無誘導のロケット弾とは異なり、誘導装置によって自動で飛行制御を行うのが特徴。
概要
広義には飛び道具全般を指す語であるが、現代の軍事分野では、おおむね弾頭(爆発などで対象を破壊する部分)に誘導装置(ミサイルを目標に向かうように誘導する部分)と推進装置(エンジンとその燃料)を持つ飛翔体をいう。誘導装置、推進装置、任務/用途によって大まかに区分される。日本語(防衛用語)では「誘導弾」という。
誘導装置を持たない、つまり真っすぐにしか飛ばないものはロケット弾と呼び、推進装置を持たない誘導爆弾(航空機に搭載して上空で投下・滑空して命中させる)はミサイルには含まれない…はずなのだが、運用組織によっては推進装置をもたない誘導爆弾をミサイルに区分していたり(AGM-114JSOW)、GPS誘導のロケット弾をロケット弾と呼んでいたり(GMLRS)なので、余りこだわる必要は無い。ドイツ語やロシア語ではそもそもロケットとミサイルを区別しない。
発射された後は誘導装置が指定された目標に対して進路を制御、推進装置により飛翔して対象に命中(もしくは近接信管による爆発でダメージを与えられるまで接近)する。通常は弾頭部の炸薬が爆発することでダメージを与えるが、一部のキネティック弾頭と呼ばれるものは弾頭部が直撃した際の運動エネルギー自体で対象を破壊するよう設計されている。
なお、宇宙開発に用いられるロケットとは弾頭が宇宙船に変わっただけで、原理的にはミサイルとほぼ同じものである。
実際、初期の宇宙開発には弾道ミサイルを流用したロケットが使用されていた(スプートニクロケットやタイタンロケットなど)。
ミサイルのほうが誘導してくれるぶん長距離や移動目標に対する命中精度は高いとはいえ
一発あたりの価格、操作や構造が単純といった面ではロケット弾のほうが有利である点も留意したい。
(ミサイルは誘導装置、センサー類が故障すればただの太い棒になってしまう)
推進装置
ロケットエンジンもしくはターボジェットエンジンが主に用いられる。
ロケットエンジンは保管が容易で扱いが簡単な固体燃料ロケットが広く用いられる。液体燃料ロケットは燃料の保管や注入の手間がかかるなどデメリットが多いため、現在では一部の弾道ミサイルに使用されているのみである。
燃焼に際し酸化剤を積む必要がないターボジェットエンジンは、長距離を飛翔する巡航ミサイルや対艦/対地ミサイルに使用される。ただし現状では最大速度でロケットに劣る、酸化剤(空気)が無い高空では飛翔できない、コストが高いなどのデメリットがある。
現在も高速度と高燃費を目指したラムジェットやダクテッドロケットなどの技術が研究されている。
誘導装置の形式
ミサイルの誘導形式は多岐にわたるが、ここではざっと解説する。
まずは外部からの指令による誘導とミサイル自体が目標を追尾する形式に分かれる。ミサイルが外部から誘導される場合としては無線/有線による直接誘導、慣性航法や地形照合、GPSなどによる事前の飛翔経路/目標設定が挙げられる。また、ミサイルから送信された情報(画像、レーダー情報)を元に操作員が操作を行うこともある。
ミサイル自体が目標を追尾(ホーミング)する方式はおおむね三種類に区分される。
- ミサイル自体が電波などを発し、目標を追尾するアクティブホーミング
- 他の装置(発射母機、地上の誘導班など)から照射された電波・レーザーなどによって追尾するセミアクティブホーミング
- 目標が出すシグネチャー(赤外線、レーダー波など)を追尾するパッシブホーミング
ミサイル自体が目標まで勝手に飛んでいってくれるアクティブホーミングやパッシブホーミングは「撃ちっぱなし(fire and forget)」が可能になるため、発射する側の生存性向上に有利である。近年の電子装置の小型高性能化に伴い、そのような撃ちっぱなし能力を持つミサイルも増えている。
最近ではさらに発射前ロックオン=LOBL(Lock On Before Launch)から、発射後ロックオンLOAL(Lock On After Launch)へと進化しているミサイルも登場している。LOBLの場合、ミサイルが自身のマーカー(あるいは母機のレーダー等)で目標を捕らえたのちに母機から射出されるが、LOALでは発射後、独自、あるいは母機からのデータリンクで目標を追尾することで命中能力が向上しているものがある。
飛翔形態による区分
- 弾道ミサイル(BM)
- 大気圏外もしくは大気圏上層を弾道飛行するミサイル。非常に高価なため、コストパフォーマンスの面から弾頭に大量破壊兵器を搭載していることがほとんどである。長射程で、射程により短距離弾道弾(SRBM)、中距離弾道弾(IRBM)、大陸間弾道弾(ICBM)と区分される。潜水艦発射のものは潜水艦発射弾道弾(SLBM)と呼ぶ。
- 巡航ミサイル(CM)
- 低空を長距離飛行するミサイル。単に長射程の対地/対艦ミサイルとも言えるが、長距離を飛行するため揚力を生む翼とターボジェットエンジンを備えていることが多く構造上はジェット機に近い。亜音速でちんたら飛んでいるといい的になるため、最近ではステルス化や超音速化が進められている。
任務(目標)による区分
- 対地ミサイル
- 地上目標を破壊するためのミサイル。大都市を一撃で灰燼に帰すICBMや、肩撃ち式の対戦車ミサイルも広義の対地ミサイルである。大まかに「対戦車ミサイル」とカテゴライズされる場合もある。
- 対空ミサイル
- 空中の目標(航空機、敵のミサイル)を破壊するためのミサイル。対衛星ミサイルのような特殊なものもある。
- 対艦ミサイル
- 艦船を破壊するためのミサイル。洋上で大型の艦船を破壊する関係上大型で長射程のものが多い。
- 対潜ミサイル
- 潜水艦を攻撃するためのミサイル。水中を飛翔することはできないので、弾頭部に短魚雷を搭載している。
ミサイルの区分でよく見られる「SAM」「AAM」と言う略語は発射プラットフォームと目標を組み合わせたものである。「SAM」は(surface/ship to air)で地上/艦上発射対空ミサイルを、「AAM」は空対空(air to air)ミサイルをさす。地(艦)対地(艦)ミサイルはSSM、空対地(艦)ミサイルはASMとなる(潜水艦は「underwater」で「U」を用いる)。
大百科に記事のあるミサイル兵器/装備
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関連コミュニティ
関連項目
- 軍事
- ミサイル防衛
- 弾道ミサイル
- 対戦車ミサイル
- SAM(地対空ミサイル)
- 対艦誘導弾
- 板野サーカス
- 味噌 - ミサイルの英語読み(空耳)
- 赤外線 - 熱源誘導(ヒートシーカー)
- フレア - 赤外線誘導ミサイルの欺瞞・妨害
- チャフ - レーダー誘導ミサイルの欺瞞・妨害
- レーダー
- ロケット弾
- 軍事関連項目一覧
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