レントシーキング(rent seeking)とは、経済学の用語である。
簡単に説明すると
「企業や団体が、行政や政治家に法整備などをお願いすること」
「悪用すれば、金次第で法律も規制も自分の都合よく変えられる」
「法律の変更によって、卑怯な事象もすべて合法となり、堂々と行える」
企業や団体(業界団体等)が、自分たちが超過利潤を得られるように、あるいは既得権益を守れるように、優遇措置を受けられるように、議員や行政に何らかの規制/規制緩和・条例・経済対策・優遇政策などをとるよう働きかけることを指す。(新規の法律を作ることも含める)
もちろん一部の国では、やる気のない行政や政治家に企業がお願いしてもタダでは動いてくれないため、企業献金などの手段が用いられる。「金を出して好きに法律を変えてもらう」と聞くと犯罪っぽいが、レントシーキング自体には必ずしも金銭や対価は必要ではなく、また必ずしも犯罪になるわけではない(後述)。
※紛らわしいが、特定の誰かを優遇すれば違法(賄賂)、法律や制度を作るのが目的なら合法(献金)。国によっては禁止されていたり、日本でも一定の金額や条件など表向きは規制されているが…
歴史
レント(rent)とは地主が小作人から得る「地代」を意味する言葉だったが、そこから転じて「条件の差に起因する超過利益」をも意味する(デイビッド・リカードのニコニコ大百科記事を読むと理解しやすいかもしれない)。このレントを追い求める(seeking)行動が「レントシーキング」である。新たなレントを獲得しようとする事、既に持っているレントを維持しようとする事双方に当てはまる。
例えば、国内の生産者が海外の生産者に対抗するために禁輸政策や高い輸入関税をかけることを求めたり、自らの事業への免税や助成金を求めたり、独占許可を求めたりといったことが例として挙げられる。これらの政策には、例えば「国内産業の保護」などのプラスの影響があると見なされるため、行政もそういった要求をある程度受け入れることが多い。
しかし「社会に余分なコストが負荷されてしまう」といった本質的な問題点があり、また「一部の利益を代表した族議員やロビイストの圧力が、公正な政治を捻じ曲げてしまう。汚職や腐敗の温床である」といった倫理的視点からの批判もある。この用語「レントシーキング」は、こういった様々なマイナス面をクローズアップした用語として使用されることも多い。
このレントシーキングと同様の概念はゴードン・タロックが1967年の論文「The Welfare Costs of Tarrifs, Monopolies, and Theft」で述べていたらしいが、「レントシーキング」という用語として広まったのはアン・クルーガーが1974年に著した「The Political Economy of the Rent-Seeking Society」に端を発する。
特徴とデメリット
- レントシーキング自体に必ずしも金品は必要ではない
- レントシーキング自体は必ずしも犯罪ではないし、正しく運用すれば多大な効果を発揮する。
- 日頃から国民の政治や経済などの関心が高く、いい加減な政治ができない国では悪用しづらい。
- やる気がない国、議員や行政は動かないため、金で釣る。金を持ってる人間が有利に立ち回れる。
- 一部の企業/組織、富裕層のみが儲かり、不正や癒着の温床となって市場の回転、成長や競争を阻害する
- 金が無ければ太刀打ちできず、法律や規制によって優良企業、一般消費者が割を食うことになる。
- 社畜や派遣といった人材をより一層安価に使い潰せるよう改悪してくる。(利益搾取)
- 法律・ルール自体を変更してくるため、いかに卑劣な行為であっても「合法」となる。
- 法整備やシステムを作るのにも多額の税金が湯水のごとく使われる。
ニコニコ動画で例えるなら?
リアル「不正はなかった」「リアルチート」「無双」「俺TUEEEE」「舐めプ」が可能。
ゲームで例えるなら?
- ネトゲ・ソシャゲで例えるならリアル課金(RMT)。内容によってはガチチート性能と化す。
献金する方法
日本では主に企業献金(団体献金)、個人献金(カンパ)の2種類で、政党や政治資金団体に献金できる。政治家個人への献金は原則禁止されているが、政治団体(一政治家が一つだけ指定できる資金管理団体や、政治家の後援会など)を通じて献金することになる。
ただし、政治家が支部長を務める政党支部に対して献金するという方法を取れば、政治家が企業献金を受け取れるなど、普通に抜け穴がある。こっそり自分に有利になるよう都合よく法律を作るのが政治家なんだから仕方ない。
国内生産者や国内市場の保護など、レントシーキング自体が必ずしも全て悪い、犯罪という訳ではないが、消費者や市場経済の利得を無視し、権力や財力のある一部の人間、企業や組織団体に好き勝手に悪用されている点は否めない。
関連動画
関連商品
関連項目
- 経済 / 経済学
- 法律
- 関税
- デイビッド・リカード
- ジェームズ・マギル・ブキャナン・ジュニア
- ロビー活動
- ロビイスト
- 税金 / 税金の無駄遣い
- 政商
- 政治家 / 国会議員
- 政治団体 / 圧力団体
- 格差社会
- 忖度
- 上級国民
- ブラック企業
- 社畜 / 派遣 / 派遣社員
- リアルチート
- 不正はなかった / 不正しかなかった
- 世の中ゼニですね。
- 不正競争防止法
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