リッチストライク(Rich Strike)は、2019年生まれのアメリカの競走馬である。
主な勝ち鞍
2022年:ケンタッキーダービー(GⅠ)
概要
血統
父Keen Ice、母Gold Strike、母父Smart Strike。
父はCurlin産駒で、通算24戦3勝(内GⅠ1勝)という成績だが、唯一のGⅠ勝利となったトラヴァーズステークスにおいて、同期の三冠馬American Pharoahを破る大波乱を巻き起こした馬。
母はカナダで競走生活を送り、ステークス競走4勝、同国の最優秀3歳牝馬に選ばれた実績馬。
母父Smart Strikeもカナダ馬で、GⅠ・1勝ながら種牡馬として米年度代表馬2回のCurlinなどを輩出し成功を収めた。
……ここまでの文章で気づいた競馬ファンもいるかもしれないが、父父が母父の産駒、すなわち父父父=母父であり、Smart Strike3×2というかなり濃いクロスが発生している。何気にDeputy Ministerも4×4であり、おまけに母母母父のSearch of Goldは父Raise a Native・母Gold DiggerでMr. Prospectorの全兄なので4×3×4の全兄弟クロスまで発生するという、競走馬育成ゲームなら牧場長が止めるレベルのインブリードである。
なお、姉でカナダGⅡを勝った*ラナモンは繁殖牝馬として日本に輸入されている。
馬名
馬名はRich Strikeである。英語にはStrike it richという慣用句があるので、それが由来であろうと思われる。ちなみにStrike it richは「思いがけず大金を得る」「一山当てる」という意味であり[1]、まさに名は体を表すということになった。
2021年:2歳
エリック・リード厩舎に入厩したリッチストライクのデビュー戦は芝コースで……10着。2戦目のクレーミング競走(出走馬が売りに出されているレース)でダートに転向し、ここで2着に17馬身以上の差をつける圧勝で初勝利を挙げ3万ドルで購買される。しかしその後は追い込みきれずに負ける競馬が続き、掲示板には乗るものの3着がやっとという戦績であった。
3戦目までは鞍上がころころ変わっていたが、4戦目となる12月26日のガンランナーステークスからはリード厩舎に所属するベネズエラ人騎手、ソニー・レオンが主戦として固定される。07年にデビューし、15年からアメリカに移ったレオン騎手は、この時点でグレード競走未勝利で、北米リーディング50位前後に甘んじていた。なお、新コンビの初陣結果は5着だった。
2022年:3歳
年が明けてブラックタイプ競走を3着、4着。4月2日のジェフルビーステークス(GⅢ)も3着にはまとめたが、米国三冠初戦・ケンタッキーダービー(GⅠ)出走にはポイントが足りず、補欠枠2頭の更に一つ下という順位。陣営は三冠最終戦のベルモントステークス(GⅠ)のステップレース・ピーターパンステークス(GⅡ)へ向けて調整を進めていた。
ところがケンタッキーダービー5日前の5月2日に負傷したUn OjoとプリークネスSに目標を絞ったEarly Votingが相次いで回避したことで補欠1番手に入った上、2頭の回避に伴い繰り上がったうちの1頭であるEthereal Roadもレース2日前にスクラッチ(出走取消)。この結果リッチストライクが繰り上がり、ダービーに出走できることになった。つまり、回避した2頭が仮に両方出走していれば繰り上がりで出走する権利すら与えられなかったということである。
連絡は相当あわただしかったらしく、馬主のリチャード・ドーソンは「登録変更を知ったのは締め切りの30秒前だった」とジョークを飛ばしている。
22年ケンタッキーダービー
この年のダービーは本命不在の混戦模様。GⅡ連勝中のEpicenterが1番人気に推され、以下はGⅠブルーグラスS馬Zandon、GⅠサンタアニタダービー馬Taibaと、トライアル勝ち馬が順当に人気を集める。
一方、20頭中21番として大外20番ゲートに入ったリッチストライクは、現地オッズで81.8倍の最低20番人気、JRA発売オッズでは95.1倍のブービー19番人気(※クラウンプライド出走に伴う発売)。実績皆無だし、レオン騎手は今回がケンタッキーダービー初出場だし、枠は大外だしと、買える要素はほぼないという評価であった。オーストラリア・ニューサウスウェールズ州では254.5倍というオッズが付いていたらしい。
本番ではスタートが決まらず後方からの競馬となるが、これはいつも通り。レオン騎手は前を追わず馬群の後ろから馬場の真ん中まで切れ込ませ、後方3~4番手で構える競馬を選択。レースはハイペースで進み、3角手前で早くも馬群が固まり始める。ここで早めに追い出したレオン騎手は3~4コーナーでじわりと前へ持ち出しながら、めまぐるしくポジションが入れ替わる各馬の間をすり抜けるように内に切れ込ませ、4角では空いた最内に突っ込み6~7番手で直線を向きさらに進出。前でいち早く抜け出したEpicenterに外からZandonが迫り叩き合いに持ち込んだところで、ダレてきた1頭を外に振ってかわしたリッチストライクがラチ沿いから一気に迫る。そして、Zandonに競り勝ったEpicenterを内から力強く抜き去り、見事に先頭でゴール板を駆け抜けたのだった。場内実況アナウンサーは「リッチストライクがやりました!」と叫んだ直後に勝負服リストを確認して「ワァーオ!(間違えてないぞ!)」とびっくりしていた。
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https://twitter.com/KentuckyDerby/status/1523105870598574081
馬も騎手もグレード競走初制覇が「スポーツで最も偉大な2分間」ケンタッキーダービー。リード調教師は入線の瞬間、膝から崩れ落ちたという。単勝81.8倍は、同競走では1913年のDonerail(92倍)に次ぐ史上2位の大波乱。大外枠からの勝利も2008年のBig Brownに続いて2頭目。ベネズエラ人騎手の制覇は1971年のグスタボ・アビラ(Cañonero騎乗)以来2人目と、奇しくも「2」尽くしの一勝であった。なお、クレーミング競走での取引歴のある馬がケンタッキーダービーを勝利したのは本馬が初めてである。
ベネズエラのスポーツメディアは特報でこの偉業を報道した。
「ゴール板を通過したとき『ありがとう、ありがとう神よ』と感謝しました。とても感動しています。ゴールした瞬間は、これが現実かどうか分かりませんでしたが、19頭が自分の後ろにいたので確信できました」
「世界最高の瞬間です。今日は家族を競馬場に連れてきたんですが、1歳2ヶ月の娘はこれが初めての競馬観戦です。娘は幸運を連れてきてくれました。ケンタッキーダービーを勝ったのはソニー・レオンです。私達ベネズエラがケンタッキーダービーを勝ちました。Buenas noches![2]」
次なる米国三冠戦は5月21日のプリークネスステークスだが、こちらは回復までの時間を考慮し回避。6月11日のベルモントステークスで二冠を目指す構えとなった。なお故障をしていないKYダービー馬がプリークネスSに出走しないのは、1985年のSpend a Buck以来となった。
迎えたベルモントステークス、8頭立てとなったレースではスタートで特に出負けした感じではなかったが道中最後方に位置し末脚勝負に賭けた。だが最後の直線に入っても伸びることが出来ず2頭を交わしただけの6着がやっとだった。
その後8月のトラヴァースステークス(GI)も8頭立て、6番手から競馬を進め、最後は2頭抜かしての4着。その次は10月のルーカスクラシックステークス(GII)で古馬と初対戦となる(6頭立て)。ここでは中団から差し切りにかかるが先行策をとったHot Rod Charlieにはアタマ差届かぬ2着。その次はブリーダーズカップ・クラシック(GI)に挑むことになった(8頭立て)。FlightlineとLife is Goodが競っている中最後方からの競馬となり、終盤上がっていき4着となった。
血統表
Keen Ice 2012 鹿毛 |
Curlin 2004 栗毛 |
Smart Strike | Mr. Prospector |
Classy'n Smart | |||
Sherriff's Deputy | Deputy Minister | ||
Barbarika | |||
Medomak 2007 鹿毛 |
Awesome Again | Deputy Minister | |
Primal Force | |||
Wiscasset | Kris S. | ||
Tara Roma | |||
Gold Strike 2002 黒鹿毛 FNo.5-g |
Smart Strike 1992 鹿毛 |
Mr. Prospector | Raise a Native |
Gold Digger | |||
Classy'n Smart | Smarten | ||
No Class | |||
Brassy Gold 1996 鹿毛 |
Dixieland Brass | Dixieland Band | |
Windmill Gal | |||
Panning for Gold | Search for Gold | ||
Apple Pan Dowdy |
クロス:Smart Strike 3×2(37.50%)、Deputy Minister 4×4(12.50%)
関連動画
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関連項目
脚注
- *英辞郎on the web
を参照。また、ジーニアス英和辞典第5版(大修館書店)のstrikeの項目にも「strike it rich」という慣用句が紹介されており、「一山当てる」と訳されている。
- *Buenas noches(ブエナス ノーチェス)はスペイン語だが、これを英語に訳すとGood eveningとなる。日本語訳すると「今晩は良い一夜になりますね!」といった意味になるだろう。
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