ルベン・ディアス(Rúben Dias, 1997年5月14日 - )とは、ポルトガル出身のサッカー選手である。
イングランド・プレミアリーグのマンチェスター・シティFC所属。サッカーポルトガル代表。
ポジションはDF(センターバック)。187cm83kg。利き足は右足。メディア媒体によっては、ルーベン・ディアスやルベン・ジアスとも表記されている。
概要
ポルトガル・リスボンの北に位置するアマドーラ出身。ベンフィカのアカデミー出身のセンターバックで、抜群の統率力とリーダーシップを若い頃から持ち合わせ、強いプロ意識と志の高さによって瞬く間に世界屈指のDFにまで上り詰めている。
2017年にトップチームに昇格し、プリメイラ・リーガの年間最優秀若手選手に選ばれ、2020年夏にマンチェスター・シティへ移籍。加入後すぐにジョゼップ・グアルディオラ監督の信頼を掴み、ペップ・シティの洗練されたフットボールを体現するのに必要不可欠なピースとなっている。
2021年にFWA年間最優秀選手、マンチェスター・シティ年間最優秀選手、プレミアリーグ年間最優秀選手、UEFAチャンピオンズリーグ年間最優秀ディフェンダーに選ばれ、2022-23シーズンにはシティ初のトレブル達成に貢献。数多くのタイトルを獲得するのに重要な役割を担っている。
各年代のポルトガル代表で主力としてプレーしたエリートであり、2018年に20歳でフル代表にデビュー。2019年のUEFAネーションズリーグ決勝ではオランダ代表相手に完封勝利して優勝に貢献し、この試合のMOMに選出。シティ同様、代表でも絶対的なディフェンスリーダーに君臨している。
経歴
生い立ち
ポルトガルのレジェンドであるルイ・コスタが生まれ育った街でもあるアマドーラで生を受け、家庭環境は中流家庭で金銭的な心配はさほどなかった。サッカーが盛んな土地柄であり、サッカー好きの兄の影響を受けたこともあり、幼い頃からサッカーに夢中になっていた。
9歳となった2006年、親戚の紹介によって地元のCFエストレラダアマというクラブでキャリアをスタートさせる。加入した当初のポジションはFWだったが、その後攻撃的なセンターバック(CB)として頭角を現すようになる。
11歳となった2008年、同年代の子どもと比べて特別な才能を持っていると感じた両親に薦められ、名門ベンフィカのアカデミーのトライアウトを受け、見事に合格。過去から現在に至るまで数多くの名プレイヤーを輩出してきた世界屈指の実績を持つ名門アカデミーでプレーすることになる。加入当初、身体の成長が遅かったこともあり、CBではなくMFにコンバートされることとなったが、すぐに身体が成長するようになり、CBに求められるフィジカルも付いてきたことから本職のCBでプレーすることになる。
その後は生まれ持った天性のカリスマ性によってリーダーシップを発揮。ベンフィカユースの各カテゴリーでキャプテンを任される選手となり、類を見ないスピードで成長を遂げていき、各年代別のポルトガル代表の常連となるなど、将来を嘱望された選手となっていた。
2015年、18歳にしてセカンドチームであるベンフィカBの一員となり、ポルトガルの2部リーグであるリーガプロに初出場。リーグ戦26試合に出場し、歴史的快挙と言われたリーグ4位でのフィニッシュに貢献。
2016-17シーズンには28試合に出場し、ユース所属の選手にとっては欧州最高峰の舞台であるUEFAユースリーグのファイナル進出に貢献。アンダー世代からエリート街道を突き進み、もはやトップチームへの昇格は時間の問題と言われていた。
ベンフィカ
2017-18シーズンに満を持してトップチームに昇格。2017年9月16日のボアビスタ戦においてプリメイラ・リーガでのデビューを果たす。すると、初のトップレベルでのプレーながらもチームの主力として定着するようになり、UEFAチャンピオンズリーグのマンチェスター・ユナイテッド戦でも大きなインパクトを残す。プロ1年目ながらも絶対的な信頼を寄せられる選手となり、虫垂炎で欠場した時期があったものの、24試合に出場し3得点という成績を残す。この活躍が認められ、2017-18シーズンのプリメイラ・リーガ最優秀若手選手賞を受賞している。
2018-19シーズンになると、ベンフィカのディフェンスリーダーとしてすっかり定着。クラブとの契約を2023年にまで延長し、覚醒を始めたジョアン・フェリックスと共にベンフィカの若きシンボルとして躍動。後方からのビルドアップからパスで繋ぐスタイルを標榜するルイ・ヴィトーリア監督の求めるタスクにも見事にマッチ。シーズン通算32試合3ゴールという成績を記録し、ベンフィカの2シーズンぶり37回目のリーグ優勝の大きな立役者となった。
2019-20シーズンも若きディフェンスリーダーの勢いは止まらず、2019年11月2日のリオ・アヴェ戦ではベンフィカでの公式戦100試合出場を果たし、自らメモリアルゴールまで決めている。この年、チームは無冠に終わったものの、プリメイラ・リーガのベストイレブンに選出。
これまでも移籍の噂は浮上していたが、もはやポルトガル国内に留まる存在ではなくなってしまい、2020-21シーズン開幕直後となる2020年9月26日のモレイレンセ戦で豪快なヘディングシュートを決めると、試合後に感極まった涙を流し、この試合がベンフィカでのラストマッチとなることを認めるのだった。
マンチェスター・シティ
2020年9月28日、イングランド・プレミアリーグの強豪マンチェスター・シティFCへ移籍することが発表される。移籍金は6800万ユーロだが、同時に1500万ユーロでニコラス・オタメンディがベンフィカへ移籍しており、実質的にはトレードという形になった。
10月3日のプレミアリーグ第4節リーズ・ユナイテッド戦で新天地でのデビューを果たすと、プレミアリーグのリズムにすぐにフィットし、ジョゼップ・グアルディオラ監督の戦術にも適用し、加入1年目の23歳とは思えない堂々とした振る舞いで、シティのディフェンスリーダーとなる。ヴァンサン・コンパニが退団して以降のシティは守備に不安を抱えていたが、ルベン・ディアスの加入によって20のクリーンシートを達成するなど、ソリッドな守備のチームへと変貌する。2021年に入ってから公式戦13連勝と破竹の勢いを見せるようになったあたりから世界最高レベルのCBという評価を受けるようになり、グアルディオラからの信頼も揺るぎないものとなる。もはやシティに欠かせない選手となり、公式戦46試合に出場し、独走でのプレミアリーグ優勝、EFLカップ優勝、CL準優勝に大きく貢献。この大車輪の活躍が認められ、FWA年間最優秀選手賞、プレミアリーグ最優秀選手賞を受賞。
2021-22シーズンもシティのディフェンスリーダーとして重宝され、前年ほどのセンセーショナルな活躍ではなかったものの、安定したパフォーマンスでシティの守備を固める。加入2年目ながらもキャプテンマークを巻いたこともあり、4バックの人選が頻繁に変わった中でもファーストチョイスであり続け、グアルディオラ監督からの絶対の信頼を寄せられていた。2022年3月にハムストリングを負傷し1か月ほどチームを離れた時期があったが、終盤戦には無事に復帰すると、鉄壁の守備でチームを支え続け、シティの連覇に貢献。
2022-23シーズンは開幕直後はこれまで通り最終ラインの要としてプレー。2022年9月6日CLグループステージ開幕戦のセビージャFC戦ではチームのダメ押しとなる4点目を決めている。しかし、シーズン途中に開催された2022 FIFAワールドカップ後にハムストリングを負傷した影響で離脱。1か月ほど戦線を離れることになる。それでも2023年2月12日のプレミアリーグ第23節アストン・ヴィラ戦で復帰。以降は複雑なスタイル、試合ごとにメンバーの入れ替えも少なくなかった守備陣の中で抜群のリーダーシップ、存在感を放つ。結果的にチームはリーグ戦最少失点を成し遂げ、プレミアリーグ3連覇に貢献。また、CLの決勝トーナメントでは準々決勝バイエルン・ミュンヘン戦、準決勝レアル・マドリード戦と強豪との連戦が続いた中で彼の鉄壁の守備と統率力は勝利を掴む重要な要素となっていた。決勝のインテル戦でも苦戦を強いられる中でインテルの攻撃陣を90分間完封し、シティに初のビッグイヤー、そして三冠(トレブル)獲得をもたらす立役者となった。
2023-24シーズンはヨシュコ・グヴァルディオルという新たな顔ぶれが増えた最終ラインのリーダーを担い、ジョン・ストーンズが負傷でシーズンの大半を欠場する中で奮闘。だが、負担がかかってきた影響によって負傷を負い、シーズン終盤戦はコンディションを落としてスタメンから外れる試合もしばしばみられるようになる。それでも公式戦41試合に出場し、シティの前人未到となるプレミアリーグ4連覇に貢献。
ポルトガル代表
2013年にポルトガルU-16代表に選出されて以降、各年代のポルトガル代表として主軸を担っており、2016年には飛び級としてU-23代表の一員に選ばれトゥーロン国際大会に出場するなど育成年代からエリートとして育ってきたことがうかがえる。2017年には2017 U-20ワールドカップに出場。ここでも守備の要となり、準々決勝までの5試合のうち4試合に出場している。
フル代表には、2018年3月のチュニジア戦でデビュー。しかし、当時はペペ、ジョゼ・フォンテというベテラン勢のバックアップという位置づけで、2018 FIFAワールドカップのメンバーに選出されたものの、出場機会は訪れなかった。それでもポルトガルのレジェンドであるクリスティアーノ・ロナウドと共にする機会が増えるなど、成長のために大きな意味を持った期間となった。
ロシアW杯後にレギュラーの地位を掴むようになると、UEFAネーションズリーグ2018-2019では主力としてポルトガル代表の優勝に貢献。決勝のオランダ戦では、最終ラインで抜群の安定感を見せつけ、決勝のMOMに選出されている。
2020年11月17日のネーションズリーグ2020-21のクロアチア戦において代表初ゴールを記録。
2021年6月に開催したEURO2020に出場し、全試合にフル出場したものの、グループステージのドイツ戦では4失点を許し、オウンゴールを献上。さらにラウンド16のベルギー戦ではロメル・ルカクとのフィジカルバトルで当たり負けするなどマンチェスター・シティで見せるような絶対的なDFリーダーとしての姿が見られなかった。
2022年11月開催の2022 FIFAワールドカップ・カタール大会では大ベテランのペペとセンターバックを組みディフェンスリーダーとして出場。グループリーグ第3戦の韓国戦以外の全試合でフル出場したが、準々決勝のモロッコ戦ではユセフ・エン=ネシリの脅威的なジャンプ力の前に競り負けてゴールを決められ、ベスト8敗退となってしまう。
2024年6月にドイツで開催されたEURO2024でもペペとのコンビでDFラインを形成。欠場となった第3戦のジョージア戦以外の4試合全てにフル出場。出場した試合はわずか1失点と堅守を維持している。大会後にペペが現役を引退。
個人成績
シーズン | 国 | クラブ | リーグ | 試合 | 得点 |
---|---|---|---|---|---|
2015-16 | ベンフィカB | リーガプロ | 26 | 0 | |
2016-17 | ベンフィカB | リーガプロ | 28 | 0 | |
2017-18 | ベンフィカ | プリメイラ・リーガ | 24 | 3 | |
2018-19 | ベンフィカ | プリメイラ・リーガ | 32 | 3 | |
2019-20 | ベンフィカ | プリメイラ・リーガ | 33 | 2 | |
2020-21 | ベンフィカ | プリメイラ・リーガ | 2 | 1 | |
マンチェスター・シティ | プレミアリーグ | 32 | 1 | ||
2021-22 | マンチェスター・シティ | プレミアリーグ | 29 | 2 | |
2022-23 | マンチェスター・シティ | プレミアリーグ | 26 | 0 | |
2023-24 | マンチェスター・シティ | プレミアリーグ | 30 | 0 | |
2024-25 | マンチェスター・シティ | プレミアリーグ |
個人タイトル
- プリメイラ・リーガ最優秀若手選手賞(2017-18)
- プリメイラ・リーガ ベストイレブン(2019-20)
- FWA年間最優秀選手賞(2020-21)
- PFA年間ベストイレブン(2020-21)
- プレミアリーグ・最優秀選手賞(2020-21)
プレースタイル
現代のCBが求められる全ての要素をハイレベルで持ち合わせているCBである。
恵まれた体格によるフィジカルの強さと抜群の読みによる対人守備の強さは、フィジカルコンタクトが特に激しいプレミアリーグの中でも飛び抜けている。クリーンにボールを奪えるためファウルが少なく、エレガントな守備技術と同時に体を張ったシュートブロックなど泥臭いプレーも見せる。
スピードも水準以上のものを持ち合わせており、カバーできるエリアも広い。かといって無闇に持ち場を離れることもなく、出るときと残るときの判断力も的確。空中戦にも滅法強く、ハイボールを使うチームが多いプレミアリーグの中でもリーグトップクラスの勝率を残している。
足下の技術の高さも魅力であり、CBからのビルドアップにこだわるグアルディオラ監督の厳しい要求を遥かに超えるパス能力、サイドへの蹴り分けをおこなえる。プレミア移籍1年目となった2020-2021シーズンではリーグ1位の93.3%というパス成功率を記録しており、正確なパス能力でシティのビルドアップに安定感をもたらしている。
何事にも物おじしないパーソナリティも大きな魅力であり、シティ加入1年目では23歳という若さながら周りに対して大きな声でコーチングをおこなっており、チームリーダーとしての資質の高さを見せている。普段からのプロ意識の高さにも定評があり、グアルディオラ監督は会見で「彼はあらゆる面でプロフェッショナルだ」と評している。
関連項目
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