- レトリック(修辞)とは、以下のいずれかである。
- 言葉を飾ることによって、表現を豊かにする技法。
- 言葉を飾ることによって、人を説得する方法。
この記事では1.を説明する。
概要
たとえば「彼は白鳥のようだった」と言うとき、白鳥という言葉の持つ典型的なイメージ(優雅だとか、白いだとか)が「彼」に付与される。また同時に、「彼」と「白鳥」とが互いに関連を持つものとして定義される。
「彼は白鳥のようだった」の後に「白鳥の翼は折れた」と続けば、「彼」がそうした魅力を失うほどの挫折を経験したことが想像されるかもしれない。定義された関連性は、このように再利用されうる。
このように既存のイメージを利用して文を飾り立てたり、もしくはイメージを結びつけて利用したりするのが比喩などのレトリックである。
上記のように言葉を通常と異なる使用法で使うことは、聞き手や読者に何らかの前提(aであるならばbである)を想起させる効果がある。想起された前提が適切だと、発話(aである)の案に意味する結論(bである)を理解することができる。そうした表現が使われる理由はさまざまだが、多くは聞き手に多彩なイメージを持ってもらうためだとか、あるいは聞き手のモノの見方を更新したりだとかの目的がある。このほかにも、解釈を多様にすることで断定を避けたり, 強い言葉を柔らかくしたり, もしくは何かを強調したりする効果がレトリックにはある。
暗喩(隠喩, メタファー), 明喩(直喩, シミリー), 換喩(メトニミー), 提喩(シネクドキー)といった比喩は代表的なレトリックである。
日常的に使われ、比喩らしさが薄れた比喩のことを「死んだ比喩」と言う。
種類
以下に挙げるのは一例。
◆効果別
以下、比喩はAがBであるさまをCで喩える場合。
Cに付随するイメージをAに付与するもの
- 直喩
「りんごのように赤い屋根」(りんご=C, 赤い=B, 屋根=A)
- 隠喩
- 押韻
「あしびきの山鳥の尾のしだり尾の長々し夜をひとりかも寝む」(長々し=B, 夜=A Cはこの文そのものとも取れる)
CにBという特徴があることを強調したり、説明したりするもの
- 直喩
AがCでないことを暗に伝えるもの
- 直喩
「まるで恋人みたいな(仲のいい)二人(=二人は恋人ではない)」(恋人=C, 仲のいい=B, 二人=A)
Aがbだと思われていたり, 少しはそうであったりすることを暗に伝えるもの
- 緩叙法
「彼は決して弱くはない」(弱い=b, 彼=A)
強調
- 反復法
「何度も何度も何度も言う」
◆形式別
それがレトリックであることが明確でないと、聞き手には事実をありのままに伝えていると誤解される恐れがある。「のような」といった語彙はこれを避けるためにある。
語彙によるもの
- 直喩
起こりにくい内容によるもの
- 名詞隠喩
- 述語隠喩
(街中で)「狼が襲いかかってきた」(街中に急に狼が現れることはあまりない)
- 擬人法
- 誇張法
発話そのものが現在の状況と無関係であるもの
- 文隠喩
「猿も木から落ちる」(文そのものが別の出来事を象徴している)
コロケーションの無視によるもの
レトリックの配置
レトリックには、視点や見ている方向を次々と変更することでイメージを豊かにする効果もある。これらは鑑賞者の意識を更新し、異化と呼ばれる特殊な感覚を与える。
どこからの視点で、どれだけの範囲を記述するのか、という映像でいうカット割りのようなこの問題は、文章が何をどうやって伝えているのかを考察する際に重要となる。
視点の変更
→語りかける形式により、相手の心を代弁する。
語る対象の変更
→居なくなるという状況を、その時同時に起こる別の出来事を使って表している。
- 心情を語る場合
→状況から、その時の心情へと目を向けている。
→見る対象(星)の情報を単に伝えるだけでなく、そこから連想するもの(私)をも伝えている。
語る対象との距離の変更
→語りかける形式にすることで、対象の異なる側面を見せている。
関連項目
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