ヨルムンガンド(ガンダム)とは、アニメ「機動戦士ガンダムMS IGLOO」に登場するジオン公国軍の試作艦隊決戦砲である。型式番号はQCX-76A。
概要
第1話「大蛇はルウムに消えた」で登場。第603技術試験隊が最初に評価試験を行った記念すべき兵器でもある。ヨルムンガンド(JORMUNGAND)の由来は北欧神話に登場する蛇の怪物「ヨルムンガンド(ユルムンガンド)」と思われる。搭乗者はアレクサンドロ・ヘンメ砲術長(大尉)率いる砲術科。 ガンダムの名を冠していながら第1話の主役兵器が大砲という事で、監督の今西隆志氏は唖然としていたという。
ジオン軍の仮想敵は言うまでもなく地球連邦軍であった。ジオン艦隊が誇るグワジン級は、確かにマゼラン級を圧倒できる火力を有していたが、戦艦同士が1対1で撃ち合う事など滅多に無い。ましてや相手は物量に勝る連邦軍。少数のグワジン級など簡単に壊滅させられてしまう。そこでジオン軍は敵艦隊を数で圧倒できる兵器を求め、これがヨルムンガンドの原案となった。戦艦より安価で、戦艦を確実に撃沈できる火力が求められ、これに則って開発計画は進められた。
ヨルムンガンドの目的は長い射程距離を活かし(有効射程距離・300km、最大射程距離・2000km)、連邦軍艦隊の射程外から強力な核融合プラズマビームで敵艦隊を殲滅することにあった。従来のメガ粒子砲ではなく強力なプラズマビームを採用したのは、既存のビーム兵器が装甲技術の向上により決定打となりえなくなった背景がある。長大な射程距離を持つのは、防御力や機動力を切り捨てるためだった。強力な砲撃力から生じる反動を軽減するため、巨大な砲身を持った。ジオン軍はヨルムンガンドを量産し、対艦砲列を形成する構想を持っており、ヨルムンガンドはその試作機一号だった。しかし、前線の味方艦隊からの間接射撃指示がなければ正確な射撃ができないことや、「一発でザク3機作れる」という高コストのせいもあり、1機が生産されるだけに留まった。
劇中での活躍
一年戦争開戦直後、パプア級輸送艦によって分割・運搬される。明確な描写は無いが、ジオン軍の切り札として大々的に宣伝されていたようで、多くの部隊がヨルムンガンドに期待を寄せていた。
ランデブーポイントにて第603技術試験隊の試験支援艦ヨーツンヘイムと会合し、ヨルムンガンドの引き渡し作業が開始された。しかし作業中にサラミス級2隻の強襲を受け、パプアはパーツを捨てて退避しようとする。が、直後にビーム砲がパプアを貫き、轟沈。荷物を捨てていた事が幸いして全損は避けられた。続けざまにビーム砲が飛んでくる中、オリヴァー・マイ技術中尉は投棄されたパーツの回収をプロホノウ艦長に進言。その際、「あれはこの戦争の趨勢を決める重要なものなんだ!」と声を荒げており、ヨルムンガンドへの期待が大きい事を示している。護衛のムサイが、サラミス級2隻を追い払った事で戦闘は終結。パプアを喪失したものの、無事ヨーツンヘイムに収容された。
その後、ヨーツンヘイムにて組み立て作業が行われ、運用責任者として砲術長のアレクサンドロ・ヘンメ大尉が着任した。そして来るべき決戦に備え、宙域に展開。迅速な作業で発射体勢が整っていく。その途中、友軍の大艦隊が近くを通りがかり、グワジン級から発光信号で「艦隊決戦の如何は、ひとえに貴艦と新兵器の健闘にあり」と発せられている。友軍からの絶大な期待を背負った第603技術試験隊の面々は、否応無く士気が高まっていった。
そして、人類史上初の艦隊決戦――ルウム戦役が始まる。連邦・ジオン両軍の艦隊が激しく撃ちあう。正確な射撃には前線の艦隊からの間接射撃指示が必要不可欠だが、何故か一向に届かない。機を逃しては、せっかくのヨルムンガンドも宝の持ち腐れである。そこでヘンメ大尉の独断で砲撃開始。放たれた1発目は、ジオン艦隊をかわして連邦軍艦隊へと伸びていく。初弾は命中しなかったが、至近弾を受けたサラミス1隻が脱落。これを見ていたプロホノウ艦長が驚愕の声を上げている。小説版によると、見た目こそ原型を留めているが、電子機器や内部に絶大なダメージが及んでいるという。続けて2発目を発射したが、これは外れている。
その後、偶然にも手負いのマゼラン級戦艦がヨルムンガンドに向かって退避してきた。敵はヨルムンガンドを発見すると、まずミサイルを発射。そのうちの1発が至近弾となり、射撃所を破壊。多くの砲員が死亡し、ヘンメ大尉も重傷を負う。さらにビーム砲まで撃たれるが、マゼランの照準は焦っているのか定まらない。その隙を突く形で、ヘンメ大尉は3発目を発射。マゼラン級戦艦を見事一撃で撃沈した(この時撃沈されたマゼラン級戦艦がちくわのような形になったことが印象に残る)。しかし、結果的にヨルムンガンドは破壊され、ヘンメ砲術長も戦死してしまう。
この一戦は、宇宙初の艦隊決戦であったが、ジオン公国軍から主戦力として期待されていたのはヨルムンガンドではなく、新兵器のモビルスーツ「ザク」であり、ヨルムンガンドはモビルスーツの存在を隠す隠れ蓑とされてしまったのであった。戦果がマゼラン級一隻撃沈に留まったヨルムンガンドに対し、ザクはシャア・アズナブル中尉がサラミス級四隻、マゼラン級一隻を撃沈、モビルスーツ部隊「黒い三連星」は連邦軍指揮官・レビル将軍を捕虜にするなど華々しい戦果を挙げた。後にオリヴァー・マイ技術中尉が語っているように、モビルスーツと同等の信頼を得ていれば結果は変わっていたかもしれない。
モデルは第二次世界大戦時にドイツで研究・開発されていたロンドンを直接砲撃できる長距離砲「V3 15センチ高圧ポンプ砲」(通称・ムカデ砲)である。劇中のモニター画面に表示された構造がそっくり。
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