リニアモーターカーとは、リニアモーターを用いた鉄道車両の総称。JR式マグレブの開発者である京谷好泰によって名付けられた和製英語である。また、リニアと略されることもある。
概要
JR東海と鉄道総合技術研究所が開発した「JR式マグレブ」が有名であり、単にリニアモーターカーといった場合、多くの人はこちらを想像するだろう。時速500km/h台での営業運転を目的にリニア中央新幹線の工事が続けられており、多くの人々にとっての夢の乗り物として広く知られている。
主な仕組みとシステム
リニアモーターカーの方式を大まかに分けると磁気浮上式、鉄輪式の2種類となる。また、磁気浮上式もいくつかに分類できる。
磁気浮上式
JR式マグレブ
日本人にとっての「リニアモーターカー」の代名詞といえるのが、このJR式マグレブである。
鉄道総合技術研究所(JR総研)とJR東海が共同で開発しており、1996年に山梨県のリニア実験線で試験走行が開始された。2003年、試験車両MLX01は鉄道車両として当時の世界最高記録となる581km/hを達成した。
この最高速度581km/hを達成した車両の先頭車MLX01-1は2005年愛知万博「JR東海 超電導リニア館」で実物展示され世界に向けて夢の鉄道のPRを行った。なお、この展示車両は2011年名古屋市港区金城ふ頭に開業した博物館「リニア・鉄道館」で見ることが出来る。
2015年には山梨リニア実験線にてL0系車両が有人走行603km/hを達成し世界記録更新。鉄道が初めて600km/h台で走行した。
このシステムを使用したリニア中央新幹線が東京~名古屋間2027年開業を目指し建設中だが諸事情により遅れる可能性があり2023年12月に公式サイトより2027年以降開業になる旨が記載された。(なお静岡県以外は高架橋・トンネルも出来上がりつつある)おのれ静岡の県知事
詳細はJR式マグレブならびにリニア中央新幹線の記事を参照されたい。
HSST(常電導吸引型リニアモーターカー)
HSSTとは、High Speed Surface Transport(高速浮上交通機関)の略称で日本航空インターナショナルが開発を始め、中部HSST開発が実用化に成功したシステムである。JR式マグレブとは違い、超電導は使わず常電導吸引型磁気浮上を行う方式である。
日本航空が開発に乗り出した当初は空港連絡鉄道として、中部HSST開発ではモノレールや新交通システム(AGT)に近いシステムを目標に開発された。
2005年の愛知万博開催に合わせて開業したリニモ(Linimo)が営業運転を開始した。営業最高速度は100km/hである。浮上する鉄道を楽しみたいなら是非乗りに行ってみるといい。未来の日常がそこにある。
詳細はリニモの記事を参照されたい。
トランスラピッド
トランスラピッドはドイツで開発された方式。2004年1月、中国の上海での営業運転が開始された。最高速度は営業用鉄道としては世界最速の430km/hを誇る。
2020年2月より主な利用客(上海浦東国際空港利用者)減少の影響で暫定的に営業最高速度は300km/hとなった。最高速度430km/hでの営業運転再開時期は未定。
鉄輪式リニア
現状で最も身近なリニアモーターカーが鉄輪式リニアである。
一方で外見上はあまりにも普通すぎて鉄道にそれほど詳しくない人々にはこれがリニアモーターカーであると意識されない。
鉄輪式リニアはリニアモーターを推進力として用いるが浮上はせず一般的な鉄道のように鉄輪によって車体を支える方式である。国内の地下鉄路線の中でもいわゆるミニ地下鉄と呼ばれるものに多く採用されている。車体に一次側コイル、路面(2本のレールの間)に二次側リアクションプレートを有し両者でリニアモーターを構成している。このため従来の回転式モーターの鉄道車両よりも車高を低く抑えることが可能となった。また浮上式のHSSTと違い限界まで乗車しても車輪で重量を支えているので性能が落ちることはあっても動かなくなると言うことがない、浮上しない分余計なエネルギーを使わないのがメリットでもある。そのため近年ではこちらを採用する地下鉄も増えている。
登坂力に優れ60‰(パーミル)の急勾配でも問題なく走行可能で、リニアモーターの構造的に車体やトンネル断面積も小さく出来るというメリットが有る。一般的な回転式モーターを用いた鉄道の場合は35‰が上限で、それ以上の勾配を走らせるには国土交通省令により相応の装備と特別認可が必要となる。鉄輪式リニアの場合は60‰が上限として省令で定められている。
一般に既存の地下鉄より後に新規の地下鉄を建設する場合、それよりも深い地下空間を主な経路として利用せざるを得ず駅も深くなりがちである。一方、鉄輪式リニア鉄道であれば登坂力の強さから比較的浅い場所に駅を設定することも可能である(浅い地下空間が使用済みの場合を除く)。主に大都市圏のような限られた地下空間を立体的に縫うように有効活用でき、なおかつ前述の理由によりトンネル断面積も小さく出来るので建設費用を削減にも繋がる。このことから新規開業地下鉄路線の多くがこの規格で作られている。
営業路線としては1990年3月に開業した大阪市営地下鉄長堀鶴見緑地線が旅客鉄道路線として初の採用例となった。
なお、既存の一般的な鉄道路線との直通営業運転は仮に軌間(2本のレールの間隔幅)が同一であっても基本的に想定されていない。トンネル及び車両断面積や床面高さとそれによるプラットホーム高の違いに加えて何よりも鉄輪式リニアは路面にリアクションプレートが無い路線は走れないからである。(このため大江戸線では検査の際牽引してもらう機関車を用意している。大阪メトロや他の地下鉄路線は第三軌条路線と別に検査設備を用意している。)
ちなみに線路の間にある二次側リアクションプレートは電流が流れているわけではない他、人が乗っても壊れない頑丈な作りであるため地震などの災害発生時はこの上を歩いて避難するように誘導される。
国内の鉄輪式リニア採用路線
鉄輪式リニアの採用路線は全て地下鉄である。カッコ内は開業年月。
- 大阪市営地下鉄長堀鶴見緑地線(1990年3月)
- 都営地下鉄大江戸線(1991年12月)
- 神戸市営地下鉄海岸線(2001年7月)
- 福岡市営地下鉄七隈線(2005年2月)
- 大阪市営地下鉄今里筋線(2006年12月)
- 横浜市営地下鉄グリーンライン(2008年3月)
- 仙台市営地下鉄東西線(2015年12月)
関連動画
関連項目
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