レッドブルリンクとは、オーストリア・シュタイアーマルク州シュピールベルクにあるサーキットである。
F1のオーストリアGPや、MotoGPのオーストリアGPが開催される。
名称
かつてはエステルライヒリンクとかA1リンク(エーワンリンク)と呼ばれていた。
サーキットが属する自治体の名前はシュピールベルクなので、その自治体名でサーキットを呼ぶことがある。
ちなみにシュピールベルクを英語読みするとスピルバーグになる。映画監督のスティーヴン・スピルバーグの姓は、19世紀の祖先がここに住んでいたことが由来だという(記事)。
また、サーキットからすぐ南にある自治体の名前はツェルトベクなので、その自治体名でサーキットを呼ぶことがある。この自治体には広大な空軍基地があり、1963年と1964年には空軍基地の敷地を使った1周3.1kmのコースで自動車のオーストリアGPが開催された。1964年のツェルトベクでの自動車グランプリはF1の一環に組み込まれた。このため、大昔のF1を知っている人にとって「ツェルトベク」という名前のほうがなじみがある。
略歴
エステルライヒリンク時代
エステルライヒリンクという名前で1969年に開業した。エステルライヒ(Österreich)とはオーストリアのドイツ語名である。リンク(Ring)は輪っかという意味で、ドイツ語圏でサーキットを意味する言葉である。つまりエステルライヒリンクとは「オーストリアを代表するサーキット」といった程度の意味となる。
1周5.9kmのコース図を見ると、現在のレッドブルリンクと共通したところがある。1969年から1976年までの1コーナーはシケインがない高速コーナーだったが、1977年からは1コーナーにシケインが設けられた。
1969年は、F1に組み込まれていないが自動車のオーストリアGPが開催された。1970年からF1のオーストリアGPが開催されるようになり、1987年まで18回連続で開催された。
A1リンク時代~レッドブルリンク時代
1995年から1996年にかけてヘルマン・ティルケによって改修され、名前もA1リンク(エーワンリンク)と改められた。エステルライヒリンクの内部に作られたコースは1周4.3kmで、2021年現在とほぼ同じである。
1996年と1997年にMotoGPが開催された。1997年から2003年まで7回連続F1が開催された。
2010年にエナジードリンク企業のレッドブルが買収し、レッドブルリンクと改名され、2011年5月15日に開場した。
2014年からF1が開催され、2016年からMotoGPも開催されている。
立地
レッドブルリンクはオーストリアの首都ウィーンから南西に160km離れた緑豊かな山間部のこの場所にある。
シュタイアーマルク州
サーキットはシュタイアーマルク州(英語名スティリア州)に属している。土地面積の61%が森林に覆われているので州の旗も緑色である。
シュタイアーマルク州最大の都市は人口29万人のグラーツで、レッドブルリンクから東に55km離れたこの場所にあり、自動車製造業が盛んで工場が多い。
サーキットがある自治体の名はシュピールベルクで人口5千人であり、シュピールベルグに隣接する自治体はツェルトベクで人口7千人である。
このサーキットで事故が起こったらドクターヘリで輸送して、北東に35km離れたこの場所にあるレオーベン州立病院へ搬送する。レオーベンは人口2万4千人となっている。
ヒンターシュトイサー空港(ツェルトベク飛行場)
サーキットの南西に2km離れたこの場所に、ヒンターシュトイサー空港(ツェルトベク飛行場)がある。オーストリア軍にとって最大の飛行場で、戦闘機が離着陸する。
2016年MotoGP開催時は、この飛行場を拠点とする戦闘機ユーロファイター・タイフーンがサーキット上空を飛行していた。
森林と牧草地とキャンプ場
レッドブルリンクの北は森林に覆われた山で、それ以外の方角は牧草地が広がっている(航空写真)。牧草地の中に牛が飼われており、人を見つけると柵の近くまでやってきて鳴いてくれる。
都会生まれ都会育ちの方には想像がつかないかもしれないが、牧場というのは牛の落とし物のせいで臭い。レース開催者たちは、においとも戦わねばならない。
サーキットの内外に木々が生えていて、森林の中にあるサーキットである。そんな場所で夏真っ盛りの8月にMotoGPを開催するのだが、セミの声は全く聞こえてこない。ヨーロッパの大部分は日本に比べて寒いので、セミが生息していない(ヨーロッパの人にセミの声を聞かせるとビックリする)。
観客の多くはサーキットすぐそばのキャンプ地でテントを張って野宿する。Googleマップにも多数のキャンプ場が登録されており(リンク1、リンク2、リンク3、リンク4)、それらのリンクの中の画像欄を開いてみると多数のテントが貼られている様子が映っている。
山地の中にある
山の中にあるサーキットであり、Googleマップの地形図で見るとそのことを確認できる。Googleアースで調べるとサーキット内で最も標高が高いところは海抜746mと分かる。
山の中は空気の上昇気流が起こりやすくて雲が発生しやすく、天候が急変しやすい。F1やMotoGPが行われる7月や8月は降水量が100mmを超えており、東京の3月~4月と同じぐらいで、雨が降りやすい(資料1、資料2)。
こちらとこちらとこちらが現地の天気予報となっている。
緯度と気候
北緯47度13分の位置にあり、樺太のこの村と同じぐらいの緯度である。そしてアルプス山脈の一角にあるので、冬は氷点下にまで冷えて雪が積もる(画像)。
サーキット近くのツェルトベクの気候を見てみると、4月や10月の平均最高気温が13度~14度で、東京の3月や11月に近い(資料1、資料2)。
サーキット内の施設など
牡牛の立像
6~7コーナーのイン側に緑色の芝生が広がっており、その中のこの場所に茶色の牡牛の立像がある。いまにもこちらへ向かって駆け出して来そうで、威圧感たっぷりとなっている。
3D KUNSTという会社が製作した。同社はオーストリア・レオーベンのこの場所に本社がある。
アーチを含む全体的な高さは17.4mで、牡牛の高さは14.6mであり、1700枚のコルテン鋼の板を貼り合わせて作った。コルテン鋼とは耐候性鋼のことで、表面だけが茶色く錆びて内部には錆が進まないものであり、錆止めの塗装をしなくても長持ちする経済的な鋼である。立像の重量は68トンで、土台の重量はコンクリートが950トンで鉄骨が44トンであり、立像と土台の全てを合計した重量は1300トンとなっている。
角の部分は7mの長さで、アルミニウムの素材で作って金メッキを施した。金メッキに使った金塊の量はウィーン金貨1枚分だという。1トロイオンスのウィーン金貨には31グラムの金塊が使われている。
牡牛の立像の内部には人が入りこむことができる(動画)。
※この項の資料・・・3D KUNST社の製作過程紹介ページ
仮設の観客席
F1やMotoGPが開催される時は牡牛の立像の前に仮設の観戦席が立てられ、多くの観客を収容する。航空写真を見ると、仮設観客席が建てられるところの芝生が荒れていることが分かる。
特にMotoGPが開催される時は、この観戦席はKTM応援席となり、オレンジ色に染まる(動画)。8千人から1万人程度を収容するという(記事)。
グランドスタンド
グランドスタンドは1コーナーを過ぎたこの場所にある。F1やMotoGPが開催される時は、赤い旗を持った人と白い旗を持った人に分かれ、オーストリア国旗を人文字で表現するのが恒例となっている(動画1、動画2)。
3ヶ所のトンネル
2コーナー付近のこの場所にトンネルがあり、3コーナーで転倒したライダーがここを通ってピットに戻る。
8コーナーを立ち上がったこの場所にトンネルがあり、ピットに物資を運ぶトラックが出入りする。
1コーナーに近いこの場所にトンネルがあり、ピットに物資を運ぶトラックが出入りする。WELCOME RACE FANSという看板が掲げられている(ストリートビュー)。
開催される様々なレース
レッドブルエアレース
レッドブルエアレース・ワールドシリーズという競技が2003年から2010年までと2014年から2019年までの期間で行われていた。2014年~2016年の3年間は、その会場の1つとしてレッドブルリンクが使われていた。
離陸用には1コーナー~3コーナーの直線を使い、着陸用にはホームストレートを使う。
サーキットの各所に高さ25mのナイロン製のパイロンを空気で膨らませて建てる(画像)。パイロンを目印にして競技を行う(動画)。
FIAヨーロッパトラックレーシング
FIAヨーロッパトラックレーシングという四輪レースがある。
重量5500キロのトラックで駆け回り、ドリフトするわぶつかり合うわの爆走レースを展開する(画像1、画像2)。Youtubeで検索するといっぱい動画がヒットする。
レッドブルリンクでは、このレースを2013年から毎年開催している(資料)。F1やMotoGPのときとは違って、1コーナーを回ったらすぐに右にカーブするというショートコースを利用している(画像)。
コーナーの数え方
メインストレートエンドの1コーナーを回った後の直線には、緩い角度で左に曲がっている部分がある(画像)。
MotoGPは、この部分を2コーナーとして扱っていて、最終コーナーを10コーナーと呼んでいる(画像)。
2016年までのF1は、この部分をコーナーと扱わず、最終コーナーを9コーナーと呼んでいた(画像)。2017年からのF1はMotoGP風の数え方を採用するようになった(記事)。
コース紹介(MotoGP)
概要
コース全長は4318mで、2018年~2019年にMotoGPが開催された19ヶ所のサーキットの中で上から15番目の小型サーキットである。コーナー数は10ヶ所で、2018年~2019年にMotoGPが開催された19ヶ所のサーキットの中で上から19番目であり、最下位である。
山間部を切り開いて作ったサーキットなので、アップダウンが激しい。こちらの動画ではアップダウンを視覚的に表現している。Googleアースで見てみると、3コーナーが標高745mで頂点となっており、メインストレートあたりが標高678mで最底辺となっていて、高低差が67mとなっている。
ただアップダウンが激しいだけではなく、進むにつれて勾配が変化するコーナーがいくつかあり、トリッキーで厄介なレイアウトとなっている。
直線区間が長く、アクセル全開区間が長いので、燃費を意識した走行が課題となる。2016年の最大排気量クラスのドゥカティワークスの2人は、前半で燃費を抑える走行をしていた。レース前半は電子制御でエンジンの出力を抑え、ガソリン消費を抑える。レース後半になったらライダーがハンドル近くにある電子制御のボタンを押し、全開モードにする。また、先頭に躍り出る走行を我慢して、誰か他のライダーの後ろに付けて、スリップストリームを使ってガソリン消費を抑えるテクニックも必要となる。
ハードブレーキングが3回連続し、ブレーキディスクが高温になりやすく、ブレーキに厳しい。ブレンボ(イタリアのブレーキメーカー。MotoGPクラスのほとんどのマシンにブレーキを供給する)が選ぶ「ブレーキに厳しいサーキット」の中で、本サーキットは「VERY HARD」グループに入っている(記事)。ツインリンクもてぎやカタルーニャサーキットやセパン・インターナショナルサーキットと同格の、ブレーキメーカーにとって最難関のサーキットである。
燃費を抑えるため先行ライダーの背後に付けてスリップストリームを使いまくることをずっと続けるのも問題で、スリップストリームを使いすぎると空気を浴びなくなり、ブレーキディスクが冷えなくなってしまい、ブレーキが過熱してブレーキの効きが一気に悪くなる。
スリップストリームを全く使わないのは燃費が悪くなるからダメ、スリップストリームの使いすぎはブレーキがオーバーヒートしてしまうからダメ。ライダーにとって、さじ加減が難しい。
平均速度が180kmを越え、2018年~2019年にMotoGPが開催された19ヶ所のサーキットの中で最も平均速度が高い。こうしたハイスピードコースではコース幅を目一杯広く使ってコーナーを脱出するのが重要だが、縁石の外にはみ出して塗装部分に乗り上げるとペナルティが課せられてしまうので悩みどころである。
このツイートで解説されるように、オーストリア国旗のような赤白部分までが走行可能で、オーストリア国旗のような赤白部分の外の塗装部分にちょっと乗ったらペナルティとなる。この走行はオーストリア国旗部分の外に乗り上げているのでペナルティの対象となり、この走行はオーストリア国旗部分に乗っているようにみえるのでペナルティの対象にならない。
右コーナーの数は7で左コーナーの数は僅か3であり、タイヤの左側が温まりにくい。
こちらがMotoGP公式サイトの使用ギア明示動画である。1速に落とすのは3コーナーのみとなっている。
主なパッシングポイントはメインストレートエンドの1コーナー、3コーナー、4コーナー、6コーナー、9コーナーとなっている。
KTMのテストコースで、路面はそんなに凹凸が激しくない
F1やFIAヨーロッパトラックレーシングが開催されるサーキットなので、四輪のマシンによって路面が削られ路面が凹凸になっている・・・と考えたくなるが、意外にも路面の凹凸は少ないようである。MotoGPライダーたちから路面の凹凸について不満の声があがることは少ない。1秒1500コマのスーパースロー映像でタイヤの動きを見ても、あまりタイヤが上下していない。
このサーキットはKTMのテストコースであり、所有しているのが天下の金満企業レッドブルである。KTMのテストに支障が無いよう、レッドブルが金を惜しまずに路面の補修をちょくちょく行っているのではないかと推測される。
F1開催の直後なのでブレーキングポイントにゴムが付いていた(2017年)
2017年8月10日(金)のMoto2クラス練習走行直前に雨が降り、濡れた路面をレインタイヤで走行することになった。すると1コーナーや3コーナーで転倒が多発した(動画1、動画2)。
各チームが分析すると、1コーナーや3コーナーのブレーキングポイントにF1マシンのタイヤのゴムが大量に残っていて、それで滑りやすくなっていることが判明した。
2輪のタイヤが路面に残すゴムは少量なので雨が降れば流れてくれるが、F1のハイパワーマシンが路面に残した大量のゴムはちょっと雨が降ったぐらいでは流れてくれなかった。
言うまでもなく、濡れたゴムの上をゴムでできたタイヤで走るのは、非常に滑りやすく危険である。MotoGPの各選手が口々に「非常に危険で、雨が降ったらレースを中止すべきだ」と発言した。幸いにも土曜日と日曜日には雨が降らなかった。
2018年以降は、サーキット側が路面にショットブラストを掛けた。ショットブラストとは砂粒を空気の勢いで吹きかける技術で、様々な分野で使われる。墓石の彫刻にもこの技術を使う(動画1、動画2)。ショットブラストで路面に残ったゴムを掃除したので、MotoGPライダーからは「雨が降った路面でも滑りにくくなっている」という賞賛の声が上がっていた(記事)。
雨が降ると水たまりができて危険になる
ショットブラストで路面のゴムを除去するようになったが、それでもレッドブルリンクは雨が降ると危険なコースとして知られている。起伏が大きいコースなので、低いところに水が溜まりやすい。
水が溜まったところを走るとハイドロプレーニング現象が起きやすく、ブレーキを掛けても止まりきれない危険性が高い。また、大きな水煙が発生してライダーの視界が悪くなりやすい。
特に危険なのが1コーナーと3コーナーを結ぶ直線で、1コーナーが山になっていて3コーナーも山になっており、その中間地点が谷底になっている。谷底なので水が溜まりやすく、巨大な水煙が発生しやすくて視界不良になりやすい。カル・クラッチローも「2コーナーの入口で水たまりが発生していて危険」と発言している(記事)。
左のエスケープゾーンが狭く危険な3コーナー
MotoGPライダーたちが口を揃えて危険視するのが3コーナーと4コーナーである。ごくわずかに左に曲がる状態からコーナーに進入するので、転倒するとマシンは左に進んでしまう。
しかしながらコーナー左側のエスケープゾーンが狭く、グラベル(砂)が少なく、フェンスが近い。
3コーナーの航空写真、4コーナーの航空写真、どちらをみてもコース左側のエスケープゾーンの狭さに
気付くことができる。
ホルヘ・ロレンソやジャック・ミラーも危険性を指摘している(記事1、記事2 記事1の「ターン2」は3コーナーのことを意味している)
コース脇がアスファルトだけの危険なコーナー
コース脇にグラベル(砂)が全く無い、あるいは非常に少ない、そういうコーナーが多い。1コーナー、3コーナー、9コーナー、最終10コーナーのコース脇のグラベルが非常に少ない。
これらのコーナーの進入時にマシントラブルが発生したら、ライダーがかなり危険な目に遭う可能性がある。ライダーがマシンから振り落とされ、マシンの速度と同じ速度でフェンスに直進していく。本来ならフェンスに辿り着く前にグラベルで減速するのだが、そのグラベルが無いのでかなり危ない。
1996年、1997年の記録映像がある。1コーナーや3コーナーや9コーナーや最終10コーナーのコース脇がすべてグラベル(砂)だった。
MotoGPライダー達の懸念の声は多い(記事1、記事2 記事1の「ターン8」はおそらく9コーナーのことを示している)
最終10コーナーの幅を縮小
2016年8月のMotoGP開催直前に、最終10コーナーが縮小され、コース幅が13mから10mになった(記事)。コース脇のゼブラゾーンが3m内側に移動するように塗装された。この画像を見てもゼブラゾーンだけが内側に移動したことが分かる。
ゼブラゾーンの外側はペンキで赤く塗装され、この塗装部分に乗り上げるとペナルティが課せられた。このツイートで解説されているように、オーストリア国旗のような赤白部分までがOKで、そのすぐ外の真っ赤な塗装部分に乗り上げたらダメとなる。タイヤ1本分だけ真っ赤な塗装部分に乗り上げたら(画像)、ペナルティを受ける。
予選で塗装部分に乗り上げるとその周回の計測はキャンセルされる、決勝で塗装部分に乗り上げると「ポジションを1つ下げろ」と指示される、といった具合で、こうした処置によって最終10コーナーのコーナーリング速度が大きく下がり、少なくとも最終10コーナーの安全性はわずかながら向上した。
勾配が変化しマシンを止めにくい上り坂コーナー
1コーナーと3コーナーはパッシングポイントで、多くのライダーがパッシングに挑戦する。
どちらもストレートエンドで、ブレーキングを頑張りさえすれば簡単に先行車を抜けるように見えるが、実際にはコーナーの中で勾配が変化しているせいでブレーキングしにくく、パッシングしにくい。
1コーナーも3コーナーも、進入は急な上り勾配で、進むにつれて勾配が緩くなり、脱出の付近ではだいぶ緩い上り勾配になる・・・そういう形になっていて、なんともブレーキングしにくい。
1コーナーや3コーナーでブレーキングしてパッシングしたはいいが、うまく止まりきれずオーバーランしてしまい、脱出で加速が鈍り、次のストレートで抜き返される・・・こういう光景が多く見られる。
メインストレート~3コーナー
メインストレートから4コーナーまでは3本の直線をコーナーでつないだ区間となっていて、エンジンパワーと加速力を大きく問われる。
1コーナーは上り勾配が強烈で、メインストレートから1コーナーを見ると壁のように見える(画像1、画像2)。
1コーナーはコーナー進入からコーナー脱出まで上り勾配だが、コーナーを脱出した少し後でいきなり下り勾配になっている(動画)。こちらのカメラアングルだと激しい下り勾配だとよく分かる。下り坂になることでリアタイヤが浮き気味になり、加速が鈍る。ここでのリアタイヤの接地をどうするかがライダーの悩みの種となる。ライダーたちは尻を少し後ろに移動させてリアタイヤの荷重を増やすなどの工夫をしている。
最高速のままきわめて緩やかな角度で左に曲がる2コーナーがあり、そこから急激な上り坂になる(動画)。2輪レーサーにとって最高速に達しながらごくわずかにマシンを左に傾けてマシンを曲げるのは、かなり難易度が高いという。
空撮ヘリからの画像を見ると、1コーナーから3コーナーまでが曲がりくねっていることがよく分かる。
ぐいぐい上った頂点が3コーナーになっている。3コーナーから2コーナー方面を見る画像は、山から麓を見下ろすような画像になっている(画像1、画像2)
3コーナー~4コーナー
3コーナーの脱出も1コーナーと同じようになっている。
3コーナーはコーナー進入からコーナー脱出まで上り勾配だが、コーナーを脱出した少し後でいきなり下り勾配になっている(動画)。リアタイヤが浮き気味になり、加速が鈍る。
3コーナーを回ると下り勾配になり、僅かに右へ曲がっていく。右へのカーブが無くなって真っ直ぐになったところは平坦になり階段の踊り場のようになっているが、左へカーブし始めるところから再び急な下り勾配になる(動画)。この動画を見ても、下り勾配~平坦な踊り場~下り勾配となっていることがよく分かる。
そのまま下り勾配が続き、4コーナーに入っていく。4コーナーは進入が下り勾配で、フロントタイヤを酷使することになる。ここは転倒の多い場所で、止まりきれずにグラベル(砂)に突っ込んでしまうシーンが多い(動画)。
1997年の250ccクラスでオリヴィエ・ジャックがラルフ・ウォルドマンを強引に抜いていったのはこの4コーナーである。#19のオリヴィエのマシンが#2のラルフのマシンの右に当たり、ラルフのブレーキレバーを押して、ラルフのマシンに急ブレーキを掛けた(動画)。1位になって25ポイントを得るはずなのに2位で終わって20ポイントしかもらえなかったラルフは激おこ状態になり、レース後の記者会見で放送禁止用語を言っている(動画)。ちなみにラルフはこの年のチャンピオンシップをわずか2ポイント差で逃してしまった(資料)。
4コーナー脱出~8コーナー脱出
4コーナー立ち上がりからは、コーナーが続くテクニカルな区間になっている。
右の4コーナー脱出から右の5コーナー進入は下っていて、右の5コーナー脱出から左の6コーナーへの進入は少し上っており、左の6コーナー脱出は一気に下っている。Googleアースで路面にカーソルを合わせるとそのことが分かる。4輪オンボード画像を見ても「下り~わずかな上り~急な下り」ということが分かる。
6コーナーの外側から写すカメラがある(画像)。6コーナーがかなり下っていることが分かる。
7コーナー進入までは下り勾配で、7コーナーを旋回するといきなり平坦になる。レッドブルリンク特有の厄介な勾配変化にライダー達は惑わされる。7コーナー外側から映すカメラを見ると、7コーナー進入まで急な下りで7コーナー旋回は平坦と分かる。
7コーナー周辺は普通に走るだけでも難しい。7コーナーでパッシングに挑んで成功させるのはマルク・マルケスぐらいであり(画像)、パッシングが難しい。
7コーナー脱出~8コーナーは上りながら左・右と切り返す大きなS字になる。
4コーナー脱出~8コーナー脱出
上り勾配のまま、左右に森林がある短いストレートへ突っ込んでいく。
左右に森林がある短いストレートの前半は急な上り勾配で、スポンサー看板をくぐってもまだ上り勾配が続き、9コーナー進入直前の100m看板を過ぎたあたりから下り勾配に転ずる(動画)。
左右に森林がある短いストレートを駆け上がってヌッと出現し(動画)、その次の瞬間に急な下り勾配を駆け下りながら9コーナーに進入していくライダーの姿は良い絵になる。
9コーナー、最終10コーナーの両方とも、下り勾配で緩い角度の高速コーナーで、この2つのコーナーを綺麗なラインで速く走ることがメインストレートの加速に直結する。しかしながら、どちらもかなり急な下り勾配で(画像)、しかも進むにつれて徐々に勾配が変化する。フロントタイヤが動いてライダーを動揺させることも多い。
近年ではMoto2クラスや最大排気量クラスでリアタイヤを滑らせて方向転換する光景が見られるが、フロントタイヤを滑らせるシーンは滅多に見られない。フロントタイヤが動くと、さすがのGPライダーも恐怖を感じるらしい。ちなみにGPライダーたちは「怖い」という表現を使わず、「集中力を保てない」という表現をする。
最終10コーナーを立ちあがってからチェッカーラインまで距離があり、なおかつ下り勾配になっている。後続のライダーがスリップストリームを使って車速を伸ばし大逆転、というシーンが期待できる。
1997年開催の125ccクラス決勝は、ヴァレンティーノ・ロッシと上田昇の激闘が繰り広げられた。最終ラップの最終コーナーを立ち上がった後にスリップストリームを使った上田昇が前に出て、0.004秒差で勝利を収めた(動画)。
しかしながら2016年以降の開催では最終10コーナーのコース幅が狭くなっていてコーナーリング速度も下がっているので、メインストレートの加速が今ひとつになりがちで、チェッカーラインでの大逆転は少し難しくなった。
2016年以降の開催では最終ラップにおける最終10コーナーでの攻防が劇的となっている。2017年、2019年、2020年、のいずれも見応えがある。
コース学習用動画
関連リンク
関連項目
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- 0pt