサイル」「巡航ミサイル」のように飛翔形態によって分類するもの、「核ミサイル」のように弾頭を強調する分類も存在する。

英語略称については、後述の「任務(標)による区分」を参照。

ミサイルの構造

弾頭

一般的に爆発して、標にダメージを与える部分。

推進装置

誘導装置

ミサイルで最も重要な部分と言っても過言ではない装置。
基本的に以下のパーツによって構成される。

誘導方式

ミサイルの誘導形式は多岐にわたるが、ここではざっと解説する。

  • ミサイルは標を追尾するが、人間のような柔軟な思考を持つAIは(現時点では)存在しない。
  • 「あの戦闘機に向かって飛んでいけ」と言ってもミサイルは理解してくれない。
  • 「何を基準に飛んでいくか」または「何に誘導されて飛んでいくか」が必要となる。

誘導方式には外部からのを受ける方式と、ミサイル自体が標を追尾する方式が存在する。
後者がいわゆる「ロックオン」である。

読むのが面倒な人向け

難しいことを極力省くとこうなる。

  • 備考
    • 用途や方式によって一長一短ある。
    • 複数の誘導方式を採用することで命中率と射程が向上。ただしコストは高くなる。
    • 同じ製品名のミサイルでも、によって性や誘導方式が異なる場合があるので注意。
    • 特に相手が航空機の場合、お互いに動いているため未来位置を予測した飛行計算が必要。
      • ミサイルに搭載できる小高性な計算装置(使い捨て)が必要となる。
    • 発射後に誘導が一切必要なく、全部ミサイルに任せておけば良い「撃ちっ放し力」もある。
      • 標を定して発射したら、ミサイルに全部丸投げしてOKという仕様
      • 標が遠距離にいる場合は、途中まで中間誘導が必要。
    • レーダーや照準用レーザーを照射すると、相手に発射/発射準備に気付かれる可性がある。
    • 様々な囮や妨によってミサイルが外れたり、物理的に叩き落される事もある。

電波ホーミング誘導

幅広く使われている方式のひとつ。

味方のレーダーやミサイル先端のレーダーから
敵に対して電波を照射しその反射波を、または敵が発する電波
を捉えて飛翔・命中するもの。

アクティブホーミング

[電波/照射&飛行計算]+撃ちっ放し
アクティブレーダーホーミング(ARH)とも呼ばれる。

例:ミサイル自身がレーダーという懐中電灯標を照らしながら追いかけるようなもの。

ミサイル自体がレーダー波を発し標を追尾する。

  • 長所:全自動追尾
    • 発射後は命中まで誘導する必要がない。
    • 発射後は即座に退避でき、周辺警や他の任務に向かうことが可
    • ミサイルに誘導装置が積まれているため、同時発射数に(基本的に)制限がない。
  • 短所:複雑で高価、探知されやすい
    • レーダー、高性な計算装置、その他もろもろを小化して積み込む必要がある。
    • 電波を出すぶん隠密性がなく、発射/発射準備に気付かれる。
    • チャフといったデコイ(囮)に欺瞞される可性がある。
  • 備考
    • 別の誘導方式と組み合わせることで長射程化が可
      • 別の誘導方式と組み合わせた場合、命中直前でレーダーが起動するためむしろ探知されにくいことも。

セミアクティブホーミング

[電波/受信&飛行計算]
セミアクティブレーダーホーミング(SARH)とも呼ばれる。

例:ミサイル以外がレーダーという懐中電灯標を照らすので、それを追いかけるようなもの。

ミサイルが外部からのレーダー情報を受けて飛翔する
発射機や地上等のレーダー標に対して発した電波の反射波を検知し、そこに向かって飛んでいく。
誘導用の電波を照射するものは「イルミネーター」と呼ばれる。

発射機や地上等のレーダーによってロックオン状態を維持する必要がある。
ミサイル側は命中するまでレーダー波を常に受け取り続ける必要がある。

  • 長所:シンプル安価、妨に強い
    • 高価なレーダーを積む必要がなくARHより単純・省コスト。(あくまで較して)
    • サイズや出力に制限があるミサイルのレーダーと違い、高出力の誘導レーダーを使用できるので高い命中精度を期待できる。
    • 誘導に人間が介在する場合、囮の妨に強い。
    • ミサイルによっては、発射機でない第三者が誘導する事も可
  • 短所:命中までかがレーダーを照射する必要がある、探知されやすい
    • レーダー波が途切れればミサイルはただの棒になる。
    • 敵は強力な電波を照射されるため、発射/発射準備に気付かれる
    • レーダー自体が低性標を捕捉できなければ、いくらの前に標があっても命中しない。
  • 備考

パッシブホーミング

[電波/受信&飛行計算]+撃ちっ放し
パッシブレーダーホーミング(PRH)とも呼ばれる。

例:懐中電灯レーダー)を持っている相手を暗闇で追いかけるようなもの。

標が発するレーダー波の発信を追尾する。
レーダーミサイルとして使用される

  • 長所:全自動追尾、探知されにくい 
    • 発射後は命中まで誘導する必要がない。
    • 照準用レーダー波を照射しないため、敵に発射/発射準備に気付かれにくい。
  • 欠点:複雑で高価、レーダー以外には使いがない
    • レーダー波を探知する装置、高性な計算装置、長射程、高速とめられるものが多い。
    • 相手がレーダー波を発信しない状態では探知すらできない。
      • 発射を悟られるとレーダーを停止されることもある。
  • 備考
    • 近年では他の誘導方式と組み合わせ、レーダー波を停止されても誘導を続けるミサイルが多い。

光波ホーミング誘導

幅広く使われている方式のひとつ。

ミサイル先端のカメラシーカー)が
敵の発する熱や、照準用レーザーの照射先を捉えて飛翔・命中するもの。

赤外線を捉えるものはIRホーミングとも呼ばれる。

標のを検知して追尾する。(赤外線メジャーだが、紫外線を探知するものも存在する)
車両航空機エンジンが発する熱を追尾する。

ちなみに、航空機はこんな感じで熱を放出している。(赤外線映像)exit_nicovideo

また、レーザーによる誘導もあり、そちらは半自動誘導である。

赤外線誘導(IRH)

[波/受信&飛行計算]+撃ちっ放し
発射後、標の検出と飛行計算はミサイル自身が行う。

標の熱を「点」として認識して追尾する。
次項の赤外線画像誘導も出てきたが、現在も幅広く使用されている。

初期のものは太陽(熱の塊)に飛んでいくドジっ子だったり、エンジン排気が良く見える後方からしロックオンできず使い勝手が悪かったが、現在のミサイルは敵機正面からでもロックオンが可になっている。

赤外線画像誘導(IIR)

[波/受信&飛行計算]+撃ちっ放し
赤外線誘導の上位互換。可視イメージ誘導も併用されている。

標の熱を「形」として認識して追尾する。

ほわほわと浮かぶフレアのような熱の囮ではなく、航空機車両の機体っぽい形状を識別して追尾するため欺瞞に強くなった。

セミアクティブレーザー誘導(SALH)

[レーザー照射/受信&飛行計算]
単にレーザー誘導とも呼ばれる。

標に向けて照準用レーザーを照射し、反射波を受信して追尾する。
「破壊したい標にレーザーを当てておけばOK」である。

ミサイルの発射機、照準用レーザーの照射役がタッグを組んで攻撃を行う。
この2つは同じ場所でも良いし、別々の場所でも良い。

照準装置上は後述のSOLCOSモニター中央に飛ぶ)方式と似ている。

  • 長所:汎用性、命中精度が高い
    • 照準用レーザーを当てた/定した場所に着弾する=好きな標を定できる。
    • 発射機と照射役を分けることが可
      • 地上班がレーザーを照射して航空機車両から発射しても良いし、その逆も可
      • 遠隔発射できるものは、照射役から離れた場所に発射機だけを置いておいても良い。
    • 正しく標を定し続けていれば、移動標であっても高い命中精度を期待できる。
    • フレアやチャフといった囮に欺瞞されない。
    • 対戦車ミサイルでも、低速・で飛ぶヘリコプターなら狙えないこともない。
  • 短所:命中までかがレーザーを照射する必要がある、探知されやすい
    • 命中するまで、照準用レーザーを照射し続ける必要がある。
    • レーザーを照射するため、発射前に敵に気付かれる可性がある。
    • 普及している方式のため、レーザー警報装置などを備えている戦車などが多い。
      • 警報装置にはレーザーを照射されているおおよその方向を示すものも多い。
    • 煙幕に欺瞞され命中しない場合がある。
    • 照射装置と発射装置がっているものは射撃後に反撃を受ける可性がある。
      • 誘導員が倒されたり、ビビッて定がズレればそこに命中してしまう。
    • レーザー標に当たった際の反射が必要なため、長距離・高速の標は狙いづらい。

採用例:87式対戦車誘導弾(日)、AGM-114ヘルファイア)など

指令誘導

「操作した通りに動け!」or「ここへ飛んでいけ!」と示してあげるもの。
手動と半自動標に向け続ける)の2種類がある。

有線式は射程と扱いやすさが少し劣るが、
非常に細いワイヤーケーブルで接続されており、欺瞞や電波で使用不能にされない。

手動指令照準線一致誘導方式(MCLOS)

[誘導/受信]

「操作した通りに動け!」

初期のミサイルに用いられた方式。ラジコンのようなもの。
標に向かって発射後、命中するまでミサイルをジョイスティック等でズレを修正する。
距離はミサイルが小さく見えなくなってしまうため、後部がマグネシウム等で発する。
…有線式無線式がある。スコープ等を覗きながら操作する。

  • 長所:シンプル安価、誘導経路の自由度が高い
    • 全に手動であり、ミサイルの弾道をほぼ自在に操れるという意味では自由度が高い。
    • レーザーレーダー等を照射しないため、敵に発射を悟られにくい。
    • チャフ・フレアといった囮に欺瞞されない。
    • ミサイルは飛行示を受けて羽根を動かすだけ。
  • 短所:全手動、射手が危険にされやすい
    • 良くも悪くも自動的な弾道補正が一切されない。
    • 人間の反応速度が追いつけるよう、ミサイルの飛翔速度が低速
      • 命中する前に敵に気付かれてしまい、隠れる・反撃されるリスクが伴う
    • 標位置とミサイルの位置を両方意識しつつ操作しなければならない
      • 低速で後部が発するとはいえ、長距離になるほど誘導は困難になる
    • 他の誘導方式の方が便利なため、現在は時代遅れ
  • 備考
    • 近年ではドローンという形で復権中。
      • ミサイルよりも射程が長く適切に運用すればミサイルよりも安全。

採用例:64式対戦車誘導弾日本)、SS.10()、9M14AT-3(露)など

半自動指令照準線一致誘導(SACLOS)

誘導とも。

人間は照準器を標に向け続けるだけでよい。

ミサイルの尾部にが付いており、照準器はそれを捉えてミサイルが照準線(照準器と標を結ぶ線)からずれているかどうかを判別し、ミサイルの軌を修正する(人間がミサイルの運動を直接コントロールする必要がない)。

照準用のレーザーレーダーを照射する必要がないため、敵に発射を悟られにくいのも利点。

採用例:TOW対戦車ミサイル)、79式対舟艇対戦車誘導弾(日)、9M111/AT-4(露)、9K114AT-6(露)など

  • 長所:シンプル安価、半自動誘導
    • 照準器を向けた/定した場所に着弾する=好きな標を定できるため汎用性が高い。
    • モニター上の照準線中央に向かってミサイルが飛んでいってくれる。
    • レーザーレーダー等を照射しないため、敵に発射を悟られにくい。
    • 正しく標を定し続ければ移動標にも高い命中精度を期待できる。
    • フレアやチャフといった囮に欺瞞されない。
    • 対戦車ミサイルでも、低速・を飛ぶヘリコプターなら狙えないこともない。
  • 短所:半手動誘導、射手が危険にされやすい
    • 操作員は命中するまで照準器を標に向けておく必要があり、その間防備になってしまう。
      • 誘導員が倒されたり、ビビって定がズレればミサイルは外れてしまう。
    • 基本的に有線誘導なのでワイヤーケーブル以上の射程は望めず、送電線や木・枝といった障害物に引っかかれば切れてしまうため使用環境は一部限定される。
    • 照準器でミサイル尾部を捉える必要がある。
      • レーザー誘導のように照準器と発射機を別々に分けることができない。

ビームライディング誘導(LOSBR)

[誘導/受信&飛行計算]

現在は前者の半自動に移行されている。

発射装置「今ビームを照射してるトコに飛んでいけ!あと飛行計算はお前がやって!
ミサイル「ビームに乗るように飛ぶけど…計算までがするのか…(困惑)

前者の半自動照準線一致誘導と似ているが、飛行示の計算をミサイル自身がやる羽になる。
ミサイル後端にセンサーがあり、照準用のビームが当たっている=正しい飛行ルートと認識する。

利点としてビームに沿って飛翔するため、レーザー誘導のように標からの反射がなくとも標などを追尾することも一応可

プログラム誘導

標まで飛び方を事前示するもの。

一部のミサイルを除き単独で使用されることはあまりなく、補助で使用されることが多い。

慣性誘導(INS)

ミサイルが自身の方向と加速度を計測し、事前に設定された進路とのズレを補正する。

巡航ミサイル弾道ミサイルで使用される他、長射程の空対空ミサイルの中間誘導に使用されることもある。

他の誘導方式と較すると精度に劣るため、多少のズレが気にならない核弾頭を搭載したり、終末誘導には別の誘導方式が用いられる。

  • 長所:全自誘導、一切の妨を受けない
    • 自身の動きを計測して誘導を行うため、物理的なものを除けば一切の妨を受けない
    • レーザーレーダー等を照射しないため、敵に発射を悟られにくい。
    • 標ではなく標の位置に向かって飛んでいくため、敵を「ロックオン」する必要がない。
  • 短所:精度が低い
    • 自身の動きから現在位置を推定するため、他の誘導方式にべて著しく精度が低い。
    • 標ではなく標の位置に向かって飛んでいくため、敵はその場から動くだけで回避可
  • 備考
    • 基本的に長距離ミサイルの中間誘導に使われ、終末誘導には別の誘導方式が用いられる。
      • 核兵器ほどの威力であれば少々のズレは問題とならないので、慣性誘導がに使われることも。

予測照準線一致方式(PLOS)

慣性誘導を用いたしい誘導方式。対戦車ミサイルで使用される。

誘導兵器で移動中の標を攻撃する場合、射手は標の未来位置を予測して射撃する、いわゆる偏差撃ちが必要だが、これを自動で行ってくれる誘導方式。

あくまで事前に計算した未来位置へ飛翔するだけなので、標が加速・停止した場合は外れてしまう。

  • 長所:手軽に利用でき、即応性に優れる
  • 短所:射程が短い、射手が危険にされやすい
    • 射程が誘導のロケット弾とあまり変わらず、射手が反撃を受ける可性がある。
    • 標の未来位置に飛んでいくだけなので、敵が加速・停止すると外れてしまう。
    • 誘導のロケット弾と較すると高価で複雑

採用例:FGM-172 SRAW)、NLAW瑞、)など

地形等高線照合方式(TERCOM)

レーダーで地表をスキャンし、ミサイルに保存されたデジタルマップと照合して自身の位置を特定する方式。巡航ミサイルで使用される。

上記のINSと同時に用いられるほか、最近はさらにGPSが併用される。

補足

 標を定して射撃後、何も誘導せずとも標まで勝手に飛んでいってくれるアクティブホーミングやパッシブホーミング、赤外線誘導は「撃ちっぱなし(fire and forget)」が可になるため、発射する側の生存性向上に有利である。近年の電子装置の小高性化に伴い、そのような撃ちっぱなし力を持つミサイルも増えている。

 最近ではさらに発射前ロックオン=LOBL(Lock On Before Launch)から、発射後ロックオンLOAL(Lock On After Launch)へと進化しているミサイルも登場している。LOBLの場合、ミサイルが自身のマーカー(あるいは機のレーダー等)で標を捕らえたのちに機から射出されるが、LOALでは発射後、独自、あるいは機からのデータリンク標を追尾することで命中力が向上しているものがある。

その他誘導

  • GPSなど位置座標情報に対して飛翔するものも存在する。
  • 長射程のミサイルは慣性航法など、発射前に位置座標を定しある程度標の近くまで飛ばすものもある。
    • 標が捕捉できる距離に入ると、上記の誘導方式に切り替わる。(終端誘導)
  • ミサイル先端のカメラ映像を見ながら誘導するミサイルもある。MGSニキータミサイルではない。
  • 神風特攻隊のような人が乗り込み直接標に突っ込むのも一種の誘導方式といえる。[1]
  • ミサイルへの対抗策は後述。

飛翔形態による区分

弾道ミサイルBM
大気圏外もしくは大気圏上層を弾道飛行するミサイル。非常に高価なため、コストパフォーマンスの面から弾頭に大量破壊兵器を搭載していることがほとんどである。長射程で、射程により短距離弾道弾(SRBM)、中距離弾道弾(IRBM)、大陸弾道弾(ICBM)と区分される。潜水艦発射のものは潜水艦発射弾道弾(SLBM)と呼ぶ。
なお、宇宙開発ロケットペイロード宇宙に変わっただけで、原理的には弾道ミサイルとほぼ同じものである。実際、初期の宇宙開発には弾道ミサイルを流用したロケットが使用されていた(スプートニクロケットタイタンロケットなど)。
巡航ミサイルCM
を長距離飛行するミサイル。単に長射程の対地/対艦ミサイルとも言えるが、長距離を飛行するため揚力を生むターボジェットエンジンを備えていることが多く構造上はジェット機に近い。亜音速でちんたら飛んでいるといい的になるため、最近ではステルス化や音速化が進められている。

任務(目標)による区分

対地ミサイル
地上標を破壊するためのミサイル。大都市を一撃で燼に帰すICBMや、肩撃ち式の対戦車ミサイルも広義の対地ミサイルである。大まかに「対戦車ミサイル」とカテゴライズされる場合もある。
→対戦車ミサイル)
対空ミサイル
中の標(航空機、敵のミサイル)を破壊するためのミサイル。対衛星ミサイルのような特殊なものもある。「SAM」「地対空ミサイル」とも呼ばれる。高射砲の後任。
対艦ミサイル
を破壊するためのミサイル。洋上で大の艦を破壊する関係上大で長射程のものが多い。
対潜ミサイル
潜水艦を攻撃するためのミサイル。水中飛翔することはできないので、弾頭部に短魚雷を搭載している。

ミサイルの区分でよく見られる「SAM」「AAM」と言う略語は発射プラットフォームと標を組み合わせたものである。「SAM」は(surface/ship to air)で地上/艦上発射対空ミサイルを、「AAM」はair to air)ミサイルをさす。地(艦)対地(艦)ミサイルはSSM、対地(艦)ミサイルはASMとなる(潜水艦は「underwater」で「U」を用いる)。

対抗策

逆に「ミサイルを撃たれる側の視点として見ていく。

相手は歩兵車両航空機と様々である。他といった距離から撃ってくる場合もある。
もちろんミサイルを撃たれる側も、命中するまで黙って見ているわけではない。

ただし技術が向上しているため、互いにいたちごっことなっている部分もある。人間が搭乗しないミサイルの方が人間が即失神するレベルの急な機動ができるといった長所もあるし、発射機や誘導方式の特性や、互いの相対位置などもあるため一概には言い切れない。

 航空目標の対抗策
逆転の発想

追尾してくる赤外線誘導(熱誘導)ミサイルのセンサー特性を逆手に取った対抗策も存在する。(関連動画も参照)

 地上目標の対抗策

戦車といった車両はもちろん、駐機中の防備な航空機や艦艇も含める。

  • な機動・方向転換・行運転。
  • 塹壕を掘る、周囲に土を盛るなどして以外を地形下に隠す。
    • ダグインとも呼ばれる。ただし屋根がなければ上からの攻撃に対する効果は薄い。
    • 戦車など大体を隠す大きさのを掘るのは大変な重労働である。
  •  デコイ(囮)。どうせ撃たれるなら破壊されても問題ない物を用意する。
    • ダミーバルーンのような、安価な実物大標を配置する手も割と有効だったりする。
    • 湾岸戦争などでも割と米軍が騙されており、偽物を高価なミサイルで破壊する羽になるため費用対効果最悪どころか笑いものである。(その他、味方車両等を誤認して誤爆なども同様に起きていた)
  • 敵に発見されなくする(被発見率の低下)
  • 煙幕を展開する。
  • 攻撃されても大丈夫な場所に格納する。
  • 攻撃されても被害を最小限に抑える。

ちなみに赤外線映像(いわゆるサーマルサイト)で見ると、自然環境下の植物戦車金属では温度差があるため、エンジンを起動していなくても割と「なんかある」程度には見える。ただし前述のダミーバルーンなど、手の込んだものはヒーターを取り付け、実物同様に発熱させるものもある。

迎撃・物理的に叩き落とす
先手必勝
  • 撃たれる前に発見/破壊する、地域や広域を監視/制圧する
  • 敵の基地・拠点空母等を直接攻撃する。(敵基地攻撃力)
  • あえて敵に地対空ミサイルを発射させ、居場所を暴露させる「ワイルドウィーゼル」といった戦法もある。1機が囮となり、僚機が発射機を破壊するといったもの。もちろん撃たせるため危険性は高い。
  • 敵のミサイルの射程外から攻撃し力化する。(アウトレンジ攻撃)

ロケット弾との比較

ミサイルのほうが誘導してくれるぶん長距離や移動標に対する命中精度は高い。
「じゃあロケット弾は必要なくない?」と思ったかもしれない。…だがちょっと待ってほしい

携帯式の対戦車兵器を例に見ても

  • 一発あたりの価格、操作や構造が単純、軽量といった面ではロケット弾のほうが有利
    • 誘導装置、先端のセンサー類、可動などが故障すればただの飛んでいく棒になる。
    • 標捕捉(ロックオン)する必要がある場合、咄嗟に発射できない。
  •  安ければ同額で大勢に配ることができ、大勢・広範囲に対戦車火力を付与できる。
    • ロケット弾のほうが軽量なため、予備弾を多く携行可
    • ロケット弾=ミサイルより威力が劣る…という事はない。口径や製品にもよるが。
  • ロケット弾のほうが弾薬を詰め替えるだけで多な弾種を使用できる。(安価で汎用性が高い)
  • 森林地では、携帯式の対戦車ミサイルでも自慢の長射程が発揮しづらい。
    • 障害物が多いため、有線誘導では建物障害物・電線等に引っかかり断線しミサイルを誘導できない。
    • 距離ではミサイルを標に誘導しきる前に通り過ぎたり、他の場所に着弾してしまう。
  • センサーや飛行姿勢制御用の可動を動かすための構造が複雑となる。
    • 距離飛翔するものはさらに燃料/推進剤が必要となり大化する。
    • 内部構造が複雑なうえスペースが限られるため、詰められる炸爆薬)量が減る。

ただし、ロケット弾はミサイルのように未来予測や横に対する自動補正を行わないため
距離や不規則なの起きやすい複雑な地形では不利となり、射手の技量にも左右される。

ロケット一発当たりの価格はミサイルより安いため、訓練でも(多少は)実弾を使いやすい。
ミサイルは方式に限らず一発が非常に高額なため、当たるか否か分からない人間全員に気前よく撃たせる訳にはいかない。[3]

このようにロケット弾とミサイルでは一長一短である。

 ロケットランチャー の項も参照。

その他

  • 射撃時の発射炎や煙で存在・位置を暴露し、長居していると反撃を受ける危険がある[4]
    • ミサイル発射機と誘導機材を別々に配置し操作・発射し、速やかに離脱できるものもある。
    • 状況によっては離脱優先で、命中・破壊といった結果を他者に確認してもらうといった工夫も必要。
  • ミサイルは発射地点から標まで全に一直線に飛ばない。
    • 飛行経路を補正しながら飛ぶため、少しふらつきながら飛ぶのはご敬である。
  • 標を自動追尾する反面、味方だった場合は悲惨。(→フレンドリーファイア
    • 味方航空機は敵味方識別装置(IFF)を搭載しており、発射機の呼びかけに応答する。
  • 同じミサイルでも異なるプラットフォーム(乗り物等)に搭載&使用される場合もある。
  • 弾種のひとつとして、戦車から発射可対戦車ミサイルもある。
  • 戦闘機にミサイルを積んでおけば機関なんていらなくね?外したろ!」
  • 現在横や後ろの標をロックオンする事も可となった。
    • (ミサイルの種類にもよるが)自機のセンサーで検知できればそのまま攻撃可

大百科に記事のあるミサイル兵器/装備

関連リンク

関連動画

追尾方式・対抗策など

関連コミュニティ

関連項目

分類
自衛隊兵器のみを集めたもの

脚注

  1. *戦時中は高性センサーを搭載したミサイル自体がいとはいえ、フレア・チャフといった囮に欺瞞されず、(大標であれば)標を正確に認識して飛んでいく点ではAIより上とはいえ、採算度外視、人権無視、桁外れの非人兵器である。
  2. *近辺を飛翔するなどをミサイルと誤認してしまい、装置が作動してしまう。
  3. *ジャベリン対戦車ミサイルにおいては、模擬的なシミュレーターで好成績を残さないと撃たせてもらえない。
  4. *欠点は、無反動砲ロケットランチャーといった重火器にも共通する。
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ミサイル

156 ななしのよっしん
2023/12/18(月) 10:32:25 ID: oqd89VMK4t
また北朝鮮が撃ったのか この前の沖縄のあれはホントに緊迫感が漂っていたし やめてほしい
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157 ななしのよっしん
2024/04/09(火) 12:45:43 ID: cQH/vBvvL/
日本韓国に向けて試し撃ちすればいいんじゃない?
に落として当たらない程度に
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158 ななしのよっしん
2024/09/20(金) 11:11:31 ID: miukNuMf6S
フィクションほどグネグネは動かないし命中まで火を吹き続けてるわけではない(短射程の地対地ミサイルとかは除く)

見栄えが良いから気にしないけど、稀に正確な描写してる映画とかがあるとちょっと嬉しくなる
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159 ななしのよっしん
2024/10/11(金) 22:31:49 ID: +v/CCxFQf6
ミサイルの挙動で勘違いしやすいのが「速度が上がるほど命中率が上がる」という事。すぐ上の人が言ってるようにロケットモーターは数十で燃料切れなので後は空気抵抗を受けつつ慣性で進むだけ、速度が下がればそれだけ取れる機動の選択肢が狭まり当たりにくくなる

また旋回動作も基本的にはフィンを動かして空気抵抗で曲げるので、タイヤで曲がるなどとは異なり速度例して旋回率が上がる。要は機の速度ミサイルに乗れば命中率も射程も上がるよね、という話なのでスーパークルーズ力が重要視される理由の一つ

ちなみにフィクションだとMGS3シャゴホッドがこれに近い考えで、IRBMの発射台を時速700キロまで加速させる力技すぎる設計。4系のアーマードコアも限定的に再現してて、命中率に難のあるコジマミサイルフラジール等で発射すると異様に食いついたりする

一方ACではこれが再現されてたりされてなかったり微妙な所で、なんならコブラ機動中に放った方が誘導性が上がったりする
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160 ななしのよっしん
2024/10/11(金) 22:46:59 ID: +v/CCxFQf6
700じゃねえ480キロだ、何と勘違いしたんだ
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161 ななしのよっしん
2024/10/21(月) 23:10:13 ID: 9s2w1G5NkL
兵器に限らんけど物理的な限界に阻まれてこれ以上劇的な進歩が望めなくなってるな人類
代わりにコンピューターで扱いやすさや正確性を上げる方向に行ったと言うかそこにしかもはや行けないというか
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162 ななしのよっしん
2024/11/25(月) 22:19:12 ID: zUrpKThp9k
昔は農地が広がる人口増える石炭石油など消費できるエネルギーか増えて、より遠くより速くより沢山できる事が増えるのが進歩だった
その代わり制御技術についてはチグハグで、できる事の圧倒的増加に対して情報処理が常に追いついてない感じ
最近は物理的な伸び悩みの反面ドローンにしろARVRにしろようやく「想像の範囲内なら想像通りの事ができる」時代になった気がするね
イージスシステムとかそんな感じ(レーダーに映ってミサイルが足りて居れば迎撃できる)
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163 ななしのよっしん
2025/02/12(水) 10:15:05 ID: miukNuMf6S
概要の『「敵/標を追いかけて飛んでいく」のがミサイル』って文章、これに対して物申す訳ではないんだが、基本現代のミサイルって「追いかけていく」というよりは「未来位置に向かって飛んでいく」が基本じゃん

魚雷のウェーキホーミングみたいな文字通りの意味で「追いかけていく(単純追尾?)」のミサイルって現代では何かあるのかな
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164 ななしのよっしん
2025/02/12(水) 17:46:13 ID: miukNuMf6S
ちょっと本文を修正して情報を追加
記事が充実していくにつれて表記がごっちゃになって来てるから、何処かで校正するか
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165 ななしのよっしん
2025/04/10(木) 22:21:37 ID: zUrpKThp9k
>>163
単純追尾か例航法かあるいはその他の航法かは追いかけて追い付くための経路・手段の違いでしかないかと…
「"文字通り"追いかけて行く」「"単純"追尾」とわざわざ"どのように"追いかけるか説明が必要な時点で「追いかける」という表現が単純追尾に限定されない事の明と言えます
また未来位置に向かうかについても低速で急加減速する標の多い対地ミサイル誘導式だと基本ではないんでは?
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