当記事では2.について扱う。
概要
ローエングラム朝銀河帝国軍人、大佐。
石黒監督版OVAでは茶色の髪と太めの眉を持つ少壮の青年将校として描かれている。
ハイネセン駐在帝国高等弁務官在職当時のヘルムート・レンネンカンプの部下であり、ヤン・ウェンリー監視の任にあたった。ナイトハルト・ミュラーとは旧知であり、ヤンの死後にはミュラーによる弔問に随行している。
経歴
新帝国暦1年、事実上の同盟総督として帝国高等弁務官の任についたレンネンカンプ上級大将は、ヤン退役元帥をとくに潜在的危険人物とみなし、帝国軍により監視することとした。その責任者として選ばれたのがラッツェル大佐である。
しかしラッツェルは、ヤンに対しレンネンカンプほどの猜疑心を持っていなかった。監視を始めるにあたって、わざわざ監視相手であるヤン家を訪問し、礼儀正しく「元帥閣下にとってはさぞ不自由、ご不快のことと存じますが、これも上官からの命令でして、小官としては服従せざるをえません。どうかご容赦いただきたく存じます」と理解を求めたほどである。実際、ラッツェルの目に映るヤンは、退役して悠々自適の新婚生活を送っているようにしか見えなかった。
その後、レンネンカンプはヤンへの疑念と偏見をしだいに強めていき、ついには密告に基づいてヤンの逮捕勾留を命令、ヤン一派の反撃を受けて自殺のかたちで職に殉ずることとなる。この事態は当然公式に帝国の中枢へと報告されたが、ラッツェルはこれにあわせて旧知のナイトハルト・ミュラーへと超高速通信で急報を入れた。この会話において、彼はレンネンカンプのヤンへの対処が”平地に乱をおこす”ような不公正なものであったことを告発し、公式の場で証言できると断言している。
このラッツェルの訴えを受けて、軍最高幹部による会議の場では、ミュラーからラッツェルの証言が披瀝されて裏面の事情が明らかとされ、会議前に証言を伝えられたウォルフガング・ミッターマイヤー元帥からは公正な捜査と対処による帝国の威信回復が主張されることとなった。そして会議の潮流はレンネンカンプ糾弾へと傾き、皇帝の威を持ち出して反駁した”虎の威を借るやせ狐”への激烈な叱咤へとつながってゆくのである。
やがて新帝国暦2年6月、暗殺されたヤンへの弔問のためミュラーがイゼルローン要塞を訪れた際、単独行した戦艦パーツィバルに同乗した随員として、オルラウ少将とともにラッツェル大佐の名が挙げられている。ミュラーはバーミリオン星域において、ラッツェルは惑星ハイネセンにおいて、ともに生前のヤンと直接会話をかわした銀河帝国軍人の短いリストにならぶ両名であった。
人物
「ラインハルトが人選をあやまってレンネンカンプをえらんだとすれば、レンネンカンプは人選をあやまってラッツェルをえらんだ」とは、ラッツェルがヤンの監視に充てられたことへの評である。彼はレンネンカンプのような、国家の軍人としての強い信念によって生み出されたヤンへの偏執的な猜疑心を持ってはいなかったため、上官に望まれるほどにヤンへの監視に熱を入れることはできず、むしろ僅かながらもレンネンカンプの言い様に反抗心を覚えるほどだった。
むしろラッツェルは公正で実直な軍人といえ、レンネンカンプが同盟国内からの密告状を受けた際には、その内容に対しておどろくのみならず怒りさえも見せた。さらには自らが監視の責任を負う積年の敵将のため、五つも階級が上の現地最高権力者を前に”体内の勇気を総動員して”反論し、逆に幾度もヤンに救われてきたはずの密告者を忘恩の恥知らずと痛烈に糾弾しさえしている。
同時に、軍人らしい礼儀正しさの持ち主でもあり、監視対象に直接挨拶しに行く誠実さを持つのみならず、ミュラーにレンネンカンプを告発するときでさえ「国家の重臣にたいし、また大恩ある上司にたいし、非礼のきわみとは思いますが」と前置きするほどであった。
関連動画
関連項目
- 3
- 0pt