レーシング・ポイントとは、2019年より2020年までF1に参戦していたコンストラクターである。
チーム本拠地はイギリス(イングランド)のノーサンプトン州シルバーストーン。チームオーナーはカナダの実業家ローレンス・ストロールの率いるグループ。パワーユニットはメルセデス製を搭載している。
エントリー名 | BWT・レーシング・ポイント・F1チーム |
チーム国籍 | イギリス |
チーム本拠地 | イギリス ノーサンプトン州シルバーストーン |
チーム代表 | オットマー・サブナウアー |
テクニカルディレクター | アンドリュー・グリーン |
ドライバー | セルジオ・ペレス(メキシコ) ランス・ストロール(カナダ) |
テストドライバー | |
シャーシ | RP20 |
パワーユニット | Mercedes AMG F1 EQ Performance |
タイヤ | ピレリ |
概要
元々はエディー・ジョーダンが設立したジョーダン・グランプリがチームの祖先である。その後ミッドランド(MF1)そしてスパイカーF1と経て、F1史上初のインド国籍のF1コンストラクター、フォース・インディアが誕生。
2018年まで参戦したが、オーナー逮捕に端を発した財政悪化によりチームは破産。チーム消滅を防ぐため、カナダの実業家ローレンス・ストロールが買収し、チーム名を「レーシング・ポイント・フォース・インディア」と前の名を残しつつ改めた。これはシーズン途中でチームオーナーが変わるとコンストラクターズポイントがリセットされてしまうことへの対策だったが、結局チーム体制変更前のポイント引き継ぎは認められなかった。
2019年シーズンから正式に「レーシング・ポイント・F1チーム」として再出発。オーストリアの企業BWT(ベストウォーターテクノロジー)がスポンサーに付いている関係で、マシンはド派手なピンクに染められている。このため、観戦時は一発でマシンを見分けることが可能。
2021年シーズンからはローレンス・ストロールがアストンマーティンを買収してチーム名を「アストンマーティンF1チーム」に改めることになり、この「レーシング・ポイント」の名は2シーズン限りという極めて短命に終わることになった。
戦歴
2019年
ドライバーの体制はメキシコ人のセルジオ・ペレスは昨年通り継続参戦となった。一方、エステバン・オコンはチームを追われる形となり、ローレンス・ストロールの息子であるランス・ストロールがウィリアムズから移籍した。
マシンは、それまでの「VJM」から「RP」に記号が改まり、RP19となった。これは、チーム存続の危機だった昨年の状況から根本的なモデルチェンジができず、昨年型の改良で凌ぐことになった。
ペレスは序盤の3レースで入賞した後シーズン中盤にスランプに陥るが、後半は大きく盛り返して第13戦以降は1回のリタイアを除いて全戦入賞した。
ストロールはドイツGPでの4位をはじめ、いくつかのレースで入賞したが可もなく不可もなしといった感じの成績で終わった。
結局チーム全体としては73ポイント、ランキング7位となった。ランキングは変化がなかったものの、ポイントがリセットされた分を加味しての昨年の戦績よりは後退する形となった。
2020年
ドライバーの体制は変わらず、マシンはブランニューのRP20となった。ところがこのRP20は姿を表した途端、現場の関係者の間で物議をかもすことになる。そのことの詳細は下の項目で書くことにする。
スポンサー面は、昨年のタイトルスポンサーであった「スポーツペサ」が抜けたことにより、「BWT」がタイトルスポンサーに昇格した。もともとカラーリングはBWTのピンクカラーベースだったので大きな変化は無いが、スポーツペサの青の部分が無くなったことでいよいよピンク一色の印象が強くなった。
ペレスはシーズン中盤に新型コロナウィルス感染によって2戦を欠場する場面もあったが、他は極めて安定したレースを展開。シーズン終盤のトルコGPではウェットレースの中でタイヤマネジメントの上手さを見せ、彼にとってザウバー時代以来の2位入賞を成し遂げた。さらに、サクヒールGPでは接触で一旦は最後尾に落ちながら粘り強く挽回。メルセデスの自滅によりトップでチェッカーを受けた。彼自身にとって実に190戦目の初優勝である。もちろんレーシング・ポイントチームとしては初、過去の系譜を入れてもジョーダン・グランプリの時代以来の優勝であった。
ストロールはシーズン前半は安定して入賞し、中盤のイタリアGPで3位表彰台を獲得した、しかしこの後はやや出入りの激しい成績となり、上記ペレスの優勝したサクヒールGPで再び3位表彰台を得た他は、リタイアが目立つことになった。
他に、ペレスの欠場時に代役としてニコ・ヒュルケンベルグが乗り、一度7位に入賞している。
チーム全体としては210ポイント(ただし、ブレーキダクトのレギュレーション違反問題で減点となり、実際には195ポイント)をとり、ランキングは4位。言うまでもなくレーシング・ポイントチームの過去最高成績となった。
「ピンク・メルセデス」RP20
上記のように、2020年型マシンRP20は開幕前のテストに姿を表すや奇妙な形で注目を集めた。というのも、このマシンはどう見ても昨年のチャンピオン、メルセデスW10の完全コピーだったからである。
しかも、テストでトップチームに肉薄するタイムを出したことでライバルチームからは眉をひそめられ、「ピンク・メルセデス」などと揶揄されることになった。
尤も現在のF1では意図しての設計流用したマシンをオーナーを同じくする姉妹チームやジュニアチームに作らせることは禁止されているものの、ライバルの別チームがマシンをコピペしたところで違反にはならない。「たまたま似ただけで、いわゆる車体設計の流用ではない」とシラを切ればいいのである。極端なことを言うと、F1マシンは別に美術品ではないので、デザインのオリジナリティは必ずしも重要ではないのだ。
去年のチャンピオンマシンを完全コピーしたところで、周りも進化している以上トップを取れるわけではない。だが、中段グループ以上の成績は高確率で見込める。費用をかけずに着実に結果を出したい中堅チームにとってはこういうやり方もアリなのだ。
レーシング・ポイントチームのテクニカルディレクター、アンドリュー・グリーンも「空力的なコンセプトは昨年のメルセデスのものを取り入れた。メルセデスのパワーユニットやギヤボックスを使用するのだから、それを使わない手はなかった」とメルセデスを模倣したことは認めた。
ただ、彼はこうも言う。「あくまでレギュレーションの範囲は守っている。メルセデスとデータの交換はしていないし、レギュレーションで自社開発・製造が定められたパーツはそうしている」
2020年シーズン開幕後のRP20の活躍が注目されるところであった。
結果としては、上記の通り一回の優勝を含む大活躍を見せた。RP20は大成功のマシンだったと言えるだろう。
ただ、「昨年型の他チームのマシンを採寸してのコピー」という手法自体は今後禁止される事になる。「アストンマーティン」に生まれ変わったチームは、今度は完全に別物の設計のマシンを用意することになった。
関連コミュニティ
関連リンク
関連項目
- F1世界選手権
- フォース・インディア(前身のチーム)
- アストンマーティンF1チーム(後継のチーム)
- メルセデス(エンジン供給)
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