レールガン (Railgun) とは、電磁誘導によって物体を加速投射する装置。特に兵器として利用されるものを指す。
概要
二本の伝導レールの間にレール方向にスライド可能な伝導体 (砲弾) を挟み、一方のレール→挟んだ伝導体→他方のレールへと通電した際に発生する磁界から伝導体 (砲弾) に及ぼすローレンツ力を利用して射ち出す装置である。あるいは、伝導体 (砲弾) の通るコースにあらかじめ磁界を作っておき、その磁界から伝導体 (砲弾) へ及ぼすローレンツ力を利用する構造のものもある。当然だが、鉄道車輛に火砲を搭載した列車砲 (Railway gun) とは全くの別物である。
他に「電磁砲」、「電磁加速砲」、「電磁投射砲」、「Electromagnetic Launcher (EML)」等の呼び名があるが、これらはコイルガン等を含む電磁投射装置 (Electromagnetic Projectile Devices) 全般を包括した呼称である。
兵器以外の利用形態としては、電磁カタパルトやマスドライバー等の輸送機関への応用が考えられている。
「超電磁砲」
レールガンそのものに対応する日本語表記として、「超電磁砲」という表記でマスメディアに報じられることもある[1][2]。これは後述の『とある魔術の禁書目録』および『とある科学の超電磁砲』の影響によるもので、MS-IMEなどの日本語入力システムで「レールガン」と入力すると「超電磁砲」に変換されるのが原因だろう。
Web技術文書サイトのMDN Web Docsでは、ルビ(振り仮名)を用いた文字列の例として「超電磁砲(レールガン)」という文字列が掲載されている(リンク)。
原理
P
A ━━━━━┳━━━━━━━━━━━━━ B
┃ ┏━━━━━┓
┃ ┃ ┃
┃ ┃ 彈 ┃
┃ ┃ ┃
┃ ┗━━━━━┛
D ━━━━━┻━━━━━━━━━━━━━ C
Q
上図に於いて、伝導レールABとCDは固定されており、伝導体PQは固定されていない (自由に左右へ動ける) とする。
このとき、電流をA→P→Q→Dと流すと右ネジの法則によって四角形APQD内に⊗方向 (あなたからモニターへと向かう方向) の磁束が発生する。したがって、伝導体PQは右方向へのローレンツ力が働き (フレミング左手の法則に従う) 加速される。
多くの場合はジュール熱等によって伝導体PQはプラズマ化してしまうが、電気さえ通ってくれれば問題は無い (プラズマでも電気は通る)。射出したいものを伝導体PQの右側に置いてやればよい。
実用上の問題点
原理的には伝導レールと伝導体のみで構成することが可能だが、実際にはジュール熱などで伝導体がプラズマ化することは上述の通りである。プラズマはすぐに拡散してしまうため、絶縁体で構成された弾丸と、伝導レール以外の部分を密閉する絶縁体の砲身が必要になる。
原理上は出力と伝導レールの長さに比例して速度が増すのだが、伝導体の速度が速くなると磁界の変化が伝導体の速度に置いて行かれるようになり、プラズマ化した伝導体に電流が均一に流れなくなる「速度表皮効果」が発生する。これによって実験室でのレールガンの速度向上は頭打ちになっている。
また短所にもあるが、現在の技術ではキャパシタや電源の小型化がネックとなっており、アメリカが計画しているズムウォルト級駆逐艦への搭載についてもこの点が課題となっている。艦艇であっても問題となることからわかる通り、現在のところ車両や航空機への搭載の見通しは立っていない。
長所と短所
利点 |
---|
課題 |
類似電磁投射装置
フィクションに於けるレールガン
非常に単純な機構であり、古くからそのアイデアが知られていた為、未来の兵器として屢々フィクションに登場する。
しかし製作者がその仕組みを理解していたかどうか疑問を待たざるを得ない作品もあり、上記のコイルガンやリニアガン、挙句の果てにはビーム兵器を指してレールガンという呼称が用いられる事も少なくない。また、ただ単純に近未来的な雰囲気を出す為にその名を借りただけかと思われる作品も存在する。
レールガンの特性上、すぐに取り出してそのまま撃って終わりと便利な作品ばかりではなく…
発射に必要な充電やチャージ時間を敵襲の中で稼ぐタワーディフェンス的なものや、再発射のための冷却時間、巨大な装置といった煩雑な取り扱いが描写されている作品も珍しくないが、煩雑さに比例して強力無比な切り札として描かれやすい。
レールガンの登場する作品
SFや近未来も多いが、試作品・極秘開発・小型化の課題達成といった設定の作品も。
※大百科に記事のある作品のみを追加して下さい。
小説
- カウント・ゼロ : 企業間の人材争奪戦に投入。戦術核級の威力を示した。
- 銀河英雄伝説 : 艦砲の一つとして登場。
- 星界の紋章、星界の戦旗 : 星界軍の巡察艦・襲撃艦の主兵装として核融合弾を撃ち出す電磁投射砲(イルギューフ)が装備されている。(レールガンの他にコイルガンという説もある)
漫画・アニメ
- 機甲戦記ドラグナー : 登場する機動兵器 (メタルアーマー) の殆どがレールガンを携行する。
- とある魔術の禁書目録 : ヒロインの一人、御坂美琴が超電磁砲 (レールガン) の異名を持つ。また外伝である『とある科学の超電磁砲』は「レールガン」で検索した際の第二候補(2020年1月14日現在)。
- BLACK CAT : 元は火薬式の銃なのだが、電気が流れると何故かレールガンに様変わりする。
- マブラヴ オルタネイティヴ トータル・イクリプス : 試作兵装として登場。敵を血の霧に変えるほどの威力を見せつけた。
映画
- イレイザー : EM銃の名で登場。シュワちゃん映画。余裕の音だ。弾速が違いますよ。
- ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS : 3式機龍が4式レールガンとして装備。相手が相手なのでこれでも牽制用。
- トランスフォーマー(実写映画):同『リベンジ』でアーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦「キッド」が使用。
ゲーム
- アーマード・コア : 武装の一つとして登場。見た目はビーム。
- R-TYPE : R-9AをはじめとするR戦闘機にはレールガンが機銃として装備されている。
- グラディウス : ビックバイパーの初期武装として装備されている。
- エースコンバット : 幾つかのシリーズ作品に於いて登場。詳細は右参照。ストーンヘンジ(ニコ百)、ストーンヘンジ(wikipedia)、シャンデリア(wikipedia)
- 鋼鉄の咆哮 : 艦砲の一種として登場。通常火砲より大型で重量も嵩むため配置に悩ましく、標準連射速度が低い上に射界に制限があるが、長めの射程と一瞬で着弾する高い弾速を誇る。威力は産廃レベルから色々。
- バイオハザードシリーズ : 初代・リメイク3作目において登場。前者は米陸軍特殊部隊が持ち込んだものが自動発射、後者は大型の砲身を構えて発射する。
- パラサイト・イヴ : スクウェア(現スクエアエニックス)。パラサイトエナジーの一種、エナジーショット(PE2から通常火器の弾速を加速させる能力と定義)とハイパーベロシティ(隠し武器)が該当。
- Falloutシリーズ : Fallout3ではレールガンという名前の蒸気圧でレール(文字通り)を撃ち出す自作武器があるが、そちらではなくガウスライフルが該当。単発だが高い弾速と威力で狙撃から中距離までカバーできる。
- メタルギアシリーズ : MGSとMGS4では「メタルギアREX」に搭載されているステルス核弾頭投射システム、MGS2とMGS4では携行型狙撃銃、MGSPWではAI兵器「クリサリス」と「メタルギアZEKE」の搭載兵器、および主人公の携行型狙撃銃として登場。
- Warframe : LANKAという電磁加速型の狙撃銃が登場。
- S.T.A.L.K.E.R : Gauss gunという電磁加速型の狙撃銃が終盤に登場。コイルガンに近いものと思われる。
- BattleField1942 : Mod「FHSW」にて、と号電気投擲砲として登場。
現実のレールガン
米海軍は2005年からレールガンの研究を行っていた。着弾時の速度はマッハ5で、その莫大な運動エネルギーで目標を破壊するため砲弾は炸薬を必要としない。弾着まで6分。火薬を全く使用しないため、従来の大砲よりも強力でありながら安全であるのがメリットだとか。さらに、370km地点に6分で弾着というスペックは通常兵器では不可能な数値になる。さらにレールガン用の誘導砲弾も開発中であり、先進国の軍隊に必要な精密攻撃能力も備える予定になっていた。
しかし2021年に、米海軍はレールガンの研究開発を一時停止し、浮いた予算を別分野に振り向けると発表したことが報道されている。[3]
防衛省でもレールガンの研究は行っており、2028年まで研究試作と所内試験を行う計画になっている。[4]
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https://twitter.com/atla_kouhou_jp/status/1714204056087126105
他にはJAXAが平和利用のためのレールガンの研究を行っており、関連動画にあるように民間人がレールガンを製作した例もある。
関連動画
ニコニコ動画においては、Kisaragi氏 (EML研究所) 製作によるレールガンが有名である。
左はJAXAが実験中のレールガンの模様。右がアメリカ海軍が開発した単発式のレールガン(フェイズ1)
関連リンク
- 極超音速レールガン連続射撃への挑戦 防衛装備庁 2023(PDF)
関連項目
脚注
- *防衛省が独自開発に乗り出すレールガン(超電磁砲)は度肝を抜く未来兵器だった!射程200km超で速射も… 2016.9.2
- *極超音速兵器を迎撃 防衛省「レールガン」本格開発 2022.1.10
- *The Navy Finally Pulls the Plug on the Railgun 2021.7.2
- *防衛省、将来レールガン研究推進、システム実証へ 2021.9.9
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