メロディアス・ハードロックとは、ハードロック(HR/HM)のサブジャンルの一つ。メロディアスハードや、略してメロハーとも。
特徴
ぶっちゃけメロディックスピードメタル(メロスピ)と特徴が似たジャンルであり、その名の通り、叙情的かつ壮大なメロディを奏でるギター及びボーカルが前面に押し出されているのが特徴。クラシックの影響を受けたきらびやかなキーボードサウンド(俗にキラキラ系とも言われる)が装飾されることもある。ドイツや北欧で盛んなジャンルであることも共通している(要はクサい)。
実際、普通にメロスピだったりメロパワ辺りに分類できそうな曲も多い。
ちなみに、どちらのジャンルも遡れば、ジャーマンメタルの雄、スコーピオンズ辺りに行き着く。
ただし、メロスピほどスピードが重要ではなく、どちらかと言えば、サウンド全体のアンサンブルや、歌モノとしての完成度が重視される傾向が強い。そのため、メロスピよりもポップでメロディ感は強めであり、バンドによっては「歌謡曲」「演歌」「アニソン」という感想を持ちやすい。実際、海外ではHR/HMというよりは、AORの一ジャンル的な扱われ方がされている。
また、そのような特徴から特に日本で人気が出たジャンルである。TENやFair Warningなどの代表的なメロハーバンドは、却って日本でしか売れなかったバンドであり、本国でははっきり言って無名同然だった。
また、80年代のUSメタル、ポップメタルにもルーツを持つため、アメリカにもジャンル的な広がりがある。
歴史
ドイツでデビューした、ギター仙人ことウリ・ジョン・ロートの弟、ジーノ・ロートが結成したプロジェクト「ZENO」が起源とされる。
ZENO自体は1986年の1stアルバム「ZENO」で活動を休止してしまうものの、その後、ZENOを母体とした「Fair Warning」が1992年にデビュー、メロディアス・ハードというジャンルを日本に知らしめた。
また、同じ頃、アンディ・デリスを擁する「Pink Cream69」もデビュー。
もっとも、メロディ性の強いハードロックの流れは、各地同時多発的なものだった。
80年代のアメリカではポップ色の強いLAメタルが人気であったが、80年代も後半になると、メロディを重視するバンドが現れる。「DOKKEN」が代表的で、Voのドン・ドッケンはやはりクラシックにバックボーンを持っていた。
その他、「White Lion」や「Lillian Axe」はセールス的には振るわなかったものの、ヨーロッパ的な哀愁感漂うメロディが特徴で、メロハーの代表的名盤を輩出している。
イギリスでも、NWOBHMバンド「Praying Mantis」が80年代末頃からキーボードを取り入れ、メロハー路線に舵を切っている。
その後、少々遅れること96年、「TEN」がデビューする。TENもやはりFair Warningと同じく、いわゆるビッグ・イン・ジャパンだったが、90年代末頃から本国でも知名度を上げるバンドとなった。
一方、もう一つの中心地である北欧では、以前より特殊なHR/HMが演奏されていた。その中で現れたのが「EUROPE」や「TNT」等のバンドであり、その後のシンフォニックメタル・メロディックデスメタル等いわゆる北欧メタルの隆盛へとつながる。
特にTNTは、ZENOと並んでメロハー黎明期から活躍したバンドで、北欧におけるメロハーシーンに与えた影響は小さくない。
80年代~90年代のブーム期で目立っていたのは前述のTNTや「Talisman」くらいだが、00年代初頭にデビューしたスウェーデンの「ECLIPSE」は、北欧的なアプローチでありながら、ギターを前面に押し出したハードなサウンドで、現在のメロハーシーンの中心的バンドと目される。
近年では、「H.E.A.T」や「Poodles」、フィンランドの女性シンガー「ISSA」などがデビューし活躍している。
代表的なバンド
・ZENO メロハーの祖と目されるバンド。ドイツ出身。創始者はギター仙人ことウリ・ジョン・ロートの弟、ジーノ・ロート。音楽的には評価されたものの、セールス的には全く売れず、アルバム1枚のみで解散状態になる。残されたメンバーは新メンバーを加え、Fair Warningへと転身、改めてデビューを図った。
・Fair Warning メロハーの代表格。ドイツ出身。デビュー~4thはメロハーを代表する名盤とされる他、彼らの活動時期(90年代)がそのままメロハー黄金期とされるほど。
ベースのウレ・リトゲンは、ウリ・ジョン・ロートのバンド、エレクトリック・サン出身であり、またZENOにも所属していた、ジャーマンメタルの生き字引的存在。彼のメロディアスな楽曲群と、スカイギターの使い手ヘルゲ・エンゲルゲの澄んだギターサウンド、トミー・ハートの伸びやかな歌唱は、日本で大いに好まれ、一躍人気バンドになった。
……にも関わらず、本国ドイツでは全くの無名。
2000年に解散するも、2006年に再結成し、現在もなお活動中である。
・TEN 同じくメロハーを代表するバンド。イギリス出身。Fair Warningと共にビッグ・イン・ジャパンの代名詞でもあるが、こっちはなんだかんだ本国でも売れた。Voのゲイリー・ヒューズは元々ソロシンガーとして活動していただけあって、中低音のダンディな声に定評がある。あと、曲がやたら長い。
・Pink Cream69 ドイツ出身の多国籍バンド。HellweenのVoアンディ・デリスが所属していたバンドとして有名。アンディは2ndアルバムで脱退するが、バンド自体はその後も活動を続け、優れたアルバムを出していく。
・PRAYING MANTIS イギリス出身。アイアン・メイデンらと同期の古参NWOBHMバンドだったが、80年代半ばにいつの間にか解散。だが、90年代にアイアン・メイデンの元メンバーらと再結成し、メロハーバンドとして転生した。
91年の「A Cry For New World」はメロハーの名盤とされる。哀愁漂いまくる楽曲は、もはや演歌の域と評される。
「けいおん!」原作漫画のTシャツに名前だけ登場し、ちょっと話題になった。
・DOKKEN アメリカ出身。LAメタルを代表するバンドでもある。クラシックにバックボーンを持つ、同時期としてはちょっと珍しいバンド。映画「エルム街の悪夢3」の主題歌に使用された「Dream Warriors」のPVは必見。
・Lillian Axe アメリカ出身。いわゆるLAメタルブームのバンドだが、ノリ重視のアメリカンロックンロールとは一味違った泣きのメロディが特徴。3rdアルバム「Poetic Justice」はメロハー的に歴史的名盤とされるが、アルバムアートがあんまりなことで有名。
・DARE アイルランド出身。元シン・リジィのKeyダレン・ウォートンが立ち上げた。90年前後と90年代後半以降でメンバーが違い、カラーが異なる。
・TERRA NOVA オランダ出身。正統派なハードロックなのだが、アレンジのせいかメロディのせいか、どう聞いてもアニソンかゲーソンにしか聞こえないキーボードとギターサウンドが特徴。
・Eclipse スウェーデン出身。北欧出身としては珍しく、キーボードをメインメンバーに据えず、ソリッドなギターを前面に出してでメロハーを奏でる現代メロハーの旗手。
・H.E.A.T スウェーデン出身。00年代後半にデビューし、古き良きメロハーを特徴とする。最近、Voがアイドルになった。
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