モンテ・クリスト伯とは
である。本稿では2つとも説明する。
1,の概要
モンテ・クリスト拍とは日本では「岩窟王」の名で知られる古典文学の名作である。
2004年から2005年にアニメ「巌窟王」としても放映されたことから、ニコニコ動画内ではその原作といえば思い出す人も多いかと思われる。
無論、大元のモンテ・クリスト(伯)の題を冠した作品も、日本国内でいくつか存在する。
3人の男達の手によって無実の罪で監獄に送られた主人公が、脱獄して財宝を手に入れて自分を陥れた者たちに復讐するという物語である。
舞台はナポレオンが陛下と呼ばれた年代のマルセイユの港町から始まり、華やかなパリへと復讐の場を変えていく。
原作の名前としては暗殺教室で復讐の勉強にと小説を勧めるシーンがあったことなどから、復讐劇=モンテ・クリスト伯をイメージするかと思われる。
なお、モンテクリストとは、「キリストの山」を意味する地中海に実在する島の名前である。[1]
原作の和約本としてはいくつかのバージョンがあるが、多くは簡易版あるいは一部を省略されている。岩波文庫 から出ている全7巻(1956年出版)の山内義雄訳だけが省略なく翻訳されているため、原作を読む際には簡易版か完全版かに注意が必要となる。[2]
岩波文庫版では注釈が数多く入っているため、聞き慣れない言葉でも調べながら読まなくても大体読み進められる。まだ読んだことのない人は、文庫本サイズで一冊約430ページ程度と通勤通学中などに手軽に読めるボリュームとなっているので、これを機に是非ともおススメをしたい。
1,の登場人物
- モンテ・クリスト伯爵
突如パリに出現した大富豪の男性。モンテ・クリスト島を所有しており、自らをモンテ・クリスト伯と称している。海賊や山賊とも通じており、時折彼らに復讐のための駒として動いてもらうこともある。
その正体は獄中の劣悪な環境で身につけた、わずかな食糧で動ける体と、ファリア神父によって教養を得たエドモン。
- メルセデス
カタロニア村の女性。エドモンを心から愛していたが、婚約パーティ中に憲兵によって引き離される。兄と慕ったフェルナンが戦場から帰ると彼と結婚し、パリの貴族として移住する。とても聡明な女性で作中誰も自力で気がつかない中、一目で正体を見破ることができた唯一の人。
- フェルナン・モルセール伯爵(モンデゴ)
カタロニヤ村の男性でメルセデスが従兄と慕っていた。偽りの告発状を提出し、エドモンをはめた男の一人。メルセデスを深く愛しており、エドモンを激しく憎悪していた。
一人っきりで心細くなった彼女に再度結婚を申し込み、一緒にパリへと移り住んだ。軍人から出世してモルセール伯爵として政治に乗り出す。モンテ・クリスト伯はなんとなく嫌い。
- アルベール・モルセール子爵
メルセデスとフェルナンの息子。いかにも子爵らしく、坊ちゃんな性格で、結構自分勝手。日本の陶器を集めたり葉巻にこだわったりと気になったことにはなんにでも手を出す。
ヴァンパの女に惚れたあげく、男の娘ベッポにはめられて捕まるもモンテ・クリスト伯によって助けられる。婚約者のユージェニーを嫌っており、自由恋愛に思いをはせる。
- ダングラール男爵
モレル商会のエドモンの同僚。順調に出世するエドモンを嫌っており、船長からあずかった手紙がボナパルト党の手紙と推測して偽りの告発状を作成した、エドモンをはめた男の一人。
モレル氏のお陰で銀行員になるとそのまま自身の銀行を立ち上げるまでに出世する。かなりの守銭奴で保身と金のためなら何でも飛びつく。家の客間は金ぴかでかなりの悪趣味。大富豪のモンテ・クリスト伯を微塵も疑っていなかった。
- エルミーヌ(ダングラール夫人)
ダングラールの妻。家庭内のいける力関係では夫よりも上で自身の部屋には許可がなければ入室すら許さない。愛人ドプレーと共に株に手を出しており、それをモンテ・クリスト伯に利用されることとなる。
かつてある人物の愛人であり、子を授かるが死産だと知らされていた。
- ユージェニー・ダングラール
黒髪にきっとした眼差しを持つ、パリ貴族の女性らしくない男性的な女性。ピアノの才能があり、親友のダルミイー嬢と共に歌って弾ける生活を夢見ている。美しいものが好きでエデの美しさは飾らない方がいいと称している。
男性があまり好きではなく、結婚には全く興味がない。男装中に自身とは対照的な病弱で線の細いダルミイー嬢と、2つベッドがある部屋で1つのベッドで寝ていることからなんとなく察するところがある。
- ヴィルフォール主席判事
奇しくもエドモンと同じ日に婚約パーティをしていた男。父ノワルティエとは違い、王党で、父親がボナパルト党である決定的な証拠とナポレオン再上陸の知らせを手に入れて王に謁見する。
その功績などから出世し主席判事として名をはせるようになる。そのためにエドモンを危険人物と偽り禁固刑にする。貴族としての位は特に出てきていない。ルネの死後、エロイーズと結婚した。
モンテ・クリスト伯の事を疑い、ブゾーニ神父やウィルモア卿(どっちも変装したモンテ・クリスト伯)に立て続けにあったものの、微塵も気がついちゃいない。…判事ってなんだっけ。
- エロイーズ
やんちゃな息子を持つヴォルフォールの後妻。薬学を勉強しており、温室には毒草を主に栽培している。息子が悪戯したり、他人に失礼なことを言ってもたしなめる程度だったりと、かなり甘いいわゆるバカ親。相続する財産がなため、義娘ヴァランティーヌを密かに妬んでいる。
- ノワルティエ老人
かつてボナパルト党として幹部であった老人。現在は脳卒中で体がマヒし、目だけで会話している。家の中の怪死に真っ先に気が付き、ヴァランティーヌの体に毒が効かないようにするなど、とても頭が切れる。孫娘ヴァランティーヌを溺愛しており、彼女とマクシミリアンの婚約には賛成していた。
- ヴァランティーヌ
気弱な女性でヴィルフォールとルネの娘。母方の遺産と、祖父ノワルティエの財産と…莫大な財産を相続する予定だが、本人はそんな財産よりも最愛の恋人マクシミリアンと共にいることの方がいいと言っている。マクシミリアンとは庭の隅で壁越しの逢瀬をする仲で、彼と結ばれることを夢見ている。
- マクシミリアン・モレル
モレル商会の息子で軍人。倒産寸前だった家を助けてくれた恩人「船乗りシンドバッド」の恩を忘れないためその日を必ず誰かを無償で助けることとしている。ルノーというアルベールらの共通の友人を助けたことからモンテ・クリスト伯にも出会うこととなった。
まっすぐなゆえに融通の利かないところもあるが、ヴァランティーヌを深く愛しており、庭の片隅で着実に愛をはぐくんでいた。
- フランツ・デネピー
アルベールの親友で男爵。父が幼いころに何者かに暗殺された。ヴァランティーヌの婚約者であり、結婚にも乗り気だった。モンテ・クリスト伯に初めて会った人物であり、彼の持つ魅力にひかれつつも警戒して距離を置いていた。普段はローマ近郊にいるが、婚約のためにパリへと戻ってきた。アニメほど出番はなく、復讐の対象外であることからも原作ではマクシミリアン達の恋の障害的なサブキャラ。
- エデ=テブラン
モンテ・クリスト伯が所有している美しい女奴隷。ギリシャ語で話す。
女奴隷と言っても王女の様な待遇で、部屋と召使は個別に与えられている。かつてはジャニナ国の王女だったがフランスの兵の裏切りにあい、父を殺され、母はそのショックで死んだあげく、自身は奴隷商人に売られてしまった過去を持つ。運よく金持ちに買われ、教育してもらいどこぞの王に買われたため、教養はある。
裏切り者を恨んでおり、その復讐を果たす。モンテ・クリスト伯に想いを寄せている。
- ベルツッチオ
モンテ・クリスト伯に仕えるコルシカの男性。かつてヴィルフォールによって有罪となった兄の復讐のため、オートイユで穴を掘るヴォルフォールに襲いかかった過去がある。ベネデットを幼少期から知っている…育ての親の様なもの。
- アンドレア・カバルカンティ公爵
コルシカで育った青年。ブゾーニ神父と船乗りシンドバッドによって偽りのカバルカンティ公とともに貴族としてパリにやってきた。モンテ・クリスト伯が自分の父ではないかと疑うが、ベルツッチオに一蹴される。
- カドルッソ
マルセイユで仕立て屋を営んでいた男。フェルナン達の悪だくみを知っていながら見ていただけだった。ブゾーニ神父に全ての真実を話した際に貰ったダイアモンドに目がくらみ、宝石商人を殺し逃走するも捕まる…と脱獄して、アンドレアに近付く。パン屋の隠居といった風に暮らすがそれも飽きたため、アンドレアを揺するようになる。
- ルイジ・ヴァンパ
ローマを拠点にする山賊の頭。まだ20前半であるが頭がよく手先が器用。独占欲が強く、同じ羊飼いだったテレサに触れる男には強い憎悪を抱くことも。ククメットを殺害後はテレサを連れて山賊の頭となる。
2,の概要
フジテレビは、人気俳優ディーン・フジオカを主役に据え、モンテ・クリスト伯を現代に蘇らせた。
サブタイトルの「華麗なる復讐」は、ディーン・フジオカのイメージを念頭に置いて決めたと思われる。
原作の主人公は14年間牢獄に囚われたが、ドラマの主人公も15年間の投獄生活を送るなど、原作の雰囲気を崩すことなく、10話(最終回は2時間SP)という短さにうまくまとめたドラマである。
”ディーン”様のような端正なマスクで優しく繊細なイメージもある俳優が復讐鬼を演じるのが意外性もあり、ことに女性ファンには喜ばれるだろう。
復讐されるのは大倉忠義、新井浩文、高橋克典らの人気俳優で、ドラマに華を添えるヒロインは山本美月である。
原作のタイトルをそのまま使うという大胆なスタイルはインパクトがあるが、視聴者の興味を引いたかどうかは分からない。単なる復讐劇ではなく、主人公が復讐を実行しながら良心と葛藤し、人間性を取り戻していくというストーリーとのことだが、ドラマを見る人々はどのような方法で復讐が行なわれ、”ディーン”様がどのように変わっていくかに注目するだろう。
役者陣の奮闘や脚本の出来であの長大な作品をうまくまとめあげている。
2,の登場人物
- 入間 公平/ヴィルフォール(高橋克典)刑事部長
自身の保身のために父宛の手紙を持った暖を葬りさった。警察らしい正義を語るがやっていることは始終保身のため。そしてやっぱり原作・アニメに引き続き…。ラストの行動は是非原作を。
- 入間 貞吉/ノワルティエ老人(伊武雅刀)TIファンドマネジメント→隠居
暖の手紙を知り、捕まる覚悟をするも、息子がもみ消したことで免れた人。まばたきの回数1回で肯定、何度もで否定と会話することができるが全身不随の寝たきり。文明の利器で原作より意思疎通が楽になったかと思いきや…原点回帰っていいよね。
- 安堂 完治/アンドレア(葉山奨之)
アパレル事業で融資を募っていた青年。両親を知らず、詐欺など前科がついていたが、留美に魅かれて…
アニメに引き続きマザーファッカー。
原作と違い、まともな生活をしていれば好青年になったんじゃないかと思われる。
- 土屋 慈/ベルツッチオ(三浦誠己)元空き巣→秘書
真海に仕える秘書。衰弱した赤ん坊を助けるが、電話ボックスに置いてきたことを悔やんでいた。復讐に直接は加担しないものの、入間家にかかわる重要な情報を持つ。
- 江田 愛梨/エデ(桜井ユキ)幸男のマネージャー
幸男のマネージャーを務める女性。神楽の盗聴器をきいたり、瑛理奈にそば粉を盛ったりと暗躍する。原作と違いかなりの行動派だが、それゆえに復讐心が揺らいだ時にも思わず動いてしまう。真海を慕っており、すみれに対する気持ちにも気が付いている。
- 守屋信一郎/マクシミリアン(高杉真宙)守屋漁協社長→市場の店員
未蘭に一目ぼれした誠実な青年。恩のある社長の一人息子であり、どこまでもまっすぐで純粋な彼のために真海は予定を変更して未蘭を助けることにする。
「まて、しかして希望せよ」について
アニメでは毎回次回予告で出てきた言葉のため、モンテ・クリスト伯と言えばと思い浮かべるかもしれないが、原作・ドラマ・アニメ共にエドモンの手紙に書かれた言葉である。
原作ではマクシミリアン達宛をヴァランティーヌ、ドラマでは未蘭達宛を信一郎、アニメではメルセデス宛を読んだアルベールが終盤に一言発しただけですべてに共通して締めの言葉となっている。
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