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ミノキシジル(Minoxidil)とは、発毛促進薬(育毛剤)、血管拡張薬である。販売名はリアップ®など。
概要
ミノキシジルは、壮年性脱毛症の治療薬である。アメリカ合衆国の製薬企業アップジョン(現在のファイザー)が新しい潰瘍治療薬を模索する過程で開発した。血管拡張による血圧低下作用が発見され、1979年よりアメリカ合衆国で高血圧症の治療薬(降圧薬)として使用されたが、副作用として全身の多毛症をきたしたことから脱毛症の治療に転用された。ミノキシジルは疾病の改善を目的としない生活改善薬であり、日本では医療用医薬品として製造販売されていないが、大正製薬株式会社が1999年よりミノキシジルの一般用医薬品リアップ®を製造販売している。リアップ®は、初めから一般用医薬品として製造販売が開始されたダイレクトOTCの第1号製品でもある。現在は他社からも発売されている(ミノアップ®、リグロ®など)。
脱毛は、壮年性脱毛症や円形脱毛症をはじめ、甲状腺疾患、感染症、貧血、ストレス、抗がん剤など様々な原因によって起こる。このうち、壮年性脱毛症(AGA:男性型脱毛症)では男性ホルモンの影響により毛髪の成長が抑制されるため、毛髪は軟らかくなり頭髪は薄くなる。私たちの毛髪は、毛根に存在する毛母細胞が分裂を繰り返すことで成長するが、テストステロン(男性ホルモン)が5α-還元酵素II型によって活性化されたジヒドロテストステロンが作用すると、毛母細胞の増殖は抑制されてしまう。この壮年性脱毛症の治療に使用される医療用医薬品として5α-還元酵素阻害薬のフィナステリドやデュタステリドがあるが、薬局やドラッグストアで処方箋なしに購入できるOTC医薬品としてミノキシジルやカルプロニウムがある。
血管拡張薬としてのミノキシジルはプロドラッグであり、生体内で代謝を受け活性代謝物の硫酸ミノキシジルとなってATP感受性K+チャネルを活性化させる。その結果、細胞膜が過分極し、血管平滑筋が弛緩して血圧が低下する。発毛促進薬としてのミノキシジルの作用機序は完全には解明されていない。頭皮の毛細血管拡張による血流改善、毛髪のもとになる毛母細胞の活性化、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)の産生促進などが発毛に関与すると考えられている。
ミノキシジルは性別に関係なく、壮年性脱毛症に対する有効性が認められている。一般に塗布で局所に用いられるが血圧・循環器系に影響を与えるため、高血圧または低血圧の方、心臓や腎臓に障害のある方は、使用前に医師または薬剤師に相談すること。副作用として、発疹、かゆみ、かぶれ、頭痛、めまい、胸痛、心拍数の増加、急激な体重増加、手足のむくみなどがあるため、異常があれば使用を中止すること。なお、使用を始めてすぐに脱毛が増えるが、これは初期脱毛と呼ばれる正常な反応であり心配する必要はない。未成年者は使用しない(国内での使用経験がなく過量投与や副作用発現のリスクがあるため)。妊婦、妊娠している可能性のある女性、授乳中の女性は使用しない(胎児の心臓への負担が強まり母乳中にも成分が移行するため)。また、男性と女性では推奨されているミノキシジル製剤の濃度が異なり、OTC医薬品も男性向けと女性向けそれぞれ販売されているため、薬剤師と相談のうえ適切なものを購入すること。基本的に長期間継続して使用するが、半年以上使用しても改善が見られない場合は医師に相談したほうがよい。
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