『ロミオの青い空』とは、ドイツ出身のスイスの童話作家リザ(リーザ)・テツナー(Lisa Tetzner)の児童文学『黒い兄弟』(Die Schwartzen Brüder)を原作として制作された、世界名作劇場(略称: 名劇)のシリーズ21作目にあたるテレビアニメーションである。
概要
1995年1月15日から全33話が本放映された。NHKBS2で2度再放送されている。
相次ぐ野球放送やワールドカップバレー中継等のために、名劇シリーズの中でもとりわけて短めにまとまっており、また視聴率も10%程度と苦戦した。が、主に少年労働者の困窮と悲哀(解り易く言えば『フランダースの犬』路線)を謳った原作よりも、少年少女たちの交流と力強い生き様が活き活きと描かれ、晩期の当シリーズにおいては全盛期の作品群にも劣らないくらいファンの支持の高い名作である。
主人公の名前が原作のジョルジョ(英語のジョージに相当)から、制作者の意向によりイタリア人の名前としてより認知度が高く色気のあるロミオ(なおイタリア語読みではローメオに近い)に改められたり、当時の腐女子のハートをつかむための流れであるのかどうかは定かではないが、主人公の親友であるアルフレドが原作以上に非の打ち所のない美少年であったり(実際、そういう同人誌は実に数多く作られた)、敵味方入り乱れて多種多様な人間関係が構築されたりと、改変の多い名劇シリーズでもより珍しいアレンジがなされていた。またナレーションを池田昌子が務めていたのも印象深い。
実は名劇シリーズで初めてステレオ制作された作品である(本格的に地上波ステレオ放送が始まったのがこの時期であった為)。
ストーリー
スイス南部のティチーノ州ソノーニョ村(Sonogno)に暮らしていた少年ロミオは、山火事で大火傷を負った父ロベルトの治療費の為に「死神」と呼ばれる不気味な人買いルイニに買われ、イタリア北部の都市ミラノで煙突掃除夫(スパッツァカミーノ、spazzacamino)のロッシ親方に下働きとして売られていく。
彼ら煙突掃除の少年たちは、朝早くから夕方まで危険な高所で煤を吸い続ける過酷な労働環境でこき使われ、夜は居間の片隅で粗末な食事とささやかな眠りを貪るという、ほぼ使い捨ての労働力であった(こうした若年労働者の境遇は史実に基づいている)。その上、ミラノっ子の少年たちが徒党を組み「オオカミ団」(I Lupi)を名乗って煙突掃除の少年たちを公然と攻撃してくる毎日である。
ロミオはミラノ行で出会ったアルフレドと再会して友情を育み、やがてアルフレドをリーダーとして共に煤まみれの煙突掃除少年たちの集まり「黒い兄弟」(I Fratelli Neri)を結成して「オオカミ団」に立ち向かう。
ただし、ストーリー序盤~中盤でメインを張っていたヒロインのアンジェレッタ(声: 川村万梨阿)が病気療養で退場してから「いなかったこと」にされたり(まあ原作ではポックリ病死するが)、ロミオの幼馴染の少女アニタ(声: 丹下桜)も序盤のみで後は完全に「いなかったこと」にされるなど(せめて最終話での再登場を期待していた人は少なくなかったろう)、話数が通常の 3/5 程度しかない事を考慮してもアニメのみしか知らない人間にとっては大きく不満な点が残るところはあった。
しかし、アルフレドの素性(アニメオリジナル設定)が明かされるエピソードや、彼の死に関わる一連のストーリー展開には感涙を隠せないものである。
また、原作のジョルジョはアルフレドとアンジェレッタの死によって全てに耐えきれなくなり、数人の仲間と共に故郷への決死の逃亡を図るという痛ましい展開になるのだが、アニメのロミオはアルフレドの死のショックから立ち直って「黒い兄弟」の2代目リーダーとなり、親方一家やオオカミ団ともそれなりに良好な関係を保ちつつ、晴れて契約満了日まで勤め上げて堂々と帰郷する、という熱い展開になっている。
ここまで。
原作者について
原作者リーザ・テツナーの夫クルツ・ヘルト(Kurtz Held)はユダヤ系の共産主義者で、夫婦共々ナチスの迫害を逃れてスイスに亡命した。そうした中で1941年に出版されたのが『黒い兄弟』である。第二次世界大戦後、旧東ドイツではテツナーの作品は「社会主義的童話」と呼ばれ、また夫婦の共著となる児童向け書籍もある。
したがって、この作品に描かれる少年たちの悲惨な境遇はナチス政権下のドイツで迫害される労働者・共産主義者・ユダヤ人の寓意を含んでいると視ることもできる。が、煙突掃除の少年たちの悲劇そのものは史実に基づくものであり、そう難しく考える必要は無いのかも知れない。
なおテツナーは日本を含めた世界中のお伽噺をドイツ語圏に紹介している。また、アストリッド・リンドグレーンの『長くつしたのピッピ』に支持を寄せ、C・S・ルイスの『ナルニア国ものがたり』シリーズを初めてドイツ語に翻訳するなど、海外作品の普及にも大いに貢献した。
関連動画
当作品のOP&EDは非常に評価が高い名曲である。
いずれも歌: 笠原弘子、作詞: 佐藤ありす、作曲: 岩崎琢、編曲: 若草恵。
関連項目
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