リカント(SW2.5)とは、TRPG『ソード・ワールド2.5』に登場する一種族である。
名前の由来はリカントロープ(lycanthrope ライカンスロープの別読み)であり、一般的に人狼を指すが、この作品においては肉食哺乳類の特徴をもつ獣人全般の種族名である。
概要
ソード・ワールド2.5から新たに追加された種族であり、舞台であるアルフレイム大陸土着の種族である。大雑把な説明をしてしまえば人族版ライカンスロープである(というか名前もそのまんまだし)。
普段は人間の体にフサフサの大きな耳と尻尾を持つ程度だが、後述する種族特徴[獣変貌]を使用する事で頭部を獣の姿に変貌させる筋力を増大させることができる(個体によっては体の一部、あるいは全身が毛深くなり、さらにフッサフサのモッフモフになる)。
寿命は約150年と人間よりも若干長め、身長は男性は大柄で、女性はやや小柄な傾向らしい。
[獣変貌]する際の頭部の形状はイヌ科の動物が多い傾向にあるそうだが、虎や獅子などのネコ科の動物はもちろん、肉食哺乳類全般(雑食も含む)であればなんでも存在する。公式リプレイではイヌ科・ネコ科以外にラーテル(イタチの仲間)やセンザンコウ(哺乳類で唯一鱗を持つ雑食動物)が登場している(公式曰く、希少種ではあるがセイウチやシャチのような海洋哺乳類も存在するとのこと)。[獣変貌]時の外見は部族や親兄弟で似ることが多いが、様々な血の交流の結果、家族全員が違う動物のものということもあるそうな。
詳細設定
神紀文明時代には、人間と共存し、平和に暮らしていたそうだが、魔法文明時代には種族的に魔法の才能に乏しかったことから奴隷のように扱われ、魔動機文明時代の初期には他大陸の入植者たちに住処を追われ、さらには〈大破局〉後の混乱期には、その外見から蛮族と混同されて迫害を受けるという、かなり悲惨な歴史を持つ種族である。
しかし、リカントの多くが深い恨みを持つような事のない陽気かつ前向きな、過去にあまりこだわらない性格であること、そんな彼らに歩み寄ろうと尽力してきた者たちの活躍によって、現在は人族の一員として受け入れらている(公式短編集『ソード・ワールド2.5 ショートストーリーズ 呪いと祝福の大地』のエピソードの1つにそんな彼らの迫害と対立、そして和睦の歴史の一幕が収録されている)。
基本的に氏族を中心に、自然の中で独自の集落を作ることを伝統としているが、他種族との交流にも積極的であり、町中で見かけることも多い(ルールブックⅠで人口の割合が人間に次ぐ3割の国が存在したり、公式リプレイでもPC・NPC問わず頻繁に登場している)。
古くから蛮族との戦いには積極的で、特に種族名の元ネタ的にも特徴的にも能力的な向き不向きにも多くの共通点を持つ蛮族であるライカンスロープに対しては深い恨みを持つ事がないとされるリカントにしては珍しく強い憎しみを持っているそうだ。また2.5から新たに登場した魔神達の巣窟とでもいうべきダンジョン“奈落の魔域(シャロウ・アビス)”の存在は自然ならざるものとして警戒し、破壊には積極的である。
種族の特性
器用度 | 敏捷度 | 筋力 | 生命力 | 知力 | 精神力 |
B- | B+ | B | B | B+ | C |
(全「生まれ」の平均+ダイスの期待値が基準。生まれによって±1ランク程度の誤差が発生)
敏捷度と知力が高くなりやすく、筋力と生命力も及第点。このため低レベルのうちは前衛なのに筋力や生命力よりも知力の方が高いなんてこともあったりする。
しかし「技」が高めな生まれが多い割に器用度の能力値ダイスが1dなため若干物足りなさを感じ、「心」の能力値も並み程度であることに加えて精神力の能力値ダイスも1dなのでかなり低め。
[獣変貌]
主動作で頭部が獣の姿に変わり、全身の筋力が増強(筋力ボーナスが+2)され、後述する特殊な[暗視]も得る。元に戻る場合も同じく主動作を用いる。
6レベルで種族特徴が強化されると1日に1回補助動作で[獣変貌]できるようになり、さらに11レベル以降は敏捷度ボーナスも+1される。
物理アタッカーとして非常に強力な種族特徴だが、同時に「リカント語」以外の言語を話せなくなり(聞き取る事だけなら可能)、行使に専用の言語の発声を必要とする魔法全般が使用不能になってしまうというデメリットが発生する(“基本的に”行使の為に特定の言語を必要としない神聖魔法と森羅魔法を除くすべての魔法が行使不能になる)。
高めな知力を持つリカントが純前衛になる事が多い最大の理由であり、この種族特徴の存在ゆえにアルフレイム大陸ではリカント以外のPTメンバーのうち1人はリカント語の会話を習得しておく事が推奨される(テレパシー能力を持つ新種族「ティエンス」が通訳を担当すれば、話は別だが)。
[暗視(獣変貌)]
[獣変貌]時限定で、暗闇でも昼間と同じようにものが見える。
人族としては割りと貴重なのでありがたいのだが、使用している=[獣変貌]中なので通訳が必須になる。
長所
「優れた密偵となる」という宣伝文句通り、優れた敏捷度と知力、そして[暗視(獣変貌)]によりPTのメインスカウトとして高い適正を持つ。さらに種族特徴の[獣変貌]によって打点を底上げできるので物理アタッカーとして活躍できる。防具は高い敏捷度や11レベル以降は[獣変貌]に敏捷度ボーナスも+1される事を生かす為に非金属鎧を着こんだ回避型がおススメ。
器用度が低めになってしまった場合は練技の【キャッツアイ】などで補おう。
他にもライダーやアルケミストを取得してみるのも面白い。どちらも知力を用いた判定を行う事がそれなりにあり、[獣変貌]中の会話の不自由がデメリットになりにくい。
セージ技能も平時であれば悪くない選択肢だが、戦闘が予測される場面や暗い場所を探索するような状況では[獣変貌]中である事が多く、通訳担当が通訳を必要とするという本末転倒なことになってしまうので、習得するのであれば魔物知識判定で(リカント語の会話を習得している)メインのセージが事故った時のための保険とするのが無難。
短所
前衛としては筋力・生命力が平均的なので金属鎧を装備し辛いことも合わせて意外と脆く感じることがある。
特に回避することができない魔法攻撃に対しては精神力が低い事もあって非常に苦手。戦闘特技の《頑強》を取得する、月光の魔符や消魔の守護石、【フィールドレジスト】などで対策するなどしてフォローしておきたい。
また、[獣変貌]を使用するとリカント語しか話せなくなってしまうため、神官とドルイド以外の魔法使いや魔法戦士には不向き。その神官とドルイドも精神力が低いためMPを確保し辛いのでメインでの運用には(特に序盤は)苦労する。
ただし、後述する裏技を使えば真語・操霊魔法だけは、GMの裁定次第ではあるが使用できないこともない。
リカントとライカンスロープ
獣化能力を持つ種族という事で世界観的にも得意分野的にも何かと混合されがちなリカントとライカンスロープだが、以下のような相違点を持つ。
- 人族なので穢れを持たず弱点もない。日光下でも問題なく活動できる。その分、総合的な能力値はあちらが勝る。
- 生殖能力を持たず、儀式によってのみ数を増やすあちらと違い、元からアルフレイム大陸に存在する種族であるため普通に繁殖によって数を増やす。人間とのハーフも存在する。
- 排他的であまり他の蛮族と交流しないあちらに対して、こちらは他の人族との交流に積極的。
- [獣化]しなければ人間と見分けがつかないあちらと違い、こちらは[獣変貌]前であっても獣の耳と尻尾を持つので人間と見分けるのは容易。
- 獣化すると全身に剛毛が生えて防護点が増加するあちらに対して、こちらは筋力が増強される。身体の変化も頭部と体の一部分のみであり、毛並みは柔らかく牙も武器としては使用できない。[暗視]も[獣変貌]中限定。
- 6レベルで種族特徴が強化された場合、補助動作で変身を行えるのは人から獣に変わる場合のみ、また1日に1回のみである。
アビスカース「代弁する」アビス武具
基本的に[獣変貌]中は神聖魔法と森羅魔法以外の魔法を行使できないリカントであるが、2.5のルールブックⅡで新たに追加された「アビス強化」という武器や防具を特殊な方法で強化することで、無理やり魔法文明語の呪文を唱えて真語・操霊魔法を使用する事ができる(ほとんど裏技に近い方法なのでGMの許可が必須だが)。
このアビス強化というものは“アビスシャード”と呼ばれるアイテムを一定数消費することで武器・防具に様々な効果を付与する強化方法であり、他の武器・防具強化に比べて安価かつ強力な効果を付与できる代わりに、「アビスカース」と呼ばれるデメリット効果がランダムで付与されてしまうというもの。言ってしまえば自分の武器や防具を呪いの装備品に改造するシステムである。
アビスカースの内容は武具の売却時の値段が半分になったり、嘘が苦手になるような軽いものや、特定の技能によっては実質デメリットなしで扱えるものから、手番の開始時に武器が1/6の確率で手からすっぽ抜けてしまったり、生死判定に冒険者レベルと同じ値のペナルティが付くような危険なものまで様々であるが、そのうちの1つ「代弁する」というアビスカースは「その武器を装備している間、自分の会話を武具がそのまま魔法文明語の聞き取り辛い声で話し、魔法文明語以外の言語での会話を行えなくなってしまう」というもの。
この呪いによって([異貌]中のナイトメアを除いて)真語・操霊・神聖魔法以外の魔法が行使できなくなってしまうのだが、リカント語も魔法文明語に変換されるという点を利用して、武具に魔法文明語を発声させることで、[獣変貌]中であっても真語・操霊魔法が行使できる…かもしれないである(重ねて言うがGMの許可が必須である)。
……とは言ってもアビスカースの内容は「代弁する」を含めて全部で36通り存在し、どのアビスカースが付与されるかは完全にダイスの女神任せなので、実際のところ都合よく1/36を引き当てる事はそうそうない。一応、アビスシャードを追加で消費する事でアビスカースの内容を決め直すことはできるのだが、あくまでもダイスを振りなおすというだけなので、実際にそんな真似をすることができるのはアビスシャードが膨大に所持しているような特殊なレギュレーションぐらいのものである。
関連動画
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関連商品
↓2.5の公式リプレイ。PCにリカントが登場している。どちらも《追加攻撃》や《両手利き》で攻撃回数を増やし、[獣変貌]で強化して殴り掛かるアタッカーとして活躍している。
関連項目
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