リンダキューブ(以下、Linda3と表記)とは、1995年10月13日にNECホームエレクトロニクスから発売されたPCエンジン用ゲームソフトのことである。
その後、グラフィック刷新・動物種類追加・過激表現の規制をした「リンダキューブアゲイン」が1997年9月25日にソニー・コンピュータエンタテインメントからPSソフトとして発売され、さらに、PS版で規制された表現をオリジナルに近い形で再現した「リンダキューブ完全版」が1998年6月18日にアスキーよりSSソフトとして発売された。
また、「リンダキューブアゲイン」のみ後述のようにゲームアーカイブスで配信され、PSP/PS3でもできるようになった。
概要
上掲のように、1995年にPCエンジン(PCE)で発売されたゲームソフト「リンダキューブ」が元祖である。
95年といえば前年に発売された「次世代機」が覇権を争っていた時期であり、ときメモで最後の盛り上がりを見せていたPCE市場もPC-FXへの世代交代で終わりを迎えようとしていた。そのため同作の売り上げは悲惨なものであったが、本作をプレイしたユーザーからの評価が非常に高く、内容の怪作ぶりもあって一部界隈では有名だった。
後に「アゲイン」として、グラフィックなどを一新してPSに移植され、さらに細部を調整した「完全版」がSSに移植された。その後、当時のスタッフの協力によりゲームアーカイブスでも配信されることになり、現在はPS3/PSPでプレイ可能になっている。
ちなみに、PSソフトで初めて倫理規定マーク(「このゲームには暴力シーンやグロテスクな表現が含まれています」という三角マーク)が付けられたソフトである(PCエンジン版においても「18歳以上推奨」のマークがつけられた)。CMもテレビではなく映画館で流した。
エログロないまぜになったシナリオや奇怪に過ぎるグラフィックばかり有名になり、また取り沙汰されてきたLinda3だが、このゲームの本質は、今までのRPGと異なる、リアリティのあるシステムと自由度の高さだろう。プレイヤーは試行錯誤しながら「動物集め」を楽しむことになる。この過程に多くのプレイヤーが夢中になった(捕まえるための情報が不足している動物、あまりに意外なところに潜んでいる動物など、全ての動物を捕まえるのはなかなかハードである)。
あらすじ
AMD(アフター・マザーズ・デスの略語。地球が死んだ日を意味する)1991年、地球とよく似た惑星「ネオケニア」。そこに暮らす人類は、8年後ネオケニアに回避不能な巨大隕石が衝突することがわかっていた。ネオケニアからの人類脱出計画が着々と進められている中、突然神様と名乗る者から「箱舟」なる宇宙船と一通のメッセージが届く。
「この星の動物を救いたい。ついては、動物の雄雌各1匹ずつ。それと人間の男女を1名ずつ箱舟に乗せてほしい」
この出所不明の情報が何と政府に支持され、この乗員に若き男女1名ずつ、すなわち主人公とヒロインが志願した。隕石がネオケニアに迫る中、今後どうなるかもわからない「箱舟計画」が始まった。詳しくは関連動画を見よ!
リンダキューブには3面のシナリオABCが用意されており(PS版、SS版ではDシナリオを含めた4シナリオ)、それぞれに目標動物捕獲数・終了条件が提示されている。この3つのシナリオはパラレルワールド的な繋がりを持っており、登場人物は共通しているものの、境遇がそれぞれ異なる。
AとBはストーリーを持つ一本のシナリオがゲーム進行に深く関わり、本来の目的である「動物集め」は補助的な要素になっている。有名なエログロシナリオもABに含まれている。
一方シナリオCには明確なストーリーがない。先にABシナリオで理解を深め、Cで「動物集め」を思う存分楽しめるような構造になっている。
特徴
RPGのお約束が通じない。
主人公は勇者ではない。倒すべき邪悪な魔王もいない。世界を救うことは絶対にできない。
わざと王道を外し、ファンタジーにあるまじきカオスなシナリオになっているのが最大の特徴である。
主人公が救えるのは世界でも国家でもなく、グロテスクな動物達と口の悪い幼馴染の女だけである。
桝田さんのホームページ内でも、このことは特に注記されている。曰く、「断っておく!! このゲームには魔王はいない。君も勇者じゃない。魔法なんかない。誰も道を教えない。君が何をしても隕石は止まらない。」
8年後に必ず隕石は落ちてくる。
ゲーム内では一部の場所を除いて常に時間が流れている(セミリアルタイム)。ゲーム内時間で8年が経過すれば、容赦なく『死神』はネオケニアに落下する。また、時間経過とともに町の住人はネオケニアを脱出してしまい、施設はどんどん使えなくなってゆく。
PS/SS版では貴重な動物が絶滅してしまうことも。
動物を捕まえることが全て!
先述の通り、箱舟計画を完遂するためにも、ネオケニアに棲息する動物の遺伝子データを採取しなければならない。
動物の捕まえ方も様々。狩りで生捕りにする他、罠を仕掛ける、動物商から買う、ハンターに依頼する等。
捕まえた動物の使い道も、ただ箱船に連れ込むだけではない。箱舟に連れ込む動物はつがい、つまり雌雄1匹ずつでよいのである。
残った動物は食料や装備に加工したり、高価な動物は売り払ったりできる。PS/SS版では猟犬にすることもできる。
エロい
元々が「王道シナリオ」に対する鬱憤から作られたシナリオであるだけに、PCEの倫理規定に挑戦したかのような性的ネタが多い。リンダがいる状態で野営をするとアイテムの「ティッシュ」が消費される(ケンが鼻をかんだかららしいですよ?)。他にも、シナリオCの野営時の話題の一つに「最初に生まれてくる赤ちゃんの名前」という話がある。リンダは一言「一日でも早く(リンダとケンの初の子供に)会いたくなってきちゃた……しよう!!」ま、確かに会うにはそれっきゃないですが、女性側からこういうアプローチをしてくるというのが何とも。
しかし実際にはそういうシーンはただの一つも(絵としては)明記されない。がしかし「箱舟の中で2人っきり」「つがいとして乗せられる」等、箱舟計画の完遂を考えればかなりのことになるであろう。
他にも「愛の巣」「麗しの未亡人と老博士が机の下でゴニョゴニョ」「実の娘の股ぐらに顔突っ込んで『生娘の香りだ』とのたまうオッサン」など危ないネタに事欠かない。
常人が見やると、ゲーム全体に漂うその剥き出しの性的な世界に困惑するかもしれない。
鬱憤?
このゲームの根本には「王道に対するアンチテーゼ」がある。
脚本の桝田省治氏は以前「天外魔境2」の脚本を手がけ、そのコテコテすぎる王道シナリオの制作に約3年も付き合わされたという。そこで3年間溜まった鬱憤により「クリエイターとしての血がうずき始め」、その鬱憤を面白おかしく昇華させたのが本作であるという。
その凄まじさが発現されているのがCシナリオで、A/Bシナリオさえ「あまりにシステム部分の取っ付きが悪いので、初心者用のオマケとして追加した」と下記桝田氏本人の紹介ページ内で発言しているほどである。
また鬱憤の反動からか、非常に濃い裏設定が存在する。特にPCE版Linda3の予約特典として付帯した「リンダの秘密」には下記キャラクターの設定などが仔細に記されており、その筋の人々からは非常に貴重な存在として扱われている。
キャラクター
- ケン・チャレンジャー
- CV:矢尾一樹 / 高山みなみ(幼少時)
AMD1975/12/25生
箱舟の男性乗組員。レンジャー隊の隊員。あだ名は「遅刻王」「バナナ少年」。
ストリートファイターのガイルのようなホウキ頭と、左の目じりの下にあるほくろがチャームポイント。 - リンダ
- CV:高山みなみ
AMD1976/12/25生
箱舟の女性乗組員。ケンの幼馴染。名字はシナリオごとに異なる。
ネオケニアの原住民であるビースチャンとのハーフ。朗らかで強引なじゃじゃ馬娘。
ケンを深く愛しており、人前であろうと親の前であろうと積極的にアプローチしてくる。シナリオA・Bではそんな彼女とケンを試すかのように、過酷な運命が2人を待ち受けている。
口は悪いがスタイル抜群(B86/W55/H84)、今時メシをうまそうに食う魅力的なピチピチギャルである(ベン隊長談)。 - ネク
- CV:矢尾一樹
AMD1975/12/25生
シナリオA・Cに登場する、ケンの双子の弟。いつもサンタクロースの格好をしている。ケンとほくろの位置が逆なので、それで見分けが付くとか。
シナリオAでの過激な言動は印象的。そのためか、善良な兄よりファンが多い。
また、ローマ字綴りにするとNEK、つまり双子の兄であるKENを逆さ読みにしている。 - サチコ・エモリ
- CV:佐久間レイ
AMD1976/12/25生
シナリオB・Cに登場する、ヤタロウ・エモリ博士の娘。黒髪ロングの清楚な美人。異星育ちのためかどこかズレた言動をする不思議っ子。シナリオBは、タイトル「HAPPY CHILD」から分かる通り、彼女を中心とした物語である。 - ミーム・チャレンジャー
- CV:青木和代
AMD1950/11/13生
ケンの養母。夫を亡くして以来、女手ひとつでケンを育てた。このゲームの良心。シナリオA・Bでは特に、ケンひとりでは絶対にどうにもできない局面を切り開いた人物。シナリオCで旅行する彼女の全てを追えた人はいるのか!? - ベン・マクドナルド
- CV:内海賢二
AMD1951/1/1生
レンジャー隊隊長。ポケベルに残す伝言の第一声が必ず「隊長(おれ)だ!」。
ミームと付き合っている様子。葉巻が臭いと秘書から不評。小細工が大得意。 - ヒューム・バーニング
- CV:二又一成 / 神谷明(PCE版)
AMD1952/3/16生
リンダの父。元レンジャー隊隊員。レンジャー隊を辞めた後は代行ハンターをやっていたが、リンダが箱舟の乗員になったことを知ると、生態系を守るためにとハンターを引退した。
筋骨隆々で黒人の自分とリンダの容姿が似ていないことを嬉しくも不安に思っている。 - アン・バーニング(旧姓:アウレア)
- CV:江森浩子 / 増山江威子(PCE版)
AMD1954/6/20生
リンダの母。原住民のビースチャンである。ビースチャンの遺伝子はネオケニアの移住民すべてに対して優性であるので、リンダの容姿はすべてアンのものを受け継いでいる。
昔、ケンの養父と付き合っていた。 - エリザベス・グリーン
- CV:くればやしたくみ
生年月日不明
シナリオA・Cに登場する、グリーン製薬の女社長。30代前半を思わせる年齢不詳の美貌の持ち主。
クリスマスが大好きで、グリーン製薬本社のあるエターナは一年中クリスマス風になっている。 - ミカ・パンハイム(パンハイム博士)
- CV:辻親八
AMD1929/2/2生
シナリオA・Cに登場する、グリーン製薬に勤める天才老科学者。
密かにエリザベスに思いを寄せている。「アレの薬」こと精力剤をよく作る。 - ヤタロウ・エモリ
- CV:青野武
AMD1940/5/5生
シナリオB・Cに登場する、生体工学博士にて天才外科医。シナリオBでは重傷を負ったリンダの主治医でもある。
独善的な性格と言動が目立ち、娘のサチコを溺愛している。
参考資料:リンダの秘密(PCエンジン版Linda3予約特典)
制作スタッフ
リンダ脳
PCE版Linda3に登場する“動物”は、ネオケニア星土着の奇怪な生物を、現実の地球にいた生物の身体的特徴になぞらえて名づけられたに過ぎず、その本質は異星の生物である。そのため、これら土着の生物はそのネーミングに反して現実に存在するものとは似ても似つかない非常にミュータンティックな風貌をしている。
そのため、長時間プレイし彼らとの戦闘を繰り返していると、次第にプレイヤーの美的感覚は崩壊する。
そうして美的感覚が崩壊したプレイヤーがふと、比較的まともな動物(例:PS/SS版におけるウサギ、ネコ、飛ぶ動物等)を目にすると、客観的にはそうでもないにも関わらず「かわいい」と思う等の錯覚を起こすことがある。
この精神疾患をユーザーは俗に「リンダ脳」と呼称する。
なお、これら動物のグラフィックはほぼすべてがやや古臭さを感じさせるドット打ちである。なんでもわざと前時代的にしたのだとか。
余談
現在「アゲイン」はゲームアーカイブスにて配信されているが、その経緯は非常に複雑なものであった。
2007年9月27日に最初の配信が行われたが、権利問題によりその後数時間で中止されている。
紆余曲折あって約1年後の2008年9月10日に晴れて再配信となった。
その紆余曲折の部分が気になる人は是非アルファシステム・マーズのブログの「リンダキューブアゲイン配信開始」を読んでみよう。
アーカイブス配信にまつわるちょっといい話です。
もちろんというかなんというか、アゲインでは上述リンダ脳は起こらない。嗚呼!
関連動画
CM
PCエンジン版 元祖Linda3
PS版OPムービー
PS版プレイ動画
BGM
関連お絵カキコ
リンダ
リンダ以外の人物
関連リンク
関連項目
- 桝田省治
- 俺の屍を越えてゆけ - ニコニコ動画で「リンダキューブ」と同様に人気のある桝田省治作品
- 愛し合う2人はいつも一緒
- いいですよ、回転ベッド
- フロム脳
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- 0pt