リンチとは、以下のことを表す。
- リンチ(Lynch) - 英語圏の姓のひとつ。
- リンチ ‐ 法律とは別に特定の人物に制裁を加えること。私刑。チャールズ・リンチの名前にちなむ。本稿で主に扱う。
- リンチ ‐ 上記のリンチから転じ、集団で一人に対して執拗に攻撃を加えること。ネット上における集団バッシング(叩き)に対しても使われる。
- リンチ(実況プレイヤー) - ニコニコ動画に動画を投稿する実況プレイヤー
概要
私刑(リンチ)とは、「法律に則らず、制裁を加えること」を指す。私刑の大半が犯罪行為にあたる。法律用語では同じ読みの死刑と区別して「わたしけい」と呼ぶ。
私刑、ダメ。ゼッタイ。
リンチの語源は、チャールズ・リンチというアメリカ独立戦争時のアメリカ人が由来だとされている。彼はアメリカ独立戦争時にパトリオット(アメリカの独立を支持する派閥)として王党派(イギリスを支持する派閥)とされた人物を違法裁判で鞭打ち、財産差し押さえ、忠誠の強制、徴兵だので処罰していたとされる。また、別説としてはウィリアム・リンチという別のアメリカ人判事が由来とする説もある。
中世以前においては私刑が認められていた事もあったが、現代においては「刑罰は法律に基づいて執行する」事が大原則となっており、法治国家である現代日本においてももちろん禁止である。(日本国憲法第31条でしっかり明記されている)
私刑が可能な場合、極端な事を言えば、「何かムカついたから」と難癖をつけて他人を攻撃することが合法になってしまう。
法律に基づいて執行すればよいのでは?と思うかもしれないが(そもそも私刑が違法行為である、という前提はさておいたとしても) 膨大な法律を読み込んで適切な刑罰を下すのは法律の専門家でも難しく、法律をかじった素人には絶対ムリである。
また、個人による私刑にはろくな捜査力・調査力もないため、誤解や勘違い、デマなどが原因による冤罪が非常に発生しやすい。(会社名が加害者と同姓というだけで、その会社に嫌がらせの電話をかけるなどの頭の悪いことも平気でやってしまう。当然、そんなことをする人間はもれなく犯罪者である。)
また、悪人を見つけた時の一般人はヒートアップしやすい傾向にあり、過剰な厳罰化にも行き着く。(そうしないと大抵、集団で囲んで棒で殴って殺すまで私刑が行われる。)
以上のような観点から、一般人による私刑は非常に危険。
法律の運用は検事、弁護士、裁判官などの法律専門家に、逮捕は警察におまかせしましょう。というのが、現代の考え方である。
現代の司法や刑罰を見て、「手ぬるい」と感じる事は多くあるかもしれないが、猫も杓子も厳罰に処すような世の中はめちゃくちゃ治安が悪化するし、法規範は犯罪者に対する懲罰だけでなく犯罪の発生や再発の防止、社会秩序の維持など、様々な観点から社会全体を見た上で十分に検討され、また時代に合わせて常に変更を加えた上で運用されている。刑罰は別に、個人の感情を満足させる為のものではないということは理解しておこう。
現代における私刑
とは言え、現代社会において私刑がないわけではない(だからといって、やっていいとは言っていない)。
というか、ここまで私刑は禁止されているよ、と書いてきたからにはそりゃーもう色々な私刑、リンチが発生している。
第一に挙げられるのはメディアによるリンチである。上述の通り、一般の人は悪人を見るととにかく制裁を加えたくなる生き物なので、犯罪者の身辺を調べ上げ、これを徹底的に攻撃するような論調のメディアを作るとそりゃーもう視聴率はドカドカ上がるし週刊誌はバカスカ売れる。PVは鰻登りにギュンギュン上がる。たちの悪いことに、情報は早ければ早いほど価値があるため、対象が「容疑者」の段階からこれをやるものだから、たとえ容疑者が無実だったとしても元の生活にはまず戻れなくなる。(そしてその頃には、自分たちのしたことはシレっと忘れて、捜査の問題点やら何やらを叩き始めている)
メディアを見る上では、「こういう人たちもご飯食べるためにこういうことしてんだな…」くらいのある程度冷めた目線で情報を収集する必要がある。
インターネットが発達した21世紀において話題になる事が多くなったのが、ネットリンチである。ネット黎明期から、問題行動を起こした者に対する2chねらーの凸による炎上騒動などは度々話題になったが、近年では自身の情報を発信するSNSの流行や、情報を恣意的にまとめる「まとめブログ」などの存在により、ふとしたことからネット上のリンチが発生しやすい土壌が生まれている。そしてこれが全くのデマから発生している事も多々あり、被害者側の相談から刑事事件に発展した例も多々ある。
「ネットに書いてあったから」「有名人だから」「ファンだけど許せないから」と言うだけでリンチに加担するのは、自分が犯罪者になってしまう危険もある行為だと充分理解しておこう。
とりわけ同一の思想・信条のもとに集った団体で起こりやすく、先鋭化による分裂や犯人探しとともに発生し死者をも出す。
また、2020年代より、犯罪者の現行犯逮捕を目的とした私人逮捕系の動画配信者が急増しているが、実態は警察官職務執行法を無視した令状なしの身勝手な捜査を行っているほか、一般には許可されていない職務質問などの本来警察官に与えられている権利を勝手に行使している、逃亡を防ぐために暴行を加えるなどをしており、実態は完全に私刑と化していることがほとんど。
たしかに、一般ピープルにおいても、現行犯逮捕は可能であるというのは有名であるが、それはあくまでも緊急性が高く、被疑者の住所氏名が明らかでなく、罰金30万円以下の犯罪に限り、被疑者が逃亡を図るなどの行動をとった場合といったように厳格に要項が定められており、本来収益化を目的とした動画配信者などが行うことは想定されていない。
実際、警察からの感謝状も無ければ、その後に起訴されて実際に罪となっているか否かといった事後の報告があることは皆無である。
合法的に犯罪を裁きたければ、警察官や裁判所職員、弁護士、検察官などの正当な職業に就くべきである。
関連動画
関連項目
- おきらくリンチ
- 公開処刑
- いじめ
- 総括
- 人民裁判
- 炎上
- 私人逮捕 - 2020年代よりこれを収益化する動画配信者が急増しているが、実態は私刑そのもの
- 福田村事件(関東大震災後に発生したリンチ事件。千葉県東葛飾郡福田村(現、野田市)にて香川県からやってきた15名からなる行商人の一団を朝鮮人と決めつけ集団で加害、及び殺害したもの。9名(妊婦、幼児3名含む)が死亡)
私刑は犯罪行為にあたるため、決してやってはいけない。
私刑、ダメ!絶対!
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