ラーテとは、第二次世界大戦中にドイツで構想された超々重戦車である。
概要
1943年初頭、クルップ社は焦っていた。総統閣下の肝いりで開始された超重戦車開発コンペで自社の設計が敗北し、ポルシェ博士のマウスが採用されたからである。何処の馬の骨とも知らぬマッドサイエンティスト一人に栄光のドイツ戦車産業がこのまま荒らされたままでいいのか?! 80cm列車砲を例に上げるまでもなく(実用性云々を別にして)総統閣下は巨大な陸戦兵器がお好みである。閣下に再び振り向いてもらうためにはより大きな戦車を開発する必要があった。そこでクルップ社がぶちあげた狂気の計画がLandkreuzer(ラントクロイツァー、陸上巡洋艦)構想であった。
ラーテとは、Landkreuzer構想の一つ、P1000重戦車に与えられた暗号名である。意味するところは「ドブネズミ」。これはポルシェ博士のマウス(ハツカネズミ)に対するあからさまなあてつけである。マウスをはるかに上回るその重量は1000トン。設計図が残っていないので正確な寸法は不明だが大体全長35m、全幅14m、高さ11m程度。主砲はシャルンホルスト級巡洋戦艦の28.3cm3連装砲塔の真ん中の砲を抜いたものを採用。副砲としてマウスやヤークトティーガーの主砲でもある12.8cm対戦車砲を装備。その他20mm対空機銃、15mm機銃をハリネズミのように生やした姿はまさに陸上戦艦であった。エンジンは魚雷艇用のダイムラー・ベンツMB501が8基もしくはUボート用のMAN V12Z32/44が2基で総出力は17000馬力に達し、最高速度は40km/h。乗員は20名から40名とはっきりしていない。
1000トン重戦車…、聞こえはかっこいいが実際にはどう運用すればいいんだろう…? この重量だとシベリアのツンドラは愚か、舗装道路ですら満足に走ることは難しそうである。当然橋をわたることなど不可能なので川はすべてシュノーケルを出しながら潜行横断することになっていた。鉄道による輸送も不可能なので戦場までは自力で向かってもらうしかなかった。図体がでかく速度も鈍いので移動中は急降下爆撃の格好の標的になっただろう。もちろんクルップ社もその点を見越して多数の対空機銃を装備させたわけであるが…。
こうした問題点はティーガーの実戦運用やマウスの試験運用で既に露見していたのでこれを踏まえて1944年、ドイツはすべての超重戦車の開発を中止。Landkreuzer構想は構想のままで終わった。
一体どんな姿だったのか?
上記のように現在ラーテは設計図が残っていないのでその姿は想像に任せるしかない。マウスをそのまま大型化したようなデザインもあればもう少し背の高い箱型の車体、文字通り戦艦のような前後に細長い車体も考えられている。砲塔の位置も車体の前だったり中央だったりする。また砲塔の後ろに伸縮式の観測塔を備えた(故に主砲を後ろに向けられない)デザインも存在する。履帯も1000トンもの重量を支えるために2列だったり3列だったり、前後に二分割してたりする。あと、多数の対空機銃を搭載していることになっているのだが、主砲の旋回の邪魔にならないように機銃砲塔を配置するにはどうしたらいいのか(車体後部に対空戦車ヴィルベルヴィントの4連裝20mm砲塔を装備していたという説もあるのだが、主力戦車に露頭砲塔を装備するのはいろいろな意味で無茶があるだろう)、ゲームなどではその辺がぼかされている。
変わった所ではエンジンを積んだトラクターと主砲を積んだトレーラーに分離が可能でピンチに陥ったらトレーラーを切り離して身軽になって帰還、などというデザインもある。
これで驚いてはいけない!
実は、陸上巡洋艦の構想は、もう1つ存在する。80cm口径の砲(80mmではない)を搭載した80cm列車砲「グスタフ」「ドーラ」を既にドイツは実用化し実線投入していたが、その移動をレールに依存しない自走砲の計画があったことが分かっている。その名も「P1500 モンスター」である!
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