ラクシズとは「機動戦士ガンダムSEED」及び「機動戦士ガンダムSEED DESTINY」に登場するラクス・クライン率いる武装勢力の俗称である。
いわゆるネット・スラングであり、公式に命名されたものではない。
概要
機動戦士Zガンダムに登場した「アクシズ」にラクスの名をひっつけて名づけられた俗称。宇宙世紀シリーズにおいてアクシズは伝統的に虐殺といった過激な行為を行っている悪役組織であり、それになぞらえた形である。
近年ではキャラクターの再評価により、それを良しとしない者によるもっぱら蔑称で用いられる事が多い。
SEEDDESTINYにおいての後期主人公であるキラ・ヤマト、それを束ねるラクス・クライン陣営はその行動の是非について長年賛否両論が分かれていた。劇中では「平和の使者」「争いを止める者達」という立ち位置で、地球軍やオーブ軍、ザフト軍の戦闘を止めようと戦場に現れる。その行動については法を無視した「テロリスト集団」との批判もあった。
- ザフト軍・地球軍の戦闘を妨害して戦場をかき回し余計に被害を拡大
- ザフト軍のディオキア基地に侵入し、兵士に暴行を加えてシャトルを奪取
- プラントへ輸送中のガイアガンダムを奪う
- ザフト軍からストライクフリーダムを強奪
- (結果論だが)オペレーションフューリーでオーブを守ったがためにジブリールの脱出を許し、
プラント本国のヤヌアリウスやディセンベルが壊滅する原因となる。死者を数十万人を出しておきながら
それに対する声明は一切無し
何故か悪逆非道をしてるだけのザフト軍がよく被害に遭う。その悪行の数々はテロリストと言われて当然と言われた。その為、同じくテロリスト集団と呼ばれる「機動戦士ガンダム00」の「ソレスタルビーイング」と比較される事が多々ある。
なお、SEEDDESTINY終盤において正式にオーブ軍に編入された。
作中では戦闘の中止を訴えて地球軍(及びオーブ軍)とザフト軍の戦いにたびたび介入し、両軍に被害を与えていく第三勢力のような存在だった。とりわけザフト軍への被害が大きく、ミネルバの艦首砲を破壊したり、ハイネ・ヴェステンフルスを戦死させる近因にもなった。デストロイガンダムによる大量殺戮の際にはザフト軍と共闘した事もあったが、それで帳消しになるはずもなくプラント本国はラクシズの討伐を狙ってエンジェルダウン作戦を発動。ウィラード隊とミネルバ隊から狙われた。アークエンジェルを取り逃がしてしまうも、フリーダムを撃墜した。
オペレーション・フューリーではザフト軍の攻撃からオーブを守るために戦ったが、結果としてロード・ジブリールの脱出を許す事になり、のちのレクイエムによる攻撃でプラントに数万単位の犠牲者を出す遠因になった。これに対し、ラクシズ側からは特にコメントは発せられてない。
物語終盤、デスティニープランの導入を強行し、従わぬ者はレクイエムで撃つと脅しをかけたギルバート・デュランダルに反発し、地球軍の残党やオーブ軍とともにザフト軍へ戦いを挑む。この戦いではオーブ軍に編入されていたため、テロリストというより正規軍の扱いとなっている。レクイエム本体破壊と陣頭指揮を執っていたデュランダルの死亡、機動要塞メサイアの陥落が重なってザフト軍は戦意喪失。これ以上の戦闘継続は無意味と考え、ラクシズは停戦を申し入れた。この時、完全勝利を表すかのようにラクスの歌を宙域に流す暴挙に出ている。地球軍、ロゴス、ザフト軍が瓦解し指導者不在の中、ラクシズとオーブが主導となって世界を導いていく事になったとか。
というのが、放送当時からのもっぱらの評であった。
主要メンバー
- ラクス・クライン
- キラ・ヤマト
- アスラン・ザラ(凸)(トゥ!ヘァー!)
- マリュー・ラミアス(所属艦アークエンジェル魔乳艦長)
- アンドリュー・バルトフェルド(砂漠の虎)
- マーチン・ダコスタ(2Pディアッカ)
- カガリ・ユラ・アスハ(オーブ連合首長国代表)
この名の持つ意味
アクシズとの共通点は「番組後半で出現する第3勢力」というところと、指導者がピンク髪の女性であるというところか。
アクシズが敵か味方かは判断が難しいのだが、比較的印象の良くない勢力になぞらえられているのは確かである。おそらく蔑称として生じたものと想像される。
思想や設立経緯はアクシズとあまり関係ない。
しかし、何よりこの呼び方が定着した理由としては、他に呼び名がないことが大きかった。
アークエンジェル、クサナギ、エターナルの3隻で構成されていたことから「三隻同盟」という呼び方もあるのだが(劇中で呼ばれたことはない)、この名は外部の支援者が含まれていない感じであるし、正直あまり響きがよくない。Destinyでは三隻ではなくなった。
協力者は「クライン派」などと呼ばれているが、これにキラたち実戦部隊を含むのかどうかはちょっと微妙。何よりあまり格好よくない…
ゲーム「連合 VS ZAFT」では「オーブ」と区分しているが、これも適切とは言いがたい。
「ターミナル」「ファクトリー」などの協力者も全部まとめた呼称として適切なのは「ラクシズ」くらいしかなかった。
けっきょく番組終了まで誰も良い組織名を出さなかったので、誰が呼び始めたかわからない、しかも元々は蔑称くさい「ラクシズ」が結果的に定着してしまったようだ。
もちろん公式に呼ばれたことはないし、嫌がるファンもいるはずなので使用に注意は必用だが、良い代案はあまりないのであった。
アニメ終了後に「デルタアストレイ」で出た「歌姫の騎士団」が正式名称ではないかとの指摘もあるが、そっちのほうがよっぽど悪意を感じる既にラクシズが定着していたせいか、あまり広まらなかった。
「ラクシズ」の再評価
前述に蔑称として使われる要因が挙げられたが、そのいずれにしても「悪役」の行動として挙げられるにはあまりに背景を無視した指摘となっている。それを以下に記していく
- >ザフト軍・地球軍の戦闘を妨害して戦場をかき回し余計に被害を拡大
- >ザフト軍のディオキア基地に侵入し、兵士に暴行を加えてシャトルを奪取
- >ガイアガンダム及びストライクフリーダムを強奪
- >オペレーションフューリーでオーブを守ったがためにジブリールの脱出を許し、プラント本国のヤヌアリウスやディセンベルが壊滅する原因
- >作中では戦闘の中止を訴えて地球軍(及びオーブ軍)とザフト軍の戦いにたびたび介入し、両軍に被害を与えていく第三勢力のような存在だった。
- >とりわけザフト軍への被害が大きく、ミネルバの艦首砲を破壊したり、ハイネを戦死させる近因にもなった。
- >レクイエム本体破壊と陣頭指揮を執っていたデュランダルの死亡、機動要塞メサイアの陥落が重なってザフト軍は戦意喪失。
- >この時、完全勝利を表すかのようにラクスの歌を宙域に流す暴挙に出ている。
といったように一面的に悪役と評すような書き方には疑義が残る理由が多数挙げられる。
とりわけ放送20年も経つと情報が整理・補完されたのもあってこのような評は少なくなっていったが、リマスター前の構成が酷かった事、キラやラクスが何か悟りを開いたような人間味の無い言動が散見され感情移入を阻害した事、そもそも根幹としてシンたち前半主人公陣営の行いを悉く否定し一度は完全に敵視されたにも関わらず最終的に主人公を乗っ取ったような流れに作品がなっている事がこのような偏見を加速させたと言える。作品を最初から観てシン・アスカが主人公である事を疑わなかった視聴者からしてみれば、その栄光を何か病み過ぎてよくわからない事を言っているキラたちに奪われたように見えて甚だしく体験を損なった事は自明の理である。ラクシズという蔑称が使われた際に少しはその語感の良さや悪ノリはあれど、視聴者が期待を裏切った制作スタッフへ抱いた恨みが多分に含まれていただろう事は語るまでも無い。キラが二度も死亡確定描写から生き残っていたといった事をはじめとしたご都合的に見える描写があった事もこれを増長させている。
デュランダルの言う理想や問題提起が現実的にもかなり理に叶っていた事もあり、それをただ断ずるのみで無責任に否定したと取られるほどの説得力を持っていた(ように見える)ほど作中の描写が強力であったのも大きかっただろう。視聴者の中はシャア・アズナブルもを長年演じてきた名声優、池田秀一の演技の魔力に踊らされたとも評する者もいた。
しかし生きたいと願うのは生物として必然であり暗殺を仕向けて来たデュランダルに抵抗するのは当然である上、デスティニープランが全世界に施行されれば望まぬ者すら生活を強制させられ自由を奪われ、それを否定するものはすべからず死すディストピアになっていたのは明白である。
何より作中何度もオーブが滅亡の危機に瀕しておりキラ達の行動として一貫して多数の国民を抱えるオーブを守る事であった事からも、間違いなく正義はあった。
実のところ世界平和というより大きい大義を抱えていたデュランダルはその根底は私欲であった。それらが周知されるにつれキラたちへの下馬評も次第に収まっていったが、リマスターが出るまで10年近く掛かった事や他作品やコミュニティのエコーチャンバーから来る風評と疑心暗鬼により長年決定的に払拭される事は無かった。
SEED FREEDOMにおいて
劇場版『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』の発表においては、登場人物が相変わらずキラやラクスといったメンバーの構成が「ラクシズ」であった為に苛烈な疑心暗鬼がファンの中に渦巻いた。
しかし映画が公開されると一転、リマスターや外伝発表からも十数年続いた多くの憤慨はあっという間に鳴りを潜めたのである。
- 3隻同盟が名実ともに世界に認められた「世界平和監視機構コンパス」としてまとめられたので、無法なテロリストといった扱いは出来なくなった。
- 何か悟ったような雰囲気を出していたキラやラクスは種運命時代から正常でない事が再び明確に描写された。
- 画期的な解決方法として出されたデスティニープランに関して明確に欠点を明かすような運用をする者が今回の敵であった。
- 今まで「ラクシズ」の悪逆非道として挙げられてきた事が全く些細な事になり劇場版のテレビ50話よりは僅かな時間で種及び種運命での悲惨な出来事に匹敵するほどの大事変が映画で起こった。
- これらや今までの問題提起に対して、迷い続けたキラとラクスは作中ついにある一つの答えを出した。
などを始めとした要因で20年間待ち続けた視聴者の多くを大変満足させる作品であった事から、最早「ラクシズ」という名称は相変わらず昔ながらのアンチ活動をする情報の更新が出来てない人だけが未だに使う過去の単語となったのである。
もし20年前の作品であるSEEDDESTINYに未だ疑義を持っている方がいるならば、是非SEEDFREEDOMを視聴してほしい。
関連動画
関連項目
- 機動戦士ガンダムSEED
- 機動戦士ガンダムSEED DESTINY
- 劇場版機動戦士ガンダムSEED FREEDOM
- ソレスタルビーイング
- アクシズ:ガンダム宇宙世紀シリーズにおいて一定の正義の元で、端的に言うと悪逆非道を行った集団。それの元となった現実の第二次世界大戦における"枢軸国"の英名。
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