ミシュラン(MotoGP)単語

ミシュランモトジーピー
1.3万文字の記事
  • 2
  • 0pt
掲示板へ

ミシュラン(Michelin)exitとは、MotoGPの最大排気量クラスで独占的にタイヤを供給するメーカーである。

黄色ミシュランイメージカラーで、ビバンダムexitマスコットキャラクターである。
 

歴史

MotoGP最大排気量クラスにおいて、ミシュランは数々の栄を勝ち取ってきた。

ミシュランタイヤを履いてMotoGP最大排気量クラスチャンピオンを獲得した最初のライダーは、1976年バリー・シーンexitである。

ミシュランMotoGPにてラジアルタイヤexitを持ち込み、成功を収めた。1984年フレディ・スペンサーexitがラジアルタイヤで初勝利を収め、1985年ランディ・マモラexitが前後ともにラジアルタイヤを履いての初勝利を挙げた。これによりラジアルタイヤが全盛を迎え、そのまま今日に至る。MotoGPタイヤの技術革新を先導するという大役を果たした。

1992年ウェイン・レイニーダンロップで最大排気量クラスチャンピオンを獲ったが、1993年から2006年までずっとミシュラン使用のライダーチャンピオンを獲得し続けていた。
 

ブリヂストンの猛追を受け、2008年をもって一時撤退

長らく「ミシュランを使わないと最大排気量クラスチャンピオンになれない」という状況が続いてきたが、1991年から2003年まで125ccクラスで腕を磨いて2002年から最大排気量クラスにやってきたブリヂストンが猛追してきた。

2004年ブリヂストン玉田と共に最大排気量クラス勝利を勝ち取った。

2007年ブリヂストンドゥカティワークス所属のケーシー・ストーナーと共に最大排気量クラスチャンピオンの座を奪い取った。

2008年にはトップライダー崩を打ってミシュランからブリヂストン乗り換えブリヂストンを使うヴァレンティーノ・ロッシが最大排気量クラスチャンピオンになった。

2008年末にミシュランリーマンショックの不気のもあって撤退していった。
 

2015年末にブリヂストンが撤退し、その代わりにミシュランが復帰

2009年から2015年までブリヂストンMotoGP最大排気量クラスの独占供給者だった。

2014年5月ブリヂストンが「2015年限りでMotoGPから撤退する」と発表した(記事exit)。

この当時のブリヂストンは、2020年東京オリンピック開催に向けて、オリンピックスポンサーになっていた(2014年6月13日に公式発表exit)。オリンピックスポンサーの中でも最上位のTOP(The Olympic Partner)であり、宣伝効果が大きいがスポンサー料がとても高い。このため、MotoGPから撤退することになった。

MotoGPにおけるタイヤ供給における費用は、全面的にタイヤメーカーが負担することになっており、世界1位タイヤメーカーであるブリヂストンにとっても馬鹿にならないのである。MotoGP最大排気量クラスにおけるタイヤメーカーの年間費用は20億円程度と試算する記者もいる(記事exit)。

2014年5月に、ミシュラン2016年からMotoGP最大排気量クラスへ復帰すると発表された(記事exit)。

2017年10月ミシュランドルナ契約を延長し、少なくとも2023年までミシュランタイヤを供給し続けることを確定させた(記事exit)。
 

主要スタッフ

2輪モータースポーツマネージャー2019年現在ミシュランMotoGP部門の総責任者といった立場にある。

イタリア人で、話している英語がイタリア訛りexit

MotoGPだけでなくダカール・ラリーexitの記事にも出てくる。
 

2016年から2017年までミシュランMotoGP部門の総責任者といった立場だった。

1963年10月15日生まれ、フランス出身。1988年ミシュランに入社。1993年から1997年まで群馬県太田市日本ミシュランに勤務し、JTCC全日本GT選手権(いずれも四輪レース)に参加していた。

JTCC1994年から1998年まで日本で開催されていた自動車レース。また全日GT選手権は1994年から2004年まで日本で開催された自動車レースで、SUPER GTの前身。

ミシュランには「郷に入っては郷に従え」という社内方針があり、海外駐在する社員にその地の言葉を習得させるという掟がある。そのためニコラ・グベールも4年間で日本語を習得した。G+のインタビュアーに対しても流暢な日本語で答えてくれる。

好物は神戸牛てんぷら

2017年シーズンをもって、28年務めてきたミシュランを退社し、ドルナに就職した。

2019年からドルナが「Moto-e World Cupexit」という電動バイクレースを始めることになり、ニコラ・グベールはそのエグゼクティディレクターに就任することになった(記事exit)。ちなみに、このレースタイヤを供給するのは、ミシュランである。
 

ミシュランモータースポーツディレクターという肩書きで、MotoGPのみならず全てのモータースポーツ活動の総責任者である。名前検索するとF1への復帰を検討だとか、そういう記事が多くヒットする。
 

拠点

ミシュランフランスクレルモン・フェランに本社や工場がある。MotoGP向けのタイヤクレルモン・フェランにて開発されて製造されており、ミシュランられる記事では「クレルモン・フェラン」が頻出する。詳しくはクレルモン・フェランの記事の「ミシュランのお膝元」の項に記述されている。

日本では、群馬県太田市研究開発の拠点を持っている。それについては、ミシュランの記事を参照のこと。
 

体制

世界2位タイヤメーカーミシュランは、MotoGP最大排気量クラスを25年近く支配し続けた名門で、レースに対する情熱は圧倒的である。

かつては、金曜日練習走行のデータを見てから大急ぎでタイヤを作り、特急トラック輸送して、日曜日の決勝にギリギリ間に合わせる、そういう献身的としか言いようのない作業をしていた。タイヤ製造の人たちがしてタイヤ作りしたので「なべタイヤ」と言われていた。

そんなミシュランMotoGPに臨む体制を列挙して紹介しておきたい。
 

レースごとに1200本のタイヤを持ち込む

レースごとに1200本のタイヤを持ち込む。そのうち40フロントタイヤで60リアタイヤレインタイヤは10レースで使うのは500本ほどだが、その2.4倍の本数を持ち込む。

すべてをバーコードで管理して、タイヤ所在チェックに使う。

タイヤ温度管理されたコンテナに詰め込まれ、トラックで陸送され、航空機輸される。コンテナの中の温度華氏50~70度、つまり摂氏10~21度に保たれ、ひんやりとした状態になっている。

タイヤは横倒しにされず、垂直を保って保管される。このブリヂストンの紹介動画exitでも、タイヤを垂直に保って保管している。

ヨーロッパ以外のサーキットタイヤを輸送する手段の割合は、が70飛行機が30である。

かつてタイヤを盗まれてしまったことがあるので、警備を厳重にしている。工場からサーキットへ移動しているときはトラックに必ずかが残るようにしているし、トラック警報装置も付いている。サーキットについてタイヤを降ろしたら、警を付ける。

ミシュランタイヤが盗まれた事件として有名なのは、2005年5月アイルランドモンデロパークexitにおける窃盗事件である。このとき、BSBイギリススーパーバイク選手権)が開催されていたが、ミシュランタイヤを盗まれてしまった。おそらく、ライバル企業の仕業だと思われる。


※この項の資料・・・ライディンスポーツ2018年1月号26~27ページ記事1exit記事2exit記事3exit記事4exit
 

フィッターがタイヤをホイールに装着する

ミシュランは、レースが開催されるときに19人の技術者サーキット派遣していて、そのうち10人はタイヤをホイールに装着する作業を行うスタッフで、フィッター(fitter)と呼ばれる。

ブリヂストンのフィッターの作業の様子を捉えた動画があるので紹介したい。タイヤをホイールから外すexit何かを塗ってタイヤをホイールに付けるexit空気を入れるexit


ちなみに、2016年第4戦ヘレスサーキットスペインGPで、ミシュランのフィッター10人のうち5人が集団食中毒にかかった。どうやら、屋台の怪しいものを食べたらしい。こので最大排気量クラス土曜日FP4の開始が遅れた。


※この項の資料・・・記事1exit記事2exit
 

最大排気量クラスの各チームにスタッフを派遣する

ミシュランは、レースが開催されるときに19人の技術者サーキット派遣していて、そのうち10人はフィッター(fitter)であり、残る9人は最大排気量クラスの各チーム派遣され、シーズンを通じてほぼそのチームの一員になり、タイヤに関してアドバイスをする。

2017年の最大排気量クラスは12のチームが参加しているので、6人は6チームに1人ずつ派遣、残りの3人が1人で2チームを掛け持ちして担当、そんな体制になっていると推測される。

この画像exitは、レプソルホンダに加入したアレックス・マルケスが、レプソルホンダを担当するミシュランスタッフと話し込んでいる様子を映している。


※この項の資料・・・記事1exit
 

タイヤの所有権はミシュランにあり、最終的にミシュランへ返却される

タイヤの所有権はミシュランにあり、各チームに貸し出しているに過ぎない。

先述のようにタイヤ1本1本にバーコードがあり、コンテナから出したらスキャンチームピットでもスキャン、使用し終わってコンテナに戻す時もスキャンする。こうして、どのタイヤがどのチームのどこに存在しているか、完璧把握している。ミシュランの紹介動画exitでも、ブリヂストンの紹介動画exitでも、タイヤバーコードスキャンしている。

レースが終わったらフランスクレルモン・フェランミシュラン工場へ送り返され、詳細に分析された後、破砕されて処分される。


※この項の資料・・・記事1exit
 

2016年中頃から空気圧センサーをホイールに装着

2016年シーズン序盤にミシュランは復帰々苦い思いをすることになった。

2月パンテストロリスバズタイヤバースト映像exit音声exitタイヤ画像exitのどれを見ても、タイヤバーストの凄まじさを感じさせる。

第2戦アルゼンチンGPの土曜日FP4スコット・レディングがタイヤ剥離exit

調の結果、両者ともグリップを得るために過度に空気圧を低くしていたことが判明した。

これにより、ミシュラン空気センサーを導入することを決意した。全ての車両のホイールにこんな形状exit空気センサーを取付け、過度に空気圧が低くなったらすぐにバイクの電子制御装置に信号を送って、エンジンパワーを弱めるものである。ちなみに、その空気センサードイツの電子部品関連企業2D(ツーディー)exitが作った。

※この項の資料・・・記事1exit記事2exit
 

2017年からタイヤ自動識別システムを稼働

2014年シーズンから当時のタイヤ供給者だったブリヂストンタイヤ識別を始めた。タイヤサイドに色を塗り、色でタイヤの種類を識別する方法であった。

エキストラソフトが緑、ソフトが白、ミディアムは黒(何も塗らない)、ハードは赤だったexit。ちなみにブリヂストンのイメージカラーは白、黒、赤exitであるので、会社カラーを採用したわけである。2015年はさらに2色増え、エクストラハードが黄、左右非対称フロントタイヤが青となったexit


2016年ミシュランタイヤ供給者になっても同様の手法でタイヤ識別システムが続いた。ソフトミディアム(何も塗らない)、ハード黄色となった。ミシュランイメージカラー黄色なので、多用されるハードタイヤ黄色を塗ったのである。

この画像exitを見ると、タイヤの側面に色の付いたシールが貼られていることが分かる。



2017年には先述の空気センサーを利用して、自動的にタイヤの種類が分かるようにした。ホイールにタイヤを装着するとき、タイヤバーコードスキャンして、タイヤの種類を示す情報空気センサーに送り込んでおく。空気センサーは電子制御装置につながっているので、すぐに電子制御装置へタイヤ情報が届く。ライダーが走り出してタイム計測地点を通過するとき、レース運営タイヤ情報電波で送信される。レース運営テレビ放送部にタイヤ情報を送信し、テレビ中継でタイヤ情報が表示される。

1つのサーキットにはタイム計測地点が12から20ヶ所あるので、わりとすぐにタイヤ情報が判明する。

サーキットに詰めかけている観客のためにも、タイヤサイドの色塗りは継続している。


※この項の資料・・・記事1exit記事2exit
 

2019年現在のテレビ画面表示

2019年現在MotoGPテレビ中継におけるタイヤ表示は、次のようになっている。

いた路面向けのスリックタイヤの場合、ハードタイヤ黄色ミディアムタイヤ灰色ソフトタイヤである。

濡れた路面向けのレインタイヤの場合、ハードタイヤはめったに支給されず、ミディアムタイヤ灰色ソフトタイヤ青色である。しかも外径が点線になっており、レインタイヤの溝を表現している

この画像を見ると、タイヤの固さの色分けを確認できるexit



ちなみに、「新品は黒文字」「中古背景」と頭に叩き込んでおくと便利である。


この画像を見てみるとexit、すべてが黒文字になっている。ゆえに、これらは全て新品タイヤである。


この画像を見てみるとexit、いずれも、背景タイヤの固さを表す色、となっている。ゆえに、これらは全て中古タイヤである。
 

ミシュランタイヤの特性

MotoGP最大排気量クラスバイクが大きいのでタイヤも太くて大きい。ゆえにタイヤバイクの走行に及ぼすは計り知れないほど重大である。

ミシュランタイヤ特性を理解しておくと、MotoGP最大排気量クラスもより分かりやすくなるので、簡単に紹介しておきたい。
 

リアタイヤのグリップが良い

リアタイヤグリップが非常に良い。2008年以前も2016年以降も、ミシュランリアタイヤグリップは賞賛された。

それに対してブリヂストンリアタイヤグリップは、そこまでべた褒めされていたわけではい。


ミシュランタイヤリアタイヤグリップがあまりにも良すぎて、2016年の復帰初年度はフロントタイヤを後ろから押してしまう現が度々起こっていた。リアタイヤグリップが強いがフロントタイヤグリップはそれほどでもいので、フロントタイヤが後ろから押され、ズルッと滑り、スリップダウンの転倒となってしまっていた。こうした現プッシュアンダーという。

プッシュアンダーという術は4輪でも2輪でも使われる。本来の意味は、「リアタイヤグリップが良すぎて、フロントタイヤを後ろから押してしまい、アンダーステアをもたらしてしまい、コーナーを曲がれなくなる」というものである。

アンダーステアとは、コーナーを曲がりきれず外へ膨らむ現のこと。アンダーステアの反対がオーバーステアで、コーナーを曲がりすぎて内側へ切れ込む現のこと。

ただ、そうした本来の意味をさらに拡大して、2016年ミシュランタイヤのような「リアタイヤグリップが良すぎてフロントタイヤを後ろから押してしまい、スリップダウン転倒」という現もプッシュアンダーと呼ばれていた。


後述するように、ミシュランフロントタイヤグリップがしょぼいので、ブレーキングの際にフロントタイヤ1本だけで止めるとあまり好ましくないことになる。このため、各ライダーは、リアタイヤをしっかり接地させつつブレーキングして、リアタイヤグリップを借りて2本のタイヤマシンを止めることをすようになる。

またコーナー脱出の際、ミシュランリアタイヤグリップは素らしく、かなり傾けた状態でアクセルを開けてもリアタイヤ空転しにくい。ブリヂストンリアタイヤグリップが悪くて空転しやすいので各ライダーはできるだけマシンを起こす努をしていたが、ミシュラン時代ではそういう必要があまりないという。

コーナーの進入でリアタイヤを使い、コーナーの脱出でもリアタイヤグリップを最大限に活かす。これが、ミシュランを履いたときの理想的な走りだという。


※この項の資料・・・ノブ青木の知って得するMotoGP第4回exitノブ青木の知って得するMotoGP第19回exitマルク・マルケス発言1exitマルク・マルケス発言2exitカル・クラッチロー発言exitジャック・ミラー発言exit
 

フロントタイヤのグリップが今ひとつ

ミシュランフロントタイヤグリップ普通というかボチボチというか、そんなところである。

それに対してブリヂストンフロントタイヤの安定したグリップが常に絶賛された。「ブリヂストンだとフロントを信頼して思いっきコーナーに突っ込んでいける」と最大排気量クラスライダー達が口をえて絶賛していた。

ミシュランフロントタイヤがしょぼく、ブリヂストンフロントタイヤ素晴らしいことを示すライダーたちの発言は次の通り。


フロントタイヤがしょぼいのでコーナーの進入でタイムを稼げないミシュランフロントタイヤが凄いのでコーナーの進入でタイムを稼ぐことができるブリヂストンという違いがよく分かる
 

適切な温度域が狭いが、その温度域では非常に速い

ミシュランは適切な温度域が狭いが、その温度域にハマると素らしく速い。このことは伝統的にMotoGPパドックられていたことであった。

それに対してブリヂストン較的に適切な温度域が広く、様々な路面温度に対応できる。「この温度域なら速くなる」というツボはないのだが、それなりの速さを幅広い状況で実現する。

「得意教科で100点、苦手な科で30点をとるミシュラン」「全教科で65点を取るブリヂストン」こんな具合にイメージすると良いだろう。

アンドレア・ドヴィツィオーゾは、2017年シーズンに1レースにおいて5種類のコンパウンドのタイヤを持ち込んだミシュランについて「適切な温度域が狭すぎるからそんなに種類を増やしているのだろう」と言っている。また、レプソルホンダリヴィオ・スッポ監督も「ミシュランの適正温度域が狭くて苦労している」と発言している。

ブリヂストンは適切な温度域が広く、持ち込むタイヤの種類は少なかった。2013年チェコGPでG+のゲスト解説としてやってきたブリヂストン山田宏さんexitはこんなことをっている。「2013年リアタイヤソフトを選ぶライダーが圧倒的に多い。最近は、セッティングの進歩で、ソフトタイヤでもレース周回をこなせるようになってきた。だから持ち込むタイヤソフトタイヤだけでも良い状況になった。ただし、『ソフト1種類だけの供給で良いよね?』とライダー達にいてみると、『・・・いや、やっぱり2種類あって選択肢が多いほうが安心感がある』と答えが返ってくる。そこで仕方なく、ハードタイヤも持ち込んでいる」

このコメントから察するに、ブリジストンタイヤ1種類だけの供給も検討したほどで、それだけタイヤの適切な温度域が広いことが分かる。


※この項の資料・・・アンドレア・ドヴィツィオーゾ発言exitリヴィオ・スッポ発言exit
 

ブリヂストンに比べて、品質のばらつきがある

タイヤを製造する過程で、どうしても品質の良い当たりタイヤと品質の悪い外れタイヤが発生する。


ブリヂストンは、こうした当たり外れのバラツキを抑える技術が卓越していた。

2014年5月1日ブリヂストン2015年をもってMotoGPから撤退すると発表した。そのあとのフランスGPで、G+の解説者である辻本聡さんがこうっている。「ブリヂストンは品質のバラツキが少なく、同じロットで均一な品質を保っていた。それゆえセッティングを非常に詰めやすかった」

タイヤの品質のバラツキがあると、部品のテストをしても、そのデータを信用しづらい。「部品Aを付けて走行したデータと部品Bを付けて走行したデータ較して、違いが分かったのだが、この違いはタイヤの品質のバラツキによるものかもしれない・・・」このようにいちいち疑わなければならず、開発ライダーとしては苦労するのである。

タイヤの品質が均一なら「部品Aを付けて走行したデータと部品Bを付けて走行したデータ較して、違いが分かった。ならば部品Aと部品Bの優劣があるのは間違いない」と断言でき、開発しやすい。



ブリヂストンは品質の均一性において褒められるのだが、この点、ミシュランは少し後れをとっている。

ブリヂストンを体験してきたカル・クラッチローが「ブリヂストンの時代も多少はタイヤの当たり外れがあったが、いまほど酷くなかった」「ミシュランは当たり外れが大きい」とコメントしている。

また、「タイヤが急に消耗した」というコメントライダーからたまに聞かれる。これは、ミシュランの外れタイヤを引いてしまったことを示唆しているわけである。



※この項の資料・・・2017年6月カル・クラッチローexit2017年9月ダニロ・ペトルッチexit2019年4月ポル・エスパルガロexit
  

タイヤが滑ったときも前に進んでくれる

2016年ミシュラン復帰初年度に向けて、ホンダテストライダー青山博一はミシュランで走り込み、山のような走行データを積み上げた。その彼が2016年第1戦カタールGPのあとに、以下のことをっている。

ミシュランタイヤが滑ったときも横滑りにならず、前に進んでくれる」
ミシュランタイヤが滑ってもトラクションが抜けない感じである」
「ゆえにタイヤが滑ってもアクセルを戻す必要がく、アクセルを開けて加速することができる」
「こうした現ミシュラン特有で、ブリヂストンダンロップには見られなかった」
「驚くべきことに販のスーパーモタード販のミシュランを付けても同じ現が起こった」

タイヤのことには細かいことまで気が付くと賞賛されていた青山博一の発言なので、重みがある。
 

タイヤの構造に工夫を凝らす

ミシュランタイヤの構造をあれこれ工夫し、コロコロと変更する、そういう傾向がある。

それに対してブリヂストンタイヤのコンパウンドに工夫を凝らす傾向がある。コンパウンドとは簡単に言うとゴムのこと。コンパウンドを詳しく言うと、ゴムシリカカーボンのような補強材や劣化を防ぐ化学品を入れて混ぜ合わせたもの。コンパウンド(compound)は英語で混合物、化合物、といった意味。

「構造のミシュラン、コンパウンドのブリヂストン」と較して評される。


20162017年ミシュランは、タイヤの構造をレースごとに変更していた。MotoGP最大排気量クラスに復帰して間もないので、色々な構造を試していたのだろう。そのため、ライダーたちが戸惑っていた。


※この項の資料・・・ノブ青木の知って得するMotoGP第4回(2ページ目)exitノブ青木の知って得するMotoGP第4回(3ページ目)exitmotorsport.com記事exitautosport記事exit
 

薄い17インチタイヤを採用

2016年ミシュラン復帰の際には、17インチタイヤが採用された。

ミシュランMotoGPにおける革新的技術をにもフィードバックしようと意気込んでおり、そのためMotoGP最大排気量クラスタイヤサイズで一般的な17インチにした。

2015年までのブリヂストンは16.5インチを採用していた。長年の研究により16.5インチが最善であると結論付けられたと山田宏さんexitっている。

16インチのフロントをダンロップが試したことexitもあるし、2004年はミシュランも16.5インチだったexit2008年ミシュランは全フロント16インチリア16.5インチだった。タイヤメーカー同士が競争する時代では17インチでは競争相手に勝てなかったのである。

ところが2016年タイヤミシュランが独占的に供給し、競争相手がいない。ならばと同じ17インチにしよう、とミシュランは考えた。


ここでいう16.5インチとか17インチというのは、タイヤの内径の直径をしている。つまり、タイヤを嵌め込むホイールの外径の直径である。

2015年までのブリヂストン16.5インチ時代も2016年からのミシュラン17インチ時代も、タイヤの外径の直径は色んな技術的な事情のために全く同じである。ゆえに、16.5インチはぶ厚いタイヤ、17インチは薄っぺらいタイヤ、ということになる。

16.5インチタイヤと17インチタイヤの厚さの差は、半径で0.25インチ(6.35mm)、直径で0.5インチ12.7mm)しか違わない。

しかしながら、たったこれだけの差がマシン設計にとって非常に大きな違いを生む。「16.5インチバイクと17インチバイクは全く別物」と技術者達はっていた。

ライダーにとっても17インチへの変更は不満のが多かった。「16.5インチの方が走りやすいのに・・・」と言うライダーが多かったと青山博一がっている。

17インチという薄いタイヤになると、タイヤ自体の衝撃吸収性や路面追従性が落ちてしまう。また、ライダータイヤ限界を探るのも難しくなる。

とはいえ、ミシュランの掲げる「へのフィードバック」も大切なことではあるので、技術者達やライダー達はぐっとこらえて変化に対応していった。


※この項の資料・・・ノブ青木の知って得するMotoGP第4回exit
 

MotoGPにおけるミシュラン陰謀説

ミシュランというと、「ミシュラン特定ライダーを贔屓して、特定ライダーを勝たせようとしている」という内容の陰謀説がしばしば囁かれる。


2000年代の中盤頃のミシュランは、なべタイヤを作っていた。金曜日練習走行のデータを見てからして大急ぎでタイヤを作り、特急クレルモン・フェランからサーキットトラック輸送して、日曜日の決勝にギリギリ間に合わせていた。

MotoGP記事において、ミシュランの特製タイヤは、「ジャストインタイム(just in time 自動車業界でよく使われる用)」「オンデマンド(on demand 必要に応じる、という意味)」「アラカルト(à la carte フランス語で“お好みの一品料理”を意味する。レストランで使われる用)」などと表現されている。

こうしたミシュラン特製タイヤを手にすることができたのは、MotoGPの中でもごく一部のライダーだけだった。2000年代中盤でいえば、ヴァレンティーノ・ロッシだけがミシュラン特製タイヤを入手できたと言われている。

2000年代中盤に、ヴァレンティーノ・ロッシしい争いをしていたマルコメランドリは、しばしば「ロッシはミシュランに贔屓されていた」とっている。2010年6月にも自身のブログで「ロッシは、タイヤワンメイク時代になってライダーの差がくなったと発言した。2004年ミシュランに贔屓されていたことを然と認めたわけだ」と記している(記事1exit記事2exit)。


こういう事があったので、しばしばミシュラン陰謀説が囁かれることになる。2016年の中盤戦からホルヘ・ロレンソが失速していったのはミシュランが外れタイヤを与え続けたからだ、だとか、そんな調子である。この記事exitでも、ヨーロッパ記者たちの間で囁かれるミシュラン陰謀説の一端を読むことができる。
 

関連リンク

関連項目

【スポンサーリンク】

  • 2
  • 0pt
記事編集 編集履歴を閲覧

ニコニ広告で宣伝された記事

VOCALOID (単) 記事と一緒に動画もおすすめ!
提供: わんころ助
もっと見る

この記事の掲示板に最近描かれたお絵カキコ

お絵カキコがありません

この記事の掲示板に最近投稿されたピコカキコ

ピコカキコがありません

ミシュラン(MotoGP)

1 ななしのよっしん
2018/04/20(金) 20:38:46 ID: kd0hvsDyzH
長過ぎて途中で飽きた…
そもそもブリジストンって何だよ?ブリヂストンだろ
👍
高評価
0
👎
低評価
0
2 ななしのよっしん
2021/04/20(火) 21:51:22 ID: MBA6E/ceC+
非常にためになる記事でした
👍
高評価
0
👎
低評価
0