レギオン(Legion)とは、1996年に公開した大映製作の怪獣映画『ガメラ2 レギオン襲来』に登場する怪獣である。
概要
レギオンは母体となる「マザーレギオン」とマザーの胴体内に格納された「ソルジャーレギオン」の2種類が存在し、姿かたちはどちらも甲殻類、もしくは昆虫類に酷似している。
隕石に乗って地球に飛来し「草体」と呼ばれる巨大な植物を育て、札幌・仙台に甚大な被害を与える(仙台は消滅)。
劇中では、これらの3つの共生関係そのものがレギオンという生物であるという表現もなされた。
“主が、「名は何か」とお尋ねになると、それは答えた。「わが名はレギオン。我々は、大勢であるがゆえに」”
「ソルジャーレギオン」の大群を見た自衛隊員によって名づけられた。
群れのコミュニケーションは主に電磁波によって行っており、電子機器を身につけていた場合は敵対する存在として認識され攻撃されることがある。
これはレギオンが非常に攻撃的な性質を持っているためであり、札幌や仙台、東京が狙われたのはより電磁波に満ちた環境を優先して侵略する性質に従ったことによる。
また、宇宙生物であるためか体組織は地球上の生命体とは違い、珪素(Si)によって構成されている。
電磁波による交信を可能にしているのはこの体組織構造であり、これを維持するためにシリコンを摂取する。
マザーレギオン
- 全高:140メートル(最大成長時)
- 全長:160メートル
- 体重:600トン(最大成長時)
- 飛行速度:マッハ1(亜生体時)
- 地中進行速度:時速50km
- 出身地:不明(外宇宙のどこか)
- 好物:珪素(シリコン)
身体
カブトガニが腹部を見せて起き上がったような姿の生物で、角や脚を多く持つ。
目は青色で腹部のエッグチャンバーと呼ばれる器官は赤色だが、それ以外は白色のシリコン甲殻で形成される。
大鎌脚(サイズレッグ)と呼ばれる後脚と、大槌脚(スレッジアーム)と呼ばれる前脚が異常に発達している。
前者は名前の通り鎌のような形をしており、体全体を持ち上げたり、飛行状態のガメラを押さえつけて叩き落すほどの怪力を持つ。体の前方ヘ向けて突くことも可能で、ガメラの腹を貫き甲羅をぼろぼろにした。
後者はザリガニの鋏のように前に突き出ており、地上での移動には用いられないものの、前方の敵に対して殴打や刺突などの攻撃を加えるほか、この脚で土を掘ることで地中を自在に移動できる。
電磁波で交信するため、電磁波を扱う能力に長けており、敵に対してはマイクロ波を収束照射して対象物を発火・燃焼させる「マイクロ波シェル」などの攻撃手段を持ち、これは劇中では栃木県足利市で防衛線を張っていた戦車大隊の半数を一撃で消し飛ばすほどの威力を誇っていた。
さらに、頭部の干渉波クローと呼ばれる8本の角から放つ電磁波は、ガメラの火球すら分解して無効化する上、ミサイルの誘導を狂わせて回避することも可能である。
また、マイクロ波シェルは頭部の大角が開いて照射されるが、この大角を折られた際には怒り狂い、「レギオン・ビュート」と呼ばれる赤く輝く触手を無数に出して攻撃する。
マイクロ波の鞭のようなものであるが、さながら強力なレーザーであり、叩いたものが異常な高温で焼け爛れる上、ガメラの体をもやすやすと貫いて重傷を負わせる。
ちなみに、怒っているときは目が赤くなる。
シリコンであるためか干渉波クローなどの細い部分は決して耐久性は高くなく、自衛隊のミサイルによって破砕された他、大角もガメラの腕力の前にへし折られてしまった。
幼体時は脚がほとんど発達していない代わりに羽が生えており、猛スピードで飛行が可能。
このときには既に腹部のエッグチャンバーは発達しており、無数のソルジャーレギオンを生み出して自在に操る。
劇中での活躍
いずこかの星で発射された草体の種子に卵が植えつけられていた。これが北海道・札幌市近郊にある恵庭岳に隕石として落下した後、ソルジャーレギオンを生み出して種子を移動させ、強力な電磁波を放つ札幌を繁殖地に定める。札幌でソルジャーレギオン達を活動させ、草体を開花させることに成功するが、飛来したガメラによって駆逐されたため、幼体のまま飛翔して津軽海峡へと逃走。道中で航空自衛隊の戦闘機に捕捉され、ミサイルの直撃を受けて失踪する。のちにレギオンから抜け落ちた羽が発見された。
次に、より温暖な宮城県・仙台市を新たな繁殖地に選び、ソルジャーレギオンを同様に操って草体を開花させる。このとき既に、完全な姿に覚醒していた。ここで、草体を追って再び飛来したガメラと霞ノ目飛行場で激突、戦闘に突入する。避難するヘリをかばうガメラを圧倒的な力でぼろぼろに痛めつけ、マイクロ波シェルで甲羅の一部を破砕した。ガメラが倒れ伏したのと、草体の種子発射に伴う爆発が近い事から穴を掘って退却する。しかし、ガメラは最後の力を振り絞って立ち上がり、発射直前で草体を破壊。爆発によってガメラを再起不能に陥らせるには成功したが、その命がけの行動によってまたも種子発射は失敗に終わったため、徐々にあせって新たな繁殖地を探し出す。
とうとう繁殖地を都心部に定め、地中から南下を開始する。一方、度重なるレギオンの活動に自衛隊も動き始める。上空からのヘリの探知で地中を移動中のレギオンを捕捉し、その移動ルート上に戦車大隊を配備。空自の戦闘機も出撃準備を開始した。日没後、栃木県・足利市にてレギオンが地表に出現。待ち構えていた戦車大隊から一斉に砲撃を受けるが、全く寄せ付けずマイクロ波シェルで反撃。たった一撃で50%を損耗させ、後退させた。続いて出撃した戦闘機から爆撃を受けるが、効果なし。エッグチェンバーからソルジャーレギオンを産卵し、尖兵として先行させる。自衛隊の攻撃がまるで歯が立たない中、復活したガメラが三度飛来し、またも戦闘に突入する。
一進一退の攻防を繰り広げるが、プラズマ火球を無効化できるうえ格闘戦でも上手なレギオンが優位に立つ。ガメラの迎撃を物ともせず、レギオンの巨影は徐々に首都へと迫る。しかし人類側の援護によってソルジャーレギオンは送電線に引き付けられ、また自衛隊の攻撃で干渉波クローを破損。プラスマ火球を完全に無効化できなくなる。ついにはガメラに頭部の大角をへし折られて沈黙する。
ここでとうとう怒り狂い、レギオンビュートを振り回してガメラを追い込む。この攻撃はガメラの高い防御力ですら防げず、一方的になぶられる。そして自衛隊の最終防衛ラインを突破し、埼玉県との県境にまで達する。最後の最後でガメラは禁断の必殺技を使う事を決意。地球上のマナを集めて「究極超烈火球(ウルティメイト・プラズマ)」を発射、これをまともに受けたレギオンは粉微塵に消し飛ばされてしまった。送電線に群がっていたソルジャーレギオンも自衛隊の攻撃で殲滅され、レギオンは地球での繁殖に失敗した。(このウルティメイト・プラズマは地球上の「マナ」と呼ばれる生体エネルギーを大量に使用するガメラの究極の必殺奥義であり、マナの大量消費による副作用がガメラ3でのギャオスの大量発生やイリスの覚醒の間接的な要因になっている)
ソルジャーレギオン
全長2mほどの小型レギオン。
体色が白いマザーレギオンに対して、真っ黒な甲殻で全身が形成されている。
ぎょろりとした大きな目が1つ付いているのが特徴。羽を持った『羽レギオン』と呼ばれる個体もおり、これは飛行も可能である。
シリコンが含まれるガラスなどの物質を、原理は不明だが分解して吸収する能力を持つ。
また、大きな敵に対しては集団で群がり、マイクロ波を発して巨大な電子レンジのように相手を蒸し殺そうとする。個々の戦闘能力はさほど高くないが脅威なのはその数であり、空を覆うほどの集団で飛翔する羽レギオンに対し自衛隊に「飛行能力を有する群れにガメラは敵わない」と評していた。
マザーレギオンの腹部にある『エッグチャンバー』と呼ばれる部位から生み出される、文字通りの「兵隊」。
一時間に100匹単位で生み出され、マザーレギオンの意のままに行動する。
が、強力な電磁波に反応しているときなどはこの限りではないようだ。
筋肉組織を一切持たず、体内に充満したガスの圧力を操作して関節を動かしている。
目は電磁波を認識し、自らが発する周波数と違う電磁波を放つ物(人類の通信機器など)を判別できる。
知性はさほど見られない(自衛隊の高射砲の弾幕をすり抜けるために編隊を広げるなどある程度の知性は見られる)が非常に攻撃的であり、これらのように自分たちのコミュニケーションを阻害する存在やそれを持つ生物には容赦なく襲い掛かり、排除する習性がある。
地下鉄構内で車両に遭遇した際も、積極的に車内に侵入し、通信機器を持つ乗客や運転手を惨殺していた。
一方で、通信機器を持っていない人間はほとんど襲わなかったため、生存者も少なくなかった。
この攻撃習性は仇にもなっており、パチンコ屋のネオンにつられて群がったために片っ端から感電死したり、
最終決戦では人間側にこの習性を利用され、殲滅されてしまった。
劇中での活躍
札幌近郊の千歳市・支笏湖畔に隕石として落下した後、草体の育成とマザーレギオンの覚醒のために行動していたと思われる。
札幌中心部の強力な電磁波につられ、千歳から札幌へと移動し始める。
最初は、札幌近郊のビール工場に1個体が出現した。
ビール瓶に含まれるシリコンが目当てであり、瓶を分解して吸収しているところを警備員に目撃されている。
この警備員は、ギャオスの第一発見者である大迫であり、彼を再び怪獣への恐怖へ陥れることとなった。
札幌に移動した後はここを繁殖地と定め、草体の種子を植えるために地下鉄構内へ侵入。
ここで遭遇した地下鉄車両の中の人間を、通信機器の電磁波から敵と認識し、惨殺する。
また、突入してきた機動隊も圧倒し、人類側が苦戦しているうちに、草体の発芽・開花に成功する。
しかし、草体がガメラによって駆逐されてしまったため、地下から夥しい数で現れてガメラに群がり、負傷させた。
次に、電磁波と温暖な気候につられて仙台を次の繁殖地に定める。
ここでは活動している様子は描写されていないが、このとき、ネオンに群がって感電死している個体が複数見つかっており、同様に草体の育成のために活動していたと思われる。
草体の種子発射に合わせて姿を消した。
その後、栃木・群馬県境近辺での最終決戦において、航空自衛隊を倒すために翅の生えた個体がマザーレギオンから生産されるが、直後にマザーレギオンを追って飛来したガメラによってエッグチャンバーが破壊されたため、これ以上の生産が不可能となった。
さらに、ガメラ駆逐のためにマザーレギオンに呼び戻されるが、人類側の作戦で名崎送信所の電磁波に反応し、命令を無視して送電線に群がってしまう。ここをミサイルで一挙に駆逐され、全滅した。
草体
レギオンと共生関係にある植物。
「レギオンフラワー」「レギオンプラント」とも。
土中の二酸化珪素を吸収して、レギオンの食物となる珪素を大量に生産するほか、繁殖のために周囲の酸素濃度を大幅に上げる。
この酸素濃度の上昇によって周囲の生物たちに大打撃を与え、一方でレギオンが繁栄しやすい環境を作り上げる。
繁殖システム
草体の種子と、それに植えつけられたマザーの卵がある星に落下する。
孵化したマザーはソルジャーレギオンを生み、草体の種子を適当な繁殖地へと運ぶ。
草体が発芽・開花することで餌となる珪素を確保し、酸素濃度が上がることで周囲の生態系の破壊と、種子発射への準備が進む。
草体が開花し、種子発射の用意が整うと、マザーは種子に卵を産みつける。
これが大爆発と共に宇宙へと飛ばされ、新たな星が繁殖地となる。
この流れを繰り返して、レギオンは複数の星で繁殖してきたと思われる。
結果的に地球では、他の星への種子発射もこの場での繁殖も、ガメラと人類によって阻まれることとなった。
関連動画
関連静画
関連商品
関連項目
- 9
- 0pt