ロックウェル(Rockwell)とは、小説・OVA「銀河英雄伝説」の登場人物。
声の担当は江原正士(石黒監督版OVA)、四宮豪(Die Neue These)。
略歴
生年は不明だが、年齢は50代半ばとされておりアニメ版の外見も概ねそれに準拠している。
初登場時は宇宙暦798年のヤンに対する査問会であり、軍内部ではトリューニヒト閥に属し後方勤務本部長職にあった。同年から799年に渡る帝国による同盟への侵攻作戦(”神々の黄昏”作戦)時でもその地位を保持。石黒監督版OVAではミッターマイヤーによるハイネセン侵攻時は統合作戦本部長であるドーソン、宇宙艦隊司令長官であるビュコック、国防委員長であるアイランズと共にトリューニヒトが主催する会議にも参加していたが、抗戦を説くビュコックやアイランズを尻目に直接の上司であるドーソン同様、ただ慌てふためくだけであった。閣議は最終的に、トリューニヒトを制止しようとしたビュコックが地球教教徒に拘束されアイランズは卒倒。結局、軍政畑である両名は双方の政治的対立に何ら寄与することはなかった。
バーラトの和約後は統合作戦本部長であったドーソンが帝国に拘束され、新議長であるジョアン・レベロがヤン一党の影響力排除を企図したため、棚ボタ的に統合作戦本部長に任じられる(余談だが、宇宙艦隊司令長官は空席となり、チュン・ウー・チェンが代理している)。就任後は精力的にヤン・ウェンリーとその一党の排除に邁進。レベロ内閣のブレーンであったオリベイラによるヤンを逮捕・暗殺し、その罪をシェーンコップらに転嫁する謀略の一翼を担った。しかし、この謀略はヤンの逮捕を除いて失敗。ローゼンリッターに逆襲を許し、レベロと帝国の高等弁務官であったレンネンカンプの拘束を許した挙句、最期の手段であったヤンの暗殺すら実行できずに逃亡を許す。
一連の事件を口実にラインハルトは再び同盟に宣戦布告。実働部隊は全てマル・アデッタの会戦で消滅するかエルファシルに逃げ延びたヤンの元に逃走。老練の提督であったビュコックも戦死し、同盟の命脈もラインハルトがハイネセンへ到着するまでのモノとなった。
この時、かつてヤンを売り、敵であるレンネンカンプですら売り渡したレベロを信用できなくなったロックウェルはシンパと共に彼の執務室を急襲し暗殺。その功をもってラインハルトに助命を乞うたが、ラインハルトは彼らの卑屈な態度に激怒。応答に窮したロックウェルはその場に居合わせていたファーレンハイト(リップシュタット戦役において反ラインハルト派についていた)を見つけ、彼をかつて助けたように自分の命も助けてほしいと懇願したが、かえって火に油を注ぐ結果となり処刑(とすら言われない後始末)を決定づけた。執行者はその場でファーレンハイトに決まり、彼はラインハルト以上の怒りと侮蔑をもって彼らに接している。
その後いつ処刑されたかは明らかではないが、裁判は行わないと宣言したこと、「ヴァルハラでビュコックに詫びさせる」と言うラインハルトの発言、エル・ファシル革命政府の首班であったフランチェシク・ロムスキーが裏切り者の末路として彼らの名前を挙げており、会見の直後であったと思われる。ともかく、同盟建国から200年あまり、数々の名将を輩出した同盟軍の制服組最期の長は処刑と言う不名誉な結末を迎えたのであった。
ロックウェルとファーレンハイトの違いを教えて下さい
評価
トリューニヒト閥、無能、主人公暗殺未遂と上司殺し、そして処刑…。作中に幾人か存在する一点の美点も能力も救いもない人物の一人であり、おそらく同盟の中ではフォーク准将やベイ大佐と並んで最底辺の嫌われ者であろう。自決を強制された例は作中では多く存在するが、処刑された人物は名アリの登場人物では彼とラングくらいである。ただし、小説版では彼なりの言い分もあり
疑問や反発などいだかず命令のままに喜んで死んでいく精神的家畜こそ、国家と軍隊にとって有為の人材と言うべきではないか。重要なのは民主主義を守ることではない。民主国家を守ることだと言うのに。
と言う言葉を残している。これは一面の真実であることは確かだろう。もっとも、彼本人はこれに従うことはなく最期は矛盾した行動を取っているのだからどうしようもないのだが…。
また、前述の引用の前後には「才能の質は問題ではない」と言う考えにも至っており、レベロの暗殺も最終的に自己の保身のためと言うよりヤンとの才能の差を明確に彼に指摘されたことが引き金となっている。いずれにせよ、キャゼルヌが侮蔑をもって見限ったように、統合作戦本部長のような要職につく器量ではなかったことは確かである。
先に救いが一点もないと述べたが功績らしい功績を一つだけ挙げるとするなら、ヤンを受け入れたエル・ファシル革命政府の文民たちにとって彼の死が裏切りに対する一種の教訓となったことが挙げられる。少なくともヤンの最期の環境は多少の制限はあるにせよ、戦術・戦略的にはフリーハンドであり裏切りの脅威はそれまでと比べて相対的低かった。ロムスキーの善良さと横柄さ(裏を返せば無能さ)を考慮に入れるべきではあるが、おそらくその後の歴史においても留意すべき故事の一つとなったことであろう。
関連人物
- ヨブ・トリューニヒト - 上司であり、派閥の長。査問会においてロックウェルを見つけたヤンは、トリューニヒト閥の伸長を即座に感じとっており、その関係は軍内部でも周知であったようだ。彼の失脚後も同盟に残ることとなる。
- ジョアン・レベロ - 上司。ヤンに対する陰謀の実行役の長を担当したが、最期は疑心暗鬼になり彼を殺害。
- ドーソン - 直接の上司。彼と違い、ロックウェルが職務を停滞させることはなかったようだ。
- アレックス・キャゼルヌ - 部下。同じく軍政畑であり、主観的には彼を買っていたようだ。もっとも、ヤンのハイネセン脱出の際に引き止めようと昇進を餌にしてしまい嘲笑されてしまう。
- アーダルベルト・フォン・ファーレンハイト - 死刑執行人。彼を自分の「同類」としたロックウェルの抗弁に激しい怒りをあらわにした。
関連動画
関連項目
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