ロベルト・フィルミーノ(Roberto Firmino Barbosa de Oliveira、1991年10月2日 - )とは、ブラジル・マセイオ出身のサッカー選手である。
サウジアラビア・プロフェッショナルリーグのアル・アハリ・サウジFC所属。元サッカーブラジル代表。
180cm76kg。ポジションはFW、MF(オフェンシブハーフ)。利き足は右足。愛称は「ボビー」。
経歴
生い立ち
美しいビーチが広がるブラジル北東部の港町で生まれ育ち、父親は道端で水を売って生計を立てており、食べるものに困るほど貧しい環境にあった。また、故郷のマセイオは非常に治安の悪い場所であったため、母親はギャングに引き入れられることを恐れて幼いころは外で遊ばせなかった。そういった環境の中でもフィルミーノは内気だが、思いやりのある謙虚な性格として育ち、フットボーラーになることを夢見ていた。
幼少の頃は、地元のクラブチームであるCRBの下部組織に所属。この当時のポジションはボランチだった。17歳になった2008年にフィゲイレンセFCに所属すると、攻撃的なポジションへコンバートされ、才能が開花し始め、2009年にプロデビューを果たす。2010年にはチームの主力に定着し、リーグ戦36試合8得点という成績を残し、当時カンピオナート・ブラジレイロ・セリエBに所属していたフィゲイレンセをセリエAに昇格させるのに貢献する。
ホッフェンハイム
2010年12月ドイツ・ブンデスリーガのTSG1899ホッフェンハイムに移籍。当時、ホッフェンハイムのスカウトはフィルミーノのことをゲームの「Football Manager」で発掘したという逸話がある。加入当時はドイツで無名のブラジル人選手だったが、シーズン途中の加入にもかかわらずすぐさまチームにフィットする。2011年4月16日のフランクフルト戦で初ゴールを決め、欧州でのキャリアをスタートさせる。
けっしてブンデスリーガでは強豪とは言えないチームのホッフェンハイムだったが、フィルミーノはここで戦術的なノウハウを吸収していき、ブラジル人のテクニックを持ちながら献身的に守備をしつつ、戦術眼の優れたプレーメーカー的要素も備えたスタイルへと進化していき、チームの中心選手となる。4シーズン目となった2013-14シーズンからは背番号「10」を背負うようになり、トップ下でありながら33試合に出場して16得点という成績を残す。2015-16シーズンは、降格の危機に直面したチームの中で孤軍奮闘。残留の立役者となり、ビッグクラブが触手を伸ばす選手になっていた。
リヴァプール
2015年6月24日イングランド・プレミアリーグの名門リヴァプールFCに5年契約で移籍。移籍金は4100万ユーロ(約57億円)とされている。加入した当初はイングランドの環境に馴染めず、高額な移籍金に見合うだけのプレーを見せられずにいた。しかし、10月9日にドイツの名将ユルゲン・クロップが監督に就任すると、ポジションを最前線に移し、偽の9番の役割を与えられることで才能が開花。1シーズン目で10ゴールを記録し、チームからの信頼を得ることに成功する。
2016-17シーズンは、コウチーニョ、サディオ・マネ、アダム・ララーナと共に「ファンタスティック4」と称され、魔術師と呼ばれるほどの高いテクニックでサポーターを魅了する。一時は優勝争いを演じたチームを牽引する存在となり、2シーズン連続で二桁ゴールも記録する。
2017-18シーズンは、この夏に加入したモハメド・サラーに背番号11を譲り、背番号「9」を付けるようになる。このシーズンからサラー、マネと共に強力なトリデンテ(3トップ)を形成し、その中でもクロップ・サッカーに欠かせない心臓部として活躍。特に、初挑戦となったUEFAチャンピオンズリーグ(CL)では、11試合で10得点という活躍を見せ、準決勝のローマとの1st legでは2ゴールを決めチームの決勝進出に貢献。決勝のレアル・マドリード戦では、1-3で敗れたが、準優勝と結果は残した。リーグ戦でも16得点をあげ、3シーズン連続での二桁ゴールを達成。
2018-19シーズンもサラー、マネとの欧州最強3トップは猛威を振るい、中盤をサポートしながらゴールにも絡む活躍を続ける。この頃からチームはBプランとして4-2-3-1を併用するようになり、このときはサラーが最前線に入ってトップ下の位置に下がってプレーすることが多かった。この年は怪我に苦しんだこともあり、出場試合数、ゴール数ともに前の2シーズンよりは下がったが、それでもチームの浮沈にかかわる重要なピースであることに変わりはなかった。勝ち点を97まで積み上げ、マンチェスター・シティと史上もっともハイレベルな優勝争いを演じるが、惜しくも勝ち点1差でリーグ優勝を逃す。一方、CLでは鼠蹊部の負傷によってFCバルセロナとの準決勝第2戦を欠場。出場場危ぶまれていたトッテナム・ホットスパーとの決勝には強行出場する。本調子ではなかったが、交代するまで自分の任務をこなし、チームの14年ぶりの欧州制覇に貢献。自身のキャリアにとっても初のビッグタイトル獲得となった。
2019-20シーズンは、2019年8月31日のバーンリー戦でゴールを決め、ブラジル人選手として初めてリーグ戦50得点を達成。開幕から圧倒的な強さで首位を独走したチームにあって、例年通りの重要な仕事をこなす。12月に開催されたFIFAクラブワールドカップ2019では、準決勝のモンテレイ戦で決勝ゴールを決め、決勝のCRフラメンゴ戦でも延長戦に決勝ゴールを決めてタイトル獲得をもたらす。44試合連続無敗という記録も作ったシーズンで、中心選手として献身的にプレーし続け、史上最速となる31節でのリーグ優勝に貢献。リヴァプールにとって30年ぶりのリーグ制覇となった。
2020-21シーズンは調子が上がらず、新加入のジオゴ・ジョタにスタメンの座を譲ることもあった。怪我人が続出し、チームが勝てなくなった時期には戦犯として批判を受けることもあった。それでも、CL出場権獲得のために重要となった2021年5月13日のマンチェスター・ユナイテッド戦では2ゴールを決めて勝利に貢献し、続く第37節のバーンリー戦でもゴールを決め、復調の兆しを見せる。
2021-22シーズンも怪我で出遅れたこともあり、開幕からジョタにスタメンの座を譲ることが多かったが、2021年10月16日プレミアリーグ第8節ワトフォード戦で自身プレミアリーグでは初となるハットトリックを決める。しかし、11月にハムストリングを負傷するとその後も相次ぐ負傷によってコンディションが安定せず、ジョタの活躍やルイス・ディアスの加入によって序列が下がり、シーズン終盤は控えに回るなどこれまで見せた輝きは影を潜めたままだった。
契約最終年となった2022-23シーズンでは、夏にダルウィン・ヌニェスが加入したことで前線のポジション争いが激化し、序列の低下が予想される。それでも、2022年8月27日のプレミアリーグ第3節ボーンマス戦で2ゴールを記録。10月には公式戦3試合連続ゴールを決め、ワールドカップの中断期間前まで7ゴール3アシストと不調のチームの中で気を吐く。しかし、中断期間中のトレーニング中に負傷し離脱。さらに冬の移籍期間にコーディ・ガクポが加入したことで序列が低下。復帰後も出場機会が減ってしまう。2023年3月にはクロップ監督から今シーズン限りで退団することが明らかにされる。最後のアンフィールドでの試合となった第37節アストン・ヴィラ戦では試合終了間際に劇的な同点ゴールを決め、さらにリヴァプールでのラストマッチとなった第38節サウサンプトン戦でも2試合連続となるゴールを決め、有終の美で8年間過ごしたクラブに別れを告げる。リーグ戦では4シーズンぶりに二桁得点に到達している。
アル・アハリ
2023年7月4日、サウジアラビア・プロフェッショナルリーグに所属するアル・アハリ・サウジFCに3年契約で移籍することが発表される。背番号は「10」。3年契約で年俸は1700万ポンド(約27億円)。
8月11日、リーグ開幕戦のアル・ハズム戦では前半わずか10分間で2ゴールを決めると、後半にも1ゴールを決め、ハットトリックを達成するという最高のデビューを飾る。しかし、その後はパフォーマンスを落とし、スタメンから外れることも。
ブラジル代表
ブラジルに居た頃は、無名の存在だったためアンダー世代での代表歴は無く、2014年10月23日にブラジル代表に初選出となったのが、自身にとっての初の代表選出であった。11月14日のトルコ戦で途中出場して初キャップを飾り、2試合目となった11月18日のオーストリア戦で初得点を記録。そのままブラジル代表に定着し、2015年6月にチリで開催されるコパ・アメリカ2015のメンバーにも選ばれる。グループリーグ第2戦のコロンビア戦からスタメンで起用されると、第3戦のベネズエラ戦でゴールを決める。しかし、準々決勝のパラグアイ戦では不発に終わり、チームもPK戦で敗れる。慣れないCFとして起用されたこともあり、持ち味を出すことができず、ストライカーとしては物足りない内容に批判が集まった。
コパ・アメリカ後は代表に呼ばれなくなっていたが、チッチ監督が就任した最初の試合となった2016年6月に復帰。ロシアW杯南米予選第5節のボリビア戦に途中出場し、チームの5点目を決めている。代表では、所属するリヴァプールほどの活躍を見せられず、ガブリエル・ジェズスの控えという位置づけになっていた。それでも、2018年6月3日ホームスタジアムであるアンフィールドで開催されたクロアチアとのtestマッチでは、試合終了間際に代表ではおよそ1年半ぶりとなるゴールを決めている。
ロシアで開催された2018 FIFAワールドカップのメンバーに選ばれ、初戦のスイス戦に途中出場し、自身初のワールドカップ出場を果たす。ラウンド16のメキシコ戦では後半41分から途中出場すると、その3分後に試合を決定づける追加点を決める。準々決勝のベルギー戦では、2点ビハイドとなった後半開始からウィリアンとの交代で出場。しかし、目立った活躍はできず、チームも敗れ、初のワールドカップは途中出場3試合で1得点という結果に終わる。
2019年6月地元ブラジルで開催されたコパ・アメリカ2019に出場。この大会では前線で起用され、リヴァプールのときと同じような偽の9番としての役割を与えられる。グループリーグ第3戦のペルー戦では、自らの守備をきっかけに相手GKのミスを誘い、ノールックでのゴールを決め、準決勝のアルゼンチン戦では、1ゴール1アシストで全得点に絡む活躍を見せる。決勝までの全6試合全てにスタメンとして起用され、ブラジルの優勝に貢献。自身初の代表でのタイトル獲得となった。
2021年6月、ブラジル開催のコパ・アメリカ2021では控えに回ったこともあってグループリーグのコロンビア戦で1ゴールを決めたくらいしか目立った活躍はできなかった。
個人成績
シーズン | 国 | クラブ | リーグ | 試合 | 得点 |
---|---|---|---|---|---|
2009 | フィゲイレンセ | ブラジレイロ・セリエB | 2 | 0 | |
2010 | フィゲイレンセ | ブラジレイロ・セリエB | 36 | 8 | |
2010-11 | ホッフェンハイム | ブンデスリーガ | 11 | 3 | |
2011-12 | ホッフェンハイム | ブンデスリーガ | 30 | 7 | |
2012-13 | ホッフェンハイム | ブンデスリーガ | 33 | 5 | |
2013-14 | ホッフェンハイム | ブンデスリーガ | 33 | 16 | |
2014-15 | ホッフェンハイム | ブンデスリーガ | 33 | 7 | |
2015-16 | リヴァプール | プレミアリーグ | 31 | 10 | |
2016-17 | リヴァプール | プレミアリーグ | 35 | 11 | |
2017-18 | リヴァプール | プレミアリーグ | 37 | 15 | |
2018-19 | リヴァプール | プレミアリーグ | 34 | 12 | |
2019-20 | リヴァプール | プレミアリーグ | 38 | 9 | |
2020-21 | リヴァプール | プレミアリーグ | 36 | 9 | |
2021-22 | リヴァプール | プレミアリーグ | 20 | 5 | |
2022-23 | リヴァプール | プレミアリーグ | 25 | 11 | |
2023-24 | アル・アハリ | SPL |
プレースタイル
ホッフェンハイムでプレーしていた頃は、トップ下で起用されており、ゲームメイクをしながら自らもゴールを奪うというスタイルだった。リヴァプールでクロップによって偽の9番としての役割を与えられると、絶妙なタイミングで中盤に下がってゲームメイクに参加したり、楔のパスを収め、サラーとマネが飛び出すためのスペースも作っている。9番としてプレーしながら10番としてもプレーする選手であり、ストライカーと中盤から前線へのリンクマンという1人2役をこなせる選手である。ニュータイプの万能型FWと言えるだろう。
まず、特筆すべきはボールテクニックの高さであり、抜群のキープ力で味方が攻めあがるための時間とスペースを作り出し、高等な技術による意表を突いたパスも出す。インテリジェンスの高さも特徴的であり、必要に応じて中盤に顔を出したり、サイドに流れて味方をサポートする。また、元々トップ下というだけあってゲームメーカーとしての資質も高く、常に首を振ってピッチ上のプレイヤーの位置や動きを常に観察し、適切なプレー選択ができる。ブラジル人のテクニシャンに見られがちなエゴイスティックなプレーは見られず、CFでありながら黒子の役割に徹することができる選手である。
また、ゲーゲンプレッシングと呼ばれるクロップ式守備において鍵となる、前線の守備でも重要な存在となっている。試合中常にハードワークを厭わず、タックル数とインターセプト数はプレミアリーグのFWの中でもトップである。また、相手のパスコースを切りながら寄せていくコースカットプレスの技術が非常に高く、リヴァプールでは相手DFとアンカーのコースを切る重要な役割を担っている。
決定力そのものは低くなく、シュート技術も高いが、与えられた役割が多いためストライカーとして見ると、得点の数がやや物足りなくなるのが欠点である。それでも、リヴァプールの心臓と言える存在であり、替えが利かない選手であるため、欠場時はチーム戦術の練り直しが必要になる。
エピソード
性格は真面目で謙虚と言われているが、ゴールパフォーマンスは毎回ユニークであり、リヴァプールにコウチーニョが在籍していた頃は一緒にダンスを踊っていた。また、パンツの紐に手をかけてくねくね歩き出したり、カンフーキックを披露することもある。左目を負傷した影響でCLのパリ・サンジェルマン戦でスタメンを外れたときは、途中出場でゴールを決め、左目を覆い隠して大丈夫だとアピールしている。また、ユニフォームを脱いでしまうことも多く、シャツを脱いで警告を受けた回数が欧州5大リーグでもっとも多いという珍記録を持っている。
プレースタイルと違ってプライベートはパリピであり、とてもマネできないようなド派手なファッションで話題になっている。日本でも中田英寿や本田圭佑の個性的なファッションが話題になったが、そんなレベルは超越している。我々凡人がフィルミーノのセンスに追いつくにはまだ数年かかるかもしれない・・・。ヘアスタイルも頻繁に変わり、時には何とも言えない独特のヘアスタイルで登場する。
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関連項目
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