概要
フランス革命でギロチンによって処刑されたことで有名。その評価は長らく「無能」「世間知らず」「なよなよしている」とされてきたものの、近年では「善人」「有能、せめて革命期の国王でなければ」「やるだけのことはやっている」と肯定的な見方も増えつつある。
実際、当時のルイ16世は、ヴァレンヌ逃亡事件までは民衆から絶大な支持を得ていたといわれる。テニスコートの誓いではフランス・国民・国王を讃える万歳三唱が、ヴェルサイユ行進のときには「国王万歳!」という歓声が上がっている。初期のフランス革命では、君主制の支持勢力が多かった。
妻にマリー・アントワネットがいる。文献によってはこれが「ルイ16世自身が行った」などとしているものもある。このような記述のズレが、ルイ16世の評価の違いを作り出しているのではないかと思われる。なお、従来は悪女とされてきたマリー・アントワネット側にも、近年は「悲劇の王妃」など同情的な評価も増えてきている。
フランス革命以前
フランスは先代のルイ14世・15世のときから何度も戦争に参加していたため出費が多く、財政危機に陥っていた。1774年にルイ16世が就任すると、まず財政の立て直しのためにテュルゴーを宰相に就かせる。テュルゴーは王室支出の削減に加え、ギルドの廃止、国内の関税の廃止などの経済の自由化を目指した。しかし、既得権益を失うことを恐れた民衆たちから反対に遭い、高等法院に告発され1776年に罷免された。
さらにルイ16世は、イギリスへの七年戦争の報復と、アメリカにあるフランスの植民地の回復を狙い、アメリカ独立戦争に参戦する。テュルゴーの後任となった財務長官のネッケルはこれを増税ではなく借入金によって賄い、民衆の支持を得た。しかし、戦争が予想以上に長期化してしまい、かえってフランスの財政を悪化させてしまう結果となった。その後、ネッケルはフランスの財政状況を公開したが、宮廷から激しい攻撃に遭い罷免された。
このように、ルイ16世の人材登用とアメリカ独立戦争への参戦決定は、結果的には失敗に終わった。しかし、「もうすでにルイ14世・15世のころからの債務が莫大すぎて、ルイ16世が何をやっても解消させるのは難しかったのではないか」という意見もある。
三部会から退位まで
財政難を乗り切るため特権身分への課税を検討したルイ16世は、ネッケルを復帰させる。そして、ネッケルや貴族の要請を受け、1789年に三部会(当時のフランス議会)を招集する。しかし、その議決方法をめぐって論争となり、納得のいかない平民たちは、テニスコートに集まり、三部会とは別の国民議会を作る誓いを立てた(テニスコートの誓い)。このとき、ネッケルは三部会の身分ごとの議員配分数を平民に有利になるよう変更することを提案しており、平民から支持を得た。
しかし、国王政府からネッケルが罷免されてしまう。この原因はルイ16世の妻であるマリー・アントワネットらによる謀略とされる。ネッケルの罷免に怒った民衆らはバスティーユ牢獄を襲撃し、牢獄司令官やパリ市長などを殺害する(フランス革命の開始)。
バスティーユ牢獄襲撃の知らせを聞いたルイ16世は「暴動か?」と側近に問い、「いいえ、革命でございます」と返される。事態を飲み込んだルイ16世は直ちにネッケルの復職を決定し、自らパリに行って、新しく民衆が発足した新パリ市政府と民兵隊を公認した。
なお、バスティーユ牢獄襲撃当日の日記には「何もなし」と書かれていた。しかし、これは日記というより、当日の狩りの成果を単に記したものであるともされる。
続いてヴェルサイユ行進が起こる。このときルイ16世は郊外のヴェルサイユ宮殿からパリのテュイルリー宮殿に連行されている。この目的は「腐敗した宮廷から国王を引き離すため」というものだったとされる。ルイ16世が民衆に姿を見せると「国王万歳」の掛け声が上がった。
しばらくはルイ16世はテュイルリー宮殿に暮らしていたが、それから2年が経ったある日、国王一家が宮殿から姿を消してしまう(ヴァレンヌ逃亡事件)。マリー・アントワネットが主導した逃亡事件であり、すぐに発見されて宮殿に戻された。しかし、これが「国王なのに国を離れようとした」という裏切り行為とみなされ、王政を廃止する意見が強まっていく。
1792年、民衆が武装蜂起しテュイルリー宮殿を襲撃し、王権が停止された。これ以降のルイ16世は一般人として「ルイ・カペー」と呼ばれるようになる。
処刑
議会は国王支持派の多いフイヤン派、国王処刑により共和政を望むジャコバン派、共和政にすることを望むが国王の処遇は穏便にしたいジロンド派に分かれていた。その中でサン・ジュストが「国王、王政というその存在自体が罪」と雄弁をもって演説し、国王の処刑を求めた。
その後、4回の議決を経て国王の処刑が決定され、1793年1月21日の昼にギロチンで斬首された。
余談
事実か創作かどうかは不明だが、ギロチンの製作者に「刃を斜めにしたら切りやすいんじゃない?」という提案をしたとも言われる。まさかそのギロチンに首を斬られてしまう事態になるとは…。
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